
本当のところを言えば特殊犯罪課の新米刑事ピーターに責があるわけではないのだけれど、周囲は彼のせいでヘリが墜ちたり大爆発が起きたことを忘れてくれない。目の届くところにいて、おとなしくしていろという。
それでも従妹が線路上で幽霊を見たと言えば引っ張り出されるし、地下鉄ベイカー・ストリート駅の構内で若い男の死体が発見されたといえば午前3時でもたたき起こされる……。
「魔術師でもある警官はもっと興味ぶかいものだと思うでしょ。ハリー・ポッターだって、これほど退屈じゃないわよ」
ピーター・グラントがいかに退屈な男か、レスリー・メイは懇々と説く。
新米刑事にして新米魔術師でもあるピーターの捜査日誌。パリやニューヨークの地下だけでなく、ロンドンにも地下迷宮はあるのです。なにせ、世界最古の地下鉄がある都市ですから。
ナイティンゲール警部は別仕事やバックアップが多く、館付きメイドのモリーもいつものように暗闇から音もなく現れてはすべるように去って行くだけ。いまだマスクが手放せないレスリー刑事を相棒に、ピーターが鉄道警察と協力しつつ捜査を進めていきますが、被害者がアメリカからの留学生で父親が議会の重鎮だったことからFBI捜査官が派遣されてきて、敵か味方か……というのが今回の話です。
細々した事件やトラブルがいくつも発生し、怪しげな人物たちが捜査線上に浮かんでは消えますが、これらが本筋に関係するのかしないのか、はっきりしないままクライマックスに突入します。こういう街は24時間眠らない……的なのりは87分署シリーズから続く警察小説の伝統です。殺人課と特殊犯罪課と鉄道警察の所轄問題とか、単なる縄張り意識だけではなく「魔法なんてうさんくさいものには関わりたくない」とか「捜査予算が」とかあれこれで左右されるのも世知辛いですね。
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