付け焼き刃の覚え書き

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「幽霊街と呪い笛吹き」 あやめゆう

2013-09-07 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「できないからやらないなんて選択肢はないわ。やるべきことだからやるのよ。それが貴族でしょう? 誰もやらないなら私がやるわ」
 イセリナ・リフィーリア・ガラードラルの言葉。

 帝都の首都の学府に集まった学生たち。
 そこで学ぶ学問や武術に意味があるのでは無い。近い将来、帝国各地に散って貴族なり行政官なり騎士となるはずの若者たちが、一つ処に集まって帝国という共有の価値観を身につけることに意義があるのだ。
 ある日、その学府で貧乏貴族の次男坊であるカミナ・クルスは、同じ土地の出身の名門貴族であるジュラールに呼び止められた。「あの喧嘩を止めたまえ」と。
 それは、触り心地の良い尻だった……。
「帝国軍の全軍師に詫びるべきです」

 御伽噺シリーズ〈リンガドン〉の2作目で、前回はほとんど出番もなければ何もしていなかったようなのに、この人がいなければ事態が収拾しなかったかもしれない、妖精姫の婿候補だったジュラール卿が再度登場します。しかし、舞台は妖精郷から帝国へと移り、メインとなる登場人物もジュラールと学府で共に学んだ軍師カミナ・クルス、その幼馴染みで税務官イセリナ、無口・無愛想・無表情な女騎士ノルン・アコースの3人となり、彼らが帝国領内で発生した「幽霊街」または「呪い笛吹き」などの伝説に酷似した住民が消えた町の謎に挑むことになります。
 著者はミステリなんてものではないとあとがきで語ってますけれど、見立て殺人を扱ったミステリとみてもポイントをきっちり押さえた良作。
 
 1作目と同じく、「ノプレス・オブリージュ」「理解できない/されない相手への憎悪」「用兵の速度」がそれぞれストーリーのキーとなっています。

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