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情報公開・個人情報保護審査会 平成18年度(行情)答申 第166号 特定路線に係る運輸大臣の敷設…

2006年07月06日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
諮問庁 : 国土交通大臣
諮問日 : 平成18年 2月23日 (平成18年(行情)諮問第72号)
答申日 : 平成18年 7月 6日 (平成18年度(行情)答申第166号)
事件名 : 特定路線に係る運輸大臣の敷設免許書の不開示決定(不存在)に関する件

答 申 書

第1  審査会の結論
 特定鉄道会社特定路線のA駅からB駅間の運輸大臣の敷設免許書(以下「本件対象文書」という。)につき,これを保有していないとして不開示とした決定は,結論において妥当である。

第2  審査請求人の主張の要旨

1  審査請求の趣旨
 本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成17年8月3日付け近運総広第46号により近畿運輸局長(以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。)について,その処分の取消しを求めるというものである。

2  審査請求の理由
 審査請求人の主張する審査請求の主たる理由は,おおむね以下のとおりである。

(1)  特定鉄道会社特定路線のA駅からB駅間の運輸大臣の敷設免許書が,不存在である。(付加してほしい。)

(2)  特定鉄道会社特定路線のB駅からC架道橋を越えた附近までの鉄道施設の変更工事記録を求める。

 鉄道は、安全を第一に運行されるのが、当然と考えられる。
 しかし,安全な工事がされているとは信じがたい現状に,相違する虚偽と危険、占拠、借地内で、営業測量図(平面図・断面図)を裁判所に提出して来た本当の理由を明白にするために開示を求める。

第3  諮問庁の説明の要旨

1  鉄道事業の免許申請手続きについて
 「敷設免許」とは,地方鉄道法(以下「地鉄法」という。)12条に基づく地方鉄道事業免許を指しており,その申請手続は,同条の規定により,地方鉄道業を営むことを予定する者が起業目論見書,線路予測図,建設費概算書及び運送営業上の収支概算書を提出し,主務大臣の免許を受けることとされていた。
 その後,昭和62年4月の鉄道事業法施行に伴い,地鉄法は廃止され,鉄道事業を経営しようとする者は,鉄道事業法4条の規定に基づき,同条に定められた事項を記載した申請書及び事業収支見積書その他の運輸省令(現国土交通省令)で定める書類を提出することとなった。運輸大臣(現国土交通大臣)は,その申請内容について,同法5条に規定される免許基準に適合するかどうか審査し,免許することと定められている(平成12年3月に免許制から許可制になった。)。
 なお,当該申請書類は,鉄道事業法施行規則79条に基づき,所轄の地方運輸局長を経由して国土交通大臣に提出することとなっている。

2  審査請求人の主張について
 審査請求書からは,審査請求理由が不明確であることから,諮問庁が処分庁を通じて審査請求人に聴き取りを行った結果,「特定鉄道会社が免許書なしに鉄道を動かしているのはおかしい。」「行政が文書を持ってないのはおかしい。」として,原処分の取消しを主張していることを確認した。

3  本件開示請求に係る文書について

(1)  処分庁における原処分について
 処分庁は、特定鉄道会社特定線の敷設免許が大正13年5月13日付けで免許され,現在に至っていることを確認した上で,当該免許書の写し及び敷設免許申請に係る決裁文書を探索し,その結果発見できなかったため,文書保存期間30年を超えているので存在していないとして,不開示決定処分を行ったとのことである。
 しかしながら,本件開示請求に係る敷設免許が申請された当時は,現在の地方運輸局に相当する組織が存在しておらず,同申請書は地方鉄道法施行規則1条に基づき地方長官(現在の知事)を経由し,当時の主務大臣である鉄道大臣あてに提出されていたため,本来,処分庁に対して請求があった段階で,処分庁に対する開示請求を取り下げるとともに,改めて国土交通大臣に開示請求するよう,開示請求者に教示すべきであったと考えられる。

(2)  本件開示請求に係る文書の探索及びその結果について
 諮問庁は,本件開示請求に係る文書の存否について確認するため,鉄道事業の免許申請手続を担当する鉄道局都市鉄道課の執務室,書庫,倉庫において,該当する文書があるか否かを入念に探索した。
 その結果,本件対象文書に該当する可能性がある行政文書の存在は確認できなかった。
 さらに,諮問庁は処分庁を通じ,近畿運輸局鉄道部監理課の執務室及び倉庫並びに大阪港湾合同庁舎にある倉庫の調査を入念に行った。
 調査に当たっては,本件対象文書が含まれている可能性のあるすべての行政文書を対象としたが,調査の結果,本件対象文書に該当するものは存在しないことが確認された。

(3)  本件開示請求に係る文書の国立公文書館への移管について
 その後,更に探索を行った結果,本件開示請求に係る文書に該当すると思われる文書が,平成12年12月12日に運輸省(当時)から国立公文書館(以下「公文書館」という。)に移管されていることが判明したため,諮問庁は,公文書館において当該文書を閲覧し,公文書館に移管された文書が本件開示請求に係る文書に該当することを確認した。
 以上のことから,本件開示請求に係る文書は,公文書館に移管された文書であり,法2条2項2号の適用を受ける歴史的資料に該当することから,同条2項の適用を受ける行政文書には該当しないものと考える。
 なお,諮問庁は処分庁を通じ,本件開示請求に係る文書が公文書館に移管されていることを審査請求人に教示したが,行政不服審査法39条による審査請求取下げに至らなかった。

4  結論
 以上により,本件については,処分庁が,本件開示請求の段階で,開示請求者に適切な教示を行わなかったこと及び十分な調査・検討をせずに原処分を行ったことは,不適切な対応であったと言わざるを得ないが,本件開示請求に係る文書は公文書館に移管されていることから,本件を不開示とした原処分は,結論において妥当である。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成18年2月23日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年5月23日  審議
④  同年7月4日  審議

第5  審査会の判断の理由

1  本件対象文書について
 特定鉄道会社特定路線のA駅からB駅間の運輸大臣の敷設免許書の開示請求につき,処分庁は,当該免許が大正13年5月13日付で免許されていることを確認し,「当該免許の写し及び敷設免許申請に係る決裁文書」を本件対象文書として特定した上で,当該文書は保存期間を経過しており,不存在のため不開示とする原処分を行った。
 その後,諮問庁は,本件開示請求に係る文書探索の過程において,本件対象文書は,既に当時の運輸省から公文書館に移管されたことが確認されたことから,法2条2項2号の適用を受ける歴史的資料に該当し,同条2項の適用を受ける行政文書には該当しない旨説明するので,以下,本件対象文書の行政文書該当性について検討する。

2  本件対象文書の行政文書該当性について
 当審査会において,諮問庁から公文書館に移管された文書の写しの提示を受け,確認を行ったところ,当該文書は,特定鉄道会社特定路線のA駅からB駅間を含む敷設免許申請に係る決裁文書であり,本件対象文書に該当するものであることが確認された。
 また,同時に提示を受けた当時の運輸省から公文書館への移管手続に関する文書の写しを確認したところ,本件開示請求が行われた時点において,本件対象文書は,既に公文書館に移管されていたことが認められた。
 さらに,公文書館の目録データベースの検索により,本件対象文書が,一般の閲覧の用に供されていることが確認できた。
 よって,本件対象文書は,公文書館に移管された文書であると認められ,法2条2項2号の適用を受ける歴史的資料に該当することから,同条2項の適用を受ける行政文書には該当しないとする諮問庁の説明は,首肯し得るものである。
 なお,諮問庁は,処分庁が本件開示請求の段階で開示請求者に適切な教示を行わなかったこと及び十分な調査・検討をせずに原処分を行ったことは,不適切な対応であったと言わざるを得ないとするが,今後の開示決定に係る事務処理において,適切な対応が望まれる。

3  本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,これを保有していないとして不開示とした決定について,諮問庁が,本件対象文書は,法2条2項の適用を受ける行政文書には該当しないとしていることについては,当該文書は同条2項2号の歴史的資料に該当し,同条2項の適用を受ける行政文書には該当しないと認められることから,本件対象文書を不開示としたことは,結論において妥当であると判断した。

 (第3部会)

 委員 大熊まさよ,委員 北沢義博,委員 高橋 滋

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