カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

AFESIP保育サービス続報<保育サービスをきっかけに変わった女性>

2006年07月21日 07時15分20秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

みなさんこんにちは、平野です。前々回前回に引き続き国際子ども権利センターが支援するAFESIPのトムディセンターの「保育サービス」の報告です。前々回は子どもたちが受けているケア、そして前回は子どもを持つ女性たちの職業訓練への前向きな取り組みを促す効果についてご紹介しましたが、今回はAFESIPの中間報告書より、ある親子のケーススタディを紹介します。人身売買の被害にあった27歳の女性が、どれほどこの保育サービスから力をもらっているかお分かりいただけると思います。

【友だちと思った女性に騙されてしまったAさん】

Aさんがコンポンチャムで妊娠した時、夫は仕事を求めて遠方に行ってしまった。夫からの連絡は途絶え、彼女はプノンペンの実家に帰った。母親の家は貧しかったが、彼女は元気な女の子を産み、スレイピッチと名づけた。出産後彼女はある女性と友だちになり、一緒にバンテイミエンチェイ州のカラオケバーで働こう、と説得された。彼女は母親に子どもの面倒を頼み、送金を約束してプノンペンを発った。

着くやいなや、彼女はオーナーに売春を強要された。警察が摘発するまでの18日間、彼女はそのカラオケバーに閉じ込められていた。警察は彼女をそこからAFESIPのセンターに送った。トムディセンターに到着すると、スタッフが彼女を最初の家族訪問に連れ出した。こうして彼女は母親そして娘と再会し、娘の将来のためにAFESIPで一生懸命学ぶことを決意した

【泣いてばかりいたAさん】

はじめのうちAさんは必死で学んだ。時間がたつにつれ、彼女は家族が心配になり、そしてまた罪の意識を感じるようになった。母親は非常に貧しいため、センターで食事を取るたび、娘は十分に食べているだろうかと想いを巡らせた。母親が孫に食べ物を与えるために借金をしていることを知ったとき、罪悪感はさらに増した。彼女の学びは、娘を懐かしがり、娘の幸せを心配するようになるにつれて上手くいかなくなり、彼女はいつも泣いていた。

【娘がいるからがんばれる】

保育サービスを知ったとき、Aさんはセンター長に娘を連れてきてくれるよう懇願した。娘と再び一緒になれたことで、彼女は永遠にこのサービスに感謝するだろう。Aさんの職業訓練への集中度は大きく増した。自由時間はいつも娘と遊んでいるし、娘がよいケアを受けているのを見て、子どもの適切なケアを学んでいる。スレイピッチは当初病気がちな体重の足りない子どもで、よく泣いた。食べ物やおもちゃを与えられると、他の子と分け合わなかった。母親に対して無関心だった。しかし少しの間に彼女の自分勝手な振る舞いは変わり、母親ともとても仲良くなった

これで3回に渡ったAFESIP保育サービスの続報は終わりです。前回「このサービスが質の面で受益者に与えているインパクトは実際素晴らしいものがある」と申し上げましたが、きっとご理解いただけたことと思います。

※写真はケアテイカーさんと保育サービスを受ける子どもですが、文中に登場する子どもとは無関係です。

母親たちのがんばりと子どもたちの成長を支えるこのサービスは、みなさんの支援によって成り立っています↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

AFESIP保育サービス続報<どうしてこのサービスは素晴らしいのか>

2006年07月19日 17時05分10秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

みなさんこんにちは、平野です。今回も前回に引き続き国際子ども権利センターが支援するAFESIP(アフェシップ)のトムディセンターの「保育サービス」の報告ですが、いきなり手前味噌なタイトルで失礼しました。しかし、大規模ではなくとも、このサービスが質の面で受益者に与えているインパクトは実際素晴らしいものがあると思います。

【必要とされながらあまり行われていないサービス】

先日カンボジアの新聞記事でNGO運営のシェルターが本当に対象としている人たちのニーズに対応しているのか、ということが問題提起され、読者投稿欄も巻き込んで様々な意見が出たことがありました。そこでは具体的な提案はあまり多くなされなかったのですが、元女性省大臣ムー・ソクアさん、そしてセックスワーカーの女性本人が口にしていたのが「子どもの世話も視野に入ったサービスを」ということでした。裏を返すと、こういったサービスはあまり一般的でないことがということがうかがえます。

ムー・ソクアさんについては↓
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/26d537eee817b85e5026f51cf24d3cce

【喜びを感じるそして罪の意識を感じない】

ではどうして保育サービスが素晴らしいのか。上記にあるように子どもの世話が気がかりでシェルターに入れないでいた人たちも入れる、そして子どもがそばにいる喜びでいっそう職業訓練に打ち込める、こう書いてしまえば当たり前のことですが、こうした「喜びを感じる」という面に加えて「罪の意識を感じないでいられる」ということも女性たちにとってとても大きいということも付け加えたいと思います。

カンボジアでは、女性は家族を助ける重い責任を背負わされおり、それは他のアジア諸国にも見られないほどだといいます。そして「家族の世話をするため遠くに行ってはいけない」ということで学校に通わせてもらえず、その一方で「家族を支えるために」出稼ぎに出され、様々な被害に遭ったりする、ということが発生しています。

こうした考え方が根強い中で、子どもを家族や親戚に預けてセンターに入った女性や少女たちは、不安や心配に加え自分だけがセンターで衣食住を保障されていることからくる罪の意識に苦しむことが少なくありません。子どもを預けた先である実家や親戚も貧しいことが多く、子どもにも親や親戚にも申し訳なく思ってしまうのです。そうした罪の意識が取り除かれることは、彼女たちの訓練に対する取り組みを前向きなものにするのです。

【周囲への影響】

また、この保育サービスは周囲の女性たちにも様々なかたちでよい影響を与えています。彼女たちは、日々の子どもたちの規則正しい生活から子どもの適切なケアを学び、また幼児教育も実際に目にしています。そしてアフェシップによると、自分も幸せな家族生活を築きたい、そのためにがんばろうという動機付けにもなっているということです。

次回は、保育サービスを受けている1人の女性のケーススタディをご紹介して、このサービスの成果を検証したいと思います。

※写真はセンターの子どもたちとアフェシップのスタッフ、スタディーツアー参加者です。

母親たちのがんばりと子どもたちの成長を支えるこのサービスは、みなさんの支援によって成り立っています↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

AFESIP保育サービス続報<センターの雰囲気まで変える子どもたち>

2006年07月17日 19時44分22秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

みなさんこんにちは、平野です。前回は家族の理解とサポートで精力的に活動するSBPNメンバーのことをご紹介しました。今回は逆に、子どもの存在に励まされてAFESIPのシェルターでの職業訓練をがんばっている女性たちをご紹介します。それは、国際子ども権利センターが支援するAFESIPのトムディセンターの「保育サービス」を利用している女性と少女たちです。以前のAFESIPシェルターに関する投稿の続編となります。過去の投稿は↓

http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/bc665f10a3f7551fca6c2d2aa5c467b3  

【サービスを受ける親子が大幅増】

この保育サービスは、AFESIPの要請を受けて国際子ども権利センターが支援を決め、2005年9月から始まったものです。その目的は、人身売買や性的搾取の被害者、あるいはさまざまな理由から性産業に入ることになった少女や女性たちの中で、できたらAFESIPのシェルターに入って職業訓練を受けて新しい人生を歩みたいと思っているにもかかわらず、子どもがいるためにその決心がつかない人たち、あるいは決断して子どもをどこかに預けてセンターに入ったが、やはり続けられない/られそうにない人たちを支援することにあります。

昨年10月にお伝えしたときはまだ開始から日が浅く、2人の子どもとそのお母さんがこのサービスを受けていましたが、その後人数が増え、3月末に国際子ども権利センターの2005年度スタディーツアーの一行が訪問した際には、8人の女性と8人の子どもたちがこの保育サービスを受けていました。女性たちの出身は6州に渡り、トムディセンターに来ることになった背景も、レイプや人身売買の被害者であったり、自分で性産業に入ったけれども辞めた人であったりと様々ですが、ここで子どもとともに新しい生活に向けて日々職業訓練に取り組んでいることは一緒です。

【すくすくと育つ子どもたち】

子どもたちのセンター入所時の年齢は9ヶ月から6歳までいますが、一番多いのは2,3歳の幼児です。AFESIPの報告書によると、センター到着時は子どもたちの「多くは顔色が悪く、体重不足で、皮膚は湿疹を患っており、飢えた印象を与える」といいます。しかしこの保育サービスでは子どもたちに

 到着時と年2回の健康診断、そして要請に応じた健康相談
 政府認可の公立病院との協力による予防接種
 日に4度の栄養補給と2回の間食
 母乳の補完、あるいは代わりとしての1歳以上の子どもへのミルクの供与
 毎月の成長チェック

といったケアを施しているため、子どもたちはすぐに健康になり、元気に遊ぶようになるということです。また、クメール文字を習うなどの幼児教育も受けています。子どもたちの存在は、母親たちだけでなくセンターで暮らす女性や少女たちみんなの喜びになっており、子どもたちの誰かが病気になるとセンターの誰もが心配するということです。次回は今回に続き、このサービスの効果を検証したいと思います。

母親たちのがんばりと子どもたちの成長を支えるこのサービスは、みなさんの支援によって成り立っています↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

SBPNメンバーの親は子どもの活動をどう見ているか

2006年07月12日 08時17分50秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。今回は前回登場してくれたコムチャイミア高校の熱心なSBPN(School Based Prevention Network=学校ベースの人身売買防止ネットワーク)のメンバー、ソフィー(仮名)のお母さんに、メンバーとして活動する娘をどう見ているのか聞いたときの話をご紹介したいと思います。

【最初は反対だったSBPNへの参加】

「娘がSBPNの活動に参加すると聞いて、最初は反対したのですが、そのあとで賛成しました。反対した理由は、売春などの言葉を使うことで、娘が他の人に差別されるのではないかと思ったからです。あとで賛成した理由は、あとで活動を実際に見てみて、子どもの成長を助けるいい活動だと思ったからです」

「実際に見たというのは、近所の大人に(子どもの権利や人身売買について)教えているところを見たのですが、その人に“うちの娘はこういうことを勉強しているんだよ”と言うと、その人も“いいことだね”と言ってくれました。娘を誇らしく思い、うれしかったです。これからもどんどん発展していってほしい、自分を伸ばしてほしい、と思います」

【勉強を続けさせたいけれど…】

「娘は5人います。娘たちは手伝いはあまりしませんが、勉強するように言っています。家で9時、遅いときは11時くらいまで勉強しています。夫はプノンペンに出稼ぎに行っていて、私はサトウキビジュースを売っています。サトウキビジュースは、全部売れればそれなりの金額になりますが、基本的にその日暮しで貯金はありません。田畑も持っていません」

もっと勉強して、より多くの知識を身につけられるよう支援したいのですが、生活基盤が弱いので資金が心配です。ジュースの売り上げは生活費に消えてしまって教育のための貯金する余裕などはありません。今のところ5人姉妹を5人とも学校に行かせていることはうれしいことですが、どこまで続けさせてやれるかの見通しが立ちません」

始めは懸念を示したお母さんが、活動を見て、娘のためになる活動を思って賛成してくれた、というのは非常にうれしい言葉でした。一方で、コムチャイミアで高校まで進学している子どもの家は地元では比較的豊かな家の子かとも思っていたのですが、苦しい中でなんとか娘を学校にやっている様子がうかがえました。このような教育熱心なお母さんの姿勢は、ソフィーの真面目さにも通じるものがあるように思えました。

カンボジアは家族の結びつきが非常に強く、私もたびたびカンボジア人に「日本の家族が恋しくないか?」と聞かれます。今回はいきいきと活動する子どもを支えるお母さんのお話をご紹介しましたが、次回からは子どもの存在に励まされて頑張る女性たちのお話を紹介したいと思います。

※写真はコムチャイミア高校SBPNメンバーによるDVについてのロールプレイです。真ん中は村長役の生徒で調停しています。

子どもたちの熱い想いを支援してください↓
http://jicrc.org/pc/member/index.html

SBPNメンバーにインタビュー

2006年07月10日 11時46分19秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。過去4回にわたり、国際子ども権利センターのパートナー団体CRFが支援する子ども若者クラブの活動をご紹介しました。今回は以前からご紹介している別のパートナー団体HCCによるSBPN(School Based Prevention Network=学校ベースの人身売買防止ネットワーク)についてですが、活動については過去だいぶご紹介しているので、もう少し個人に焦点をあてて、どのような子どもたちがどのような想いでSBPNに取り組んでいるのかお伝えしたいと思います。

SBPNについての過去の投稿
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/9643d76b1316410764955c0f3d259f88  

【活動を続ける上での問題】

14あるSBPNの中でも、コムチャイミア高校のSBPNメンバーの積極的な活動ぶりは非常に印象的で、また男女ともに“さすが高校生”と思わせてくれるしっかりした子どもたちが揃っています。今回はその中でもロールプレイで周囲の反対や中傷を受けながらもセックスワーカーの役を演じてくれた少女2人(クンティアとソフィー:ともに仮名)の話を聞きたいと思います。ロールプレイ撮影時の経緯についてはこちらを参照↓
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/773a831fb3be7ea04f8fa713b3eb304c

クンティア「ネットワークの活動をしていると、嫌がらせを受けることがあります。そんなことしても意味がない、人身売買などない、といったことを言われるのです」
ソフィー「ロールプレイでセックスワーカーの役を演じた翌朝、学校に行くときに“セクシーガール”とか、“売女”といったひどいことをみなの前で言われました。先生に訴えてからかった子に謝らせましたが、すごくショックで泣きました。でもSBPNを辞めようとは思いませんでした

【それでもくじけない想い】

クンティア「ロールプレイの撮影は、お母さんが反対したので参加は難しいと感じていました。でも、人の意見によって自分の意見を変える人がばかり増えては社会は良くならないと思いました。自分の意見が正しい意見で、人身売買の防止に貢献できるのであれば、と思って参加を決心しました」
ソフィー「自分がぜひ協力したいと思ったので参加しました。ロールプレイによって人身売買の手口を明確にできると思ったのです」
クンティア「そういう強い気持ちになったのは、自分の村から中国(平野註:台湾かと思われます)への偽装結婚の例があったからです。成功して豊かになった例があったので、ドンドン出したのですが、行方不明になった人もいるのです。村の人たちはリスクを知っていますが、親を助けるために娘がなにかするのは当然と思っていて、送り出すのです」
ソフィー「親には反対されましたが、人身売買の被害から村を守るためのものなのだ、と一生懸命説明したので、わかってくれました」

SBPNのメンバーたちが想像以上に問題意識が高く、強い気持ちで活動に取り組んでくれていることがお分かりいただけたでしょうか。次回は子どもたちの活動を親はどう見ているのか、ソフィーのお母さんに聞いたお話をご紹介しようと思います。

※写真はコムチャイミア高校のSBPNメンバーです。

子どもたちの熱い想いご支援を↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

工夫をこらした情報伝達

2006年07月08日 13時59分16秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。過去3回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRFが支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。今回は前回ご紹介したCRFと子ども若者クラブメンバーによる子どもの性的搾取防止を訴えるイベントの後半についてご報告します。国際子ども権利センターは本年、同校も含めた5つの小中高の子ども若者クラブの活動を支援します。

【クラブメンバーも熱演】

前回の最後にお伝えした通り、このイベントには大物ゲストとして“アコイ”のニックネームで人気のコメディアンが参加しました。来賓のあいさつも終わり、クラブのメンバーによる子どもの権利の歌も3曲披露され、奨学金授与式も終了すると、いよいよ観客の視線は舞台に。最初はクラブメンバーによるコントで、役員メンバーが扮する間抜けな悪党が、女性を拉致(らち)しようとしつつ最後は捕まってしまうというものでしたが、なかなかの熱演で喝采を浴びていました。カンボジアで見るロールプレイのレベルの高さは口承文化の国の底力でしょうか。

【笑いを交えて人身売買の危険をアピール】

そしていよいよ登場のアコイ氏。付けヒゲに変なカツラというコメディアンスタイルの彼の役回りは、人身売買を企むボスの手下です。ボスは金融業をやっていて、お金が返せない女性に代わりに娘を預けろと迫ります。アコイ氏は手下ではあるのですが、それを阻止しようとわざと失敗したりして、笑いを誘うわけです。最後は雨が降ってしまったのですが、観客はアコイ氏の一挙手一投足に注目し続けていましたし、特にカンボジアの子どもたちは「TVで言っていた」ことを非常に信じる傾向があるので、この有名人による人身売買の危険を訴えるメッセージもきっと伝わったことと思います。

【様々な工夫が要求される情報伝達】

農村部で情報を伝達していくには様々な工夫が必要です。自分たちから村人に飛び込んでいった今回のイベントは、クラブのメンバーたちにとっても知識を得たり確認したりするいい機会だったと思います。カンボジアの学校には課外活動や行事があまりないので、イベントを準備、運営すること自体、子どものためになったとも思います。内容的にも、教育程度などに関係なく誰もが理解できる歌やコントを中心にしており、また集客の意味でも有名人の効果は大でした。

ただ、今回はプノンペンから車で30~40分の国道沿いの学校ということで有名人も呼びやすかったと思いますし、マーチも国道沿いの学校を発着点としているので、そう国道から遠くまで行けたわけではありません。それらのことから、本当の僻地(へきち)で同じことをするのは難しいかな、という印象も受けました。とはいえ、支援予定であるジャヤバルマン7世中学・高校の子ども若者クラブのメンバーたちの熱心な活動ぶりを見るよい機会となりました。本年の支援の内容については後日またお伝えしたいと思います。

※写真は熱演するアコイ氏です。

口承(口伝え)による子ども権利の普及

2006年07月07日 07時42分13秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。前回、前々回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRFが支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。今回は前回ご紹介したカンダール州のジャバルマン7世中学・高校のクラブメンバーによる6月17日の朝のマーチで宣伝され、その日の午後に行われた子どもの性的搾取防止を訴えるイベントについてお伝えします。国際子ども権利センターは本年、同校も含めた5つの小中高の子ども若者クラブの活動を支援します。

【カンボジアにおける情報伝達】

人身売買の危険などについての情報に限らず、遠隔地ではあらゆる情報が不足しており、伝達される手段も限られています。テレビは地方でも意外なほど普及しているのですが、電気が通っていない地域が多く、バッテリーを使用しているため1日に1~2時間しか見られません。また新聞も手に入りづらく、また字の読めない人も少なくありません(15歳以上の識字率は、世界子ども白書2006によると男性85%女性64%)。

遠隔地での情報の伝播のツールとしては、ラジオが比較的頻繁に挙げられますが、やはり口コミも有力な情報伝達手段です。中学校の校庭いっぱいの人々を集めた今回のイベントも、CRFが事前に地域の村長や学校長に頼んで住民や生徒に伝えてもらったことと、午前中のマーチが広報活動のすべてでした。そのように口コミで集客したこのイベントは、内容的にもカンボジアの文化を反映した工夫がなされていました。

【口承文化の国らしいイベント】

このイベントは奨学金の授与式も兼ねており、イベントの冒頭には郡長や郡の教育事務所の所長など複数の来賓のあいさつがありました。しかしそれらはずっと続けられることはなく、来賓のあいさつとクラブメンバーの歌が交互に組み込まれていました。 それ自体も参加者を飽きさせないユニークなものですが、そこで歌われる歌というのが、全て子どもの権利の歌なのです。

以前、村の人々に「ヒ素の恐ろしさ」についてDVDを用いて説明する場面に立ち会ったとき、カラオケビデオが始まったのでディスクの入れ間違いかと思っていると、「ヒ素の恐ろしさ」をテーマにした歌だった、ということがありました。こういった手法はアフリカなどでもよく見られますが、カンボジアも歌や踊りや影絵などで大事なことや歴史、物語などを伝えていく口承文化が発達した国で、子どもの権利もたくさんの歌になっているのです。私の知っているものでは、男女の掛け合いで「子どもの権利にはなにがあるか知っている?」「知っているさ、生存する権利がある」「それだけじゃない、まだあるわ」といった調子で4つの権利を説明していくものがあります。

実はこのイベントには、大物ゲストが呼ばれていました。次回はこの大物ゲストが登場したコントによる意識啓発を紹介して、このイベントの報告を終わりたいと思います。

※写真は子どもの権利の歌を歌う子ども若者クラブのメンバーです


子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

子ども若者クラブによるマーチ

2006年07月05日 11時17分49秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。前回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRF(子ども権利基金)が支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。国際子ども権利センターはこれまで子ども参加のガイドブックなど、CRFの出版関係の活動を支援して来ましたが、本年はこの子ども若者クラブの活動を支援します。

【炎天下の村を練り歩く子どもたち】

前回でお伝えの通り揃いのTシャツと帽子を身につけた100人ほどのジャヤバルマン7世中学・高校の子ども若者クラブ(以下クラブ)のメンバーは、二手に分かれて村を練り歩きました。主な目的は

・シュプレヒコールで子どもの権利や性的搾取の危険についてアピール
・関連するパンフレット類を配布し、ポスターを貼ってまわる。
・当日午後より開催の子どもの性的搾取防止を訴えるイベントの告知をする

の3つです。各グループともに隊列を率いるのは、前回の写真にある通り大きな拡声器を載せたバイクとマイクを手にしたクラブの役員メンバーで、役員メンバーの「子どもの権利を守ろう!」「子どもを人身売買や性的搾取から守ろう!」というスローガンに他のメンバーたちが「チェイヨー(万歳)!」「オボサト(ブラボー?)!」と声を合わせます。そして人がいる限り全ての家に2~3人で入っていき、簡単な説明をしながらパンフレットを渡し、ポスターを貼らせてもらい、2時から始まるイベントに来てくれるよう伝えていくのです。

【配布物は美しいものを】

先を争うように村人に走り寄っていくメンバーの姿に加え、ポスター貼りも印象的でした。家や庭の木に貼るのに明確に許可を取っている様子がないことにも、誰一人として嫌な顔をする村人がいないことにも少しビックリ。村の人のおおらかさに加え、カンボジアの農村では芸能人などのきれいなポスターで家を飾る家が多く、今回のポスターも両親と2人の子どもの家族に扮したモデルが微笑んでいるきれいなものなので、受け入れられたのかもしれません。CRF代表のモンタニーさんも、村人が好むよう美しいポスターにしたことを強調していました。また途中小学校の脇を通った際も子どもたちが群がってきましたが、パンフレットの美しさが非常に関係していたように感じました。カンボジアの農村部では、まだまだきれいな写真や絵のついた印刷物に触れる機会が多くなく、CRFは常に「美しく魅力的なものにする」ことに気をつけています。

【2時間半に及んだマーチ】

前回の締めくくりで「2キロくらい歩く」と言われたことを書きましたが、実際のマーチは途中休憩を入れつつ、8時前から10時半過ぎまで続きました。朝とはいえカンボジアの炎天下を2時間半以上歩いた私はクタクタでしたが、カンボジア人であるCRFのスタッフにもダウンした人がいました。それでも子どもたちは疲れた様子もあまりなく、さすがの元気さを見せてくれました。次回は上記のイベントの様子をお伝えし、カンボジアにおける情報伝達の方法をご紹介したいと思います。

※写真は村人にパンフレットを渡して説明するメンバーです

子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html



CRFと子ども若者クラブ

2006年07月03日 22時29分12秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。国際子ども権利センターでは、国際子ども権利センターの以前からのパートナーNGOの一つ、CRF(=Child Rights Foundation : 子ども権利基金)の子ども若者クラブの活動を本年より支援します。そこで先日、CRFとクラブの主催で行われた、奨学金の授与式も兼ねた子どもの性的搾取防止を訴えるイベントに参加し、クラブの活動の様子を見てきました。今回から複数回にわたって、このイベントの紹介を通じて、CRFと子ども若者クラブをご紹介していきたいと思います。

【CRFと子どもと若者クラブの活動】

CRFは、子ども参加を強力に推進し、子どもと若者の活動を通じて子どもの権利条約の普及に取り組んでいるNGOです。また、教育省とも密接な協力関係にあり、体罰の禁止についての教師向けの教材なども作成しています。また子どもが性的搾取から身を守るための啓発リーフレットや、子ども参加のガイドラインを作るなど、出版関係の活動にも精力的に取り組んでおり、国際子ども権利センターはこれまでこの出版活動を支援してきました。
                            
子ども若者クラブ(以下クラブ)は、CRFが小中高計5校で支援している児童や生徒たちのクラブで、子どもの権利、そして人身売買や性的搾取などについて勉強し、他の子どもたちや地域の人たちに意識啓発するほか、奨学金の支給がある際には対象家族の選定に関わるなど、子ども主体による子どもの権利普及を行っています

【200人のメンバーを誇る子ども若者クラブ】

ジャヤバルマン7世中学・高校は、プノンペンから国道1号線を車で30分から40分走ったところにある大きな学校で、中高計6学年が同じ敷地内で学んでいます。ジャヤバルマン7世はアンコール朝の名高い王様ですが、ここでは以下ジャヤ校とします。ジャヤ校のクラブは200人以上のメンバーと7人の役員で構成されています。

【揃いのTシャツと帽子で約100人が集合】

集合は7時半で、学校に到着してまず目に入ったのは揃いのTシャツを着て揃いの帽子をかぶった子どもたちの一団でした。今回のイベントはまずクラブメンバーたちのマーチで始まるのです。CRFスタッフに挨拶すると、私にもお弁当とTシャツ、帽子が渡されました。朝早く始め、Tシャツや食事がつく、これはカンボジアでマーチやデモンストレーションをするときの定番と言っていいかも知れません。私もお弁当を食べ、Tシャツと帽子を身につけ、横断幕や配布資料を準備するクラブメンバーに「どれくらい歩くの?」と聞くと「多分2キロくらい」ということ。しかし実際はどうだったかというと、次回にご紹介したいと思います。

※写真は村を練り歩くメンバーたちです。

子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html


ブログ再開のお知らせ

2006年07月01日 21時36分27秒 | Weblog

国際子ども権利センター会員の皆様、支援者、および賛同者の皆様

 ブログを休止していた5ケ月間、多くの方々からブログの再開のご要望を頂き、有難うございました。本年2月、カンボジア事務所において不適切な業務指示と情報発信が発生しました。運営会は、ただちにセンターすべてのブログを休止するとともに、緊急の運営会を召集し、正確な事情を把握した後、代表に厳重注意を行い、すべての会員に詳細の報告を送りました。また、再発防止のために「海外行動規範」と「情報発信ガイドライン」を作成しました(それぞれ2006年3月31日と4月16日に発効)。さらに、2度と過ちをくりかえさないために、本センターの方針や現状に応じた活動内容の見直しを行なっていくことを決定しました。

 2006年6月18日の総会を経て、新しい役員体制のもと、情報発信を行なうためのチェック体制の整備に努めました。その結果、本日、ブログを再開することになりました。 これまでの教訓を活かし、このチェック体制のもとで人権に配慮しながら、海外の子どもたちの情報を発信してきたいと考えています。どうぞ今後もご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。     

                      国際子ども権利センター