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映画【アイデン&ティティ】その2

2007-05-05 23:22:05 | 映画
アイデン&ティティ
2003
田口トモロヲ


本作のタイトルでエントリするのは2回目ですが、まぁもう一度観てみたわけです。
前回の感想はこちらです。

先日、縁があってこちらの映画の制作のコアな部分に携わった方とお話しする機会があり、その方が言うには本作のラストの台詞「やらなきゃいけないことを、やるだけさ。だからうまくいくんだよ」に尽きるとのこと。
説教半分でお話を聞いていましたが、確かに合ってるんだよなぁ。困ります。
しかし、これは人が全て表現者でなければいけないということではなくて、その「やらなきゃいけないこと」に気付けばそれは「うまくいく」ということでもあります。

で、映画を観てですが、どうやら本作劇中では主人公は「ロック」と「彼女が好きなこと」をほとんど同義に語っています。
多分、ただの深読みなんですが、そうするとこのお話は彼にとっての「やらなきゃいけないこと」が「彼女」によって固定されたということ。ハッピーエンドだったんですね。モラトリアムじゃない。言ってること違うじゃん。
彼にとっては名誉も金もいらなくて、ロックもしたいけど、彼女と一緒にいられることが幸福。
まぁ、それはそれで良いと思います。彼にとってはソレが幸せで、ソレを維持することが最重要。私はそう感じたまでで、違う解釈ももちろん有ると思います。
意外と、最初に観たときと違う感触があります。
ラストシーンのキメ台詞が安っぽい。けど、そういうことなんだよなぁ。合ってるだけにやっかいな台詞です。


ここ1ヶ月くらいでいろいろな人に会っているのですが、その中で気付いた凄く当然なことが「やらなきゃいけないこと」が見つからないというのは言い訳なんだなということ。「やらなきゃいけないこと」と「やりたいこと」は別。
「やりたいこと」の為に「やらなきゃいけないこと」がある。「今やってること」が「やらなきゃいけないこと」というのが正常。
コレ、よく勘違いしている人がいるんですが「監督になりたい」のと「監督したい」というのでは全く違うモチベーションの上に成り立っているのです。「オレ、~になりたいんだけど、どうして良いか分からねぇんだよ」とか言ってる人は、多分義務教育中なだけですね。
「やりたいこと」を「なりたい職業」だと思っている人が山ほどいて、別にソレを否定したくはないけれども、否定したくもなるわ。いい加減ぬくぬくしてるのはやめろよ。


まぁ、私もいい歳なので、誰もが夢を持って、それに向かって生きていく世界が正常だとは思いません。
だから「やらなきゃいけないこと」は「やるだけ」だと思います。



相変わらず、悶々とした良い気分にさせられる映画です。