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ベルヴィル・ランデブー
2002
Sylvain Chomet (シルヴァン・ショメ)



フランス人アニメーターのシルヴァン・ショメ監督の長編アニメーション映画です。
正直、アニメーションについて言えば日本のアニメーションがダントツに面白いと思うので、あんまり海外の作品は見ていません。
友人から「これは是非!」ということで拝見しました。

凄いわ、コレ。
恐るべき完成度で、一縷の隙もない密度。
台詞を極力排除した演出で、全て動きとトーンで表現しているが故、外国作品であったとしても言葉以上に情緒面で伝わります。
なかなか出来ることではありません。実写であったとしても相当難易度の高い方法です。

キャラクターは決してかわいらしいとは言えないし、ストーリーもかわいげのあるジュブナイルでも無い。
アニメーションでやる必要がよく分からなかったのですが、それは監督自身が漫画家出身のアニメーターであるから。
企画ありきの監督捜しではなく、監督自身からわき出た作品です。正しいですね。
彼が表現したかったものはアニメーションじゃなければ表現できないんですね。
そもそ、監督自身がアニメーションを志したきっかけと直結するのかもしれません。


ストーリーの主軸がどこにあったのか分かりません。
ナンセンスなお話をナンセンスに表現するにはアニメーションしか無くて、如何に常識的な価値観を廃してナンセンスに描くことが主軸だったのかもしれません。
ショメ監督自身が相当へそ曲がりなのか、ストーリーがかなり思い通りに進みません。
米国映画に対するアンチテーゼですね。完全に狙ってますね。


アニメーションというのは表現の幅自体というか、方法がかなり独特だと思います。究極は人間じゃなくてもドラマが描ける点。
ドラえもんなんてロボットなのかネコなのかタヌキなのか分かりません。実写でやったら子どもが泣き出します。
日本のアニメーション作品は各作品によって相当な微調整がされていて、作画段階での大幅な変化(アート寄りだったり写実寄りだったりとか)は各作品にはそれほど無いものの「動かし方の特性の付け方」という面ではとても優れていると思います。マッドハウスStudio 4℃なんかのやる気満々スタジオの恐るべき新技法もありますが、やはり微調整という範疇だと思っています。まだ見尽くしていないので失礼ですが、そう思っています。
決して悪口ではありません。

海外アニメーション作品と国産作品を観て感じることは、海外作品はまだ可能性の模索をしまくっていて、てんこ盛りの実験的な作品が多い気がします。アニメーションを「芸術」と捉えている感が強いですね。
その点、国産作の場合は子ども向け漫画から出発したアニメーション技術が既に成熟していて「何を描くか」ということに重点が置かれているのではないでしょうか。脚本勝負というような。
ここ数年ではCGIを導入しまくったおかげで、本筋とは違う部分に力が入りすぎて結局霧の中の様な映画がたまにあります。もったいないです。

アニメーション作品の脚本について言えば単純な勧善懲悪とハッピーエンドをなるべくならやりたくないという想いがアニメーション作品には特に感じます。関わる人間のひねくれっぷりというか、想いというか。
実写映画と比べて、アニメーション映画の方が挑戦的だと思っています。あ、テレビは別です。


話しは随分ずれましたが、単純に作品として恐ろしく完成度の高い作品です。
好き嫌いは別ですが、観て決して損はしません。

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