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広島県情報公開・個人情報保護審査会 諮問(情)第69号 砂防指定地内河川を占用する橋に係る砂防指定…

2007年11月20日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
広島県情報公開・個人情報保護審査会 諮問(情)第69号

第1 審査会の結論
広島県知事(以下「実施機関」という。)は,本件開示請求日時点で砂防設備占用許可期間が終了していた橋りょうに係る行政文書についても,本件開示請求の対象行政文書として特定し,改めて開示決定等をすべきである。

第2 異議申立てに至る経過
1 開示の請求
異議申立人は,平成15年9月24日,広島県情報公開条例(平成13年広島県条例第5号。以下「条例」という。)第6条の規定により,実施機関に対し,東広島地域事務所建設局竹原支局(以下「竹原支局」という。)が管轄する地域内の砂防指定地内の河川に架けられている橋のうち,国道・県道などの橋を除く,民間の法人・個人等が設置しているすべての橋(車道・歩道の区別を問わない)に係る,「①砂防指定地内制限行為・砂防設備占用許可申請書」(占用の期間が5年間である等の場合は,最新の申請書を請求の対象とする。),「②上記①の橋の所在地を地図上に示す文書」及び「③上記①の申請書に対して許可又は許可しないことを通知した文書」の開示を請求(以下「本件請求」という。)した。

2 請求に対する決定
実施機関は,本件請求に対し,「砂防指定地内河川を占用する橋(民間の法人・個人等が設置しているもの)に係る砂防指定地内制限行為・砂防設備占用許可申請書及び許可(不許可)通知書」(以下「本件部分開示文書」という。)を本件請求の対象となる行政文書(以下「本件対象文書」という。)として特定の上,行政文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い,平成15年10月7日付けで異議申立人に通知した。

3 異議申立て
異議申立人は,本件処分を不服として,平成15年11月10日,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により,実施機関に対し異議申立てを行った。

第3 異議申立人の主張要旨
1 異議申立ての趣旨
本件処分について,本件部分開示文書以外に本件対象文書が存在するとして,その開示を求めるというものである。

2 異議申立ての理由
異議申立人が,異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての理由は,おおむね次のとおりである。

本件処分は,管内の砂防指定地内河川を占用する橋のうち,民間の法人又は個人が設置した橋のごく一部に係る砂防設備占用許可(更新を含む。)などを開示しただけである。
開示内容が一部のみであり,不法占用の実態を隠匿しようとする裁量権の乱用行為である。
実施機関の理由説明書には「開示請求のあった対象文書を検索した結果,全部で30本の橋に係る占用許可申請書等が存在した。上記以外の橋については,砂防指定地の指定以前から設置されていた,無許可で設置されている等の理由により占用許可が行われていないため,対象文書は存在しなかった。」と明記されている。
そこで,実施機関が本件対象文書の存在を否定した橋について,砂防指定地の指定以前から設置されていた又は無許可で設置されていると判断するに至った根拠を明らかにする文書を開示請求したところ,実施機関は不存在による不開示決定を行った。これらの文書が存在しなければ,公文書である理由説明書に明記されるはずがない。
実施機関は,本件請求の対象とされた橋のうち,わずか30本の橋に係る占用許可申請書を開示しただけで,残りの圧倒的多数の橋については,その具体的な根拠を持たず,意図的に不法占用等の橋として放置していることを公文書に明記している。

第4 実施機関の説明要旨
実施機関が理由説明書及び口頭による意見陳述で説明している内容を総合すると,本件対象文書として本件部分開示文書を特定して部分開示した理由などについては,おおむね次のとおりである。

異議申立人から開示請求のあった対象文書を検索した結果,全部で30本の橋に係る占用許可申請書等が存在した。
このうち,一部については,条例第10条第2号に該当する不開示情報(個人に関する情報)が含まれていた。
上記以外の橋については,砂防指定地の指定以前から設置されていたなどの理由により,本件対象文書に該当するものは存在しなかった。
なお,異議申立人のいう「不法占用の実態」については,本件処分の効力に何ら影響を与えるものではない。
砂防指定地に橋を建設する場合,広島県砂防指定地管理条例(平成14年広島県条例第47号。以下「管理条例」という。)の規定により,砂防指定地内制限行為許可(以下「制限行為許可」という。)及び砂防設備占用許可(以下「占用許可」という。)に係る申請が必要である。
このうち制限行為許可については,竹原支局管内の砂防指定地内河川において,必要な許可を受けずに橋を設置した事例は存在しないと認識している。占用許可については,制限行為許可と一体として扱っており,制限行為許可が不要なものは,占用許可も不要であると判断している。
また,検索の結果,竹原支局管内の砂防指定地内河川に架かっている民間の法人・個人等が設置している橋りょう(以下「本件対象橋りょう」という。)は34本存在したが,そのうち4本は更新手続の未了により許可期間を経過していたものであり,本件請求では「占用の期間が5年間である等の場合は,最も新しい申請書」が請求の対象とされていたことから,開示請求時点で占用許可が有効である物件が対象であると判断し,対象としなかった。

第5 審査会の判断
1 砂防指定地及び砂防設備の管理について
砂防指定地とは,砂防法(明治30年法律第29号)第2条により,「砂防設備を要する土地又はこの法律により治水上砂防のため一定の行為を禁止若しくは制限すべき土地」として国土交通大臣が指定したものであり,砂防設備とは,同法第1条に,砂防指定地において治水砂防のため施設するものと規定されている。
そして,砂防指定地及び砂防設備の管理について,実施機関は,砂防法第4条第1項及び第5条の規定に基づき管理条例を制定し,必要な規制等を行うこととしている。
管理条例第3条において,砂防指定地内において,砂防設備以外の施設又は工作物の設置をしようとする者は知事の許可が必要とされており,これが制限行為許可である。制限行為許可については,同条第2項により,砂防指定地に指定される前に設置された施設又は工作物については,許可が不要とされている。
また,管理条例第4条において,砂防設備を占用しようとする者は,知事の許可が必要とされており,これが占用許可である。
なお,管理条例制定前は,広島県砂防指定地管理規則(昭和46年広島県規則第3号。以下「管理規則」という。)において,制限行為許可及び占用許可について規定されていた。
管理規則施行以後に砂防指定地に橋りょうを設置しようとした場合,原則,建設するために制限行為許可を受ける必要があり,設置した場合には通常砂防設備を占用することになるため,占用許可も必要となる。

2 本件対象文書の特定について
本件対象文書は,本件対象橋りょうに係る制限行為許可及び占用許可の申請書並びに当該申請に係る許可通知書等である。

(1) 更新手続の未了により,開示請求日時点で占用許可期間を既に経過していた橋りょうに係る文書を対象としなかったことについて
実施機関は,本件対象橋りょうを検索したところ,34本の橋りょうが存在したが,そのうち4本は更新手続の未了により開示請求日時点で許可期間を経過していたため,これらの橋りょうに係る文書は本件対象文書に該当しないと判断したと説明している。
本件請求に係る行政文書開示請求書を確認したところ,「行政文書の件名又は内容」欄には,「東広島地域事務所建設局竹原支局が管轄する地域内の砂防指定地内の河川に架けられている橋のうち,国道・県道などの橋を除く,民間の法人・個人等が設置している橋(車道・歩道の区別を問わない)の全てについて次の文書の開示を請求します。①砂防指定地内制限行為・砂防設備占用許可申請書(占用の期間が5年間である等の場合は,最も新しい申請書を請求の対象とします。),②上記①の橋の所在地を地図上に示す文書,③上記①の申請書に対して許可又は許可しないことを通知した文書」と記載されている。
実施機関はこの記載のうち,「占用の期間が5年間である等の場合は,最も新しい申請書を請求の対象とします」という記載から,本件請求は,開示請求時点で占用許可が有効である橋りょうに係る文書が対象であると判断したとしている。
しかしながら,「行政文書の件名又は内容」欄に,例えば「対象期間は開示請求日を含む占用期間に限定する」等の,開示請求日時点で占用許可期間中の橋りょうを対象とすると限定している記述は見当たらないし,本件請求は「許可しないことを通知した文書」も対象としていることからすると,「占用期間が5年間である等の場合は,最も新しい申請書を対象とします」との記述の趣旨は,許可が有効であるかどうかにかかわらず,「砂防指定地内制限行為・砂防設備占用許可申請書」を本件対象文書として指定した上で,当初の占用許可を受けた後に更新を重ねている橋りょうには複数の申請書が存在していることから,こうした橋りょうについては最新の更新に係る申請書のみを対象とすると解するべきである。
したがって,開示請求時点で占用許可が有効な橋りょうに係る文書が本件対象文書であるとする実施機関の判断は妥当ではなく,実施機関が本件対象橋りょうとして確認した34本の橋りょうのうち本件部分開示文書に含まれていない4本の橋りょうに係る文書についても,本件対象文書として特定し,改めて開示決定等をすべきである。

(2) 実施機関が特定した34本の橋りょうに係る文書以外に本件対象文書が存在しないことについて
実施機関は,本件対象橋りょうを検索した結果,34本の橋りょうが存在し,そのうち30本の橋りょうに係る文書を本件対象文書として特定し,本件処分を行ったと説明している。
これに対して異議申立人は,本件処分は,本件対象橋りょうのごく一部のみに係る文書が開示されたもので,ほかに文書が存在していると主張している。
まず,前記(1)で述べたとおり,実施機関が確認した34本の橋りょうのうち,本件処分で本件対象文書として特定しなかった4本の橋りょうに係る文書については,本件対象文書に該当するものである。
次に,これら34本の橋りょう以外の橋りょうについて,本件対象文書が存在しないことについて検討する。
平成15年4月1日現在で,竹原支局管内には砂防指定地として142地区が指定されており,延長距離は約159キロメートルとなっていることからすると,本件対象橋りょうが34本しか存在しないとは通常考えられず,本件対象橋りょうのうち占用許可を受けている橋りょうはごく一部で,大部分の橋りょうは占用許可を受けていないことと推測される。
このことについて,実施機関は,竹原支局の管内には,必要な制限行為許可を受けずに設置している橋りょうは存在しないとし,制限行為許可を受けていない橋りょうは,管理規則施行前又は砂防指定地に指定される前に設置されたものであると説明している。
そして,実施機関の説明によれば,制限行為許可と占用許可は一体のものであり,制限行為許可が不要な橋りょうについては,占用許可も不要として取り扱っているとのことである。
つまり,実施機関が検索の結果確認した34本以外の橋りょうについては,管理規則施行前又は砂防指定地に指定される前に設置されたものであるから,制限行為許可及び占用許可が不要な物件として取り扱っており,この結果,制限行為許可及び占用許可に係る申請書等は存在しないということである。 実施機関がこのように取り扱っているのであれば,その運用の砂防行政上の妥当性はともかくとして,制限行為許可及び占用許可が必要ないとされている橋りょうについて,これらの許可に係る申請書等が存在しないとする実施機関の説明を不自然であるとまでは判断できない。

3 結論
よって,当審査会は,「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

別 記
審 査 会 の 処 理 経 過
年 月 日処 理 内 容
16. 2. 6・諮問を受けた。
16. 3. 1・実施機関に理由説明書の提出を要求した。
17.11.14・実施機関から理由説明書を収受した。
17.11.18・異議申立人に理由説明書の写しを送付した。
・異議申立人に意見書の提出を要求した。
18. 1.31・異議申立人から意見書を収受した。
18. 2. 1・実施機関に意見書の写しを送付した。
19. 5.25
(平成19年度第2回第1部会)
・諮問の審議を行った。
19. 6.26
(平成19年度第3回第1部会)
・実施機関の職員から本件処分に対する意見を聴取した。
・諮問の審議を行った。
19. 7.24
(平成19年度第4回第1部会)
・諮問の審議を行った。
19. 9.28
(平成19年度第5回第1部会)
・諮問の審議を行った。


参 考
答申に関与した委員(五十音順)
今 井 光弁護士
真 田 文 人弁護士
鈴 木 玉 緒広島大学大学院社会科学研究科准教授
西 村 裕 三
( 部 会 長 )
広島大学大学院社会科学研究科教授


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