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情報公開・個人情報保護審査会 平成19年度(行情)答申第257号 日露関係(プーチン大統領と…

2007年10月05日 | 国/公共の安全等に関する情報
諮問庁 : 外務大臣
諮問日 : 平成19年 1月31日 (平成19年(行情)諮問第31号)
答申日 : 平成19年10月 5日 (平成19年度(行情)答申第257号)
事件名 : 「日露関係(プーチン大統領とヴァルダイ会議参加者との会合)」の不開示決定に関する件

答 申 書


第1  審査会の結論
 「日露関係(プーチン大統領とヴァルダイ会議参加者との会合)」(以下「本件対象文書」という。)につき,そのすべてを不開示とした決定については,別表に掲げる部分を除いたその余の部分を開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨

1  異議申立ての趣旨
 異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成18年12月28日付け情報公開第03612号により外務大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原決定」という。)について,その取消しを求めるものである。

2  異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。

(1)  平成18年11月2日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質165第114号)において秘密指定はされていないと明記されている文書を,外務省が不開示とすることに納得できない。

(2)  本件対象文書には「取扱注意」の指定がされているが,秘密指定はされていない。公開することで不利益が生ずる文書であるならば,予め秘密指定をかけるべきであり,そのような文書に秘密指定をかけていないこと自体,外務省の行政手続に瑕疵がある。また,「取扱注意」の文書に暗号化方式が推測され得る電信の総番号,パターンコード,発・受信時間が含まれていることは通常考えられないので,本件対象文書の開示を拒否する理由にはならない。

(3)  諮問庁は,理由説明書において「公電を開示することは,当省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を及ぼすおそれがある」と説明するが,過去に外務省が秘密指定のかけられた文書を開示し,情報提供者に著しい被害を与え,情報提供者との信頼関係を損ねたことがあると承知する。秘密指定の文書が流出したことに対して何の調査も処分もせず,秘密指定のない文書の開示を頑なに拒む外務省の姿勢には論理的な整合性がない。

(4)  平成18年9月9日に行われたヴァルダイ会議に関する報告が特定大学特定教授から外務省になされ,それを受けて坂場三男外務報道官は記者会見を行っている。その後,北方領土問題に関しては,いわゆる「三島返還論」や「面積分割論」など種々の考えが国会の場などで提起され,国民の関心をひいている。北方領土問題を解決する上で国内世論の喚起は必要不可欠であり,北方領土問題に対する国民の知る権利を確保する観点からも,ヴァルダイ会議に関する当該教授から外務省への報告内容を国民に対して明らかにすべきである。

(5)  外務本省への公電の発・受信時間が記載されている文書は他にあると思料する。例えば,平成18年11月2日に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質165第114号)では,外務本省で公電を受信した日にち,時間,分が明記されている。この事実は,外務省が本件対象文書の開示を拒否する理由と矛盾する。

(6)  諮問庁は,公電の転電先が記載されており,公開することを前提とせずに情報提供者から入手した情報の配布先を個別具体的に公表することは,本件対象文書が我が国の領土問題に係る情報を含むものであるため,今後の外交交渉上不利益を被るおそれがある旨説明するが,公電の転電先を公開することで,具体的にどのような不利益が生じるおそれがあるのか明確ではない。

(7)  外務省が,①電信の総番号,パターンコード,発・受信時間等,外務省が使用している電信システム内部の処理・管理に係る情報を公にすることで,現在外務省が使用している暗号化方式が推測される,②情報提供者が特定法人に対し,個人的な関係においてブリーフを行ったものであるため,これを公にすることにより,情報提供者の権利利益を害する,③公電の転電先が記載されており,公開することを前提とせずに情報提供者から入手した情報の配布先を個別具体的に公表することは,本件対象文書が我が国の領土問題に係る情報を含むものであるため,今後の外交交渉上不利益を被るおそれがあると主張するのであれば,それぞれ当該部分を黒塗りにする等の方法により秘匿した上で本件対象文書を部分開示することは可能である。

第3  諮問庁の説明の要旨

1  本件対象文書について
 本件対象文書は,「日露関係(プーチン大統領とヴァルダイ会議参加者との会合)」と題する在ロシア連邦日本大使発外務大臣あての公電である。同文書は,平成18年9月9日にプーチン・ロシア大統領別邸において行われた,同大統領と「ヴァルダイ会議」出席者との会合(以下「本件会合」という。)に出席した情報提供者が,同月10日に在ロシア連邦日本大使館員に対し,本件会合における北方領土等に関するプーチン大統領の発言等について口頭で行った説明の内容を外務本省に報告したものである。公電には,秘密指定はされておらず,取扱注意の指定がされている。

2  不開示情報該当性について

(1)  本件対象文書には,本件会合における北方領土問題等に関するプーチン大統領の発言内容,情報提供者の所感等が記載されている。情報提供者は,これらの情報と同様の内容を我が国報道関係者に対しても説明しており,同内容が報道機関によって報道されることを前提としているものであるため,本件対象文書である公電には秘密指定がされていない。ただし,不開示情報を含むこともあり,その取扱いを慎重にすべきであると判断されたため,取扱注意の指定がされたものである。

(2)  本件対象文書に記載されたこれらの情報は,情報提供者から外務省が入手した情報であり,外務省がこれらの発言自体を開示することまでは前提とされていないから,本件対象文書を開示することは,外務省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の協力を得ることが困難になり,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条6号に基づき不開示とした。

(3)  また,本件対象文書にある説明は,情報提供者が作成した個人的なメモに基づくものであり,さらに情報提供者の個人的な印象も記載されているため,これらを公にすることにより,情報提供者の権利利益を侵害するおそれがあり,法5条1号に基づき不開示とした。

(4)  本件対象文書には,特定法人に係る記載が含まれているが,本件は情報提供者が当該法人に対し,個人的な関係においてブリーフを行ったものであるため,これを公にすることにより,情報提供者の権利利益を害するおそれがあり,また,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため,法5条1号及び2号に基づき,不開示とすることが相当である。

(5)  公電である本件対象文書には,外務省が使用している電信システム内部の処理・管理に係る情報である電信の総番号,パターンコード,発・受信時間が含まれるが,これらを公にした場合,現在外務省が使用する暗号化方式が推測されるおそれがあり,ひいては,我が国の高度の政治的・政策的判断,対外関係上の専門的・技術的判断に関する内容等が明らかになるような事態が生じることになり,電信システムの暗号化方式の秘密保全に支障が生じるだけでなく,国の安全が害されるおそれ,他国との交渉上不利益を被るおそれ及び外交事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条3号及び6号に基づき,不開示とすることが妥当である。

(6)  本件対象文書には,公電の転電先が記載されているところ,公開することを前提とせずに情報提供者から入手した情報の配布先を個別具体的に公表することは,本件対象文書が我が国の領土問題に係る情報を含むものであることから,今後の外交交渉上不利益を被るおそれがあるので,法5条3号に基づき,不開示とすることが妥当である。

3  異議申立人の主張について
 異議申立人は,「平成18年11月2日に閣議決定がなされた政府答弁書(内閣衆質165第114号)において秘密指定はないと明記されている文書を,外務省が不開示とすることに納得できない。」として,原決定の取消しを求めている。
 しかしながら,処分庁としては,本件対象文書の秘密指定の有無にかかわらず,その不開示事由の有無を十分精査し,開示請求に係る決定を行っており,異議申立人の主張には理由がない。

4  結論
 上記の論拠に基づき,原決定を維持することが適当である。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成19年1月31日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年3月7日  異議申立人から意見書を収受
④  同年5月9日  本件対象文書の見分及び審議
⑤  同年7月20日  諮問庁の職員(外務省欧州局ロシア課長ほか)からの口頭説明の聴取
⑥  同年8月29日  審議
⑦  同年10月3日  審議

第5  審査会の判断の理由

1  本件対象文書について
 本件対象文書は,当審査会において見分したところ,平成18年9月9日にプーチン・ロシア大統領別邸において行われた同大統領とヴァルダイ会議参加者との会合に出席した情報提供者が,同月10日に在ロシア連邦日本大使館員に対し,本件会合における北方領土等に関するプーチン大統領の発言等について行った説明の内容が記載された「日露関係(プーチン大統領とヴァルダイ会議参加者との会合)」と題する在ロシア連邦日本大使発外務大臣あての電信形式の文書であり,そのすべてが不開示とされている。
 諮問庁は,本件対象文書は法5条1号,2号,3号及び6号に該当するとして,原決定は妥当である旨説明することから,以下において不開示情報該当性について検討する。

2  不開示情報該当性について

(1)  電信事務処理に係る部分
 当審査会において見分したところ,本件対象文書の1枚目ないし3枚目の枠外余白には,電信の総番号を含む英数字,保存期間,秘密標記,取扱上の注意,頁数等が,また,1枚目枠内上部には電信の総番号,発・受信年月日・時間,発・受信地,主管,発・受信人,件名,電信番号,秘密標記及びパターンコードがそれぞれ記載されており,これら電信事務処理に係る部分のすべてが不開示とされている。

ア  電信システム内部の処理・管理に係る部分
 電信事務処理に係る部分のうち,本件対象文書の1枚目ないし3枚目の枠外最上部に記載された電信総番号を含む英数字部分,1枚目の枠内上部に記載された電信の総番号,発・受信時間及びパターンコードは,電信処理システム内部の処理・管理に係る情報であり,諮問庁は,これらを公にした場合,現在外務省が使用する暗号化方式が推測されるおそれがあり,ひいては,我が国の高度の政治的・政策的判断,対外関係上の専門的・技術的判断に関する内容等が明らかになるような事態が生じることになり,電信システムの暗号化方式の秘密保全に支障が生じるだけでなく,国の安全が害されるおそれ,他国との交渉上不利益を被るおそれ及び外交事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条3号及び6号に基づき,不開示とすることが相当である旨説明する。
 電信システム内部の処理・管理に係る情報が公にされた場合,現在外務省が使用する暗号が解読されるおそれがあることは否定できず,我が国の公電の内容が解明されるような事態が生じた場合,我が国の安全が害され,対外交渉上不利益を被るおそれがあることは容易に推察できるところである。
 したがって,これら電信システム内部の処理・管理に係る情報を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められるので,以下に述べる電信の受信時間を除く当該部分は法5条3号に該当し,同条6号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
 しかしながら,電信の受信時間については,今回の場合,処分庁自ら,国会の質問主意書に対する政府答弁書(内閣衆質165第114号)において,本件の情報提供者である特定教授からの報告に係る公電は,平成18年9月10日特定時間に外務省において受信した旨述べていることから,本件受信時間を公にすることによって外務省が使用する暗号化方式が推測されるとは言い難く,それゆえ,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるとは認められず,また,外交事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとも認められない。
 したがって,電信の受信時間は,法5条3号及び6号のいずれにも該当しないことから,開示すべきである。

イ  上記ア以外の電信事務処理に係る部分
 電信事務処理に係る部分のうち,上記ア以外の部分には,当該電信の保存期間,秘密標記,頁数,発・受信年月日,発・受信地,主管,発・受信人,件名,電信番号等が記載されているにとどまり,これらを公にしても電信システムの暗号化方式の秘密保全に支障が生じ,国の安全が害されるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められず,また,外交事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 したがって,当該部分は,法5条3号及び6号のいずれにも該当しないことから,開示すべきである。

(2)  電信の本文
 当審査会において見分したところ,電信の本文には,冒頭に情報提供者より入手した情報を報告する旨等が記載されており(以下「本文冒頭部分」という。),これに続き,情報提供者から入手した情報の具体的な内容(以下「入手情報部分」という。)及び情報提供者の所感が記載され,末尾に電信の転電先が記載されていると認められ,そのすべてが不開示とされている。

ア  本文冒頭部分(1枚目1行目から7行目まで)
 本文冒頭部分のうち,別表において不開示が妥当であるとされた部分には,情報提供者がブリーフを行った特定法人に係る情報が記載されていると認められる。諮問庁は,当該法人に対する本件ブリーフは情報提供者がその個人的な関係において行ったものであり,これを公にすることにより,情報提供者の権利利益を害するおそれがあり,また,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため,法5条1号及び2号の不開示情報に該当する旨説明する。
 確かに,特定法人に係る情報が記載された部分を公にすれば,当該法人の情報収集に関する具体的な活動内容が明らかになることから,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるので,当該部分は法5条2号イに該当し,同条1号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
 また,本文冒頭部分のうち,別表において不開示が妥当であるとされた部分を除いたその余の部分には,①情報提供者の氏名・肩書,②情報提供者から在ロシア連邦日本大使館員等への説明の手法,③同大使館員の氏名・肩書等が記載されていると認められる。諮問庁は,当該部分を開示すれば,外務省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の協力を得ることが困難になり,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条6号の不開示情報に該当する旨説明する。
 しかしながら,①情報提供者の氏名・肩書については,「平成18年9月10日特定時間に外務本省において受信された特定大学特定教授からの報告に関する公電の写し」との本件開示請求文言に対し,処分庁が本件対象文書を特定しており,また,本件開示請求者が引用する政府答弁書(内閣衆質165第114号)の内容によれば,既に当該情報提供者が特定教授であることは明らかであり,②情報提供者から在ロシア連邦日本大使館員等への説明の手法については,本件対象文書における記載内容と諮問庁の政府答弁書(内閣衆質165第70号)及び理由説明書における記載内容が同旨であり,③同大使館員の氏名・肩書については,在ロシア連邦日本大使館のいかなる館員が情報提供者から説明を受けたかという情報であり,本件情報収集が上記①で明らかであるような公務員の職務遂行に係る情報である。
 このような事実によれば,上記①ないし③については,これらを公にしても,外務省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与えるとは言えず,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。したがって,法5条6号に該当しないことから,開示すべきである。
 なお,①情報提供者の氏名・肩書,及び③同大使館員の氏名・肩書について,諮問庁は法5条1号本文該当性を主張していないが,念のため検討すると,①情報提供者の氏名・肩書については,特定大学特定教授から説明を受けたことを上記①の政府答弁書で認めており,明らかになっていること,③同大使館員の氏名・肩書については,公務員の職務遂行に係る情報であることから,法5条1号ただし書きイ及びハに該当するので,同条1号本文の不開示情報に該当しないことが認められる。

イ  入手情報部分(1枚目8行目から3枚目3行目まで)
 当審査会において見分したところ,入手情報部分には,情報提供者が在ロシア連邦日本大使館員に対して行った北方領土等に関するプーチン大統領等の発言につき,発言者氏名・肩書ごとにその発言の具体的な内容が詳細に記載されていると認められる。諮問庁は,情報提供者が自ら作成した個人的なメモに基づいて行われた説明が記載された当該部分を開示すれば,外務省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の協力を得ることが困難になり,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ及び情報提供者の権利利益を害するおそれがあるため,法5条1号及び6号の不開示情報に該当する旨説明する。
 当該部分については,①諮問庁口頭説明において諮問庁に確認したところ,情報提供者が,在ロシア連邦日本大使館員への本件情報提供を自発的に行ったものであり,その際,本件対象文書が公表されることを前提としておらず,その後も,本件対象文書が公表されることを了解していないと認められること,②当時,我が国の新聞において,情報提供者の説明としてヴァルダイ会議参加者とプーチン・ロシア大統領との会合の内容を報道したものがあったが,これらはいずれもごく簡単な要旨を記載したものであって,本件対象文書の内容とは必ずしも同一であるとは認められないこと,③情報提供者から在ロシア連邦日本大使館員への説明内容は,口頭説明による情報提供の性格上,ロシア大統領ホームページにおいて公表された内容と同一であるとまでは認められないことにより,後述する発言者の氏名・肩書部分を除く本件入手情報部分を公にすれば,処分庁と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められることから,当該部分は法5条6号柱書きに該当し,同条1号について判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。
 もっとも,発言者の氏名・肩書部分は,特定教授が雑誌で本件会合における発言者の氏名・肩書を明らかにしており,また,ロシア大統領ホームページにおいても公表されていること,それゆえ,これを開示しても,情報提供者の権利利益を害するおそれや,処分庁と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められないことから,法5条1号及び6号のいずれにも該当せず,開示すべきである。

ウ  情報提供者の所感が記載された部分(3枚目4行目から6行目まで)
 当審査会において見分したところ,当該部分には,情報提供者が在ロシア連邦日本大使館員に述べた,プーチン・ロシア大統領とヴァルダイ会議出席者の会合に係る情報提供者本人の率直な印象が記載されている。
 諮問庁は,情報提供者の所感が記載された当該部分を開示すれば,外務省と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の協力を得ることが困難になり,事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ及び情報提供者の権利利益を害するおそれがあるため,法5条1号及び6号の不開示情報に該当する旨説明する。
 当該部分については,①諮問庁口頭説明において諮問庁に確認したところ,情報提供者が,在ロシア連邦日本大使館員への本件情報提供を自発的に行ったものであり,その際,本件対象文書が公表されることを前提としておらず,その後も,本件対象文書が公表されることを了解していないと認められること,②当時,我が国の新聞において,情報提供者の説明としてヴァルダイ会議参加者とプーチン・ロシア大統領との会合の内容を報道したものがあったが,これらはいずれもごく簡単な会合の要旨を記載していたものであって,本件対象文書に記載されているような情報提供者の所感は報道されていないと認められることから,情報提供者本人の個人的な率直な印象を公にすれば,処分庁と情報提供者との信頼関係に否定的な影響を与え,今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすと認められることから,当該部分は法5条6号柱書きに該当し,同条1号については判断するまでもなく,不開示とすることが妥当である。

エ  転電先(3枚目末尾2行)
 本件対象文書の3枚目末尾2行には,本件対象文書である電信の転電先が具体的に記載されており,諮問庁は,公開することを前提とせずに情報提供者から入手した情報の配布先を個別具体的に公表することは,本件対象文書が我が国の領土問題に係る情報を含むものであるため,今後の外交交渉上不利益を被るおそれがあり,法5条3号の不開示情報に該当する旨説明する。
 確かに,本件電信の具体的な転電先を公にすれば,我が国の領土問題を含む本件入手情報についてどの在外公館に転電し情報共有を図っているかが明らかとなり,今後の外交交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められることから,当該部分は法5条3号に該当し,不開示とすることが妥当である。

3  異議申立人のその他の主張について
 異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

4  本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条1号,2号,3号及び6号に該当するとして不開示とした決定については,別表に掲げる部分は,同条1号,2号イ,3号及び6号柱書きの不開示情報に該当するので不開示としたことは妥当であるが,その余の部分は,同条1号,2号,3号及び6号のいずれにも該当しないので,開示すべきであると判断した。

 (第1部会)

 委員 大喜多啓光,委員 村上裕章,委員 吉岡睦子


別表
(略)


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