頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

地域に飛び込む若者:なぜ今地域か?(12/2シンポジウム公式報告)

2023-12-14 15:23:55 | 日記
動画がまだ視聴できたので、聞き直しながら書き直してみました。小島先生のお話を伺って、昭和末期に中曽根さんの「中山間地域の農家のおじさんを市民と呼ぶのはおかしい」とのコメントに反発していた自分自身を思い出しました。日本社会にはリベラルとかシチズンといったコンセプトが長らくなじまなかったのだろうとも改めて感じました。
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1.趣旨説明
オーガナイザー 一ノ瀬俊明(企画専門委員/国立環境研究所)
Rural Labo(2020年発足)は、全国の地域活性化に取り組んでいる/関心のある若者が集う地域活性化コミュニティである。現在では全国から600名以上が参加し、オンラインでの情報交換や勉強会、全国各地でのミートアップイベントなどを通して、若者同士のつながりを生み出している。ここには田園回帰の移住者も多数参加している。本シンポジウムでは、Rural Laboメンバーと地理学研究者の対談を、賛否両論の立場で行う。
2.Rural Laboでの実践(埼玉県秩父郡横瀬町)
村上悠剛(横瀬町地域おこし協力隊/Rural Labo共同代表)
転勤族の家庭に育ち、大都市の生活における様々な矛盾を感じる中で、法政大学社会学部を休学して活動に参加。横瀬町では飲食店や農家の支援などに従事。座学としての地域活性化ではなく、実践する場としてのRural Labo。長野県辰野町など、全国に活動拠点を形成。移住促進のみならず関係人口創出や、合宿免許とタイアップした地域留学などのイベントも運営。メンバーのうち400名以上が具体的な地域に関わり、6名が地域おこし協力隊員となっている。活動を通じ、地域の「分断・二極化」を感じることもある。活動のスピード感が大切。商品の価格設定など、サービスの価値を巡って地元の理解を得にくい場面もある。
3.Rural Laboでの実践(神奈川県高座郡寒川町)
塚本健太(一橋大学修士課程/寒川町鉄道保存会代表)
都市計画制度(用途地域)の視点で人口減少への対応を研究。都市からの視点ではない地域の見方が重要。人口オーナス期のまちづくりは、法制度だけに依存できない。まちづくりの民主化が必要。旅行を通じた気軽な地域への関わりに有効性。寒川町では、40年前に廃線になった鉄道を復活するプロジェクトで活動。産業遺産を観光資源として再生し、新たな交流の場を形成。現在保存会は地域外のメンバーのみであるが、鉄道系イベントを通じた地域の人々との連携もある。最近は展示用の鉄道車両も購入。登録有形文化財である和館の活用プロジェクト(カフェ)にも参加。都内における自治会組織が弱さをいかに補うか(ここに関係人口を活用)。
4.パネル討論・まとめ
コメンテーター:𠮷田国光(立正大学)・小島泰雄(京都大学)
地域に出る際の専門性の違いは。工学(治療)か理学(診断)か(地理学は後者)。休学してまで地域に飛び込むことの意義は(周囲の)理解を得られているか。地域からの期待との相克は。若者の関心に「地域」が出てきたのは最近の傾向。政策的な誘導はあるのかもしれないが、日本社会のおかれている状況も関係。近代まではトップダウン的な身分制社会。地域は行政主導だったが、昨今行政は弱っている。若者が地域を放っておけなくなった。農村の高齢化が外の力を欲しており、田園回帰が進行。一方日本では都市の成熟を見ないまま21世紀になってしまった(今後の課題)。
地域調査が地域の負担になっているだけではないかというモヤモヤ感からRural Laboの活動に行きついた。いずれは公務員としての活躍に今の経験を活かしたい。わくわく感がモチベーション。協力隊員の場合、ローカルな仕事(視点)でしか報酬が得られない(よその自治体のことはわからないまま)。地方出身者と大都市出身者とでは地域への想いに温度差(交流で克服したい)。学生として地域に関わる場合は「一時的」。移住者のレベルと「関係人口」のレベルにも違い(できることとできないこと)。
地域は「方法」。中の人を巻き込める。地域を作る感覚が重要。
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