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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

横須賀市情報公開審査会 横情審第11号 空母キティホークの後継艦問題についてご意見を聞く会の出席者…

2007年09月28日 | 審議・検討等に関する情報
(平成18 年度第1号事案)

横情審第11号

平成19年(2007年)9月28日
横須賀市長 蒲 谷 亮 一 様

横須賀市情報公開審査会
委員長 原 田 一 明

公文書の非公開公開決定に関する異議申立てについて(答申)

平成18年7月10日付横企基第15号で諮問された公文書非公開決定に関する異議申立てについて、次のとおり答申する。

1 審査会の結論
横須賀市長(以下「実施機関」という。)が空母キティホークの後継艦問題についてご意見を聞く会の出席者名簿を平成18年5月29日付横企基第6号により非公開とした決定について、同名簿に記載された者のうち、「空母キティホークの後継艦問題についてご意見を聞く会」(以下「意見を聞く会」という。)を欠席した者及び意見を聞く会に出席はしたが発言をしなかった者の氏名、所属又は職名を除き公開すべきである。

2 本件の異議申立ての対象とされた公文書
意見を聞く会の出席者名簿(以下「本件文書」という。)

3 異議申立ての趣旨
異議申立人(以下「申立人」という。)は、実施機関が情報公開条例(平成13年横須賀市条例第4号。以下「条例」という。)7条1号及び3号の規定に基づき非公開とした決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

4 異議申立ての経緯
(1) 平成18年5月15日、申立人は、条例10条1項の規定に基づき実施機関に対し、本件文書について公文書公開請求を行った。

(2) 同年5月29日、実施機関は、本件文書が条例7条1号及び3号に該当するとして非公開決定を行い、その理由を記して申立人あて通知した。その理由は次のとおりであった。

① 条例7条1号(個人に関する情報)該当
本件文書に記載された情報は、個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るものであり、当該情報を公開した場合、当該個人の権利利益を侵害するおそれがあるため。

② 条例7条3号(審議、検討又は協議に関する情報)該当
出席者は、氏名が公表されることはない旨の案内を受け会議に出席しており、これを公開した場合、市と出席者との信頼関係が損なわれ、ひいては発言者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがあるため。

(3) 平成18年6月20日、申立人は、上記決定に不服があるとして、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)6条に基づき実施機関へ異議申立書を提出した。

5 両者の主張
(1) 申立人の主張
申立人が、平成18年6月20日提出の「異議申立書」、同年9月14日提出の「諾否決定理由説明書に対する意見書」及び平成19年6月25日の当審査会に対する「口頭意見陳述」により主張した内容は、次のように要約することができる。

① 条例7条1号の該当性について
意見を聞く会の出席者は一般市民ではなく準公人又はオピニオンリーダー的な者が多いため、意見を聞く会を非公開会議とする必要はなかった。よって、条例7条1号に該当するとした判断は誤りである。また、実施機関は、本件文書について非公開決定としながらも、意見を聞く会の出席者には本件文書を配布して回収していない。このことは、実施機関が、本件文書が広く知れ渡ることを容認していたものであり、実際に本件文書の写しを入手することができている。これらは非公開会議としたことと整合しない対応である。

② 条例7条3号の該当性について
発言者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがあるとした理由は、市民に対する冒涜的な考え方である。市議会も公開されているが議員に対して干渉、圧力等が行われたとは聞いたことがない。また、実施機関は、出席者には氏名が公表されることはない旨の案内を受け会議に出席していることを非公開の理由にしているが、非公開を前提にしていたものを公開すれば、約束違反として信頼関係が損なわれるのは当然のことである。しかし、実施機関は、意見を聞く会に係る報道発表を行った際に、報道機関から非公開会議としたことに関する追求を受けた結果、報道機関の傍聴を認めている。

③ 新聞報道について
意見を聞く会が開催された翌日の新聞には、主な発言者の氏名、所属団体、発言要旨が掲載されている。

④ 意見を聞く会の性格について
意見を聞く会のような政策的な意見を問うような会議を非公開にした考え自体が問題である。意見を聞く会は、思想信条を問うという事柄ではなく、市長の政策判断に影響を与える意見を述べる会であり、出席者は各団体を代表して意見を述べている。また、市民は各団体を代表する者の発言内容を当然知りたいものであり、市長がその発言を受けてどのように結論に至ったかを知ることは、市民の知る権利である。

(2) 実施機関の説明
実施機関(所管課は企画調整部基地対策課)が、平成18年8月7日提出の「諾否決定理由説明書」、平成19年5月21日の当審査会に対する「口頭説明」において主張した内容は、次のように要約することができる。

① 条例7条1号の該当性について
本件文書に記載された氏名及び所属等は個人情報であり、また、出席者は氏名が公表されることはない旨の案内を受け意見を聞く会に出席している。そのため、本件文書を公開した場合、当該個人の権利利益を侵害するおそれがある。

② 条例7条3号の該当性について
出席者は氏名が公表されることはない旨の案内を受け会議に出席しており、これを公開した場合、市と出席者との信頼関係が損なわれ、ひいては、出席者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがある。

③ 報道機関の取材及び新聞報道について
意見を聞く会は非公開会議とする旨を出席者に案内していたが、報道機関から傍聴を求める意見が強く、また、特に秘密性の高い会議ではないと考え、出席者の個人情報を保護した上で、少しでも発言しやすい環境を確保するために、条件付きで報道機関に対してのみ傍聴を認めたものである。その際、報道機関に対しては、次のⅠからⅣまでを示した。

Ⅰ 会場入口で受け付けを済ませ、入場の際は腕章を付けること。
Ⅱ 撮影は冒頭5分間とし、テレビカメラは退場すること。
Ⅲ 開会中は報道関係者傍聴席から移動しないこと。
Ⅳ 会場内で発言しないこと。

また、意見を聞く会の当日に口頭により次のⅤからⅦまでを条件として追加し確認している。

Ⅴ 会議中は事務局側で席を用意するので、そこで取材すること。
Ⅵ 写真は頭どりのみとすること。また、写りたくない人への配慮をすること。
Ⅶ 発言内容を記事にすることはかまわないが、発言者名について記事にする際には、発言者本人への確認をすること。

出席者に対して、当初の案内と異なり報道機関の傍聴を条件付で認めたことについては、意見を聞く会の当日の開会前に知らせ、報道機関の傍聴に反対する場合はその旨を発言して欲しいと伝え、また、報道機関が写真撮影する際にも撮影されることを望まない出席者は席をはずしてもよい旨も伝えている。

一部新聞報道において氏名及び所属等が掲載されているが、報道機関は市が示した条件に従い、本人への確認を得たうえで掲載したものと考えられ、報道機関においても個人情報保護の観点から新聞への掲載を望まない出席者の情報については掲載しなかったものと考える。なお、出席者の氏名及び所属等について、市自ら公表した事実はない。

④ 意見を聞く会の性格について
意見を聞く会は、報道機関の傍聴を認めたものではあるが、あくまでも条件付きでありこれをもって会議が公開されたものとは考えていない。また、意見を聞く会は、何かを決定する会ではなく、あくまでも意見を聞く会である。実施機関としては、出席者は所属団体の立場からの意見ではなく、個人的な観点から意見を述べていると考えている。

なお、本件文書は、出席者及び報道機関に対してのみ配布しているが、本件文書には、欠席した者の氏名及び所属等も記載されている。また、当日実際に出席した者については確認しているが、出席者のみの名簿は作成していない。

6 審査会の判断
審査会は、条例に基づき異議申立ての対象となった本件文書について、申立人及び実施機関の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

(1)本件文書の内容について
本件文書は、席次表の形式で記載されており、その内容は、会議の表題、各出席者の所属団体を類型化して表示したもの、出席者の氏名、所属又は職名及び実施機関の役職名等が記載されているものである。
なお、本件文書は、意見を聞く会の当日に出席者及び報道機関に対して配布されており、会議終了時において回収はなされていない。

(2)意見を聞く会の性格について
実施機関の説明によれば、意見を聞く会の開催前後の状況は次のとおりである。
平成17 年(2005 年)10 月28 日に外務省から空母キティ・ホークの後継艦についてニミッツ級空母が平成20 年(2008 年)に横須賀に配備になるとの連絡があり、その後、市長が通常型空母の配備を要請していたにもかかわらず、外務省が突然の原子力空母配備を発表したため、市長は、米国大使及び外務大臣に通常型空母の継続配備を要請した。
平成17 年12 月に市長は訪米し、米国国防副長官代行兼海軍長官に面会し通常型空母の配備を要請し、平成18 年3月に外務省に対し原子力空母の安全性について要請したところ、同年4月に合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシートがその回答として外務省から送付された。同時期に横須賀経済界の関係者及び市議会議員の有志など約30 名からなるサンディエゴ視察団が原子力空母の安全性確認のため訪米している。
このような状況の中、同年5月15 日に本件の意見を聞く会が開催された。
その後、同年6月14 日の市議会全員協議会において、市長は「原子力空母の入港もやむを得ない。」と表明している。
以上のことをふまえると、意見を聞く会は、その当日の市長の発言等から判断するならば、市の重大な政策決定の参考に資するために、各方面の代表者の意見を聴取したものであり、単に意見を聞くための会議とすることはできず、その役割は極めて重要なものであったと考えられる。また、その出席者も、それぞれ高い識見を有し、各分野を代表する者であって、意見を聞く会は、これらの者によるそれにふさわしい発言が期待されていたものであることが認められる。

(3)条例7条1号の該当性について
条例7条1号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。」を非公開とする旨を規定しており、本号に該当すれば、ただし書きに規定する場合を除き非公開となる。
実施機関は、本件文書を公開した場合、当該個人の権利利益を侵害するおそれがあるとしているので、以下、この点について検討する。

① 個人識別性について
本件文書に記載されている出席者の氏名に加えて、所属又は職名についても、特定の個人が識別され得る情報ということができる。

② 条例7条1号ただし書きイの該当性について
条例7条1号に規定する個人が識別される情報であっても、広く一般に知られている情報については、慣行として公にされている情報として公開したとしても個人の権利利益を害するおそれはないということができる。
そこで、意見を聞く会の会議内容についていえば、これが開催された翌日に新聞報道がなされており、その掲載内容には若干の差異はあるものの意見を聞く会において発言した者の氏名及び所属又は職名(以下「氏名等」という。)並びに発言要旨が記載されている。そこで、本件会議の内容が新聞に報道されたことにより、条例7条1号ただし書きイにいう「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するかどうかを検討する。
まず、意見を聞く会における発言者の氏名等について、実施機関自らが公表した事実を認めることはできないが、報道機関に傍聴を認め、本件配布文書を回収しなかったことにより、意見を聞く会の翌日に、発言者の氏名等及び発言要旨が各新聞に掲載されることになったという事情が看取される。本審査会において、その新聞記事を見分したところ、本件意見を聞く会の記事を掲載した新聞社は6社で、掲載された発言者の人数は、それぞれ、4名、5名、6名、7名、9名、24名となっている。因みに、24名という数字は、本件意見を聞く会当日の発言者の全員である。
以上の事実関係を前提としつつ、本件意見を聞く会における氏名等については、次の諸点を考慮すべきでものと考える。

ア まず、条例27条には「本市において地方自治法第138条の4第3項の規定に基づき設置する審議会その他の附属機関及び実施機関が設置するこれに準ずる機関(以下「審議会等」という。)の会議は、原則として公開するものとする。」と規定され、審議会等の会議は、市の政策形成にかかわるものとして、その透明性の向上及び公正の確保のために、原則公開とされている。本件意見を聞く会が、条例27条に基づく審議会等に当たるかどうかは別として、市が主催する市の政策形成に関わる会議については、できる限り公開会議として取扱われることが望ましいこと。

イ 意見を聞く会の会議の内容に関する報道については、先に実施機関の説明のところで示した以外、その他特別な制限もなされていないことから、実施機関の当日の会議運営によって意見を聞く会の議事それ自体が新聞報道を通じて広く市民等に公にされたものと解するのが相当であること。

ウ 意見を聞く会での報道機関の傍聴に関する条件の中で、発言内容を記事にすることはかまわないが、発言者名について記事にする際には、発言者本人への確認が求められており、新聞に掲載された出席者の氏名等については、各報道機関と出席者本人との間で同意があったものと解することができること。

以上を総合判断すれば、空母キティーホークの後継艦問題という、市の重要な政策決定に関する公的問題について、市の各分野を代表する者が参加して行われた本件意見を聞く会に出席し、発言した者の氏名等については、条例7条1号ただし書きイ「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するものと考えられる。なお、欠席した者及び意見を聞く会に出席はしたが発言をしなかった者については、これに該当しないものといえる。

(4)条例7条3号の該当性について
本号の該当性について、実施機関は「意見を聞く会は、報道機関の傍聴を認めたものではあるが、あくまでもこれは条件付きであり、これをもって会議が公開されたものとは考えていない。また、意見を聞く会は、何かを決定する会ではなく、あくまでも意見を聞く会である。出席者は所属団体の立場からの意見ではなく、個人的な観点から意見を述べている。また、本件文書を公開すると、市と出席者との信頼関係が損なわれ、ひいては、出席者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがある。」とする。
これに対して、申立人は「意見を聞く会は、思想信条を問うという事柄ではなく、市長の政策判断に影響を与える意見を述べる会であり、発言者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがあるとした理由は、市民に対する冒涜的な考え方である。」としている。また、「非公開を前提にしていたものを公開すれば、約束違反として信頼関係が損なわれるのは当然のことである。」と主張しているので、以下、この点について検討する。
条例7条3号は、「本市の機関内部若しくは機関相互又は本市の機関と国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人の機関との間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれのあるもの」と規定されており、これに該当する情報は非公開となる。
この規定の趣旨は、内部的な審議、検討又は協議が円滑に行われ、適正な意思決定がなされることを確保するために定められたものであるが、説明責任の観点から検討過程の情報であってもできる限り広く公開されるべきであって、非公開の範囲は極力限定されることが望ましい。
そこで本件文書については、意見を聞く会に出席した事実又は出席を要請されたことが公開されることをもって、直ちに「発言者に対して外部からの干渉、圧力等の不利益が及ぶおそれがある。」ということはできず、このことを具体的に根拠づける主張が実施機関からなされているわけでもない。また、非公開を前提に出席要請し、これを信頼して出席した者と市との信頼関係は重視されなければならないが、会議当日となって報道機関への傍聴を認める旨の説明をしたことによって、その意義は既に失われているものと認められることから、条例7条3号に該当する情報として全てを非公開とすることに合理性があるということもできない。

以上、条例7条1号ただし書きイ及び3号の該当性について検討した結果、実施機関が行った非公開決定処分において、意見を聞く会を欠席した者及び意見を聞く会に出席したが発言をしなかった者の氏名及び所属又は職名を除き、公開するのが相当である。

以上、審査会の結論に記載のとおり答申する。

横 須 賀 市 情 報 公 開 審 査 会
委 員 長 原 田 一 明
委 員 三 浦 大 介
委 員 遠 藤 正 敏
委 員 木 村 キ ヌ 子
委 員 千 賀 重 義

○ 審査会の経過
年 月 日処 理 等 の 内 容
平成18年6月20日・異議申立ての提起
平成18年7月10日・横須賀市長からの諮問<企画調整部基地対策課>
平成18年8月7日・実施機関から「諾否決定理由説明書」の受理
平成18年9月14日・異議申立人から「諾否決定理由説明書に対する意見書」の受理
平成19年5月21日・実施機関からの口頭説明聴取
平成19年6月25日・異議申立人からの口頭意見陳述
・審議
平成19年7月23日・審議
平成19年8月27日・審議
平成19年9月13日・審議


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