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隠された記憶
2006
Michael_Haneke (ミヒャエル・ハネケ)


「ピアニスト」でカンヌのグランプリを受傷したハネケ監督の次作です。
本作でもカンヌで監督賞・国際批評家賞・人道賞を受賞しています。偉い方ですね。
本作ではサスペンス寄り。
ある人気キャスターの元に何者かから届くビデオテープ。そこに映っている映像は自宅の風景。何度も届くテープに映し出されるのは、は徐々に自分のプライベートな風景に。

はっきり言って、私がこの映画を理解できたかどうか分かりません。
難しいです。もの凄い文学的で投げっぱなし。
しかも、それを監督自身がインタビューで「解釈は提示しない。観客が考えろ」なんて言ってるもんですから手に負えません。
本来エンターテイメントでは御法度の「投げっぱなし」ですが、許される方もいる、と。
それが良いか分かりませんが、確かに考えることになります。ぼーっと観てると何が何だか分からなくなってしまいます。映像の中に答えに直結するもの凄いヒントが有るわけでもなく、自分の中で積み重ねて解釈するしかない。困った映画です。

しかし、凄いハネケ監督、超一流演出家であることは間違いないですね。
インタビューで「残酷なシーンほどシンプルに撮る」と仰っています。確かにすさまじいシンプルさ。伏線も何もない。コレは効きます。リアルな残酷さに本来伏線なんてありません。
あと、緊張感の作り出し方が凄まじい。何も起こらない1シーン。起こっていないのは画面上だけで、その裏にある想いをこちら側は想像しまくってどきどきです。これはなかなかできません。結果、何も起こっていなくても、もの凄いサスペンスを見た感じ。
ずっと動かない視点の怖さも。ファーストカットの長回し(送られてきたビデオテープの映像)が後でじわじわ効いてきて、それが誰の視点なのかを想像させます。それが誰かの視点であったと気付いた瞬間の怖さ。コレは怖い。

「演出とは日常の中に隠れている様々な秘密・現象を表現することだ」とインタビューでハネケ監督が語っています。
まさにコレ!
分かっちゃいるけどなかなかできないことです。
説明的にすればするほどチープになる。かといって「考えさせる」方法で分かってもらえるか。このギリギリのラインの見極めですね。
それ以前に映画に描くべきテーマがあるかどうか。
これらは最近の考え事です。

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