1998年に環境学者として南ドイツへの派遣留学の機会を頂きました。当時の気候データをみても、我々の感覚でエアコンがあればと感じるのは毎年1週間程度(東京のデータでは6週間程度)で、中心市街地の風通しを確保するような街づくりの議論が行われていて、それも我々の研究テーマの一つでした。その後2003年の欧州猛暑などがあり、死者数のデータに世界的な注目が集まりましたが、あくまで数年に一度のイベントみたいな感覚(1995年の北海道みたいな)で、エアコン導入のモチベーションには結びつかなかったのだと理解しています。今年は欧州猛暑という認識ではなく、あくまで例年どおりとの印象もあります。我々の分野では、生気象学をツーリズムの視点で研究する仲間も多く、東京オリンピックの前にも東京についての論文がでました。しかしその内容は東京の暑熱に関する過酷さを十分表現したものではなかったので、日本人研究者の間でその違和感も話題になっていました。健康被害の面では、選手よりもインバウンド客が大変だったようです。
(ご参考)一ノ瀬俊明, ハンス ペーター タム:(1999)わが国の都市における「風の道」の必要性について. 環境システム研究,27,721-730.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/proer1988/27/0/27_0_721/_pdf/-char/ja