カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

NGO、子どもを性的虐待したベルギー人の国外追放を請願

2009年10月30日 19時31分50秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
 こんにちは、長島です。10月6日に、ベルギー人男性、フィリップ・デザールが少年に性的虐待をした罪で服役し、釈放後にその少年の母親と結婚しようとしているという記事を紹介しました。今回はその続報として、カンボジア国内のいくつかの子ども保護団体が、デザールを国外追放するよう求めているという記事をボランティアの方に訳していただきました。

シーライツとしても今後、特に加害者が日本人の場合、今回のような抗議活動に参加していきたいと思います。
最終的にデザールは9月末に国外追放されたのですが、そちらの記事も追って掲載します。

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

写真は、今回の抗議活動の中心となったローカルNGO・APLEの報告書、"Survey on street-based Child Sexual Exploitation in Cambodia"より。©APLE

カンボジアデイリー紙 2009年7月18-24日ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

NGO、子どもを性的虐待したベルギー人の国外追放を請願

 子どもへの性的虐待で前科ニ犯のフィリップ・デザール(ベルギー国籍)の国外追放を政府に求める請願書をNGOがまとめ、国内の児童保護団体に賛同を呼びかけている。

デザール氏は、90年代に子どもをレイプし虐待した罪でベルギーにて3年間服役、2006年にプノンペン市裁判所にて18年の有罪判決を受けたが、控訴審で刑期が短縮され、今年4月に釈放された。そして同月、彼によって被害を受けた少年が住むバンテアイ・メアンチェイ州へ移った。

 ネッス・サヴーン国家警察長官に宛てられた請願書の写しには、「私たちは、内務省入国管理局がデザール氏のカンボジアのビザを取り消し、内務省が彼に国外追放を命じるよう、要請します」と記されている。

 請願書では、デザール氏の現住所を問題視している。「少年への虐待が再び行なわれるリスクの高さ、同じ状況が続くことで生じる少年の当惑やトラウマを懸念する。また、デザールと同居する11歳の弟が性的虐待を受けるリスクも高い。」と指摘、「彼をこのような状況に置くことを容認すれば、子どもたちや地域社会に対し、犯罪を通報することは無意味であり、外国の性犯罪者はカンボジア国内では刑罰を逃れられるという、間違ったメッセージを送ることになる。」

 請願書をまとめたAPLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)のサムレアング・セイラ代表は、11団体に送付した請願書にはすでに4団体が署名したと話している。

 国家警察スポークスマンのキエット・チャンタリッス氏と内務省スポークスマンのキエウ・ソペアック中尉からのコメントは水曜日には得られなかった。
 イッス・ラディ法務省次官は水曜日、裁判所が服役後の国外追放を命じていないため、法的には、デザール氏が再び罪を犯さない限り国外追放は不可能であると話している。
「新たな不法行為があれば政府は措置をとり、それから国外追放となるだろう」とラディ氏は語った。

(翻訳・小味かおる他 2009年9月16日)


フレンズ・ザ・レストランのご紹介

2009年10月23日 19時54分32秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、長島です。先週は、シーライツのパートナー団体である、フレンズ・チャイルドセーフセンターのマオさんのインタビューを掲載しました。今回はそのフレンズが直営するレストラン、「フレンズ・ザ・レストラン」をご紹介したいと思います。プノンペンに行く機会があったら、ぜひ寄っていただきたい、ストリートチルドレンの自立を支援出来るお勧めレストランです!

 フレンズは1994年の設立以来、カンボジアのストリートチルドレンの保護・教育・職業訓練などの活動を通し、社会復帰を支援しているローカルNGOです。250名のフレンズのスタッフは、毎月8,000人に及ぶ子どもと若者に、路上または施設で支援を提供しています。フレンズの統計によると、プノンペンには10,000~20,000人の路上生活または路上で働いているストリートチルドレンがいて、その数は増えていると言われています。シーライツはフレンズの、虐待や性的搾取、人身売買から子どもを守るプログラム、チャイルドセーフネットワークを支援しています。

 2001年にオープンしたフレンズ・ザ・レストランは、かつてストリートチルドレンだった若者たちが調理や接客の職業訓練を受けながら働く、いわばオンザジョブトレーニングのためのレストランで、レストランの売上はフレンズの運営費に充てられます。ここでは”Student”というプリントが入ったTシャツを着た元ストリートチルドレンの若者が、“Teacher” Tシャツを着たサービス業のプロのスタッフからトレーニングを受けながら働いています。

 トレーニングのために設置されているレストランという言葉にまどわされてはいけません。私が初めてフレンズ・ザ・レストランに行った時、店内のカラフルでおしゃれな雰囲気、料理の美味しさもさることながら、一番にサービスのレベルの高さに感動しました!入口では店員が笑顔でお出迎えしてくれ、訓練中といえども接客マナーもサービスもプロ同然です。お水が少なくなると、すぐ注ぎ足しに来てくれ、料理がキッチンから出来上がると数人が早足で取りに行き、その迅速さに驚かされます。ウェイトスタッフの人数も多いので、常に誰かがテーブルに目を配っていてくれるのです。入口付近にあるキッチンの一部がガラス張りになっているので、生徒たちが一生懸命調理している様子も見えるようになっています。彼/彼女たちの働いている姿を見ていると、いつも真剣さや、頑張って働いている感じがひしひしと伝わってきます。このレストランに行き、逆境を乗り越えて頑張っている若者の姿を見ると、嬉しさと希望感で胸がいっぱいになります。

 さて、フレンズ・ザ・レストランのメニューですが、アジアと欧米料理を混ぜたフュージョン料理となっており、Gustav Auerさんというヨーロッパとカナダでシェフをしていた方が調理の先生を務めているそうです。

お店のお勧めメニューには以下のようなものがあります。値段はUS$3.5~$4 (350円から400円程度)

★Crispy Prawn Wontons(エビのクリスピーワンタン)
★Grilled Fish with Salsa Verde (白身魚のグリル)
★Khmer Seafood Soup with Lime(クメール・シーフードスープ)
★Khmer Chicken Curry(クメール・チキンカレー)
★Coconut lime cake with passion fruit syrup(ココナッツライムケーキ)

個人的には、エビのクリスピーワンタンと白身魚のグリルはが、本当に美味しくてお勧めです!また、フレンズが経営するロムデンというレストランもあり、こちらはクメール料理専門店でが、少しフレンズより落ち着いた雰囲気となっています。もちろん、料理とサービスはフレンズ同様に素晴らしいです。

 調理・接客マナー以外にも自尊心や衛生について学んだ生徒たちは、訓練が終わるとフレンズと一緒に就職先を探し、巣立っていくそうです。プノンペンのレストランやカフェなどで卒業生たちが自立し、自信を持って、いきいきと働いている姿が目に浮かびます。

 より多くの生徒が卒業して活躍してくれることを願いますが、ここで皆さんに知って欲しいのが、施設で教育や職業訓練を受けながら生活しても、再び路上に戻ってしまう子どもも少なくないという現実です。かつてフレンズの施設で生活していて、路上に戻ってしまったストリートチルドレンに、フレンズがインタビューをして分かった理由として、①施設の規則が嫌、②路上に友達が居る、③施設で喧嘩をした、などが挙げられます。しかし一番の理由は路上で生活をしたり、働いていた方がお金になるということです。つまり、路上で物売りをしている子どもから何か買ったり、物乞いしている子どもにお金をあげたりする人たちがいる限り、路上を選んでしまう子どももいるということです。本当にストリートチルドレンを助けたいと思ったら、ストリートチルドレンについて活動をしているNGOを支援して下さい。フレンズレストランのような所で食事をするのも、その支援のひとつなのです。

 フレンズ・ザ・レストランの横には、職業訓練を受けている元ストリートチルドレンや、その親が作っている小物などを売っているFriends'n'Stuffというお店もあります。「The Best of Friends The Restaurant」というフレンズレストランのメニューレシピが載った料理本がそこで買えるのですが、先日この本を購入してクメール料理を作るぞ!と意気込んでいた私は、実は料理が苦手なので、「おいしそう・・・」と目を細めて眺めるだけのものになってしまっています。

フレンズ・ザ・レストランのサイト:http://www.mithsamlanh.org/ventures.php?id=12&catid=3
ロムデンのサイト:http://www.mithsamlanh.org/ventures.php?id=13&catid=3

虐待や性的搾取、人身売買から子どもを守る活動をぜひご支援ください!
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/kaiin.html

ポルノ被害からカンボジアの子どもを守るために ~岡田外相にメッセージ

2009年10月20日 20時05分33秒 | カンボジアの子ども
こんにちは。甲斐田です。
10月2日にカンボジアの少年たちの裸の写真を撮影した日本人男性の有罪判決の記事を紹介しました。

これまでもカンボジアの子どものポルノ写真を撮影した日本人が何人か逮捕されていますが、ブログを読むと、同様のことをして取り締まられることなく日本に帰国した人は数多くいることが想像されます。

昨年、ブラジルで開かれた「第3回子どもの性的搾取に反対する世界会議」では、日本で子どもポルノに関して2つの点において規制がされていないことが全体会議でも名指しで批判されました(注1)。
1つは、日本で、「子ども買春・子どもポルノ禁止法」により、子どもポルノを製造・販売することは禁止されていても、持っていること(単純所持)が禁止されていないということです。この「所持」が禁止されていないのは、主要8カ国(G8)の中では日本とロシアだけです(注2)。

子どもポルノの被害は世界的に深刻な問題になっていますが、日本でも今年上半期の子どもポルノ事件の被害に遭った子どもの数は、218人に上り、過去最高となりました。

ブラジル会議で日本が批判された2点目は、日本で子どもを性的に虐待する画像(マンガ、アニメ、ゲームなどの表現物)が規制されていないことです(アメリカ、ドイツ、フランスではすでに規制)。会議最終日に、「リオ協定」という宣言と行動計画が採択されたのですが、こうしたバーチャル画像に関しても、製造、提供、所持、閲覧などを犯罪と見なすことがその行動計画に盛り込まれました。

また、2009年9月16日に開催された、第12回国連人権理事会では、ブラジル会議のフォローアップの一環として、「児童の売買、児童買春、児童ポルノに関する特別報告者のレポート」が発表されました。

 このレポートのなかでは、子どもポルノの定義にバーチャルな画像や18歳以上が演じる擬似ポルノも含まれること、こうした画像を含む子どもポルノの所持・アクセス・閲覧についても処罰化すること、すべてのインターネットのプロバイダーへのブロッキング(注3)の義務化などが提言されています。加えて、インターネットには国境がなく、世界中のすべての子どもを保護するためには、国際的な協力関係の構築が必要であるとレポートでは指摘されています。そのほか具体的な提言として、各国政府に対し、「子どもを搾取するバーチャルな(仮想の)画像や描写を含む子どもポルノの製造、提供、意図的な入手および所持、また、たとえ子どもとの身体的な接触がなくとも、そのような画像の意図的な使用、アクセス、閲覧の処罰化」を含む法律の整備を求めています。

10月3日、カンボジアを公式訪問された岡田外相と、カンボジアで活動するNGOの間で懇親会が開かれました。シーライツは、ほかのNGOとともに岡田外相へメッセージと資料を提出しました。一言メッセージでは、子どもポルノに関する規制強化を新政府に期待していることを伝え、より詳しい資料では、カンボジア政府が人身売買業者など子どもの人権を侵害する加害者を法にのっとって処罰できるように、法の執行力強化において日本政府がさらに支援することを要請しました。鳩山首相の新政権のもと、一日も早く法改正がなされ、カンボジアやほかの国で子どもがポルノの被害に遭うことがなくなることを願っています。

写真は、ブラジル会議でインターネット上の子どもポルノ被害について報告する人々です。©シーライツ

(注1)詳しくは、シーライツ発行の「子ども買春・子どもポルノ・子どもの人身売買をなくすために ~ブラジル会議報告書」をご覧ください。
http://www.c-rights.org/shiryou/book/index.html

(注2)これに対して、日本ユニセフ協会が中心となり、「子どもポルノ問題に関する緊急要望書」の署名活動など「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンを実施しています。シーライツも呼びかけ人・賛同団体としてかかわっています。
http://www.unicef.or.jp/special/0705/index.html

(注3)ブロッキングとは、ネット利用者やNGOから問題サイトの通報を受けて警察がブラックリストを作り、それをもとにプロバイダー各社が接続を遮断する制度。
 日本の警察もこの導入を検討している。警察庁の「No!児童ポルノ」ページhttp://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/ 

ストリートチルドレンのためのチャイルドセーフ・センター ―ストリートチルドレンを助けることとは?―

2009年10月16日 18時23分32秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、筒井です。今回はストリートチルドレンについて、少し深く考えてみたいと思います。早速ですが、みなさんの中には、きっと以下のような経験をお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

「海外旅行中に、特に途上国の都市の路上で、物売りや物乞いをしている子どもたち―いわゆるストリートチルドレン―に会ったけれど、どう接していいか分からなかった。」

私も学生のときに同様の経験をし、非常に大きなショックを受けました。過酷な環境で食べ物にも困っているのだから、売り物を積極的に買ったり、お金を恵むことはいいことだ。いや、お金をあげるのは倫理的によくないので、かわりに食べ物を渡すのがいいだろう。ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、いろんな意見や考え方があると思います。

そこで、今回ご紹介したいのが、ストリートチルドレンの保護や社会復帰を目指して、彼らと共にユニークな活動を展開しているフレンズというNGOのチャイルドセーフ事業です。チャイルドセーフ・センターでマネージャーを務めるマオさんにお話を伺ってきました。(写真はマオさん。チャイルドセーフ・センターにて。)

*チャイルドセーフに関する情報は、以下のサイトをご覧下さい。
http://www.childsafe-international.org/CAMBODIA/CSCambodia.asp


あなたならどうしますか?


「私たちは、子どもが危うい状況に置かれている場面をしばしば目にすることがありますが、問題はその危険性を認識できないこと、あるいは対処の方法を知らないことです。」チャイルドセーフ・センターのマオさんは、真剣な眼差しでこう話してくれました。

カンボジアでは、観光産業の拡大に伴い、法の未整備や汚職につけこむかたちでセックスツーリストが流入しました。その中には多くの子ども買春者も含まれており、性的搾取の被害にあうリスクが高いのがストリートチルドレンです。また、路上生活を続けることは、健全な成長を妨げるような仕事に追いやられたり、教育の機会を奪われることにつながります。

一般の旅行者でも気がつかないうちに路上での児童労働に加担してしまうことがあります。たとえば、物売りや物乞いの子どもに直面したら、お金はもちろんのこと、クッキーやキャンディなどの食べ物も渡してはいけないとマオさんは言います。子どもが路上で稼げたり食べていけることになり、子どもの路上生活を助長することになるからです。

「そういうときは、笑顔で話しかけ、チャイルドセーフ事業のことを教えてあげてください。もし知らない子どもがいたら、すぐにセンターまで電話してください。」
センターでは、カウンセリングや家族との再統合、刑事訴追、医療支援、補習授業、職業訓練など、緊急に必要なサポートや適切なサービスの紹介を行っています。また、観光客を対象に情報提供を行い、ストリートチルドレンを助ける方法を伝えています。

ストリートチルドレンを性的搾取や児童労働などの様々な危険から守るために、フレンズは旅行者向けに7つのアドバイスとホットラインの番号を載せたリーフレットを配布しています。また、旅行者と接する機会の多いホテル、レストラン、インターネットカフェ、タクシードライバー、旅行代理店などを対象に研修を提供し、ネットワークを構築することによってストリートチルドレンを取り巻く様々な危険を取り除く活動に努めています。トレーナーは各業者の職場に直接赴き、実地研修を行います。研修を終えた業者たちは、認定メンバーとしてフレンズのウェブサイトなどで紹介されるようになり、利用者の獲得につながります。C-Rightsは、旅行者向けリーフレットの日本語版作成と研修費を支援しています。

「子どもにとって危険なことに注意を払い、どうすれば子どもを守れるのか、しっかりと判断することが重要です。」2007年にオープンしたセンターは、心のこもったスタッフに支えられ、今日も活動に勤しんでいます。

ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、みなさんの答えは見つかりましたか?

1日30円からの国際協力・マンスリーサポーターお友達紹介キャンペーン実施中!
http://www.c-rights.org/join/monthly.html

人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向

2009年10月13日 13時25分00秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
毎年6月、米国務省は、各国の人身売買への取り組み状況を調査した結果を報告書にまとめて発表し、政府の努力に関する4段階でのランク付けを行っています。「ランク1」は、米国「人身売買被害者保護法」に基づく最低基準を十分に満たしている国、「ランク2」は、同基準を満たしていないが、同基準到達のため相当の努力をしている国、「ランク2監視対象」は、同基準を満たすために相当の努力をしている一方、成果が出ていない国、「ランク3」は、同基準を満たしておらず改善努力もなされていない国としてリストされています。
この報告書(通称:TIPレポート)に関しては判断基準があいまいなどの理由から批判もありますが、日本では、2004年に日本が監視対象国としてリストにランクされたことにより(ほとんどの先進国はランク1)、マスコミも政府も注目し、2005年、刑法が改正され人身売買罪の創設につながりました。

さて、ある国がランク3になると、米国の経済制裁の対象ともなります。実際、カンボジアが2005年にランク3に引き下げられたときは、ゆるやかなものではありましたが、経済制裁を受けました。その後カンボジアは、2年間、監視対象国としてランクづけされたあと、2008年は4年ぶりにランク2に格上げされました。にもかかわらず、今年は再びランク2の監視対象国として格下げされてしまいました。http://www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2009/
今回は、それについての記事をボランティアの方が翻訳してくださったので紹介します。

 2008年に人身売買取締法が改正されたにもかかわらず、なぜカンボジアはランクが下がったのでしょうか? 詳しくは、今年のカンボジアについてのTIPレポートの和訳をシーライツのホームページに掲載しましたので、そちらを読んでいただければ詳しくご理解いただけると思いますがhttp://www.c-rights.org/6-1/、この法律について警官が十分理解しておらず、人身売買業者ではなく、路上で働くセックスワーカーばかりが逮捕されているという状況があります。さらにひどいことに、その拘留中に警官や社会福祉省のスタッフからレイプされたり、お金を強要されたりしているひどいケースも数件報告されているそうです。
セックスワーカーたちのネットワークは、TIPレポートがこの点を指摘したことを評価し、レポートの提言にそってセックスワーカーを逮捕するのではなく、人身売買業者を逮捕するようにすべきだという意見を出しています。
http://www.sexworkeurope.org/site/index.php?option=com_content&task=view&id=295&Itemid=186

人身売買取締法の執行の問題点については、今後もフォローしていきたいと思います。

カンボジアの子どもの人身売買を防止するためご支援ください。
詳しくは http://www.c-rights.org/join/donation.html をご覧ください。
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ab/95d0c05681ba28d60d5ab5f8b1c75861.jpg

図は、米国務省の人身売買報告書2008のカンボジアより
出所:www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2008/


人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向


カンボジア・デイリー紙ウィークリーレビュー2009年6月13-19日号
ベサニー・リンゼイ、ヌウ・ヴァナリン記者

 米国務省発表の人身売買に関する年次レポートにおいて、カンボジアは再度評価を下げられ、昨年の格上げからわずか一年での降格となった。
昨年は、人身売買を防止する最低基準の到達に向けた「めざましい努力」によりカンボジアは同省規定のランク2に格上げされていたが、2009年のレポートでは改善傾向の後退がみられ、ランク2の監視リストに載ることとなった。

 同レポートでは、人身売買に関与する者(共謀する役人を含む)の有罪判決・処罰、及び被害者保護に対してカンボジア政府の取り組みに進展がないと報告されている。
ランク2(※1)は、人身売買を防止する最低基準を満たしてはいないものの、基準到達の適切な努力は行っているとみなされる。
米国務省は、カンボジア当局に対し2008年に人身売買取締法が施行されて以来、有罪判決件数が減少していることを指摘。2008年4月から2009年3月までの間にわずか12名しか有罪判決を受けておらず、これは前年同期間の52名を大きく下回る。また警察内部および司法関係者の間においても汚職がはびこり、カンボジアの人身売買問題が深刻化していると言及している。

 レポートによると、警察や司法関係者を含む、多くの個人が直接的ないしは間接的に人身売買に関与しているという見方が一般的である。一部の地元警察や役人が買春宿の営業を黙認する見返りに金銭を強要したり、オーナーから賄賂を受け取っていたりすることは周知の事実であり、連日不正が行われていることもあるという。

 レポートでは様々な事例が報告されており、買春や使用人労働を目的として売られた子ども、カラオケバーや買春宿で売春を強いられた女性、タイの漁船やマレーシアのプランテーションで労働させられた男性などが挙げられている。
レポートが公表された同日に米大使館のスポークスマンであるジョン・ジョンソン氏のコメントはなかったが、米大使館によるプレスリリースでは、前年度に人身売買に対する取り組みに後退が見られたとしている。

 カンボジア内務省 人身売買対策局のビッス・キムホン局長は、新レポートの内容は認識していないが、警察は最善を尽くしていると述べている。「我々は、犯罪者を逮捕・起訴するために捜査及び取締りを強化している。人身売買の防止を目的として関連ニュースを放送して、人々に呼びかけている。」とも話した。
「2009年中に警察当局は、数多くの人身売買事例を取り締まり、防止してきた。」とキムホン氏は付け加えたが、外出先であったため具体的な統計は示されなかった。
閣僚評議会のスポークスマンであるファイ・シファン氏は、政府が人身売買に十分な措置をとっていないとする報告内容を容認できないとしている。「クメール文化では女性は尊重される」とし、政府は人身売買の防止に全力をあげているとシファン氏は話している。

 カンボジアの人権団体Licadho(Cambodian League for the Promotion and Defence of Human Rights; 人権の保護と普及のためのカンボジア連盟)のナリー・ピロージュ事務局長は、「Licadhoはレポートにまだ目を通しておらず」、米国務省がカンボジアの格下げをした理由を把握していないとして、レポート内容についてはコメントを避けた。

(※1)Trafficking in Persons Report 2009 Tier Placements より


子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

2009年10月06日 18時39分30秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

先日、子どもへの性的虐待の隠れ蓑に養子縁組という手口を使おうとしたスウェーデン人男性の記事を紹介しました。今回は、同じように少年を性的虐待したベルギー人男性が少年の母親と結婚しようとしているという記事を紹介します。

 カンボジアでは、子どもを狙う外国人が少年だけでなく、その親ともまず仲良くなり、物資の支援提供などをしたあとに子どもを性的に虐待するというやり方が報告されています。いったん支援を受けた家族は子どもが虐待されているのを知っても何も言えなくなってしまう状況になるようです。(このようにまず子どもと仲良くなり、その後、性的虐待をすることを英語ではgroomingと呼ばれていて、インターネット上でもこの手口が使われています。)
優しくしてくれたおとなを信用したあとに性虐待に遭ってしまい、その上、親が何も助けてくれなかった経験をした子どもたちは、どれだけ深い心の傷を負っているでしょうか。

その後、このベルギー人男性の結婚計画に対して、カンボジアのNGO数団体が抗議し、国外追放されることとなりました。その詳細についての記事は別途掲載します。

写真は子どもの性的搾取に取り組むNGO・APLEの報告書“Street Pedophilia” in Cambodiaより ©APLE

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

カンボジアデイリー紙 2009年6月6-12日ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

 バンテアイ・ミエン罪で実刑判決をうけた事件の被害者とされる少年と、近頃、同居を始めていた。
州警察の人身売買対策部門オム・サッス署長は、デザールが当時13歳の少年を性的虐待した罪による3年の服役を終え、4月5日にプノンペンのプレイ・ソー刑務所を出所したと伝えた。デザールは被害者少年の母親サオ・ニイさんと5月25日に婚約し、6月3日にカンボジアを後にした。「婚姻関係の書類」を作成するためにベルギーに向かったという。

 当初デザールは懲役18年の有罪判決を受けたが、控訴審で懲役3年に大幅軽減され、最高裁もこれを支持した。彼は6月1日に婚約者と共に同州セレイ・サオポアン郡トゥック・トゥラー集合村を出てプノンペンに向かったと、サッス署長は伝える。署長は、「この婚約が更なる子どもの性的搾取を目的とした隠れ蓑かどうかを調査中で、ニイさんの親族からは、村長やらが列席した婚約パーティーの写真を見せてもらった」と話している。先月、警察と地元のNGO、APLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)は、デザールが現在16歳となる被害者の少年に引き続き虐待を加える懸念を表明、ともに暮らす少年の弟の安全も憂慮している。

 デザールは子どもへの性的虐待の常習犯で、1994年にベルギーで子どもをレイプし虐待した事件で有罪判決を受け、懲役5年の刑で3年間服役している。
サッス署長によると、デザールは日中にニイさん宅を訪れ、夜はゲストハウスに滞在したと、ニイさんの親族が話しているという。

 APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表は、APLEが他の子ども保護団体とともに、デザールのカンボジア再入国阻止に取り組んでいると伝えている。「デザールは好ましくない人物なので、彼のビザを発行しないよう働きかけている。デザールは養豚場を所有していて、カンボジアに永住するつもりだ」とも語った。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)



子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

2009年10月02日 20時12分48秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
甲斐田です。

先日、お伝えしたように、カンボジアでは昨年、日本人男性が子どもポルノの罪で逮捕される事件が起きました。この事件に対して判決が出たという記事をボランティアの方に訳していただきましたので、ご紹介します。

子どもポルノに関する情報は限られていて、実際は何件くらいの事件がカンボジアで発生しているのかを把握することは不可能ですが、ブログに掲載されることもあり、少なくない数の子供たちが被害にあっていることは確かです。記事の最後には、このように加害者に判決が出るのは、カンボジア政府が本気で処罰していこう姿勢の表れだとしていますが、判決による損害賠償金額はあまりにも低いものです。

取締りが弱く、わずかなお金で子どもを利用できるという理由で、カンボジアやその他の国で日本人が子どもを性的搾取しに旅行するのは、人権の観点からも倫理的にも容認しがたい問題です。

日本から海外に子どもを搾取しに出かける「子どもセックスツアー child sex tourism(注)」に対しては、シーライツとしてこれまでも反対してきましたが、もっと大きな効果的な運動にするにはどのようにすればいいか考えていきたいと思います。そのためにも、ひとりでも多くのみなさんが運動に参加してくださることを願っています。

(注)Child Sex Tourismをなくしていこうとする運動は1990年代から世界的に広がっています。詳しくは、シーライツ発行「ブラジル会議報告書」(700円)をご覧ください。

写真は子どもセックスツアーをなくす活動をASEAN諸国で実施しているオーストラリアのNGO、Child Wiseが作成したポスター。©Child Wise

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html


子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

カンボジアデイリー紙 2009年7月11-17日 ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

キム・エング裁判長によれば、プレア・シハヌーク市裁判所は、少年7人の裸の写真を撮影したとして、日本国籍中川俊一被告(32歳)に懲役6年の判決を下した。
エング裁判長は、2日にわたる公判で同被告に子どもポルノ製作に係る罪で有罪判決を言い渡したほか、被害者の少年(11歳から15歳)一人につき50万リエル(125米国ドル相当)の賠償金支払い命令を下したことを明らかにした。
被告は全面的に起訴事実を認め、少年がきれいだったため、個人的鑑賞のために撮影しただけだと主張しているという。公判では少年7人が揃って中川被告の関与を証言した。

地域住民は昨年8月17日に中川被告がオートレスビーチ付近で少年たちの裸を撮影し、2~5米国ドルをそれぞれに支払っているのを目撃し、これを警察に通報した。
警察によると、中川被告は自身が製作中の本のモデルとして少年たちを撮影したと主張していた。

子どもの性的搾取の問題に取り組むNGO「Action Pour Les Enfants(子どものための活動、以下APLE)」のペン・マネッス氏は、被害者の代理人として、少年たちの母親らが賠償金額を不服とし、上訴する意向であることを伝えた。
「少年の被った被害の大きさに比べ、一人あたり50万リエルはあまりにも不十分」とマネッス氏は述べている。

APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表によれば、中川被告は昨年改正人身売買取締法が施行されて以降、子どもポルノに係る罪で有罪判決を受けた初の外国人となる。
「本事件は、カンボジアが子どもポルノの製造及び提供行為を本気で罰するようになったことを示している」と同氏は述べている。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)