付け焼き刃の覚え書き

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「〈戦い〉と〈トラウマ〉のアニメ表象史」 森茂起・川口茂雄:編

2023-08-26 | エッセー・人文・科学
 日本のアニメにおいて「戦い」がどう描かれてきたか、制作者がその闘争として現実のどのような戦いをイメージに持っていたかなどを追求した論文集。物語を生み出すとき、暗黙の前提として創作者が意識しているのかいないのか、その時代ごとの世相や文化や歴史のイベントなど何がどのように影響しているのか、鉄腕アトムやガンダム・ヤマトからゴールデンカムイ・SAO・グリッドマンまで複数の論者それぞれの切り込み方が面白いのですね。
 特に興味深かったのは、ガンダムやヤマト周辺。最初の『宇宙戦艦ヤマト』は1974年作品、『機動戦士ガンダム』は1979年作品。今となっては現在から作品が公開された年までより、太平洋戦争から作品が公開された年の方が近いのですね。なので、当然のように「戦争」を描いた作品として、どちらも太平洋戦争の影響を色濃く受けています。ぶっちゃけて言えば、昨今の仮想史的作品に見られる「太平洋戦争での敗戦を回避するには最初から枢軸ではなく連合側につく状況を設定しよう」という流れの先駆けといえなくもないですね。けれども、ヤマトと違ってあまりガンダムは(それを指摘する論は多々あれど)一般的にはあまり太平洋戦争をモチーフにしたようには受け取られていないのはなぜだろう?……という謎を論理的に考察していきます。
 あるいは、『サイボーグ009』と『まどか☆マギカ』におけるテーマの継承とか、「宇宙よりも遠い場所」に見られるSNSの普及による世界の矮小化等々、さまざまな視点からアニメ作品を考察していきます。

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