* 平家物語(百二十句本) の世界 *

千人を超える登場人物の殆どが実在の人とされ、歴史上”武士”が初めて表舞台に登場する
平安末期の一大叙事詩です。

第六十二句『火打合戦』(ひうちがっせん)

2008-12-19 11:56:33 | 日本の歴史

      火打が城(左上)に籠もる木曾の軍勢と、寄せる平家の大軍(右下)

<本文の一部>
   木曾義仲(源氏)は、わが身は信濃にありながら、越前の国火打が城をぞかま
 えける。大将軍には平泉寺の長吏斎明威儀師、稲津の新介、齊藤太、林の六郎
 光明、富樫の入道仏誓、入善、宮崎、石黒を先として、七千余騎ぞ籠りける。

  さるほどに、平家の先陣は越後の国木辺山をうち越えて、火打が城へぞ寄せら
 れける。この城のありさまを見るに、盤石そばたちて四方の峰をつらねたり。山を
 うしろに山をまへに当つ。
  城のまへには、能見川、新道川とて二つの川の落ちあひに大木を立てて、しがら
 みをかき、せきあげたれば、水、東西の山の根にさし満ちて、ひとへに大海に臨む
 がごとし。影南山をひたして、青うして滉瀁たり。波西日を沈めて、紅にして奫淪た
 り。昆明池のありさまも、これにはいかでかまさるべき。

  平家は、むかへの山に宿し、むなしく日数をおくる。城のうちの大将軍、平泉寺
 の斎明威儀師、心がはりして、消息を書きて、蟇目の中に籠めて、しのびや
 かに山の根をつたへて、平家の陣へぞ射られたる。「この蟇目の鳴らぬこそあや
 しけれ」とて、取ってこれを見るに、中に文あり。ひらきて見れば、

    かの川は往古の淵にあらず。一旦のしがらみをかきあげたる水なり。
   いそぎ雑人どもをつかはして、しがらみを切り破らせ給へ。山川なれば、
   水はほどなく落ちんずらん。馬の足立よく候へば、いそぎ渡させ給へ。
   うしろ矢は射てまゐらせん。    平泉寺の長吏斎明威儀師  

 とぞ書いたりける。

  大将軍、副将軍、大きによろこんで、やがて雑人どもをつかはし、しがらみを
 切り破らせらる。案のごとく、山川なれば、水はほどなく落ちにけり。そのとき、
 平家の大勢ざっと渡す。斎明威儀師は、やがて平家と一つになって忠をいたす。
 稲津の新介、斎藤太、入善、宮崎、これらは、みなしばし戦ひ、城を落ちて、加
 賀の国へぞ引きしりぞく。

  平家やがて加賀の国へうち越えて、林、富樫が二箇所の城郭を追い落す。
 さらに面を向くべしとも見えざりけり。都にはこれを聞き、よろこぶことかぎりなし。

  同じく五月八日、平家は加賀の国篠原にて勢揃ひして、それより軍兵を二手
 に分けて、大将軍には小松の三位の中将維盛。副将軍には越前の三位通盛。
 先陣は越中の前司盛俊。都合その勢七万余騎。加賀と越中のさかひなる砺波
 山へぞ向かはれける。搦手の大将軍には左馬頭行盛、薩摩守忠度、三万余騎
 にて、能登と越中とのさかひなる志保坂へこそ駆けられける。

  さるほどに木曾の冠者義仲、越後の国府より五万余騎にて馳せ向かふ。先に
 十郎蔵人行家を大将軍にて、一万余騎を引き分けて、志保坂の手へさし向けら
 る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

           (注) カッコ内は本文ではなく、注釈記入です。
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 <あらすじ>

 <木曾源氏、火打が城を落ちる
  (1) 木曾義仲は、自らは信濃の国にて居て、斎明威儀師を総大将に七千余騎で
    越前(福井県)の“火打が城”に陣を構える。
     平家の先陣が火打が城に到達するが、小高い丘の上の城は岩石そびえ、
    山川の自然の要害に守られ、一歩も近づくことができず、攻めあぐねていた
    ずらに日を過ごすばかりであった。

  (2) 義仲軍の大将軍・斎明威儀師は、日頃から平家に心を寄せていたので、
    ある日“密書”を平家の陣中に射込み、せき止めて造った俄か作りの“川”
    のしがらみを破り落とさせた。

  (3) 平家軍は、一斉に火打が城に攻め込み、城内の斎明威儀師も自分の軍に
    討ちかかる。この為城内の猛将たちも多勢に無勢!、やむを得ず城から落
    ちて加賀の国へと総退却する。
     平家は更に加賀へ入り各所の城郭を打ち破って連戦連勝の勢いであった。

 <義仲(源氏)勢と平家勢の対峙
  (1) 五月八日、平家は大将軍・小松の中将・維盛以下、七万余騎で砺波山に向
    かい、搦め手には左馬守・行盛、薩摩守・忠度以下の三万余騎にて能登(石
    川)と越中(富山)の境にある志保坂へ駆けつける。

  (2) 義仲(源氏)軍は、志保坂へ一万余騎を、更に各所に陣を分け、自らは砺波
    山の北の埴生に陣をとった。

  (3) 木曾(源氏)の計略で、黒坂の上に白旗(源氏)を三十流ればかりを打ち立て
    る、これを見た平家勢は“源氏の先陣が早くも寄せてきた”と思い、こゝは山
    高く谷も深い、背後に回られることはあるまい・・・と、馬を休ませ兵も馬から
    降りて休息に入ったのであった。

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     平成二十年('008)も数日を余すのみとなりました、この年もたくさんの
   波乱に富んだ出来事があり、特に秋以降の世界経済の激変には驚くば
   かりでした。

 <大きなできごと>
    1、中国製ギョーザの毒入り事件(今現在、うやむやのまゝ・・・・・)
    2、中国産“うなぎ”や“たけのこ”等の「産地偽装」事件の続出!
            この他、たくさんの“偽装”事件が起こる。
    3、事故米食用転売事件。(農林水産省の責任は大!)

    4、自民党・首相が就任早々に突然の辞任!する珍事!
      しかも続けて2人も・・・・  

    5、無差別殺人!“誰でもよかった・・・・・”(茨城・土浦、東京・秋葉原)

    6、緊急搬送中の“急患”の病院側の受け入れ拒否が常態化?の異常。
      (政治は、一体何をしている・・・・)

    7、厚生年金記録改ざん等、社会保険事務所の組織的関与の実態。

    8、オイルマネーによるマネーゲームが、重油異常高騰を招き、市場
      の重油やガソリンの極端な高値を呼び、数ヶ月後には又急落する。
    
    9、米国発の金融危機。サブプライム・ローンに端を発した金融の異常
      事態!、9月の大手証券・リーマンブラザーズの破綻以来、世界を
      駆け巡り、世界の需要が半分に?落ち込む“ハーフエコノミー”が
      ささやかれ、世界不況異常円高による日本経済への大打撃は、
      年の暮れに大手企業を中心に「期間労働者」や「派遣労働者」の契
      約打ち切り、寮の退去・・・・という悲惨な事態を起こし、社会問題化
      する。

   10、明るい話題を探したら・・・
         北京五輪での日本人選手の活躍(水泳の北島選手など)
         ノーベル物理学賞(南部先生、小林先生、益川先生)
         ノーベル化学賞(下村先生)・・・の日本人科学者受賞!。

      来年は、とても厳しい一年になると云われているので、叶わぬ時の
      神頼み?・・・とばかり、歳神さまを迎えるにあたり“お供え”ものを
      フンパツ?して、ひたすらお祈りするばかりです。
    
             皆さま、どうぞ良いお年をお迎え下さい

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