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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「ビルマの星空」 伊藤正之

2015-03-16 | 戦記・戦史・軍事
「辻参謀は、別名を青竹参謀とか鬼参謀とか云った陰口は、ビルマ当時からよく聞いていたが、何事も割り切って、武人の本領を発揮される参謀だ」

 名古屋生まれの青年が工兵として南方戦線に送られ、ビルマ侵攻作戦に参加したものの、やがて連合軍の反抗によって白骨街道を撤退、敗戦、抑留を経て復員するまでの体験談……というより病院はどんな様子だったとか、現地の人々との日常会話はどうだったとか、牛を殺す時はどうしたとか、洗濯やトイレはどうしていたとか、備忘録の自費出版本。
 牛の解体話で、舌は真っ先に切って捨てたとあり、やはり牛タンは戦後のものなんだなあと確認。
 
【ビルマの星空】【実録東南アジア参戦記】【伊藤正之】【わだち】【名古屋市駐車場公社】【豊橋市中部第11部隊】【野戦病院】【工兵隊ソース】【アラカン】【夜行軍】【鉄道線路の断面】【製材所】【架橋】【製紙】【稲作】【僧の戒律】【野戦料理】【バナナの種】【慰安婦】
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「ペガサスと一角獣薬局」 柄刀一

2015-03-15 | ミステリー・推理小説
 “世界の伝説と奇観”という企画を担当するフリーカメラマンの南美希風は、世界各地を飛び回るが、行く先々で奇妙な事件に遭遇する。
 ドラゴンに踏みつぶされた男、ユニコーンに串刺しにされた男、命を再生する館……だが、幻想の果てに、南は論理で糸口を見出すのだった……。

 幻想と論理の推理短編集。トリックとしてはトンデモ系が多いかな。そう言われてみれば不可能とは言わないけれど、それで一発勝負で巧くいくのは奇跡だよとか、なぜそんなことをする必要が……とか、ツッコミどころが多い、トリックのためのミステリー。
 主人公が心臓移植手術で九死に一生を得たとか、担当編集者が実姉だという設定が、ちっとも本編ストーリーに絡んでこないことだけが気になりました。

【ペガサスと一角獣薬局】【柄刀一】【光文社文庫】【湖水地方】【氷河】【ウェールズ地方】【ランドエンド・ハウス】【ボトルシップ】
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「ななぱっぱ2~パパは7人」 岡崎裕信

2015-03-14 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 雪女やら酒呑童子の転生やら、異形異能の美少女7人を養子にしてしまい、家族として暮らし始めた鶴谷天馬だったが、ある日突然記憶を失った15歳の姿で朝を迎えたことから始まる騒動の顛末……の2巻目。今回は、天馬が7人に分裂してしまい……。

 さすがに娘だけで7人はキャラ多すぎ。無理に口調で区別しようとするものだから、ことさら読みにくくなっている気がします。
 この作者の勢いで飛ばす作風は好きなのだけれど、勢いで飛ばしてしまうがゆえに、メインキャラが8人もいては1人1人が薄味となってしまいます。特に誰をメインにするということなく話が進んでしまっているので、この状況で8人は多いよ……。

【ななぱっぱ2】【パパは7人】【岡崎裕信】【Show】【スーパーダッシュ文庫】【パパとデート】【花火大会】【肝試し】【パパとデート】【メイド喫茶】【百合姉妹】【風邪】
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「ガンゲイル・オンライン1」 時雨沢恵一

2015-03-13 | VRMMO・ゲーム世界
「人間ってさ、選ばなかった方を過大評価するようにできているんだってさ」
 どちらを選んでも結局は後悔するというなら、迷ったときはコイントスで決めても良いではないかと美優。

 小比類巻香蓮は長身が災いして、すっかり引っ込み思案な女子大生。長身コンプレックスから人付き合いが苦手な彼女が少しでも自分の世界を広げようと始めたのが、仮想現実世界を舞台にしたゲームだった。
 気に入るアバターが手に入るまで、さまざまなゲームを転々とした香蓮がたどり着いたのは、荒廃した未来世界を舞台に銃撃戦を繰り広げる、GGO、ガンゲイル・オンラインだった……。

 リアルでは身長183cmの女子大生が操るアバターは、ゲーム最小と思しき身長150cmにも満たない、全身ピンクの戦闘服を身にまとったレン。彼女が女性プレイヤー“ピトフーイ”と出会ったことから、バトルロイヤルでおこなわれるチーム戦「スクワッド・ジャム」に参加することになった顛末の物語。時系列で言えば、ファントム・バレット編の直後あたりの話です。
 『キノの旅』の時雨沢恵一が『ソードアート・オンライン』のファントム・バレット編を読んで、これなら現代日本の少女が異世界で銃をぶっ放す話が書けると喜んで、アニメの銃器監修を担当した縁で実現したのがこの作品だそうです。
 確かにGGOの銃と鋼鉄の世界なんだけれど、文体があの、いかにも読者に語りかけるような調子で書かれていますし、チーム戦というだけあってさまざまなチームが参加しているけれど、それぞれの戦闘スタイルがきちんと書き分けられています。
 だから、壮絶な銃撃戦が終始繰り返されているにもかかわらず、登場する銃の紹介が何度も詳細にされているにもかかわらず、なんとなくほんわかした雰囲気になり、するすると飽きずに最後まで面白く読めてしまいます。
 リアルで頭がおかしいといわれているピトフーイの正体も含めて、これは続きが楽しみです。

【ソードアート・オンライン オルタナティブ】【ガンゲイル・オンライン(1)】【スクワッド・ジャム】【時雨沢恵一】【黒星紅白】【川原礫】【電撃文庫】【ホバークラフト】【トリガーハッピー】【P90】【新体操部】【航空自衛隊】
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「異世界の帝王」 H・ビーム・パイパー

2015-03-12 | 異世界転移・召喚
 複数の平行世界を管理する時間警察にも失敗はある。時間移送フィールドの事故で、1人の未開人が別時間線の世界へ紛れ込んでしまったのだ。万が一にも平行世界の秘密が漏れることがあってはならないと、時間警察はその男の捜索を開始した。
 その頃、籠城した凶悪犯の包囲に加わっていたはずのペンシルヴァニア州警のカルヴィン・モリス巡査部長は、自分がいつの間にか剣と銃の乱戦が続く見知らぬ世界にいることに気づいていて……。

 ラノベっぽい、昔のSF発掘してます。

「修道院、市役所、国会、閣議室で起こることはすべて重要なことであったが、そのどれひとつとっても戦場で批准されるまでは実施されたためしがない」
 プリンストン大学で歴史学の教授は、神学生だったモリスに歴史における軍事面を強調した。
 平凡な一警察官が異世界に飛ばされ、そこで生き残るだけではなく、ボヘミアの伍長を飛び越す出世をし、軍事技術から戦術戦略までに新機軸をもたらし、第五列を構築する一方で防諜体制を整え、階級制度を整備し、憲兵を生み出し……となんでもかんでもやらなくてはいけなくなったときに、なんとか対応することができたのは、徴兵で朝鮮戦争に参加した経験も大きかっただろうけれど、この指導方向を大きく間違えていた教授のおかげもかなり有ります。

 異世界に転移してしまい、そこで現代社会での知識や経験でのし上がって美女と権力を手に入れる話。
 今までとは異なる世界を訪問したとき、もとの世界では取るに足らない技術や知識が大きな影響力を持つことがあるというのは、(ライターで火が付いたとか日蝕を予言したとか)ファンタジーや未開部族の探訪記での定番の1つだし、最近のライトノベルでは、ゲーム世界が現実化して遊びでやっていたゲームのキャラクターが自分の本物の肉体になってしまい、剣技でも魔法でもチート状態……というのが増えてます。
 ただ、モリス巡査部長彼が偉かったのは、現地の人々に知識を伝え指導するにあたって彼らが間違えそうな部分を可能な限り予想して排除することに成功した点。独創性はないけれど、実現力があったのですね。
 ついでに日本のラノベとの相違点である「食」について。
 
『食事はハムにジャガイモに、そして豆料理だった』
 あとは薄切りのトウモロコシパンというのが農民の食事。負傷後の朝食はトウモロコシ粥。チーズやソーセージは存在していて、みんなワインの味にはこだわり、主人公は「蒸溜」技術を導入してウイスキーを作ってやりたいとは思うけれど、ホットドッグを発明しようとは思わないのでした。(2012/09/09 2015/03/12改稿)

【異世界の帝王】【H・ビーム・パイパー】【村山潤一】【ハヤカワ文庫SF】【平行時間警察】【戦争の技術】【迷宮入り】【砲耳】【火薬】【女は強し】
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「野獣の都~火星の戦士(1)」 マイクル・ムアコック

2015-03-12 | 異世界転移・召喚
 出版社によってマイクルだったりマイケルだったりするムアコックの火星シリーズです。そしてムアコックといえば、エターナル・チャンピオンシリーズが有名で、最近はほとんど天野喜孝のイラストだったりして、それはそれで好きなのですが……個人的にムアコックといえば、『火星の戦士』であり、イラストは「野獣の都」の松本零士なのですね。
 その『野獣の都』が、『野獣の都 永遠の戦士ケイン』とタイトル変更の3冊合本で復刻!……したけれど、イラストは松本零士じゃないです。イラストは最近のエターナル・チャンピオンシリーズでお馴染みの佐伯経多&新間大悟。なので、あえて松本版。

「理想というものがときによって血の忠誠心にまさる」
 アルグズーン族のモヴァット・ジャルドの言葉。

 シカゴ特殊研究所で物質移送機の開発をしていた若き物理学者マイクル・ケインは、その実験で見知らぬ平原に放り出されることとなった。送信機から受信機へと送り出されるはずが、太古の火星へと転送されてしまったのだ。
 この奇妙な植物が生い茂る異世界でケインは、マントに拳銃と短剣を装備したベルトだけを身につけた全裸の美女シザーラと出会うのだが……

 マンガ家をイラストレイターに起用してカラー口絵や豊富な挿絵を配し、物語では地球から異世界に転移してしまった理系主人公が、意外にも生身で戦っても強く、出会った美女と恋に落ち、敵だった戦士を友として大暴れする……というライトノベルの原型ともいうべき作品の1つ。
 ちょっと今のラノベのパターンから外れてるなと思われるのは、美女と名声を手に入れた頂点で元の地球に引き戻されてしまう……ということ。1965年の作品だけれど、1917年の『火星のプリンセス』とか、この手の話は無慈悲な別れというのがお約束パターンみたいな気がします。それから恋と冒険に大活躍だけれど、銃のシステムや剣の形状には言及しても食事にはこだわりません。「変わった食べ物」「良い匂い」と描写されるだけで、間違ってもハンバーガーとか発明しません。主人公はアメリカ人だし。

 これを最初に手に取ったのは、今は無き国鉄大府駅前の小さな本屋でのこと。電車の時間待ちでふらっと入って手にとって、そのオレンジイエローの表紙に打ちのめされてしまいました。しかも中イラストも松本節満載。スプリング形式のバネ銃と言いつつ、見た目はまるっきりコスモドラグーンですよ! 松本メーターも健在!!(2008/06/06 2012/04/26・2015/03/12改稿)

【火星の戦士】【永遠の戦士ケイン】【野獣の都】【マイクル・ムアコック】【ハヤカワ文庫SF】【エドワード・P・ブラッドベリイ】【飛行船】【エーテル宇宙船】
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「ソードアート・オンライン プログレッシブ3」 川原礫

2015-03-12 | VRMMO・ゲーム世界
 『ソードアート・オンライン』プログレッシブ篇も3冊目ですが、ほぼ予定通りの第四層突破まで。完結までに何十年かかるのか不安なペースです。

 たどり着いたアインクラッド第四層はベータ版では乾いた渓谷が連なるステージだったが、今はそこに水が満ちあふれ、湖と水路が広がる世界となっていて、移動するのにはゴンドラか最悪「水泳」技能が求められるようになっていた。
 第三層攻略成功のパーティーに参加せず(招待されなかった)キリトとアスナは、湖水に浮かぶヴェネツィアのようなロービアの街にいち早くたどり着き、そこでゴンドラを手に入れるためのクエストに取りかかるのだが……。

 ダークエルフのシナリオはまだ続いていて、再登場キャラとも合流しての城の防衛戦となります。

【ソードアート・オンライン プログレッシブ3】【川原礫】【abec】【電撃文庫】【MMORPG】【展望風呂】【おたまじゃくし】【攻城戦】


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「素敵にデンジャラス☆ラブ」 小寺真理

2015-03-11 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 1980年代後半から1990年代前半にかけて、講談社X文庫とかソノラマ文庫で軽いタイプのミステリーを書いていた小寺真理の作品。今、検索かけたら同名のよしもと芸人の人ばかり引っかかりますね。

「人間はどんなふうにだって変わることができる。いつでも、望む時に、望むようにね」
 “魔法使い”と呼ばれた大伯母の言葉。

 17歳の海堂麻菜が相続することが決まったのはリージェンシー・ハウス、イギリスの摂政時代に建てられた屋敷を日本に移築したものだった。
 この屋敷とそこに飾られたサー・ヒューの肖像をこよなく愛する麻菜ではあったが、大伯母に決められた1ヶ月という期限内に相続税相当額の15億円を工面するなど無理な話だ。だが、大伯母は彼女の手伝いとして、サー・ヒューの幽霊を呼び出した……。

 作者自らあとがきで設定に無理があって「ないことないこと」が多い作風と言い切っていますが、今から20年以上前の話としても税法・民法的にもツッコミどころ多し。伏線の張らなさぶりにも一言言いたい。
 肝心のお屋敷にもいろいろありそうといいつつ、単なる相続物件扱いだし、もったいない。

【素敵にデンジャラス☆ラブ】【小寺真理】【笈川かおる】【講談社X文庫ティーンズハート】【遺産相続】【ブリーダー】
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「かんなぎ家へようこそ!」 冬木冬樹

2015-03-10 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「楽しく楽しく、いきましょう。
 難しいことは考えないし、シリアスな空気もいらない」

 一歩家から出てしまえば無力な座敷童は、ボケ倒すことしかできないのだ。

 かんなぎ家の長男、遍は座敷童だ。
 不幸せな人を幸せにしたくなるのが性だけれど、家の外では座敷童は無力だ。だから、そんな相手を見つけると遍は声をかけるのだ。「かんなぎ家へおいでよ」と。

 空回りする会話のやりとりの合間に話が進む物語。

【かんなぎ家へようこそ!】【冬木冬樹】【すまき俊悟】【GA文庫】【ほのぼの残念コメディ】
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「誰も書かなかったイラク自衛隊の真実」 産経新聞イラク取材班

2015-03-09 | 伝記・ノンフィクション
 自衛隊のイラク派遣については、その間、国内のマスコミがかなり端折った報道しかしていなかった形跡があります……というか、マスコミというのはそもそも報道の専門家かもしれないけれど、経済や外交、歴史や軍事の専門家ではなく、ちょっと詳しいかもしれない程度の素人です。
 たとえば税金のことなら税金相談の記事は税理士や弁護士のコラムだし、税制改正の内容紹介はどこの紙面も一律同じ(些末で省略して良いところか財務省に都合が悪い)部分が省略されたダイジェスト版が横並び、役人が議員に説明したと聞かされたのとほとんど同じ主旨の論説記事が載っていたりします。
 なので、ときどきはきちんと自分で意識して調べていかんとダメだよね……と自覚して、こういう本を読んだりします。それでも片寄るけれど、いろんな視点から確認するくせはつけたいと思います。

 自衛隊はイラク戦争初期の2003年12月から2009年2月まで、10次にわたってのべ5500人をイラク南部のサマーワへ派遣し、イラクの国家再建を支援するため「給水」「医療支援」「学校・道路の補修」に従事しました。
 これはその過程で起きた出来事や、刻々と移り変わる状況に対応して判断を下していった派遣された各群長や支援隊長らの視点を中心にまとめていったものです。

「メディア各社はきちんと正しい情報を日本に伝えていただきたい」

 とにかく新聞やテレビだと、きちんと仕事が動いているときはあまり報道しないけれど迫撃砲弾が数発落ちれば大ニュースだし、街の歓迎の声は無視するけれど非難する日本語の看板が1枚あれば大スクープというのは悲しいものです。

【誰も書かなかったイラク自衛隊の真実】【人道復興支援2年半の軌跡】【産経新聞イラク取材班】【産経新聞出版】【キャプテン翼】【ここにしか咲かない花】【郷に入れば郷に従え】【消防士論】
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「氷のスフィンクス」 ジュール・ヴェルヌ

2015-03-08 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 帆船ハルブレイン号はケルゲレン島からさらに南へ、荒涼たる南氷洋へと向かう。
 その目的はアーサー・ゴードン・ピムに関する記録にあった……。

 19世紀末に書かれた南極航海譚。
 この作品について知ったのは、例によって1990年の某PBM(主に郵便媒介で複数のプレイヤーが交流したり協力したり競い合うRPG的なゲーム)にて。そのときは、手に入らなかったので人づての噂だけだったのだけれど、その数年後には何を血迷ったか集英社がジュール・ヴェルヌ・コレクションを刊行させてしまい、空飛ぶ船やら海底の船の話やらあれこれまとめて読む機会を得ました。
 長い話ではありますが、教養小説の一面もある科学小説なので今の視点では冗長に思えなくもなく、映像化されたらスリル満点のクライマックスも身も蓋もないオチのような気がして、少し自分の中でハードルを上げすぎたかと反省。

【氷のスフィンクス】【ジュール・ヴェルヌ】【ジュール・ヴェルヌ・コレクション】【集英社文庫】【豪快な海洋冒険譚】【地底旅行】【地球空洞説】【ネモ船長】【南極大陸】【ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語】【ベルヌ】
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「すぐそこの遠い場所」 クラフト・エヴィング商會

2015-03-07 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「この事典はね。見るたびに中身が変わってゆくのだよ」

 クラフト・エヴィング商会の三代目が書棚の隅から見つけてきた書物は、先代の祖父・吉田伝次郎が残した「アゾット事典」。
 そこでは人々は夜ごとにガルガンチュワの涙という蒸留酒を飲み、遊星オペラ劇場に出かけたり、雲母でできた本を読んだりするという……。

 これを読んで思い出したのは、ミロラド・パヴィチの『ハザール事典』。こちらはいつの間にか世界史から姿を消したパザール族に関するエピソードや物語を集めた事典というものでしたが、これはそのアゾット版。

【すぐそこの遠い場所】【クラフト・エヴィング商會】【坂本真典】【アゾット】【水葉書】【筆談】【遊星オペラ劇場】【星屑膏薬】【忘却事象閲覧塔】【エコー・ハンティング】
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「神秘島物語」 佐藤さとる

2015-03-06 | その他SF(スコシフシギとかも)
 昔の小説には教養小説的な側面を持つものも多くて、それはそれでかまわないし、それが当時の読者にとっての大きな魅力ではあったのだろうけれど、今の読者にとっては多少冗長と思えるかもしれない。ならば、変に抄訳などするくらいなら、これを日本の著名作家に少年少女向けに書き直させてしまえ!という「痛快世界の冒険文学」という講談社のシリーズがありました。菊地秀行がブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』を書いていたり、藤本ひとみが『三銃士』を書いていたりとなかなかマニアックというか、作家のこだわりが前面に出たシリーズでした。
 19世紀フランスの作家でありSFの父とも呼ばれるジュール・ベルヌの小説もその1つ。オリジナルは地誌とか博物学的な好奇心を満足させようとする部分がかなり大きいのですが、そのヴェルヌの『神秘の島』を担当したのが児童ファンタジー文学の佐藤さとるです。

 南北戦争のさなか、南軍拠点であるバージニア州首都リッチモンドはグラント将軍率いる北軍により包囲されてしまった。この包囲網を突破するために南軍が用意していた気球を利用して脱走しようとした北軍支持のサイラス技師たちだったが、嵐によって南軍も北軍も飛び越え、絶海の孤島へと漂着してしまう。
 地図にもない島に辿り着いた人々はそこをリンカーン島と名づけ自活することを決意するが、その島には秘密が隠されていた……。

 昔、小学校の図書館で読んで以来だったので、こんな話だったかしらというようなオリジナルとの比較はできず。NHK教育で放映していたカナダ製作の連続ドラマ『MYSTERIOUS ISLAND(1995)』もこんな感じだった気がします。
 ちなみに、児童文学、古典SF、アニメ映画の原作としてジュール・ヴェルヌの『海底二万里』は有名ですが、あるいはそのメインキャラであるネモ船長の知名度は高いと思うのだけれど、この『神秘島物語』がその後日談であることはあまり知られていない気がするし、もう1作『グラント船長の子供たち』と合わせて三部作ということはまったく知られていない気がするのですが、いかがでしょうか?

 1.大英帝国の植民地支配に復讐心を燃やすネモ船長の潜水艦が世界の大海を往く『海底二万里』。
 2.行方不明の冒険家グラント船長を探すため、スコットランド貴族とその仲間が世界中を旅し、反乱を起こした水夫を島流しにして帰還する『グラント船長の子供たち』。
 3.島流しにされた水夫に迎えが来る『神秘島物語』。

【神秘島物語】【痛快世界の冒険文学】【佐藤さとる】【ジュール・ベルヌ】【ネモ船長】【南北戦争】【ノーチラス号】
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「鉄刃サザン」 大迫純一

2015-03-05 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「幸運と幸せは違う」
 ティマ・オプライムの言葉。

 女剣士ベゴニアと旅をしていた利学士ティマはあるオアシスの街で囚われ、街の近くに住み着いているという科学者への生け贄に差し出されてしまった。
 機人の群から危機一髪でティマを救ったのは、全身が入れ墨の謎の男サザンだった……。

 文明が壊滅する危機から世界が回復し、魔法や利学が世界の文明の根幹となった世界で、もはや迷信と思われていた科学の使い手との戦いに赴く3人の物語。
 勢いで読ませてしまうところは流石。

【鉄刃サザン】【大迫純一】【FBC】【HJ文庫】【マッド・サイエンティスト】【不死身】
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「界渡りの魔道者」 麻城ゆう 

2015-03-04 | 異世界転移・召喚
 昔、大陸書房という出版社があってな……と、海に沈んだムー大陸のように語りたくもなる大陸書房。今、検索かけたら、ちょうどとり・みき氏による「大陸書房はその後、多くの原稿料未払いを残したまま沈没し、失われた大陸書房になってしまった。」という言葉がトップに来てました。
 そんな大陸書房にてひかわ玲子や茅田砂胡とともに単行本デビューした、麻城ゆうの代表作。月光界シリーズそのものは、同人誌から商業誌まであちこちで主人公を変え、時代を変え、国を変えて語られ続けているので追いかけるのは大変ですが、これだけは押さえておきたい作品です。

 高校を卒業したばかりの輪堂弓香は、親友2人とのお泊まり会の最中、買い出しに出かけたまま消えてしまった。
 祖母の形見の指輪とペンダントが原因だったのか、満月の光のせいなのか、異世界に転移、界渡りしていたのだ。
 そこは太陽の代わりに月が輝き、全ての生き物が月光によって守られる“月光界”。自分の界渡りがきっかけでザレの国のレイラ姫が行方不明になったと知ったユミカは、呪司の王ティッチとその兄ミズールと共にネンゲの国へと旅だったのだが……。

 大陸書房が沈んだ後、角川スニーカー文庫から刊行されますが、イラストはやはりこちらの方が良かったので、そちらには手を出していません。
 平凡な女子高生だった18歳の少女がいきなり異世界に転移し、それをきっかけに大魔法使いとして覚醒していくという、児童文学系ファンタジーやSFの定番だった異世界冒険譚というか貴種漂流譚として形にした、かなり早めの作品。
 登場人物も皆ひと癖もふた癖もあり、3人旅でも2人連れとかいきなりの展開に驚愕するところからの開幕でした。

【界渡りの魔道者】【月光界シリーズ1】【麻城ゆう】【道原かつみ】【大陸ノベルス】【スニーカー文庫】【SFファンタジー】
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