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神奈川県情報公開審査会 答申第528号 羽田空港への連絡道路等に関する資料一部非公開の件

2009年11月11日 | 審議・検討等に関する情報
答申第528号
平成21年11月11日

神奈川県知事 松 沢 成 文 殿

神奈川県情報公開審査会
会 長 堀 部 政 男

行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)


平成20年12月26日付けで諮問された羽田空港への連絡道路等に関する資料一部非公開の件(諮問第577 号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
(仮称)東京神奈川臨海部連絡道路に係る知事答弁資料の添付資料のうち、次に掲げる部分は、公開すべきである。
(1)「国への要望活動等について」に記載された要望者、要望者の発言及び要望の相手方
(2)「神奈川県議会羽田空港再拡張・国際化推進議員連盟について」に記載された神奈川県議会議員の氏名及び氏名を特定し得る情報

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
不服申立ての趣旨は、神奈川県知事(以下「知事」という。)が、平成20年11月28日付けで、(仮称)東京神奈川臨海部連絡道路(以下「本件道路」という。)に係る知事答弁資料及び添付資料(以下「本件答弁資料等」と総称する。)並びに京浜臨海部基盤施設検討会事務局(以下「本件事務局」という。)への提出資料(以下「本件提出資料」という。)を一部非公開とした処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める、というものである。

(2)不服申立ての理由
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。

ア 神奈川県議会羽田空港再拡張・国際化推進議員連盟(以下「本件議員連盟」という。)は、形式的には神奈川県議会の公式な組織ではなくても、会派や神奈川県議会議員(以下「議員」という。)として名前を連ねていることから、実質的には個人としてではなく、議員としての活動であると考えられるため、本件議員連盟に加入している議員の氏名(以下「本件氏名」という。)は、公開すべきである。

イ 実施機関は、本件答弁資料等のうち「国への要望活動等について」(以下「本件要望活動資料」という。)には、事実関係の確認が不十分であるなど不正確な情報が含まれていると説明しているが、不正確な情報を答弁資料とするのは問題である。

ウ 実施機関は、事業の適正な遂行に影響を与えるおそれがあると説明しているが、本件道路の整備事業(以下「本件事業」という。)は都市計画決定がされていない法的根拠のない構想段階であり、適正な遂行に影響を与えるという説明は妥当とはいえない。

エ 公共事業は、一度法律上のルールにのってしまうと、県民レベルで意見を述べることが難しく、本件事業はまだその段階に達していないので、未成熟な情報も公開することで、一部の行政だけではなく、県民も含めて議論をしていく必要があると考える。

オ 実施機関は、不動産売買に大きな影響を与えることを理由に非公開としているが、本件事業の予定地については、独立行政法人都市再生機構が地主であり、また川崎市も都市計画決定をしており、安易に地価高騰が起こることはないと思われるので、妥当な理由ではない。

カ また、交通量等のデータについて、人の生命等を保護するため、公開することが必要であると認められる情報には該当しないと説明しているが、環境保全は広い意味で人の生命や健康に関わる情報であると思われる。道路については、様々な公害があり、人の生命や健康に関わる情報に該当する。

キ 不服申立人は、本件事業自体に反対しているわけではなく、本当の意味での合意が必要であると考えている。経済的効果と環境面の負荷とを比較し、考慮することなども必要であり、判断材料とするため、情報の公開を求める。

3 実施機関(県土整備部都市計画課)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。

(1)本件答弁資料等及び本件提出資料(以下「本件行政文書」と総称する。)について
ア 本件答弁資料等は、平成20 年神奈川県議会9月定例会(以下「9月定例会」という。)における、本件道路に関する一般質問に係る知事答弁資料及び添付資料であり、以下に掲げる文書により構成されている。
(ア)知事答弁資料
(イ)添付資料
a 京浜臨海部基盤施設検討会(以下「本件検討会」という。)について
b 第2回本件検討会における検討内容等について
c 本件要望活動資料
d 本件道路の想定スケジュールについて(以下「本件スケジュール資料」という。)
e 本件議員連盟について(以下「本件議員連盟資料」という。)
f 平成19 年12 月県議会定例会知事答弁要旨

イ 本件提出資料は、平成19 年度に本県が本件事務局である国土交通省関東地方整備局(以下「地方整備局」という。)に対して提出したものであり、以下に掲げる文書により構成されている。
(ア)本件道路に関する今後の進め方について(案)(以下「本件進め方資料」という。)
(イ)本件道路の目的と効果(以下「本件目的・効果資料」という。)
(ウ)本件道路概略ルート・構造に関する比較検討表(以下「本件ルート等比較資料」という。)並びに本件道路の概略ルート・構造の絞り込みに向けた課題整理及び添付資料(以下「本件課題整理資料等」と総称する。)

(2)本件処分において非公開とした情報について
本件処分において非公開とした情報の概要は、次のとおりである。

ア 本件答弁資料等
(ア)本件要望活動資料に記載された実施内容
(イ)本件スケジュール資料に記載された未確定情報
(ウ)本件議員連盟資料に記載された個人情報
イ 本件提出資料
(ア) 本件進め方資料に記載された未確定情報
(イ)本件目的・効果資料に記載された図表等の一部(以下「本件図表等」という。)
(ウ)本件ルート等比較資料に記載された検討内容及び本件課題整理資料等
に記載された整理内容及び添付資料

(3)神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第1号該当性について
本件答弁資料等のうち本件議員連盟資料には、本件氏名及び本件氏名を特定し得る情報(以下「本件氏名等」と総称する。)が記載されているため、条例第5条第1号本文に該当すると判断し、非公開とした。
また、本件議員連盟は、法令等に根拠のある組織ではなく、あくまでも任意の団体であり、さらに、本件氏名等は公表されていないことから、同号ただし書アからエまでのいずれにも該当しない。

(4)条例第5条第3号及び同条第4号該当性について
ア 本件答弁資料等のうち本件要望活動資料に記載された実施内容については、あくまでも答弁内容に係る周辺情報を記載しているという位置付けであり、答弁の際に、知事に記憶を呼び起こしてもらうという趣旨で作成されたものであって、答弁の中で公にされることは前提としていない。
また、要望活動は、公にすることを前提として行ったものではなく、会談の場において報道機関は入っておらず、新聞報道もされていない。
このような公表を前提としていない会談の実施内容を公開すれば、国との信頼関係が損なわれ、今後の関係機関との率直な意見交換などが妨げられるおそれがあるとともに、本件事業の適正な遂行に支障が生じるおそれがある。
以上により、条例第5条第3号及び同条第4号に該当すると判断し、非公開とした。

イ 本件答弁資料等のうち本件スケジュール資料には、県や関係機関の意思決定を経ていない未成熟情報や未確定情報が含まれている。
事業主体が決定していないなど、何ら事業計画が決定していない現段階において、このような未成熟、未確定な情報が公開された場合、今後の関係機関での検討の中立性が損なわれるとともに、関係機関との率直な意見交換等が妨げられるおそれがある。また、スケジュールが既成事実化することにより、県民に不正確な理解や誤解を与え混乱を生じさせるとともに、周辺の不動産売買等に関連し、特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがある。
また、関係機関に不信感や誤解を生じさせ、今後の本件事業の適正な遂行に支障が生じるおそれがある。
以上により、条例第5条第3号及び同条第4号に該当すると判断し、非公開とした。

ウ 本件提出資料のうち本件進め方資料、本件ルート等比較資料及び本件課題整理資料等については、本県が地方整備局に対して本件検討会の開催を促すために独自に作成した資料であり、その内容は、公開を前提に関係機関と調整して意思決定されたものではなく、未成熟情報や未確定情報が含まれている。本県は、本件事業の事業主体となることはないが、本件検討会のメンバーであることから、一定の合意の下に作成されたものと受けとられるおそれがある。
本件道路ができれば、当該予定地については、地価高騰が予想される中、このような未成熟、未確定な情報が公開された場合には、周辺の不動産売買等に関連し、特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがある。
また、このような未成熟、未確定な情報が既成事実化することにより、関係機関に不信感や誤解を生じさせ、本件事業の適正な遂行に支障が生じるおそれがある。

以上により、条例第5条第3号及び同条第4号に該当すると判断し、非公開とした。

(5)条例第5条第4号及び同条第5号該当性について
ア 本件図表等については、その基となるデータ(以下「本件提供情報」という。)は、地方整備局から「非公表」及び「返却すること」という条件の下に任意に提供を受けたものである。
また、本件図表等に記載されている交通量等の情報については、一つの路線を考えるときに、周辺の道路や類似の道路の交通量推計との整合をとりながら精査した上で公表するというのが国の手法であるが、本件提供情報はそのような精査を行っていない段階のものである。

イ こうした中で、本件図表等を公開することは、本件提供情報の提供元である地方整備局との信頼関係が著しく損なわれるとともに、地方整備局から検討に必要な資料の提供を受けられなくなり、今後の本件事業の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがある。さらに、本件事業だけではなく、県土整備部の事業全体に大きな支障が生じるおそれがある。

以上により、条例第5条第4号及び同条第5号に該当すると判断し、非公開とした。
また、本件図表等は、交通量等に関する情報であり、人の生命等を保護するため、公開することが必要であると認められる情報ではないことから、同号ただし書に該当しない。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件行政文書について
本件行政文書のうち、本件答弁資料等は、9月定例会における、本件道路に関する一般質問に係る知事答弁資料及び添付資料であり、本件提出資料は、平成19年度に実施機関が本件事務局である地方整備局に提出した資料である。

(3)条例第5条第1号該当性について
条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。

ア 条例第5条第1号本文該当性について
(ア)条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とすることができると規定している。
したがって、同号本文は、明白にプライバシーと思われる個人情報はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。

(イ)本件答弁資料等のうち、本件議員連盟資料に記載された本件氏名等は、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であるため、同号本文に該当すると判断する。

イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
(ア)条例第5条第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書アからエまでに該当するものは、公開するとされている。

(イ)本件議員連盟は、法令等に根拠のある議会の公式な組織ではなく、任意の団体であるが、議員をもって構成されており、また、羽田空港の再拡張・国際化を確実に実現し、京浜臨海部を中心とした本県の経済の活性化を目指すことを目的として設立されたものである。本件議員連盟の設立趣旨から判断すると、本件議員連盟の活動は、議員としての活動であると認められる。

(ウ)議員としての活動は、議員が公選による県民の代表であることを考えると、一般に広く公にされることが求められているものであり、また、本県が推進する神奈川口構想と密接に関連する活動の公知性の高さに照らすと、本件氏名等は、公にすることが予定されている情報であると認められる。

(エ)また、当審査会が確認したところ、本件議員連盟の会長の氏名は既に新聞記事等で公表されており、一部の議員は、当該議員自身のウェブログにおいて、本件議員連盟に加入していることを明らかにしていることが認められるなど、公開しても個人の権利利益を不当に害するおそれがないものと考えられる。

(オ)以上のことから、本件氏名等は、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報であり、同号ただし書イに該当すると判断する。

(4)条例第5条第3号該当性について
ア 条例第5条第3号は、「県の機関内部若しくは機関相互又は県の機関と国若しくは他の地方公共団体(以下「国等」という。)の機関、独立行政法人等若しくは地方独立行政法人との間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」は非公開とすることができると規定している。

イ 本件要望活動資料について
(ア)本件答弁資料等のうち、本件要望活動資料には、要望者及び要望者の発言内容並びに要望の相手方及び要望の相手方の発言内容が記載されている。

(イ)このうち、要望者及び要望者の発言内容については、本県において緊急かつ重要な施策等について、国への提案として取りまとめ、公表されている「平成21 年度国の施策・制度・予算に関する提案(平成20年5月)」等に同趣旨の内容が記載されていることから、既に公にされている情報であると認められる。
また、要望の相手方については、本件処分において既に公開されている情報の中で明らかになっており、要望者の後の発言者が要望の相手方であることは容易に判別できるものである。

(ウ)一方、要望の相手方の発言内容については、他の媒体等で公表されている事実は認められず、また、公開を前提としていない中で、当該発言内容を公開することは、外部からの干渉、圧力等により不当に率直な意見の交換が妨げられるとともに、国との信頼関係が損なわれ、今後の関係機関との率直な意見の交換が妨げられるおそれがあると認められる。

(エ)したがって、本件要望活動資料に記載された情報のうち、要望者、要望者の発言内容及び要望の相手方は、条例第5条第3号に該当しないが、要望の相手方の発言内容は、同号に該当すると判断する。

(5)条例第5条第4号該当性について
ア 条例第5条第4号は、「県の機関、国等の機関、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公開することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は非公開とすることができるとして、アからオまでの各規定においてその典型を例示している。

イ 本号アからオまでの各規定に掲げられている情報は、本号の柱書きに該当する情報の典型的な例を示すものであり、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」には、これらに類似し、又は関連する情報も含まれるものとされる。

ウ 本件要望活動資料について
本件要望活動資料のうち、要望者、要望者の発言内容及び要望の相手方については、前記(4)イ(イ)のとおり、既に公表されている情報又は本件処分において既に公開されている情報の中で明らかになっていることから、公開することにより、国との信頼関係が損なわれ、今後の事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。

エ 本件スケジュール資料について
本件答弁資料等のうち、本件スケジュール資料には、本件事業に係る想定スケジュールが記載されている。
当該想定スケジュールは、県や関係機関での意思決定を経ていない未成熟又は未確定な情報であると認められる。
したがって、事業主体を含め事業計画が決定していない現段階において、本件事業の事業主体ではない本県が、本件スケジュール資料に記載された未確定情報を公開すれば、関係機関に不信感や誤解を生じさせ、今後の事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

オ 本件進め方資料、本件ルート等比較資料及び本件課題整理資料等について
(ア)本件提出資料のうち、本件進め方資料には、本件事業に向けた想定スケジュールが記載されている。また、本件ルート等比較資料には、本件道路のルート及び構造に関する比較検討内容が、本件課題整理資料等には、ルート及び構造の絞込みに向けた課題整理等の情報がそれぞれ記載されている。

(イ)本件提出資料は、地方整備局に対して本件検討会の開催を促すために実施機関が独自に作成した資料であり、その内容についても、関係機関と調整し、意思決定されたものではない。事業主体を含め事業計画が決定していない現段階において、当該情報を本県が公開することは、本県は本件事業の事業主体ではないが本件検討会のメンバーであることから関係機関の一定の合意の下に作成されたものと受け取られるおそれがあるとともに、関係機関に不信感や誤解を与え、今後の事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

カ 本件目的・効果資料に記載された本件図表等について
本件提出資料のうち、本件目的・効果資料に記載された本件図表等には、本件道路が整備された場合の交通量等の情報が記載されている。
実施機関は、本件図表等の基となる本件提供情報は、地方整備局から、「非公表」及び「返却すること」という条件の下で任意に提供を受けたものであると説明している。
本件提供情報が、公にしないとの条件で地方整備局から任意に提供を受けた情報であることを考えると、本件図表等を公開することにより、本件提供情報の提供元である同整備局との信頼関係が著しく損なわれるとともに、同整備局から検討に必要な資料の提供を受けられなくなり、今後の事業の適正な遂行に影響を及ぼすおそれがあると認められる。

キ 以上のことから、本件要望活動資料に記載された要望者、要望者の発言内容及び要望の相手方については条例第5条第4号に該当しないが、本件スケジュール資料に記載された未確定情報、本件進め方資料に記載された未確定情報、本件ルート等比較資料に記載された検討内容、本件課題整理資料等に記載された整理内容及び添付資料並びに本件目的・効果資料に記載された本件図表等については、同号に該当すると判断する。

ク 実施機関は、本件要望活動資料に記載された要望の相手方の発言内容は、条例第5条第4号に該当すると説明しているが、当該情報については、前記(4)イ(エ)のとおり同条第3号に該当すると認められるので、同条第4号該当性を判断する必要はない。
また、実施機関は、本件スケジュール資料に記載された未確定情報、本件進め方資料に記載された未確定情報、本件ルート等比較資料に記載された検討内容並びに本件課題整理資料等に記載された整理内容及び添付資料について、条例第5条第3号に該当すると説明しているが、当該情報については、同条第4号に該当すると認められるので、同条第3号該当性を判断する必要はない。

(6)条例第5条第5号該当性について
ア 条例第5条第5号本文該当性について
(ア)条例第5条第5号本文は、「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供された情報であって、個人又は法人等における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」を非公開とすることができると規定している。

(イ)実施機関は、本件図表等の基となる本件提供情報は、地方整備局から「非公表」及び「返却すること」という条件の下で任意に提供された情報であり、また、公にしないとの条件を付する理由については、交通量等のデータは、一つの路線を考えるときに、周辺の道路や類似の道路の交通量推計との整合をとりながら精査した上で公表するというのが国の手法であって、本件提供情報はそのような精査を行っていない段階のものであると説明している。

(ウ)本件提供情報は、実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供された情報であり、公にしないとの条件を付することが本件提供情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められることから、本件提供情報を基に作成された本件図表等は、条例第5条第5号本文に該当すると判断する。

イ 条例第5条第5号ただし書該当性について
(ア)条例第5条第5号ただし書は、同号本文に該当する情報であっても、「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる」場合には、例外的に公開できると規定している。
この規定は、人の生命、身体等への危害等が現に発生しているか又は過去に生じた事態から類推して将来そのような危害等が発生することが予測される状態が存在している場合であって、このような危害等から県民を保護するため公開することが公益上必要であると認められる情報である。

(イ)不服申立人は、交通量等のデータについて、環境保全という観点から、道路については様々な公害があり、人の生命や健康を保護するため、公開することが必要な情報であり、同号ただし書に該当する旨主張しているが、本件図表等に関して、人の生命、身体等への危害等が現に生じているか又は過去に生じた事態から類推して将来このような危害等が発生することが予測される状態が存在しているとは認められないことから、本件図表等は、同号ただし書に該当しないと判断する。

5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙
(略)


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