付け焼き刃の覚え書き

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「赤と青のガウン」 彬子女王

2024-05-07 | エッセー・人文・科学
「展示されたことのある作品は全収蔵品のおよそ10%で、残りの90%は一度も展示されずに収蔵庫に眠ったままだと言われている」
 法隆寺金堂壁画の「弥勒浄土図」もその1つで、複製なので作品番号も与えられず、棚に放り込まれたまま忘れられていた。

 英国のオックスフォード大学は複数のコレッジの集合体。その1つであるマートン・コレッジに留学した彬子女王だが、たった1年ではチュートリアルをクリアして言葉と生活に慣れるのが精一杯。きちんと研究して成果を出したいと改めて修士課程に臨むつもりだったのだが、気がつけば博士論文を提出することになっていた……。

 皇族である彬子女王が公務にも就かず都合6年間も留学していたのなら、その内容について世間に報告する義務があるという父宮様・寬仁親王の言葉に従い、マートン・コレッジでの2001年9月から1年間、そして2004年9月から5年間の留学生活の日々に何があり、何を思ったかを綴った記事をまとめたもの。
 なぜ研究テーマを「19世紀末から20世紀にかけて、西洋人が日本美術をどのようにみていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」にしたか……のくだりから、厳しすぎる指導教授らとのやりとりや学生たちとの日常。アフタヌーン・ティーにバッキンガム宮殿へお招きされたかと思えば、格安チケットを使ったせいで一人見知らぬ街の空港にたたずむはめに陥っていたりと波瀾万丈。大変だけれど、やりがいのある日々だったことが伝わってきますが、それだけに博士号を取得できることが決まった後の宮内庁とのやりとりに心底ぐったりしているのが伝わってきます。まさにお役所仕事。
 こういう話ですぐに気になる「留学中に護衛はついてるのかな」という疑問は、比較的早めに解説されてます。「つかない」と。日本の側衛官は2週間以上の滞在にはつかないし、英国側は王族貴族の子弟はいっぱいいるのでつけきれないからつけませんとのこと。
 エピソード的には、警備の機動隊員に不審者扱いされている「ヒゲの殿下」のくだりが好き。

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