* 平家物語(百二十句本) の世界 *

千人を超える登場人物の殆どが実在の人とされ、歴史上”武士”が初めて表舞台に登場する
平安末期の一大叙事詩です。

第六十九句「維盛都落ち」

2009-07-13 10:57:13 | 日本の歴史

  妻子を都に残すことに決めた維盛、北の方、幼い嫡男や姫
 に縋りつかれ、未練を断ち切れぬさま

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(本文の一部)

  修理大夫経盛の子息、皇后宮亮経正は、幼少にては、仁和
 寺の御室の御所に侍ひしかば、かくある怱劇のなかにも、御
 名残をきっと思ひ出して、侍五六騎召し具して、仁和寺殿へ
 馳せ参り、門前にて馬よりおり、申し入れられけるは、「一
 門、運尽きて、今日すでに帝都をまかり出で候。うき世に
 思ひのこすこととては、ただ君の御名残ばかりなり。

  八歳のとき、参りはじめ候うて、十三にて元服つかまつ
 り候ひしまでは、あひいたはることの候ひしよりほかは、
 御前をたち去ることも候はざりしに、今日よりのち、いず
 れの日、いずれの時、帰り参るべしとも覚えざることこそ
 口惜しう候へ。

  いま一度、御前に参りて、君をも見まゐらせたう候へど
 も、甲冑をよろひ、弓矢を帯して、あらぬさまの装ひにま
 かりなりて候へば、はばかり存じ候」とぞ申されける。
  御室あはれにおぼしめし、「ただその体をあらためずし
 て参れ」とこそ仰せけれ。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  <あらすじ>

<平経正、仁和寺御室とのお別れ>

(1) 経正は、小さいころから仕えた御室御所の守覚法親王
  お別れのご挨拶のため、平家都落ちの慌ただしいさ中に
  御所に立ち寄り、琵琶の名器“青山”をお返しした上で
  先行する帝(81代・安徳帝)のご一行を追って西下するの
  であった。(守覚法親王は、後白河院の第四皇子)
  (経正は、清盛の弟・経盛の子)
   寿永二年(1183)のことであり、この後、寿永三年
   (1184)“一の谷合戦”で討死する。

<平維盛、妻子との判れ>

(1) 維盛は、妻子を都に残すことに決めた。事情を伝え
  “なだめ、すかし”別れの場面が続くが、北の方(故・
  藤原成親の娘)や幼い嫡男の“六代”、姫の“夜叉”が
  すがりつき、未練の想いが断ち切れず、刻々と時は過ぎ
  遂には弟たち(資盛清経有盛など)に、出立を促され
  ありさまであった。

 (2) 故・斎藤別当実盛の子・斎藤五斎藤六の二人には、残
  さ
れた北の方や若君、姫君を守るように命じて都に残す
  こととした。

   平重盛       維盛:一の谷合戦の後、熊野沖入水
    の子ら     
:壇ノ浦合戦で討死
          清経:西海で入水
          有盛:壇ノ浦合戦で討死
          師盛:一の谷合戦で討死
          忠房:平家滅亡後、紀伊湯浅で兵を
             挙げるが、頼朝の策略で鎌倉
             へ召される途中で、謀殺さる

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<独り言>

  1987年から90年にかけてのバブル経済期に、こんな言説
 があった。
 「汗水垂らして金儲けする時代はもう終わった。頭を使っ
 て“投機”で金儲けをする時代がやってきた。今時、投機
 をやらない輩は、世捨て人だ」と。

  努力、勤勉、誠実、創意工夫など日本古来の徳目を全否
 定するようなことを、某著名経済評論家が真顔?で云うの
 である。その後どんな経緯を辿ったかは、皆さんご存知の
 通りである。

 今、この評論家はどんな顔をして記事を書いているのだろ
 うか。

  どこぞの超大国の、傲慢資本主義のとばっちりで、戦後
 六十数年の日本でも、“百年に一度”の経済危機などと無
 責任なことをのたまう政治家や学者、評論家がいる。

  ましてや、この半月ひと月の政権与党の政治家の皆さん
 の言動!、まさに“政治ヤ”の末期症状と云われても仕方
 のない有様で、
我々庶民の大迷惑は、この上ありません。

  真面目な心ある政治家は、苦々しく思っているに違いあ
 りません。

  これでも、選挙になると、候補者の人柄や主張をろくに
 聞いたり調べたりせずに、投票したり“棄権”したりする
 多くの人があるのも事実です。

                                平成21年7月19日

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  

 

 

 

 


 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿