付け焼き刃の覚え書き

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「喪神の碑」 津守時生

2021-03-04 | 超能力・超人・サイボーグ
「弱い強い関係なく、はっきり言って私は他人をいじめるのが好きだ」
 「どうして弱いものいじめばかりするのか」と非難された、オリビエ・オスカーシュタインの反論。

 銀河系内の勢力を二分する、六芒太陽系政府とソル太陽系政府との10年に渡る紛争が終結し、行き場を失った職業軍人ロヴ・ジョナサンは、宇宙船「黄金のイルカ」号の求人広告に応募した。ところが待ち合わせの喫茶店で「黄金のイルカ」のクルーと顔合わせした途端、銃撃戦に巻き込まれて逃走する羽目に陥った。
 逃げるように飛び乗った「黄金のイルカ」号の船長マリリンは思わず見とれてしまうような美青年、天使のように美しい超能力者一族といわれたラフェール人の生残りの1人だったのだ。しかし、さる事情で幼少時の15年間、全く人間のいない世界でコンピュータに育てられた彼は、なぜか女性としての立ち振る舞いを強要されていて、いまだにそれが抜け切れていなかった……。

 かつてシタン病で滅びたラフェール文明の再興を使命とする、「黄金のイルカ」とそのクルーの冒険譚。重厚で壮大なスケールの物語と、軽妙でコミカルな会話が繰り広げられるスペースオペラ。
 この話の続編が、同じく角川スニーカー文庫から刊行されていた『カラワンギ・サーガラ』で、この2作は1つの文明の滅亡と再興をめぐっての銀河系規模の陰謀劇でしたが、さらに続きの『三千世界の鴉を殺し』は辺境惑星の駐屯軍基地を舞台にした美青年とマッチョと腐女子のたむろする軍隊コメディ。
 壮大なテーマよりも、ちょっとやおいテイストで軽妙な会話によるボケ・ツッコミの方に読者のニーズがあったということなのです。

【喪神の碑】【ラフェールの末裔】【津守時生】【小林智美】【スニーカー文庫】
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