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千葉県情報公開審査会 答申第114号 『千葉県立図書館基本構想』及び『新県立中央図書館(仮称)…

2003年01月16日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
答申第114号
平成15年1月16日

千葉県教育委員会
委員長 吉 岡 敏 夫 様

千葉県情報公開審査会     
委員長  古 幡  浩

異議申立てに対する決定について(答申)

平成13年12月18日付け教社第411号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

平成13年11月6日付けで提起された、平成13年10月15日付け教社第321号で行った行政文書不開示決定に係る異議申立てに対する決定について

諮問第174号
答申第114号


1 審査会の結論
千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)の決定は妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1) 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、実施機関が平成13年10月15日付け教社第321号で行った「『千葉県立図書館基本構想』及び『新県立中央図書館(仮称)基本計画』の発注仕様書及び業務委託契約書(含伺い関係書類)」の行政文書不開示決定の取消しを求めるというものである。

(2) 異議申立ての理由
異議申立ての理由を要約すると、次のとおりである。

ア 八千代市内に建設予定の新県立中央図書館(仮称)の基本計画の発注仕様書及び契約書(含各伺い関係資料)を現在保有していないとして、不存在のため不開示決定の処分をされたことはとても承服できない。

イ 本件に関し、業務委託し策定した成果品があるとはいえ、当該事業は未着工であり、決して本件事業の全てが完遂したわけではない。本来、本件のような多額の費用を要する事業案件の基本計画の関係資料、特に発注仕様書及び契約書等の契約に関する基本的な資料は永年保管・保存されるべきであり、少なくとも今回のように当該事業案件が未着工段階のものであれば、なおさら永年保存されてしかるべきである。

ウ 今後、当該事業遂行の過程で契約段階に遡り、調査、確認する必要が生じたときなどのことを考慮すれば、是非、あらゆる方法を用い、再作成等しても当該資料の開示を請求する。

3 実施機関の説明要旨
実施機関の説明は、おおむね次のとおりである。

(1) 「千葉県立図書館基本構想」及び「新県立中央図書館(仮称)基本計画」について

ア 「千葉県立図書館基本構想」(以下「基本構想」という。)とは、新県立中央図書館(仮称)の整備、県立地域図書館の整備等について、平成3年度に設置した「県立図書館基本構想検討委員会」で検討した結果を実施機関で取りまとめて、平成6年3月に策定したものである。

イ 「新県立中央図書館(仮称)基本計画」(以下「基本計画」という。)とは、基本構想に基づき、新県立中央図書館(仮称)の整備を進めるため、その機能、サービス、施設内容等について、平成7年度に設置した「新県立中央図書館(仮称)基本計画検討委員会」において検討を重ね、平成8年3月に実施機関で策定したものである。
基本計画は、A4判139ページの冊子として作成されているが、そのうちの建設計画に当たる部分(88ページ分)については、株式会社和設計事務所に作成を委託し、基本計画全体の印刷及び製本も含めて同社と委託契約を締結したものである。

(2) 不開示の理由について
ア 基本構想の発注仕様書、業務委託契約書及び伺い関係書類
基本構想の作成は、実施機関の内部で行っており、外部への発注及び業務委託は行っておらず、発注仕様書及び業務委託契約書とこれに係る伺い関係書類(以下「本件文書1」という。)は作成しなかった。
よって、本件文書1を保有していない。

イ 基本計画の発注仕様書、業務委託契約書及び伺い関係書類
(ア) 基本計画に係る委託契約(以下「本件委託契約」という。)は、千葉県財務規則第96条の規定により契約書の作成を要する契約であるため、平成7年度に業務委託契約書及び発注仕様書とこれに係る伺い関係書類(以下「本件文書2」という。)を作成し、本件委託契約を締結した。
本件委託契約に係る委託料の支払いの処理は、平成7年度中に完了した。

(イ) 完結した文書の保存期間については、本件文書2の作成当時の千葉県教育庁等文書規程(以下「文書規程」という。)第41条の2の規定により定めるものとされており、本件文書2については保存期間を5年と定めた。

(ウ) 本件文書2の保存期間の起算日については、文書規程第48条により平成8年4月1日であり、平成13年3月31日をもって保存期間を満了した。このため、実施機関は本件文書2を平成13年4月中に廃棄した。

よって、本件文書2を保有していない。

4 審査会の判断
当審査会は、異議申立人の主張及び実施機関の説明をもとに審査した結果、以下のように判断する。 

(1) 基本構想及び基本計画について
基本構想については、その序文の記載から、実施機関が、「県立図書館基本構想検討委員会」を設置して、図書館ネットワークや県立図書館のサービス体制の在り方及び基本機能等について検討したこと、並びに基本構想の策定時期が平成6年3月であったことが認められる。
また、基本計画についても、その序文の記載から、実施機関が、基本構想に基づいて基本計画を作成したこと、その際には「新県立中央図書館(仮称)基本計画検討委員会」を設置して検討を行ったこと及び基本計画のうちの建設計画に当たる部分の作成については委託したこと、並びに基本計画の策定時期が平成8年3月であったことが認められる。

(2) 本件文書の不存在について

ア 本件文書1について
基本構想の作成は実施機関の内部で行っており、外部への発注及び業務委託は行っていないため、本件文書1を作成しなかったとの実施機関の説明に不合理な点はなく、開示請求の対象となる文書は、そもそも存在しなかったものと認められる。

イ 本件文書2について
(ア) 本件文書2については、前述のとおり基本計画のうちの建設計画に当たる部分の作成の委託が行われたこと及びその策定時期が平成8年3月であったことから、実施機関は、千葉県財務規則第63条、64条及び96条の規定により、委託契約書、発注仕様書及び伺い関係書類を少なくとも平成7年度末までに作成したものと認められる。
また、当該委託に関する対価の支出についても、特に遅延したという事情も認められないことから、平成7年度の出納整理期間が満了するまでには支出事務が完了したものと認められる。

(イ) 実施機関は、本件文書2の保存期間の起算日を平成8年4月1日としたと説明するが、この点について、実施機関は文書規程第48条に従って保存期間の起算日を定めたものと認められる。
また、実施機関は本件文書2の保存期間を5年としたと説明するが、実施機関が本件文書2を文書規程第41条の2及び同別表第四に定められていた保存期間5年の「出納証拠書類」に該当するとした判断について、不合理な点は認められない。

(ウ) 実施機関は、本件文書2について、平成13年3月31日をもって保存期間を満了したため、平成13年4月に廃棄したと説明するが、この点について、実施機関において現存する文書の保存状況から推測すると、本件文書2は平成13年4月に廃棄されたものと認められる。

ウ したがって、本件文書1は、当初から作成されなかったため不存在であり、本件文書2は、異議申立人の開示請求時において、廃棄済みのため不存在であったものと認められる。

エ 基本計画の契約関係等の文書の保存について
前述のように、実施機関が本件文書2について保存期間を5年とし、かつ、保存期間満了後に廃棄したことは、文書規程の定めに従った措置と認められる。
しかし、千葉県情報公開条例(平成12年千葉県条例第65号)第1条に規定する県民に対する県の説明責務及び第29条の趣旨に鑑みれば、長期計画などの県の重要な施策に関する基本計画の契約関係等の文書については、電子化による物理的な文書の管理技術の進展や、文書保存にかかる事務の費用対効果などの状況の変動を見極めつつ、文書保存の在り方を研究する必要性も認められるところである。

5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙
審査会の処理経過
年  月  日処  理  内  容
13.12.18諮問書の受理
14. 2. 7実施機関の理由説明書の受理
14.12. 3審議
実施機関からの不開示理由の聴取
14.12.18審議


(参考)
千葉県情報公開審査会第2部会委員
氏   名職 業 等備  考
岩 間 昭 道千葉大学教授
佐 野 善 房弁護士
福 武 公 子弁護士
古 幡   浩城西国際大学講師部会長

(五十音順:平成14年12月18日現在)


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