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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

情報公開審査会 平成15年度(行情)答申第340号 在瀋陽総領事館における館員の氏名と…

2003年10月09日 | 個人に関する情報
諮問庁 : 外務大臣
諮問日 : 平成15年 7月25日 (平成15年(行情)諮問第567号)
答申日 : 平成15年10月 9日 (平成15年度(行情)答申第340号)
事件名 : 在瀋陽総領事館における館員の氏名と役職名の分かる文書の一部開示決定に関する件

答 申 書


第1  審査会の結論
 平成14年5月9日現在の在瀋陽総領事館館員リスト(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,担当分野が領事・査証担当である副領事の氏名は開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
 1  異議申立ての趣旨
 本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく行政文書の開示請求に対し,平成14年6月12日付け情報公開第01967号により外務大臣が行った一部開示決定について,これを取り消し,本件対象文書の開示を求めるというものである。

 2  異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての主たる理由は,異議申立書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
 総領事・領事の氏名が特定の個人を識別することができる個人情報でなく,副領事の氏名が特定の個人を識別することができる個人情報であるという部分開示の理由は理解しがたい。

第3  諮問庁の説明の要旨
 1  本件対象文書について
 本件対象文書として特定した文書は,平成14年5月9日現在の在瀋陽総領事館館員のリストであり,これらのうち,個人に関する情報であって特定の個人を識別することができる部分を除いて部分開示する決定を行った。
 ただし,財務省印刷局編の職員録において,行政職俸給表(一)における職務の級が6級以上に相当する者の氏名が掲載されていることから,これらの者の氏名については開示した。

 2  異議申立人の主張について
 氏名の部分は,すべて個人に関する情報であって特定の個人を識別することができる情報であることは明らかであり,これらのうち開示した部分は,法5条1号ただし書イに規定する慣行として公にされているものに限られている。したがって異議申立人の主張は,同号の解釈を誤ったものであって,理由がない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成15年7月25日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年9月30日  本件対象文書の見分及び審議
④  同年10月7日  審議

第5  審査会の判断の理由
 1  本件対象文書について
 本件対象文書は,平成14年5月9日現在の在瀋陽総領事館館員のリストであり,同総領事館の職員の職名,氏名,担当分野等が記載されている。
 なお,平成14年5月8日には,在瀋陽総領事館事件が発生した。
 諮問庁は,本件対象文書のうち,全員の職名及び担当分野等と,6人の職員の氏名は開示としているが,残り4人の職員の氏名については,法5条1号に該当することを理由に不開示としているので,以下不開示情報該当性について検討する。

 2  不開示情報該当性について
 本件対象文書には,在瀋陽日本総領事館の職員の職名,氏名及び担当分野等が記載されているが,これらはそれぞれ個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであると認められる。
 諮問庁は,外務省の職員の氏名について,一般に入手可能な財務省印刷局編の職員録には,行政職俸給表(一)における職務の級が6級以上に相当する者の氏名を掲載しているところ,6人の職員については,同職員録に氏名が掲載されているため,法5条1号ただし書イに規定する慣行として公にされているものとして,これらの氏名を開示することとしたが,残りの4人の職員の氏名については,同職員録に氏名が掲載されておらず,慣行として公にされているものではないことから,不開示としている。
 本件対象文書を見分した上で調査したところ,氏名が不開示とされている4人の職員は,いずれも当時,職務の級が6級以上であるとは認められず,また,同職員録にその氏名が掲載されていないと認められるので,これら4人の職員の氏名は,一般に,慣行として公にされ又は公にすることが予定されているものとは認められない。
 しかしながら,在瀋陽日本総領事館の職員のうち,本件対象文書において担当分野が領事・査証と記載されている副領事(以下「査証担当副領事」という。)については,平成14年5月14日に行われた中華人民共和国(以下「中国」という。)外交部報道官定例記者会見において,在瀋陽総領事館事件に際し査証担当副領事が職務中に行った行為につき,その氏を明らかにして言及されたという事実が認められ,外務省においても,本件一部開示決定以前である5月17日付けで,当該記者会見の内容等を査証担当副領事の氏名を明らかにしたままで,同省のホームページに掲載していることが認められる。また,同時期に査証担当副領事の氏名が新聞記事等で報道されている。
 さらに,本件一部開示決定をした後ではあるが,外務省では,平成14年7月4日付け外務大臣記者会見において「在瀋陽総領事館事件に関する処分」と題する資料を配布し,そこでは,外務省内規による処分者として,査証担当副領事の氏名が,在瀋陽日本総領事館の職員であることを明らかにした上で公表され,その旨を外務省ホームページで公表している事実も認められた。そして,上記の各ホームページの掲載は,現在でも行われている。
 以上のような査証担当副領事の氏名の公表状況を踏まえれば,査証担当副領事の氏名は,法5条1号ただし書イの慣行として公にされている情報に該当するものと認められる。

 3  本件一部開示決定の妥当性
 以上のことから,本件対象文書につき,法5条1号に該当することを理由にその一部を不開示とした決定について,査証担当副領事の氏名は,同号ただし書イに該当し,開示すべきであり,その余については,同号に該当し不開示が妥当であると認めた。

第6  答申に関与した委員
 藤井龍子,秋山幹男,松井茂記


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