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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

私的年間ベスト2018

2018-12-31 | ランキング・カテゴリー
『航宙軍士官、冒険者になる』 伊藤暖彦
 SF王道+ファンタジーお約束の融合作品。人間を食料とする昆虫種族と人類の帝国が戦いを繰り広げている未来宇宙。超空間航行中の戦艦が謎の敵から攻撃を受け大破。唯一の生き残り士官が脱出ポットで降り立った星は、人類に連なる者が生息する、剣と魔法の世界だった……というもの。スタートレックの未開文明潜入ものとか、パーネルの「デイヴィッド王の宇宙船」とか、シェールの「地球への追放者」とか好きな人にお勧めしたい。

『人外姫様、始めました』 子日あきすず
 よくある「VRなMMORPGに参加して、人とは違ったことをしていたら何か活躍できちゃいました」というやつで、デスゲームでも異世界転生でもないので一歩間違うとなんの緊張感もなく、だらだらプレイ日記が続くだけになるのだけれど、ここはキャラクター造形とイベントの配置で巧くクリア。あとは上手に着地できるかどうかですね。

『ロープレ世界は無理ゲーでした』 二八乃端月
 「ゲームそのままの世界に転生していて、しかも悪役キャラなので破滅しないよう何とかする」、ウェブ小説では非常に多いパターンの話なんだけれど、チート能力があるわけでもなく、ゲーム知識がそんなに万能でもなく、記憶が戻るまでにしでかしていた悪行・悪評を簡単に払拭もできず……と、この手の話のお約束を封じた上でコツコツやっていくところが面白いのです。ヒロインがそのままもう1人の主人公状態で、表と裏で話が進んでいきます。イラストも完璧。

『ひとりぼっちの異世界攻略』 五示正司
 クラス丸ごと集団で異世界転移で、案の定仲間割れして……という話だけれど、ぽつんと孤立した主人公が常軌を逸しているので一周回ってほんわかムードさえ醸し出す1冊。
 文章が下手だとか読みにくいとか指摘もあるみたいだけれど、主人公以外の視点ではすっきりはっきり書かれているので、つまりは主人公の狂気についていけてないだけ。博覧強記にして最弱の主人公が、他人には理解できない論理と飛躍しまくる思考で飛び回っているだけなのです。肉壁委員長の通訳は必須です。

『淡海乃海 水面が揺れる時』 イスラーフィール
 昨年末より書籍化スタートした戦国転生もの。琵琶湖の辺の朽木庄に泡沫の戦国武将として転生した主人公が、有力勢力がぶつかり合う渦中でいかにバランスをとりながら生き残り、大大名へと成り上がっていくかの戦国絵巻。

『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』 門司柿家
 うだつの上がらない冒険者が片足を失ったのを契機に引退。故郷の村へ戻って、森で拾った赤ん坊を育てることにしたのだけれど、それが見事に成長。Sランク冒険者となったのだけれど、お父さん大好きっ子はあちらこちらで「お父さんはスゴイ冒険者だったんだ!」と父親自慢しまくりで、本人の知らぬ間に過大評価がググ上がり。その一方で、娘が故郷に帰ろうとするたびに大事件が起こり、お父さんに会えない!と逆上しながら魔物討伐に奔走するファンタジーコメディ。でも、ドタバタではなく、中学校の図書館あたりで末永く読み継がれて欲しいファンタジー。

『エートスの窓から見上げる空』 かめのまぶた
 ジジイとJKの謎解き相談というけれど、日常系ミステリと言い切るにもためらう程度のミステリで、どちらかというと少女たちの友情以上、百合未満な空気の中で繰り広げられる青春のやりとりを、至近距離から野次馬根性で見守り、あれこれ詮索する怪しい二人組の下世話小説。

『信長公弟記』 彩戸ゆめ
 転生に大切なことは、すべて鉄腕DASHで学んだ……が結論かな。
 この1年ほどで信長系の作品がドッと出たけれど、その中で読みやすく面白いものの1つ。ちゃんと連載が続いて、書籍版まで完結することを願ってやみません。

『素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する』 ハーーナ殿下
 交通事故で両親と妹を失い、自らも後遺症に20余年苦しんだ末に死亡した主人公が、自分が応援してきた地元のサッカーチーム解散のニュースを聞き、自分にもっと力があったら……と、気がつけば幼稚園児に戻っていたところから始まる転生やり直し系スポーツ小説。キーワードで「超スピード展開」とつくくらい、テンポの良いストーリー展開が魅力。かといって、ダイジェスト版ということではなく、メリハリがついて語るエピソードの取捨選択が上手いんですね。
 ただ、スポーツ小説も売り方が下手で打ち切られることが多いので、ここも頑張って感動の最終回まで続いて欲しいです。

『異世界のんびり農家』 内藤騎之介
 最近目立つ異世界スローライフ系農家もの。ウェブで読んでいると、携帯小説的というか、やたら一文が短くて改行が多く、会話とモノローグ中心で話が進むのでいまいちかなあと思いつつ、気がつけば何度か読み返していたんで、つまりは面白いんです。
 勘違い系というか、自分とその仲間たちのとんでもなさに主人公だけが気づいていない農村開拓話。書籍版は送り手側のこだわりが随所に見られる、素晴らしいできばえです。

『予言の経済学』 のらふくろう
 災厄を予言する巫女の言葉を誰も信じなかった。そもそも具体的な日時も場所も内容も不明では対策の取りようもない。しかし災厄の到来を確信し、悩む巫女が出会ったのは、成り上がりの中小商人の息子だった……という、科学的思考法を武器に、あやふやな予言を1つ1つ検証して不明点を潰していく、安楽椅子型異世界ファンタジー。
 確かに内容通りではあるけれど、タイトルがなんか堅苦しくて損してます。予言された災厄に立ち向かう英雄譚であり、学園ラブコメであり、競争相手を蹴落としながら成長していく経済小説であり、セントラルガーデンの仲間たちと困難に立ち向かう冒険小説です。

『異世界からの企業進出!? 』 七士七海
 神々同士の争いから異世界に放逐された人間以外の種族は、なんとか元の世界に帰還しようとするが、彼らは魔族と呼ばれ、勇者との戦いは苦戦続きで願いは叶わない。そこで前線の拠点であるダンジョンをなんとか強化しようと、現代日本からテスターをリクルートすることにした。勇者の主要産地なら、さぞかし有望な社員アルバイトが採用できるだろうという算段なのだが……という、転職サクセス・ストーリーで、現代人のダンジョン攻略物のバリエーション。


 今期は、定番のパターンながら細部をきっちり詰めて完成度を上げた作品が目白押し。どれも面白く、きちんと完結して欲しいけれど、毎月何十点と刊行される類書に埋没しそうで不安です。せめて、出版社がきちんと作品のどこが面白いか、ウケているのか理解して、それに見合った本を作り、売って欲しいものですが、「どこをみている編集!」「営業は仕事してるのか?」と言いたくなるケースが多く残念です。『人外姫様、始めました』とかMMOもので掲示板回を横書きにしない編集は能力ないよねと思っちゃいます。横書き文化をなめてるよね。「つ」を縦書きにしたら、意味が通じないじゃないか。
 そんな中、『航宙軍士官、冒険者になる』『異世界のんびり農家』『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』あたりは、出来上がりの本が良いので期待できそうです。
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