付け焼き刃の覚え書き

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「信長新記(2)」 佐藤大輔

2012-03-21 | 架空戦記・仮想戦史
『健気なるかな足軽どもよ。彼らは敵の最も堅き陣に向けて突貫していく』
 キューバのグアンタナモ攻撃時の、大和民国将軍・立見尚文少将の言葉。
 もともとは日露戦争での立見少将の言葉だったかな。こういう歴史改変の流れが見えてくるのが愉しいのです。

 明智光秀の謀反と、それに連鎖する柴田勝家の叛乱をしのいだ信長だったが、いちばんの痛手は官僚団の中枢を丸ごと失ったことであり、軍資金の不足であった。
 だが、この末期的財政難にあって、信長はあえて秀吉に石山普請を命じた。大坂に巨大な城塞を建設せよというのである。
 その頃、ハプスブルグ家のフェリペ2世は、国家戦略としてネーデルランド重視策からアジア植民地へと足場を移そうとしていた……。

 架空の歴史を現代の軍事用語や軍事史的解釈で解説・再構成する戦国絵巻の2冊目で、とりあえず織田信雄と筒井順慶のデコボコ主従が岐阜大要塞で徳川軍を迎え撃つ「三州騒乱」の勃発まで。
 本能寺で歴史改変してみせる作品は他にもありますが、1000名規模のマニューヴァーをおこなえるほど練度の高い兵士は、三河の赤備えと島津勢、それとハプスブルグ家のスペイン正規軍くらいだろう……とか「同盟という政治行為はつねにプラス・サム・ゲームでなければならない」と生真面目に分析をおこなってみせたかと思うと、ポルトガルの難破商船相手に手ひどいダメージをくらった九鬼嘉隆が「この船では、奴等に勝てない」とつぶやいて従来の鉄甲軍船に見切りを付けたり(ここ笑いどこです)。信長が生きているという一点で、どこまで歴史が変わっていくかのワクワク感が違います。
 このシリーズの面白さというのは、単に目の前の歴史がどう変わっていくかだけではなく、その100年後、300年後にどうなっているかというところまで見せてくれるところにありますね。そのあたりを、荒唐無稽に見えないよう、実際の史実との違和感が少ないよう、こまかに軌道修正しながら歴史改変をしていく佐藤大輔の本領が見てとれます。
 二条城に設置された情報処理・指揮センター(の機能を持つ場所)で、目の前に表示される軍の動員と兵站の動きを見守る真田信繁の初々しさが微笑ましいですね。

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