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神戸市情報公開審査会 答申第129号 有料老人ホーム建築計画について緑化計画が分かる文書

2009年07月03日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
答 申

1 審査会の結論
 「既存樹木の維持等 緑化計画が分かる文書一式」の請求について、実施機関の原処分時に請求の趣旨に該当する公文書を保有していないとして非公開とした決定は、妥当である。

2 異議申立ての趣旨
(1)異議申立人(以下「申立人」という。)は、神戸市情報公開条例に基づいて、以下の公開請求を行った。
 特定された「有料老人ホーム建築計画について ・既存樹木の維持等 緑化計画が分かる文書一式」

(2)市長(以下「実施機関」という。)は、本件請求に対して、公文書を保有していないことによる非公開決定を行った。

(3)これに対し、申立人は、本件決定を取り消し、不存在とされた公文書の公開を求める異議申立て(以下「本件申立て」という。)を行った。

3 申立人の主張
 申立人の主張を、平成20年3月16日付の異議申立書、平成20年9月28日付の意見書及び平成21年5月12日の意見陳述から要約すれば、概ね以下のとおりである。

 本件処分の取消しを求める。
 本件有料老人ホームの建築敷地には豊かな竹林があり、建築物の着工までに竹林の維持等について神戸市がどのように指導したかを知りたいと思い、本件文書の公開を請求した。神戸市が本件有料老人ホームの緑化計画が分かる文書を保有していないことに、また、緑化計画が分かる文書を取得しようとしないことに、疑問を感じている。
 兵庫県環境の保全と創造に関する条例第118条の5の規定により、本件有料老人ホームの建築主には建築物環境性能評価を行い、工事に着手する日の21日前までに、緑地計画図等の図書を添えて、神戸市に届出することが義務づけられている。神戸市が本件文書を保有していないということ自体が、環境保全条例に違反する事実があったことを意味するし、神戸市が届出について指導を行わないことは、条例違反を見逃すことになってしまう。
 届出をしない建築主に対する環境保全条例第118条の10の規定による勧告は、知事の権限に属する事務に係る事務処理の特例に関する条例の規定により神戸市に権限が移譲されている。この点について、貴審査会事務局経由で神戸市に問い合わせしたところ、事務処理要領により「必要な措置を講ずべきことを勧告する場合は、当面の間は県において実施するものとする。」との回答があった。しかし、事務処理要領で兵庫県が勧告を実施するとされていても、兵庫県議会が制定した条例では神戸市に権限委譲すると規定しており、権限は神戸市にあるはずである。この点について、兵庫県県土整備部住宅建築局建築指導課によると、「建築主に対する指導を行うのは神戸市である。本件有料老人ホームの建築物環境性能評価書の届出について神戸市に指導を行うように電話にて依頼している。」とのことである。
 神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例の規定により、建築確認申請よりも前の時点で、神戸市は本件有料老人ホームの建築計画について届出を受けているはずである。本来であれば、神戸市はその時点で、建築物環境性能評価や緑化計画に関して指導を行うべきである。
 以上に述べたように、本件有料老人ホームの建築主に対して、神戸市には緑化計画に関して指導を行う義務がある。神戸市がどのように指導を行ったのか、指導を行っているにもかかわらず緑化計画に関する文書を保有していない状況なのか、貴審査会に調査いただきたい。
 神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例の規定や、福祉のまちづくり条例の規定により、本件有料老人ホームの設計図が提出されているはずで、その中に、緑化計画に関するものが含まれていないか、貴審査会に調査いただきたい。また、老人保健法の規定による有料老人ホームの届出も、知事の権限に属する事務に係る事務処理の特例に関する条例の規定により、神戸市に権限が移譲されている。本件有料老人ホームについて、老人保健法の規定や、神戸市有料老人ホーム設置指導要綱の規定(有料老人ホーム設置計画事前申出、事前協議など)により神戸市に提出された文書に、設計図が添付されているはずである。その中に、緑化計画に関するものが含まれていないか、貴審査会に調査いただきたい。

4 実施機関の主張
 実施機関の主張を、平成20年8月14日付の非公開理由説明書、平成21年4月14日における事情聴取から要約すれば、概ね以下のとおりである。

 開発許可手続きによる緑化計画の提出については、開発許可が不要であるため、申請者は緑化計画書の提出の義務はなく、該当する文書は不存在である。
 また、兵庫県環境の保全と創造に関する条例第118条の5の規定による建築物環境性能評価の緑地計画図等の図書については、該当する文書は届出されていない。同条118条の10の規定により、知事は届出をしない者に対し、必要な措置を講ずべきことを勧告することができるとしている。なお、市は兵庫県に対し、当該届出がないことを連絡している。
 その後、事業者側に届出を要請したところ、平成20年9月30日に届出されたため、本件申立ての対象となる本件の緑地計画図について、公文書として保有している状況である。今回の件を機に、今後建築物環境性能評価書の届出については、建築確認申請前の届出に際しての通知後も、未届であるものについては、建築確認時点でも届出の要請をしていく所存である。

5 審査会の判断
(1)本件申立てについて
 本件の争点は、申立人が公開請求した「既存樹木の維持等 緑化計画が分かる文書一式」(以下「本件請求資料」という。)の存否である。以下検討する。

(2)本件請求資料の存否について
ア 兵庫県環境の保全と創造に関する条例に基づく提出書類について
 実施機関によると、神戸市では建物を建築しようとする際の建築確認申請が行われる以前に、神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例に基づいて、建築にあたっての事前届出書の提出を求めている。本件に係る事業者から事前届出書の提出を受けた際に、兵庫県環境の保全と創造に関する条例(以下「県条例」という。)に基づく建築物環境性能評価書(以下「性能評価書」という。)の届出が必要である旨を平成19年7月に通知した。ここにいう性能評価書とは、県条例の規定によって、特定建築物の新築・改築・増築等については当該建築物に係る環境への負荷の低減その他の措置を講じるよう努めなければならないとされており、床面積2,000㎡以上の新築等をしようとする者は、性能評価書を作成し知事に届出(提出先は、特定建築物の所管する特定行政庁である神戸市)をしなければならない。その後、平成19年8月に確認申請に基づく確認済証が神戸市防災安全公社より交付されたものの、平成20年3月の原処分時点においても性能評価書の届出はされていなかった。性能評価書が未届又は虚偽の届出をしたときは、県条例第118条の10に基づいて当該特定建築主に対して必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。この取り扱いについて、当面の間は県において実施するものとするとされている。本件の場合、平成20年5月に実施機関から県に対して未届の旨を連絡し県の対応を求めた。ところが、同年9月に兵庫県から実施機関に対して性能評価書の届出を督促するよう依頼があり、実施機関から事業者へ性能評価書の届出を督促し、同年9月30日に性能評価書が提出され、緑化計画図を取得した。以上のように、原処分時点では不存在であった本件請求資料は、その後、性能評価書に添付された緑化計画図として実施機関が取得するに至ったとしている。なお、当該公文書は公開可能な文書であるとしている。

イ 神戸市開発指導要綱に基づく提出書類について
 実施機関によると、神戸市開発指導要綱に基づく指導において、独立住宅を除く500㎡以上の開発行為あるいは40戸以上の集合住宅の新改築の場合に、樹木の植栽
による敷地内の緑化を義務づけており、協議にあたっては基準に従って植栽計画書の提出を求めている。しかし、本件事案については開発行為に該当しないことから、神戸市開発指導要綱に基づく協議が不要であるため、植栽計画書の提出は必要ではないとしている。

ウ その他の法令等に基づく提出書類について
 上記のほか、審査会は、本件処分までに実施機関に対してなされた建設に関するその他の申請手続きについて調査したところ、神戸市有料老人ホーム設置指導要綱に基づく有料老人ホーム設置計画事前届出書、有料老人ホーム設置計画事前協議書、福祉のまちづくり条例に基づく特定施設建築等届、老人福祉法による有料老人ホーム設置届の保有が認められたが、いずれの申請書類においても本件請求資料は添付されていなかった。

(3)事情聴取等の結果について
 上記のような状況を踏まえると、審査会としては、実施機関が原処分時点で対象となる文書を保有していなかったと判断したことは是認せざるを得ないと考えられる。
 しかし、原処分時点では基本的には事業者から性能評価書が届出されてしかるべき時期であったこと、さらに、結果的に原処分から6ヶ月経過後に、実施機関は事業者に督促し、性能評価書の添付資料としての緑化計画図を取得するに至ったことからすれば、実施機関の主張のとおり当該公文書に非公開とすべき情報が含まれていないのであれば、実施機関は当該公文書を取得した段階において、申立人に情報提供すべきであったと考えられる。今後、実施機関においては市民への説明責務を果たすため、適時適切な運用を図られたい。

(4)結論
 以上のことから、冒頭の審査会の結論のとおり判断する。

年 月 日審査会経     過
平成20年4月16日*諮問書を受理
平成20年8月14日*実施機関から非公開理由説明書を受理
平成20年9月29日*申立人から意見書を受理
平成21年1月20日*実施機関から報告書を受理
平成21年1月22日第225回審査会*審議
平成21年2月12日第226回審査会*審議
平成21年3月17日第227回審査会*審議
平成21年4月14日第228回審査会*実施機関の職員から非公開理由等を聴取
*審議
平成21年5月12日第229回審査会*申立人から意見を聴取
*審議
平成21年6月16日第230回審査会*審議

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