* 平家物語(百二十句本) の世界 *

千人を超える登場人物の殆どが実在の人とされ、歴史上”武士”が初めて表舞台に登場する
平安末期の一大叙事詩です。

第六十句「城の四郎官途」(じゃうのしらうくゎんど)

2007-08-23 10:25:21 | 日本の歴史

  木曾義仲軍の攻略に向う、「城四郎長茂」勢力(右側の軍勢)
  ”はかりごと”で赤旗(平家の旗)を振りかざす「木曾の軍勢」(左側)

 <本文の一部>

  五月二十四日、改元あって、「寿永(じゅえい)」と号す。
 その日越後の住人、城の四郎資茂(すけもち)、越後守に任ず。「兄資長逝去のあ
 ひだ、不吉なり」とて、しきりに辞し申しけれども、勅命なれば、力およばずして、「資
 茂」を「長茂(ながもち)」と改名す。 

   同じく九月二日、城の四郎長茂、越後、出羽、会津四郡の兵ども引率して、
 都合その勢四万余騎、木曾追罰のために、信濃の国へ発向す。

  九月十一日、横田川原に陣をとる。
 木曾はこれを聞き、三千余騎にて、依田の城を出でて馳せ向ふ。信濃源氏
 に井上の九郎光盛がはかりごとにて、にはかに赤旗を七ながれつくり、か
 しこの峰、ここの洞より、案内者なりければ、赤旗どもを手々にさしあ
 げ、さしあげ、寄りければ、城の四郎これを見て、「何者か、この国にも
 平家の方人(かたうど)する人がありけるが、着きぬよ」とて、いさみのの
 じるところに、次第に近うなりければ、合図をさだめて七手が一つにな
 る。三千余騎一所に、鬨をどっとぞつくりける。用意したる白旗ざっとさ
 しあげたり。

  越後勢ども(平家側)、「敵は何の十万騎といふことかあらん。いかにも
 かなふまじ」とて、色をうしなふ。にはかにふためき、あるいは川に追ひ
 入れ、あるいは悪所に追ひ落され、たすかる者はすくなう、討たるる者ぞ
 おほかりける。城の四郎、頼みきつたる越後の山野の太郎、会津の乗湛房
 なんどいひける兵ども、そこにてみな討たれぬ。わが身もからき命生きて
 川をつたって越後の国へ引きしりぞく。・・・・・

                   (注)カッコ内は本文ではなく、注釈記入です。

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 <あらすじ>

 <城の四郎、越後守に任ぜられ”木曾追討”に向う

(1)五月二十四日、年号を”寿永”(1182)と改めた。
   越後の住人、城の四郎資茂(すけもち)が越後守に任ぜられた。
    兄・資長の死去(前回の第五十九句)後のこともあって、辞退した
   が、勅命のため任官して、名前を”長茂(ながもち)”と改名した。

(2)同じく九月二日、長茂は軍勢四万騎をもって「木曾追討」のために
   信濃の国へ向って出発する。

 <木曾勢の”はかりごと”によって、城の四郎側は惨敗する

(1)迎え撃つ木曾勢の”井上九郎光盛”(信濃源氏)は、”はかりごと”で
   平家の赤旗を造り、自らの三千騎をあちこちの峰に分けて、赤旗をさ
   し上げながら近づき、城の四郎長茂の軍勢に接近したところで、源氏 
   
の”白旗”に変えて一斉に襲いかかった。

(2)越後勢(城の四郎長茂)は、平家の”赤旗”が近寄ってくるので安心し
   て進んでいたところ、いきなり”源氏”の”白旗”に変わったために
   浮き足立って、名だたる勇者・豪傑ともども多数の者が討ち取られて
   城の四郎長茂
は、命からがら越後へ落ち延びたという。

 <越後勢の敗戦に、中央の平家は無頓着、世人は呆れる

(1)九月十六日、越後勢の敗戦などを問題にもせず、平宗盛の卿は
   ”大納言”に復任して”内大臣”となり、平家一門のほか公卿など
   随行して華々しく拝賀に参上したと伝えられる。

(2)東国や北国に”源氏”の武士が立ち上がり、今にも都へ攻め上ろうと
   する”非常時”に、このような華やかな昇進の祝い行事にうつつを
   ぬかす平家一門の有様に、世人もいささか”あきれ顔”の様子。

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         「平成の世相」

       親が子を殺し、子が親を殺す・・息を呑むような事件が
       日々起こる平成の世!

        家族構成も、身内の扶養意識も全く変わってしまった
       かのような
今の社会に、人々の欲望だけが突出している
       ように見えてなりません。

        人間が欲求不満を持つのは、物が足らないことより
       絶えず新しい欲望に駆り立てられることによるのだ!

       ・・・・と、大昔のえら~い人が言ってますが・・・