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横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第588号 平成19年度市広報第628号ほか

2009年05月13日 | 国/公共の安全等に関する情報
横情審答申第588号
平成21年5月13日

横浜市長 中 田 宏 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 三 辺 夏 雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)

平成20年12月24日市広報第1492号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。
「9904-20070620-990411-支出命令-002026-1303(補完配布4月号)(平成19年度市広報第628号)」ほか別添行政文書の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問

別 紙
答 申


1 審査会の結論
横浜市長が、「9904-20070620-990411-支出命令-002026-1303(補完配布4月号)(平成19年度市広報第628号)」ほか別添行政文書を一部開示とした決定のうち、金融機関名、支店名及び口座種別を非開示とした決定は妥当ではなく開示すべきであるが、その余の部分を非開示とした決定は妥当である。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「9904-20070620-990411-支出命令-002026-1303(補完配布4月号)(平成19年度市広報第628号)」ほか別添行政文書(以下「本件申立文書」という。)の開示請求に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が平成20年9月24日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第2号及び第4号に該当するため一部開示としたものであって、その理由は次のように要約される。

(1) 条例第7条第2項第2号の該当性について
本件申立文書に記載されている個人の氏名は、個人に関する情報であって、開示することにより、特定の個人を識別することができるものであることから、本号本文に該当し、本号ただし書に該当せず、非開示とした。

(2) 条例第7条第2項第4号の該当性について
本件申立文書に記録されている金融機関名、支店名、口座種別及び口座番号は、その全部を合わせて一つの口座情報を表している。
異議申立人(以下「申立人」という。)は、少なくとも金融機関名及び支店名は開示すべきと主張しているが、本件申立文書に記録されている金融機関名及び支店名は、口座種別及び口座番号と一体をなす財産等保護情報として非開示としたものである。
これらの情報を開示した場合、当該口座の預金残高や入出金状況を割り出し、不正引出しを行うことが技術的に可能であり、このような預金残高の調査等を売り物にしている調査会社等も数多く存在すること、また、他者の口座に一方的に振込みを行い、法外利息を要求する悪質な事件等も発生していることなどから、開示すると、第三者に悪用されて、財団法人横浜市シルバー人材センター(以下「シルバー人材センター」という。)の財産の保護に支障が生ずるおそれがあるものと考えられる。
なお、これらの情報は、一般的には、取引相手方など法人等の業務上必要な範囲で明らかにされているが、その開示の可否・範囲は法人等が自ら決定すべきものであり、取引相手方の便宜、信用度などを考慮した上で、特定の取引相手方との間でのみ行っているものである。
以上により、本件申立文書に記録されている金融機関名及び支店名は、口座種別及び口座番号とともに、本号に該当するため、非開示とした。
また、本件申立文書に記録されている法人代表者印の印影は、開示すると、第三者に偽造されるなどして、シルバー人材センターの財産の保護に支障が生じるおそれがあることから、本号に該当し、非開示とした。

4 申立人の本件処分に対する意見
申立人が、異議申立書、意見書及び意見陳述において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。

(1) 本件処分を取り消すとの決定を求める。

(2) 通常、企業というものは会社案内等に取引銀行を明記している。シルバー人材センターに仕事を発注したことがあるが、請求書には、口座名、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号等が明記されていた。
そのような点から踏まえて、横浜市の無知さには呆れるばかりである。少なくとも金融機関名や支店名を開示して財産権が侵害されるのであれば、世の中の一流民間企業はすべて財産権を侵害されるおそれがあるのかと問うと共に「行政の常識は世の非常識」と世間で広く言われている事を真摯に受け止め、不当であると強く申し上げる。

(3) シルバー人材センターは、横浜市が100%出資する天下り団体であり、毎年約1億円もの補助金を支払った上、適切な業者選定や価格交渉など一切行わないで言い値で多額の発注をしている事実がある。現職の横浜市職員の元上司等であったOBが当該外郭団体に天下り又は出向し、不適切とも言える受注圧力を繰り返しているのが現状である。

(4) (3)から鑑みると、当該外郭団体は、横浜市同様の公の団体であり公務員に準じる立場であると考えられる。よって、実施機関が主張する個人の氏名は、個人の情報であるという以前に横浜市職員の氏名と同様に開示されるべき情報である。古き慣行を盾にするのであれば、横浜市職員録に100%出資の天下り先である当該外郭団体の職員名を記載しないのは不当であり、公開されるべき情報である。

(5) 多くの企業や団体が作成する会社案内やホームページには金融機関名、支店名、口座種別及び口座番号が記載されており、また最近では特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)等の法令に基づく表示により、取引金融機関名等の属性情報のホームページへの掲載が義務付けられている。不正や犯罪に詳しい実施機関が言うような悪質な事件の被害者になるのであれば、不特定多数が閲覧できるホームページにある当該口座情報を利用し多くの悪質な事件が存在している事になる。国が制定している法令により悪質な事件を促しているという実施機関の主張は稚拙である。実施機関は、口座番号が分かると悪用されると言うが、パスワードを使っていれば、悪用されることはない。また実施機関の言う口座に振り込まれるという詐欺については、個人の口座では考えられることだが、法人の口座に振り込まれたことなどは聞いたことがない。請求書には口座番号が記載されているものであり、それまで秘匿するということになると、振込みによる支払いができなくなる。
なお、これらの口座情報は、公開する事により、企業の信頼が高まるツールともなりえ、また企業や団体等の判断にかかわらず公開し、不特定多数が閲覧出来る事を定める時代になってきている。このように、民の世界で常識になっていることが公の世界で非常識になっていることが、納得できない。
以上の理由により全面的開示を求めるものである。

5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
広報よこはまは、自治会町内会等による配布が基本とされているが、これを補完するものとして、高齢化等の事情により配布が困難となった自治会町内会等の区域における世帯や、自治会町内会未加入等により申出があった世帯に対して委託業者による補完配布が行われている。
PRボックスは、市民が身近な場所で市政情報を入手できるように市の公共施設や市内鉄道駅などに設置されており、そのメンテナンスとして、洗剤を使った清掃、広報よこはまの補充・前月分の除去及びごみ等・期限の過ぎている各区局のチラシ・市以外のチラシの除去が行われている。
本件申立文書は、平成19年4月から本件に係る開示請求日までの間に、広報よこはまの補完配布及びPRボックスのメンテナンスの委託業務に関して、横浜市からシルバー人材センターへの経費支出手続を行った際に作成した支出命令書である。
実施機関は、本件申立文書のうち、個人の氏名、法人代表者の印影並びに金融機関名、支店名、口座種別及び口座番号(金融機関名から口座番号までの4情報を総称して、以下「口座情報」という。)を非開示としている。
なお、シルバー人材センターは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)に定められた、高年齢者のための就業の機会の確保及び提供を主な事業とし、国や横浜市の支援により運営されている公益法人である(平成20年12月1日からいわゆる公益法人制度改革関連3法が施行されており、現在では公益法人とは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)により設立された社団法人又は財団法人であって、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)により公益性の認定を受けた法人のことを指し、従来の民法(明治29年法律第89号)により設立された財団法人等は、移行期間満了である平成25年まで、特例民法法人とされている。また、特例民法法人については実質的には従前の公益法人と同様の取扱いとされている。)。

(2) 条例第7条第2項第2号の該当性について
ア 条例第7条第2項第2号では、「個人に関する情報・・・であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」については開示しないことができると規定している。また、同号ただし書では、「ア 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」については、本号本文に規定する開示しないことができる個人に関する情報から除くことを規定している。

イ 本件申立文書に記録されているシルバー人材センターの職員の氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであるから本号本文に該当する。また、シルバー人材センターの職員の氏名は、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されていると解する事実が認められないため、本号ただし書アに該当せず、また、本号ただし書イ及びウにも該当しない。なお、シルバー人材センターの職員の氏名を横浜市職員の氏名と同様に扱うことができないことについては、当審査会が判断した答申第576号(平成21年2月27日)のとおりである。

(3) 条例第7条第2項第4号の該当性について
ア 条例第7条第2項第4号では、「公にすることにより、人の生命、身体、財産等の保護その他の公共の安全の確保及び秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」は開示しないことができると規定している。

イ シルバー人材センターの口座情報について

(ア) 申立人は、通常、企業は、会社案内等に取引銀行を明記しており、少なくとも金融機関名及び支店名を開示して財産権が侵害されるおそれがあるのであれば、世の中の一流民間企業は財産権を侵害されるおそれがあることとなり、本件処分は不当である等と主張している。
一方で、実施機関は、本件申立文書に記録されている金融機関名及び支店名は、口座種別及び口座番号と一体をなす財産等保護情報として非開示としているので、その妥当性について検討する。

(イ) 本件申立文書に記録されている口座情報について、一般にこれらの情報を公にした場合、当該口座の預金残高や入出金状況が割り出され、不正引出しが行われる可能性があり、このような預金残高の調査等を売り物にしている調査会社等も存在するといわれていること、また、他人の口座に一方的に振込みを行い、法外利息を要求する悪質な事件等も発生していることなどから、公にすると、第三者に悪用されて、当該口座を有するものの財産の保護に支障が生ずるおそれがあるものと考えられる。
したがって、開示請求に係る行政文書に口座情報が記録されている場合、これらの情報は原則として本号に該当すると考えられる。

(ウ) ところで、公益法人の情報公開については、平成8年9月20日に閣議決定された「公益法人の設立許可及び指導監督基準」の中で、我が国の社会経済において重要な役割を担い、相応の社会的責任を有する公益法人が自主的に情報を公開する必要があるとの観点から、「(1)公益法人は、(次の)業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、原則として一般の閲覧に供すること。(2)所管官庁においては、(1)に規定する資料を備えて置き、これらについて閲覧の請求があった場合には、原則として、これを開示させるものとする。」とされており、その資料のひとつとして財産目録も含まれている。
また、公益法人会計基準(平成16年10月14日公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せ)において、財産目録については、「当該事業年度末現在におけるすべての資産及び負債につき、その名称、数量、価額等を詳細に表示するものでなければならない」として、その様式のひな形が定められており、これに準じて作成することとされている。
なお、特例民法法人についても、特例民法法人の指導監督について(平成20年11月11日公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議幹事会申合せ)の中で上記指導監督基準及び会計基準にある「公益法人」を「特例民法法人」と読み替えることとされている。

(エ) 横浜市においては、上記閣議決定における公益法人の情報公開の趣旨を踏まえ、外郭団体のうち公益法人については、財務に関する資料を市民情報センターに配架して一般の閲覧に供しており、その中に財産目録も含まれている。
そこで、シルバー人材センターの財産目録について確認したところ、公益法人会計基準に示されたひな形に準じて作成されており、本件で非開示とした情報のうち金融機関名、支店名及び口座種別が記載されていることが認められた。

(オ) したがって、(イ)で述べたとおり、口座情報については原則として本号に該当するものであるが、本件で非開示とした情報のうち金融機関名、支店名及び口座種別については、上記閣議決定における公益法人の情報公開の趣旨を踏まえ、既に市民情報センターに配架され一般の閲覧に供されており、非開示とする理由が認められないため開示すべきである。

ウ 法人代表者の印影について
本件申立文書に記録されている法人代表者印の印影は、公にすると、第三者に偽造されるなどして、当該法人の財産の保護に支障が生じるおそれがあることから、本号に該当する。

(4) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を一部開示とした決定のうち、金融機関名、支店名及び口座種別を条例第7条第2項第4号に該当するとして非開示とした決定は妥当ではなく開示すべきであるが、その余の部分を条例第7条第2項第2号及び第4号に該当するとして非開示とした決定は妥当である。

(第二部会)
委員 金子正史、委員 池田陽子、委員 高見沢 実

別添
1 9904-20070620-990411-支出命令-002026-1303(補完配布4月号)
(平成19年度市広報第628号)
2 9904-20070720-990411-支出命令-003371-1303(補完配布5月号)
(平成19年度市広報第694号)
3 9904-20070817-990411-支出命令-004755-1303(補完配布6月号)
(平成19年度市広報第900号)
4 9904-20070914-990411-支出命令-007076-1303(補完配布7月号)
(平成19年度市広報第1118号)
5 9904-20070928-990411-支出命令-007728-1303(補完配布8月号)
(平成19年度市広報第1217号)
6 9904-20071206-990411-支出命令-011742-1303(補完配布9月号)
(平成19年度市広報第1811号)
7 9904-20071226-990411-支出命令-012683-1303(補完配布10月号)
(平成19年度市広報第1973号)
8 9904-20080215-990411-支出命令-015679-1303(補完配布11月号)
(平成19年度市広報第2299号)
9 9904-20080314-990411-支出命令-017296-1303(補完配布12月号)
(平成19年度市広報第2548号)
10 9904-20080418-990411-支出命令-019168-1303(補完配布・1月号)
(平成19年度市広報第2903号)
11 9904-20080418-990411-支出命令-019171-1303(補完配布・2月号)
(平成19年度市広報第2904号)
12 9904-20080516-990411-支出命令-021899-1303(補完配布・3月号)
(平成20年度市広報第205号)
13 9904-20080701-990411-支出命令-003005-1303(補完配布・4月号)
(平成20年度市広報第512号)
14 9904-20080718-990411-支出命令-003464-1303(補完配布・5月号)
(平成20年度市広報第557号)
15 9904-20080808-990411-支出命令-004999-1303(補完配布・6月号)
(平成20年度市広報第650号)
16 9904-20080910-990411-支出命令-006821-1303(補完配布・7月号)
(平成20年度市広報第817号)
17 9904-20070621-990411-支出命令-001940-1303(PRボックスメンテ4月分)
(平成19年度市広報483号)
18 9904-20070717-990411-支出命令-003099-1303(PRボックスメンテナンス5月分)(平成19年度市広報第672号)
19 9904-20070821-990411-支出命令-004982-1303(PRボックスメンテ6月分)
(平成19年度市広報第927号)
20 9904-20070921-990411-支出命令-007298-1303(PRボックスメンテ7月分)(平成19年度市広報第1160号)
21 9904-20071018-990411-支出命令-008705-1303(PRボックスメンテ8月分)
(平成19年度市広報第1413号)
22 9904-20071121-990411-支出命令-010857-1303(PRボックスメンテ9月分)
(平成19年度市広報第1701号)
23 9904-20071219-990411-支出命令-012465-1303(PRボックスメンテ10月分)
(平成19年度市広報第1916号)
24 9904-20080116-990411-支出命令一014356-1303(PRボックスメンテ11月分)
(平成19年度市広報第2112号)
25 9904-20080219-990411-支出命令-015936-1303(PRボックスメンテナンス12月分)(平成19年度市広報第2334号)
26 9904-20080314-990411-支出命令-017335-1303(PRボックスメンテ1月分)
(平成19年度市広報第2559号)
27 9904-20080422-990411-支出命令-019241-1303(PRボックスメンテ2月号)
(平成19年度市広報第2940号)
28 9904-20080521-990411-支出命令-021790-1303(PRボックスメンテナンス3月分)(平成20年度市広報第192号)
29 9904-20080619-990411-支出命令-001903-1303(PRボックスメンテナンス4月分)(平成20年度市広報第396号)
30 9904-20080718-990411-支出命令-003579-1303(PRボックスメンテナンス5月分)(平成20年度市広報第554号)
31 9904-20080820-990411-支出命令-005603-1303(PRボックスメンテナンス6月分)(平成20年度市広報第705号)
32 9904-20080917-990411-支出命令-007255-1303(PRボックスメンテナンス7月分)(平成20年度市広報第855号)


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