
『東海道中膝栗毛』はまさに定番。今では「弥次さん喜多さん」といっても死語で通じないような気がして、子供に確認するのも怖いです。「学園道中記」のことじゃないよ?(これでも十分に古い) 江戸からお伊勢参りに旅立った男2人連れが、最終的には京・大坂まで脚を伸ばす、江戸時代を舞台にしたコミカル・トラベルストーリーで、旅行ガイド・宣伝パンフとしての役目も果たしたようです。
『伊能忠敬』は日本の地図作成の魁である伊能忠敬の略伝。読み返してみたら、みなもと太郎の『風雲児たち』の方が詳しくて面白かったというのは、みなもと太郎が偉大なんだしょうね。最上徳内や間宮林蔵がほとんど名前だけなので、小学6年だった末っ子の社会科授業に、『伊能忠敬と日本図』(復元図)と『風雲児たち』を持たせてやったのは正解かな。
『日本芝居物語』は近松門左衛門などの人情ものが2編。挿絵代わりに舞台の写真を使っているのが特徴で、子供の頃は馴染みにくくて浮いた感じがしたものですが、再読しても感想は同じ。むしろ写真の古さに違和感が増しているような気がします。
『ジョン万次郎漂流記』も『風雲児たち』の方が詳しくて面白かったなあ……。比べたらいかんけど、柳柊二が挿絵を描く漂流記って鬼気迫るものがありますので、渡米体験記より漂流記としてのインパクトの方が大きいです。
『西鶴名作集』は『西鶴諸国はなし』と『本朝桜陰比事』からの抜粋。大奥裁きみたいな話が主ですね。定番ではあるだけに、ここで元ネタをしっかり確認しておきたいものです。
そして『南総里見八犬伝』は大好きな話なんだけれど、原作はあまりに長くて、探してみたこともあるけれど、ダイジェスト版しか見たことありません。でも当時は、ちょうどNHKで人形アニメ「新八犬伝」を放映していた頃。作品毎に付いている読書ガイドでも「おうちのかたへ」として「テレビばかり見ていないでと怒ってばかりいないで、これを機会に原作の方を勧めてみたら?」と水を向けてます。
『新八犬伝』、面白かったなあ。約束を違えた殿様のせいで姫に怨霊が祟り、犬と婚姻することになったのだけれど、その死後、所持していた数珠の仁義礼智忠信孝悌の8文字が浮き上がる珠が飛び散り、やがて日本各地にその珠を手にした8人の男子が誕生。義の珠を持つ者は義に厚く、忠の珠を持つ者は忠誠を尽くし、時には敵味方で戦うこともあったけれど、やがて不思議な縁で結ばれた兄弟、八犬士として集結し、大きな戦いに臨む……というあらすじだけ同じで、デュマの『三銃士』と映画『三銃士~王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』くらいの違い。坂本九の語りが大好きだったのよ。
『東海道中膝栗毛』原作:十返舎一九/絵:太田じろう
『伊能忠敬』文:西沢正太郎/絵:依光隆
『日本芝居物語』文:おのちゅうこう/絵:東重雄
『ジョン万次郎漂流記』文:近藤健/絵:柳柊二
『西鶴名作集』原作:井原西鶴/絵:斎藤博之
『南総里見八犬伝』原作:滝沢馬琴/絵:伊勢田邦貴
【ワイドカラー版少年少女世界の名作47】【日本編3】【小学館】