ハッキング

3日から1週間観察するといい

その人から発せられる言葉は

その人の価値観や道徳観あるいは

その人となりを示す基準を提供する

どんな言葉を吐き

どんな評価をし

どんな好き嫌いを口にするか

ことばはその人の尺度を示す

私の文章で発せられる言葉は

すべて私の尺度であり

私の知りうることしか述べられない

私を超えて言葉が出てくることはない

物事の判断や好き嫌いも

私を超えて行われることはなく

他人のことを語っているときでさえ

自分の価値基準を超えることはない

たとえ一般化した第三者的な話しぶりをしていても

それは同意や賛同を求めるためにすぎず

私を超えた一般論などありえない

私を通過して話される言葉に

私のない言葉は存在しないのである

彼がこういっていたという場合も

私はすべてを語っているわけでない

文脈や何もかもを語っているわけでなく

私が抽出した彼の言葉でしかないのだ

伝聞は伝言ゲームのように変化していき

元の形をとどめおかなくなっていくものなのだ

だから欠席裁判はいけないのだけど

そんなことはお構いなしが世の中なのだろう

時系列の事実現象を並べつつ意見を言えば

真実のように聞こえてしまうものである

真実を捻じ曲げて事実現象を羅列すれば

本当のことなんて糸も簡単に捻じ曲げられ

人々の頭はハッキングされてしまうのである

なぜなら直接関係していない事柄に

自己を投影したり

干渉を試みたり

世間話が大好きだから

全然関係のないテレビを見て楽しんだり

他人の話を物語のように楽しんだりするのが人だからである



この文章を読んでいる時点で

すでに私の言葉にある意味ハッキングされており

物事の見方やいろいろの反応がありうるのだ

しかし

人はそうやって他人とかかわり

知らぬ間にお互いに染めあい

心の深いところで変化していくのかもしれない



普通仏教の場合

釈迦の教えに従い悟りを得て解脱するために

信仰するものであり

ただ単にお経を唱えて

私は信仰していますとばかりに

優越感にたって悦に入ることを目的としていない

悟りを得て解脱するためのひとつの教えであり

他者が違う方法で試みていても構わないわけで

それが唯一の方法でないのは

般若心経にもかいてあり

お経に従えとは書いていないのである

神や仏というものがどんなものであるのか

どこか遠くに存在する独立したものなのか

またごく小さな誰の中にもあるものなのか

善性と悪性を分離させたものなのか

人間より絶対的な力があり善悪併せ持つのか

ごく小さな示唆を与えてささやくようなものなのか

そんなこともわからない

私は宇宙の遺伝子の弦について触れたけれども

それすらもわかったことではない

神や仏を名乗って聞こえてくる存在はある

しかし幻の声であり

人間の機能の問題なのか

建物構造上の問題から誰かがおちょくっているのか

それすらもわからないのである

あるいは病気が激しくなり倒錯した世界の中で

さまざまな現象が示唆して示そうとする

それさえも薬物中毒者の妄想なのかもわからない

それだから

現れた現象から示唆することがあっても

この世界に還元することを拒む者たちが現れる

どうせ妄想の類なのだろうと遺棄されるからだ

中には何回かの悟りを得ているものもいる

もっと違う何かを体験しているものもいる

それらもまた病ゆえの現象とみなされるのだろう



仮想敵国へ船の輸送はないみたいだ

公安の車はそれでもいるようだ

トラックは相変わらず待機している

犬の散歩はいつものように行われている

決まった時間を告げる工場のサイレンが鳴った

私はコーヒーを飲み作業にかかる