昨日、海の日と山の日に触れた関係で、「海」「山」と合言葉のようだと書きましたが、
「山」とくれば普通は「川」ですね。それで、今日は山の日の前日でもあるし、山と海の間の川について書いてみようと思います。
私は、一時海ではなく川に泳ぎに行ったことがあります。川は流れが早いので、泳ぎは達者といっても浮き輪持参でした。
もう私はかなり成長した頃で、趣味で写真を始めていました。川の写真でも撮ったらという事で、盆過ぎの海より川での水浴びが良いと父が家族を連れて行ってくれました。
私は泳ぐというより撮影の方に夢中になってしまい、もっぱら妹を被写体にして河川の風景を撮っていました。一息つくと、川の生物に目が行きます。さすがに沢蟹などはいませんでしたが、何か泳いでいる魚影や、小さな小魚が石に張り付くようにして登り、泳いだりしているのが目につきました。
魚が水の中から出てきて石に張り付くように登る。ちょっと自分の目が信じられませんでした。そんな魚がいるかしら?
跳ねた勢いで水面から飛び出し、空中に姿をさらす魚はまま見かけるのですが、明らかに岩に上るような動きで身をよじらせて川から這い上がり、またするんと川面に落ちて消えていく、しかも小さな小魚です。水の外で息が続くような強い魚にも見えません。
私は不思議でしげしげと観察していました。
ぬるぬるしたもので体が包まれて、それが水のあんを纏っているようにも見えました。
父も私の見ている物に気づいて、おゃという感じでした。
「ゴリじゃないか」
思わずつぶやいたという感じでした。それで父の知っている魚なのか尋ねると、近県の川にいるがこの川で見たことがない、こんな物がいるとは、でもゴリじゃないかな、違うかもしれないが。など父は言っていました。
食べられるような事もぽつりと言っていた父ですが、終始周りを気にして、口に手などやり言うまいとしている仕草がいつにない父のように感じられ不思議に思いました。
多分、ゴリという魚と違う物だと、話を聞いていた人が食べ中毒でも起こしては大変と思ったのでしょう。父はぱったりと口をつぐんでしまいました。
周囲に人がいなくなると、でも、と不思議そうに首をかしげていました。この川にはいないはずだがと父は言うのです。
近県にいるのでしょう、誰かが運んで放したのかな?川の上流が近県の川とつながっている湖なのかも、河口に近いから海から渡ってきたのかしら?
面白そうに私が父の話をちゃかしていると、それでも、この川にいるのは変だと父。こんな物この川で見たことが無いと言うのです。
「海よ海!、海を渡ってきたのよ、近海を浜沿いに渡ってきたんだわ。」
と、私は父をちゃかして一番可能性の無いと思われる説を述べました。
ふん!、と父は目で笑って、あんぐりと空けた口を閉じて黙ってしまい、それっきりこの話の相手になってくれませんでした。
「女子と小人は養い難し」よく父が口にしていた言葉です。
私の川の思い出です。