カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

走れトゥクトゥク 笑顔をのせて  スタディツアー報告その9

2008年06月26日 22時03分49秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
こんばんは。甲斐田です。今日、NHKの「クローズアップ現代」でカンボジアの特別法廷を取り上げ、ポルポト時代の虐殺を証言する人がいなくて、裁判が困難に直面しているという報道をしていました。
 加害側当事者が村のすぐそばに住んでいる被害側当事者の人たちは、今でも恐怖に怯えているということを生々しく描いていました。一方、カンボジアの子どもたちがポルポト政権による大量虐殺について学校で教わるようになったのは、つい最近のことだということも伝えていました。私がカンボジアに住んでいるときも、虐殺を知らない・信じない若者がどんどん増えているという新聞記事を目にして驚いたものです。

 さて、今日は3月のスタディツアー報告の最終回となる「その9」です。子どもを狙う観光客からストリートチルドレンを守る活動について古川さんが報告してくれました。

 写真は、子どもを守るためのトレーニングをフレンズから受けたドライバーで、左下に見える指のOKマークがチャイルドセーフのステッカーです。

走れトゥクトゥク!笑顔を乗せて                     
                   古川 直子(大学生)


 暑い太陽が照りつけ、バスや車、バイクのクラクション音、立ち上がる砂ぼこり。3月24日に訪れた、プノンペン市内のニックロバム停留所。地方からのバスの終着所である、この場所は、とても賑やかで交通量が激しい場所です。すぐ隣りの広場は週末となればナイトマーケットに様変わりし、工芸品や食料、衣服等様々な物が売られ、観光客や地元の人で溢れかえります。

 今回、カンボジアで私たちの足となる欠かせない乗り物がありました。その名は「トゥクトゥク」。東南アジアから、南アジアにかけて、普及している軽便な交通機関です。三輪タクシーとも呼ばれ、料金は交渉制で各国の庶民のための足でもあり、都市に流入する労働者の受け皿となる産業でもあります。

 今回は、フレンズ・インターナショナルのプロジェクトの一環でもある、トゥクトゥクやバイクタクシーのドライバーにチャイルドセーフ*のメンバーであることを証明するグッドマークの印のついたシャツを着用させたり、トゥクトゥクにグッドマークのステッカーを貼る等の、子どもの性的搾取や人身売買防止を促すキャンペーンに積極的に参加しているドライバー8人にインタビューを試みました。

*【編集部注】チャイルドセーフ・プログラムは、ドライバーなどに子どもの権利、子どもの性的搾取、法律などについて知らせ、疑わしい客を乗車拒否したり、危険な目にあっている子どもがいるときに通報したりすることを訓練するもので、シーライツ(国際子ども権利センター)はそのトレーニング、バイク、ホットラインの運営などを支援しています。

 以下はドライバーの名前とドライバーになってからの勤務年数や、経験談をもとに書き示しました。

リッ・ソポワールさん(バイクタクシー)

・ 地方から来た2人の子どもを保護したことがある。
見知らぬブローカーに連れていかれるストリートチルドレンを何度も見てきて、助けたいと思い参加。

ティエリティヤさん(バイクタクシー)

・ フレンズで3年間、トレーニングを受けた。
・ ストリートチルドレンが非常に多く、虐待を受けている子どもを助けたいという思いから参加。
・ ドラッグの広がりにも、とても悲しく思っている。

ナンバーナンさん(トゥクトゥク)

・ 3年間勤務。
・ 子どもを保護し、出稼ぎや性的搾取から子どもを守りたいと思い参加。

リアップ・トアさん(バイクタクシー)

・ 3年間勤務。
・ 孤児を守りたいと思い参加。外国人観光客が近年、非常に多くなった。悪いことはしてほしくない。

ハエポリーさん(トゥクトゥク)

・ 3年間勤務。
・ 貧困から、子どもたちを守り、フレンズの活動を沢山の人達に知ってもらいたいと思い参加。

ノイパリーさん(バイクタクシー)

・ 3年間勤務。
・ 孤児を助け、ストリートチルドレンを守りたいと思い活動に参加。

スンセンさん(トゥクトゥク)

・ 2年間勤務。
・ このプノンペンの繁華街の通りには、危険な状態にある子どもたちが多い。
3~4人の出稼ぎに行こうとしていた子どもたちを救助した。フレンズの活動を是非、支援してほしいと思う。

ソンバニーさん(トゥクトゥク)

・ ストリートチルドレンが非常に多い。できるだけ多くのストリートチルドレンを助けていきたい。

 彼らは、非常に積極的に、経験談や目標などを話してくれました。

 そして、子どもの性的搾取の具体的な内容も話してくれました。
 ある日の夕方頃、兄弟と思われる子ども2人に言い寄っている外国人がいて、またその場所に戻るとすでに子どもたちはいなくなっていて、近くにいたストリートチルドレンに聞いてみたところ、20~30ドルで、兄弟は売られていったと聞き、とても後悔したということでした。

 ドライバーが18歳未満の子どもたちに向けて、注意していることは、カンボジア人と外国人をよく見極めること、少しでも怪しいと思ったら相手を疑うことだそうです。

 特にバックパッカーが多く、安宿が立ち並んでいるボンコック湖近辺や、外国人オーナーの店が多い240通りは要注意だそうです。
 
 そして、子どもたちが危険な目に遭いそうなときにはフレンズに連絡するよう、連絡先を教えているそうです。電話代などは、後で子どもたちに返すそうです。
出稼ぎに行く子どもたちは、家に返してしまうと、親に虐待される可能性が高いということで、職業訓練センターに送り、そこにいれば安全であるということも伝えるそうです。

 保護を試みようとした際に、ドライバーを信じられず、騒いだり抵抗したりする子どももいるそうです。そんな時は警察を読んだり、フレンズから女性スタッフに応援にきてもらったりと、彼らは安全で、子どもを守るために保護をしているのだというふうに説得するそうです。

 フレンズのスタッフは、僕達や彼らがいるから安全が保障されるというわけではないと言います。トレーニングを受けたからといって良い仕事をし続けるかどうかは分からないからです。常に、訓練をし続け、広報活動を続け、沢山の人に活動を広めていくことが大切なのだと言っていました。 そして、彼ら自身の友達や家族、周りの人達に、自分の活動を伝えていくこと。仲間同士の賭け事や、揉め事をせず、飲酒運転は絶対にしないこと。何よりも、責任感を持つことが自分達の使命でもあり、目標でもあると言っていました。

 今回、ドライバーの方達から話を聞かせていただき、連携が大切なのだと強く感じました。まず、フレンズとドライバーの連携、地域住民とドライバーとの連携、公の機関との連携。
 これらが全て、子どもたちを守り、治安を改善し、犯罪を減らしていくことへと繋がっていくのだと思いました。広報活動を続けながら、子どもたちへの視線を閉ざすことなくしていくのは、とても大変なことだと思いますが、カンボジアという国を安全で、安心な国にしていくには、このような活動は欠かせないと思います。一人一人の意識、責任感の持ち方が大切であることを痛感しました。

 人の瞳ほど、真っ直ぐで正直なものはないと思います。だからこそ、色々な人の目が必要で、手も必要だと思いました。とても、考えさせられる問題でしたが、生の声や現場に行けたことで、現状が伝わりやすかったです。

 日本でも、同じことが必要だと思いました。地域の目、親の目、周りの目、様々な目が子どもたちを、守ることにつながると確信できる体験でした。

地方に潜るペドファイル

2006年09月30日 07時34分06秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。前回は新しいかたちの人身売買について書きました。今回は子どもの性的搾取、特に外国人による新しいかたちのものについての新聞記事をご紹介します。

「地方に潜むペドファイル」2006年4月21日付けプノンペンポスト紙(Phnom Penh Post ‘Pedophiles take refuge in provinces’ By CAT BARTON 訳・要約平野 )    

過去5年間にわたりソッピアップ(現在13歳)の両親はお金、土地、新しい家、数々の家族旅行を悪質な後援者から受け取り、引き換えに彼は性的に虐待された。47歳のベルギー人フィリップ・デサートは彼の家族と私的な人間関係を築くまで、現地NGOを通して支援を行っていた。NGOのAPLEからの情報をもとに人身売買・未成年保護対策局がプノンペンでデサートを逮捕し、ソッピアップはようやく悪夢から解放された。

首都における法執行力強化に従い、外国人ペドファイルは警察の取り締まりが弱い地方へ移るようになった、とAPLEのカトリーヌ・ケーンは言う。「ここ最近、子どもの性的虐待はプノンペンでは減り、地方では増えました」とケーンは語る。「地方には監視の目が全くないのです」

カンボジアにおける子どもに対する性犯罪のうち、外国人によるものの割合は少なく、2005年度は1%を少し超える程度であった。しかし警察にとって外国人の逮捕、起訴は面倒が多い。ケーンは「もし間違いがあれば、多大な政治的影響を及ぼしかねないため、外国人の処遇は大変難しいのです」と主張する。

プノンペンの警察はそうした障害を克服し、外国人ペドファイルの対策に熟練している、とプノンペン人身売買・未成年保護対策局の副局長カエウ・ティアは言う。「我々はバイクタクシー運転手のふりをして容疑者を追跡するなどして状況を監視しているので、犯罪発生時には速やかに動けるのです」とティアは言い、観光省との協力にも言及する。「我々はホテルなどのオーナーたちと協力しています。彼らはもう外国人が子どもと滞在することを許さないでしょう」

外国人ペドファイルは、警察の取り組み強化に対応して様々な子どもへの接触方法を考えついている。「長期的な滞在先を探してシアヌークビルに行き、子どもとその家族を支援することはいまやトレンドです。地方の孤児院やシェルターを利用しようとする彼らが、子どもの支援を申し出た場合、素性調査が行われないことがしょっちゅうあります」とケーンは語る。

地方の絶望的貧困が、外国人ペドファイルに利用されている、とケーンは言う。「積極的に性的虐待の関係を継続させようとする家族もあります。このような子どもたちやその家族は、経済的関係が台無しになるのであれば、虐待の証拠を提供するのを渋ることが多くあります」被害者の家族を取り込むことに加え、"支援"という見せかけの関係のため、資金も訓練も不十分な地方警察は真実を見抜くことができないのである。(記事は以上)

前回も述べましたが、子どもを襲う犯罪はどんどん複雑化しており、子どもを守るには最新情報に基づいた適切な対応が求められています。なお、文中にある「観光省との協力」の一部として、国際子ども権利センターの支援先のひとつ、フレンズによる「チャイルド・セーフプログラム」があります。

※画像はACTION POUR LES ENFANTSによるSurvey on street-based Child Sexual Exploitation in Cambodia:Overview of 7 provincesというレポートの表紙です。インターネットで検索すればPDFファイルがダウンロードできます(英文)

卑劣なペドファイルから子どもを守るのに力を貸してください↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

工夫をこらした情報伝達

2006年07月08日 13時59分16秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。過去3回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRFが支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。今回は前回ご紹介したCRFと子ども若者クラブメンバーによる子どもの性的搾取防止を訴えるイベントの後半についてご報告します。国際子ども権利センターは本年、同校も含めた5つの小中高の子ども若者クラブの活動を支援します。

【クラブメンバーも熱演】

前回の最後にお伝えした通り、このイベントには大物ゲストとして“アコイ”のニックネームで人気のコメディアンが参加しました。来賓のあいさつも終わり、クラブのメンバーによる子どもの権利の歌も3曲披露され、奨学金授与式も終了すると、いよいよ観客の視線は舞台に。最初はクラブメンバーによるコントで、役員メンバーが扮する間抜けな悪党が、女性を拉致(らち)しようとしつつ最後は捕まってしまうというものでしたが、なかなかの熱演で喝采を浴びていました。カンボジアで見るロールプレイのレベルの高さは口承文化の国の底力でしょうか。

【笑いを交えて人身売買の危険をアピール】

そしていよいよ登場のアコイ氏。付けヒゲに変なカツラというコメディアンスタイルの彼の役回りは、人身売買を企むボスの手下です。ボスは金融業をやっていて、お金が返せない女性に代わりに娘を預けろと迫ります。アコイ氏は手下ではあるのですが、それを阻止しようとわざと失敗したりして、笑いを誘うわけです。最後は雨が降ってしまったのですが、観客はアコイ氏の一挙手一投足に注目し続けていましたし、特にカンボジアの子どもたちは「TVで言っていた」ことを非常に信じる傾向があるので、この有名人による人身売買の危険を訴えるメッセージもきっと伝わったことと思います。

【様々な工夫が要求される情報伝達】

農村部で情報を伝達していくには様々な工夫が必要です。自分たちから村人に飛び込んでいった今回のイベントは、クラブのメンバーたちにとっても知識を得たり確認したりするいい機会だったと思います。カンボジアの学校には課外活動や行事があまりないので、イベントを準備、運営すること自体、子どものためになったとも思います。内容的にも、教育程度などに関係なく誰もが理解できる歌やコントを中心にしており、また集客の意味でも有名人の効果は大でした。

ただ、今回はプノンペンから車で30~40分の国道沿いの学校ということで有名人も呼びやすかったと思いますし、マーチも国道沿いの学校を発着点としているので、そう国道から遠くまで行けたわけではありません。それらのことから、本当の僻地(へきち)で同じことをするのは難しいかな、という印象も受けました。とはいえ、支援予定であるジャヤバルマン7世中学・高校の子ども若者クラブのメンバーたちの熱心な活動ぶりを見るよい機会となりました。本年の支援の内容については後日またお伝えしたいと思います。

※写真は熱演するアコイ氏です。

口承(口伝え)による子ども権利の普及

2006年07月07日 07時42分13秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。前回、前々回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRFが支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。今回は前回ご紹介したカンダール州のジャバルマン7世中学・高校のクラブメンバーによる6月17日の朝のマーチで宣伝され、その日の午後に行われた子どもの性的搾取防止を訴えるイベントについてお伝えします。国際子ども権利センターは本年、同校も含めた5つの小中高の子ども若者クラブの活動を支援します。

【カンボジアにおける情報伝達】

人身売買の危険などについての情報に限らず、遠隔地ではあらゆる情報が不足しており、伝達される手段も限られています。テレビは地方でも意外なほど普及しているのですが、電気が通っていない地域が多く、バッテリーを使用しているため1日に1~2時間しか見られません。また新聞も手に入りづらく、また字の読めない人も少なくありません(15歳以上の識字率は、世界子ども白書2006によると男性85%女性64%)。

遠隔地での情報の伝播のツールとしては、ラジオが比較的頻繁に挙げられますが、やはり口コミも有力な情報伝達手段です。中学校の校庭いっぱいの人々を集めた今回のイベントも、CRFが事前に地域の村長や学校長に頼んで住民や生徒に伝えてもらったことと、午前中のマーチが広報活動のすべてでした。そのように口コミで集客したこのイベントは、内容的にもカンボジアの文化を反映した工夫がなされていました。

【口承文化の国らしいイベント】

このイベントは奨学金の授与式も兼ねており、イベントの冒頭には郡長や郡の教育事務所の所長など複数の来賓のあいさつがありました。しかしそれらはずっと続けられることはなく、来賓のあいさつとクラブメンバーの歌が交互に組み込まれていました。 それ自体も参加者を飽きさせないユニークなものですが、そこで歌われる歌というのが、全て子どもの権利の歌なのです。

以前、村の人々に「ヒ素の恐ろしさ」についてDVDを用いて説明する場面に立ち会ったとき、カラオケビデオが始まったのでディスクの入れ間違いかと思っていると、「ヒ素の恐ろしさ」をテーマにした歌だった、ということがありました。こういった手法はアフリカなどでもよく見られますが、カンボジアも歌や踊りや影絵などで大事なことや歴史、物語などを伝えていく口承文化が発達した国で、子どもの権利もたくさんの歌になっているのです。私の知っているものでは、男女の掛け合いで「子どもの権利にはなにがあるか知っている?」「知っているさ、生存する権利がある」「それだけじゃない、まだあるわ」といった調子で4つの権利を説明していくものがあります。

実はこのイベントには、大物ゲストが呼ばれていました。次回はこの大物ゲストが登場したコントによる意識啓発を紹介して、このイベントの報告を終わりたいと思います。

※写真は子どもの権利の歌を歌う子ども若者クラブのメンバーです


子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

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子ども若者クラブによるマーチ

2006年07月05日 11時17分49秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。前回に引き続き、国際子ども権利センターのパートナー団体CRF(子ども権利基金)が支援する子ども若者クラブの活動をご紹介したいと思います。国際子ども権利センターはこれまで子ども参加のガイドブックなど、CRFの出版関係の活動を支援して来ましたが、本年はこの子ども若者クラブの活動を支援します。

【炎天下の村を練り歩く子どもたち】

前回でお伝えの通り揃いのTシャツと帽子を身につけた100人ほどのジャヤバルマン7世中学・高校の子ども若者クラブ(以下クラブ)のメンバーは、二手に分かれて村を練り歩きました。主な目的は

・シュプレヒコールで子どもの権利や性的搾取の危険についてアピール
・関連するパンフレット類を配布し、ポスターを貼ってまわる。
・当日午後より開催の子どもの性的搾取防止を訴えるイベントの告知をする

の3つです。各グループともに隊列を率いるのは、前回の写真にある通り大きな拡声器を載せたバイクとマイクを手にしたクラブの役員メンバーで、役員メンバーの「子どもの権利を守ろう!」「子どもを人身売買や性的搾取から守ろう!」というスローガンに他のメンバーたちが「チェイヨー(万歳)!」「オボサト(ブラボー?)!」と声を合わせます。そして人がいる限り全ての家に2~3人で入っていき、簡単な説明をしながらパンフレットを渡し、ポスターを貼らせてもらい、2時から始まるイベントに来てくれるよう伝えていくのです。

【配布物は美しいものを】

先を争うように村人に走り寄っていくメンバーの姿に加え、ポスター貼りも印象的でした。家や庭の木に貼るのに明確に許可を取っている様子がないことにも、誰一人として嫌な顔をする村人がいないことにも少しビックリ。村の人のおおらかさに加え、カンボジアの農村では芸能人などのきれいなポスターで家を飾る家が多く、今回のポスターも両親と2人の子どもの家族に扮したモデルが微笑んでいるきれいなものなので、受け入れられたのかもしれません。CRF代表のモンタニーさんも、村人が好むよう美しいポスターにしたことを強調していました。また途中小学校の脇を通った際も子どもたちが群がってきましたが、パンフレットの美しさが非常に関係していたように感じました。カンボジアの農村部では、まだまだきれいな写真や絵のついた印刷物に触れる機会が多くなく、CRFは常に「美しく魅力的なものにする」ことに気をつけています。

【2時間半に及んだマーチ】

前回の締めくくりで「2キロくらい歩く」と言われたことを書きましたが、実際のマーチは途中休憩を入れつつ、8時前から10時半過ぎまで続きました。朝とはいえカンボジアの炎天下を2時間半以上歩いた私はクタクタでしたが、カンボジア人であるCRFのスタッフにもダウンした人がいました。それでも子どもたちは疲れた様子もあまりなく、さすがの元気さを見せてくれました。次回は上記のイベントの様子をお伝えし、カンボジアにおける情報伝達の方法をご紹介したいと思います。

※写真は村人にパンフレットを渡して説明するメンバーです

子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

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CRFと子ども若者クラブ

2006年07月03日 22時29分12秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)

みなさんこんにちは、平野です。国際子ども権利センターでは、国際子ども権利センターの以前からのパートナーNGOの一つ、CRF(=Child Rights Foundation : 子ども権利基金)の子ども若者クラブの活動を本年より支援します。そこで先日、CRFとクラブの主催で行われた、奨学金の授与式も兼ねた子どもの性的搾取防止を訴えるイベントに参加し、クラブの活動の様子を見てきました。今回から複数回にわたって、このイベントの紹介を通じて、CRFと子ども若者クラブをご紹介していきたいと思います。

【CRFと子どもと若者クラブの活動】

CRFは、子ども参加を強力に推進し、子どもと若者の活動を通じて子どもの権利条約の普及に取り組んでいるNGOです。また、教育省とも密接な協力関係にあり、体罰の禁止についての教師向けの教材なども作成しています。また子どもが性的搾取から身を守るための啓発リーフレットや、子ども参加のガイドラインを作るなど、出版関係の活動にも精力的に取り組んでおり、国際子ども権利センターはこれまでこの出版活動を支援してきました。
                            
子ども若者クラブ(以下クラブ)は、CRFが小中高計5校で支援している児童や生徒たちのクラブで、子どもの権利、そして人身売買や性的搾取などについて勉強し、他の子どもたちや地域の人たちに意識啓発するほか、奨学金の支給がある際には対象家族の選定に関わるなど、子ども主体による子どもの権利普及を行っています

【200人のメンバーを誇る子ども若者クラブ】

ジャヤバルマン7世中学・高校は、プノンペンから国道1号線を車で30分から40分走ったところにある大きな学校で、中高計6学年が同じ敷地内で学んでいます。ジャヤバルマン7世はアンコール朝の名高い王様ですが、ここでは以下ジャヤ校とします。ジャヤ校のクラブは200人以上のメンバーと7人の役員で構成されています。

【揃いのTシャツと帽子で約100人が集合】

集合は7時半で、学校に到着してまず目に入ったのは揃いのTシャツを着て揃いの帽子をかぶった子どもたちの一団でした。今回のイベントはまずクラブメンバーたちのマーチで始まるのです。CRFスタッフに挨拶すると、私にもお弁当とTシャツ、帽子が渡されました。朝早く始め、Tシャツや食事がつく、これはカンボジアでマーチやデモンストレーションをするときの定番と言っていいかも知れません。私もお弁当を食べ、Tシャツと帽子を身につけ、横断幕や配布資料を準備するクラブメンバーに「どれくらい歩くの?」と聞くと「多分2キロくらい」ということ。しかし実際はどうだったかというと、次回にご紹介したいと思います。

※写真は村を練り歩くメンバーたちです。

子ども若者クラブを支援するCRFを支援する国際子ども権利センターを支援してくださっているのがみなさんです ↓

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子どもの性的搾取防止<フレンズの画期的な取り組み2>

2005年12月05日 12時59分36秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
おかげさまで先週は過去最高のアクセス者数を記録しました。
1ヶ月前と比べて倍以上の多くのみなさんにご覧になっていただいています。
今後ともご愛読宜しくお願い申し上げます。

さて、今回もフレンズの路上での取り組み、子どもを性的搾取から守る「チャイルド・セーフ・モトドップ(バイクタクシー)」のご紹介です。前回予告どおり、フレンズが観光省とともに実施したトレーニングを受けて試験に合格し、見事「チャイルド・セーフ・モトドップ」になり、マークの入ったシャツを帽子を身につけて仕事をしているドライバーの方にご登場いただきます。トレーニングの内容等については、2日の金曜日付けのブログをご覧下さい。

【同じ人間として】

「トゥクトゥク(バイクの後ろに4人分の座席がついた乗り物。やはり観光客がよく利用する)を運転している友人と一緒にトレーニングに参加しました。自分自身は子ども買春者を乗せたりした目撃したことはありませんでしたが、子どもを守るために参加しようと思いました」

「人間として、同じ人間である子どもを助けたいと思いました。そのためにはトレーニングに参加しようと思いました」

【チャイルド・セーフ・モトドップのシャツを着て】

子ども買春者についての情報は私にとって初めて聞く新しいことでした。フレンズという団体については、レストランやカフェを知っていたので、以前から知っていました。」

「試験は難しかったです。仕事をしていると、お客さんにシャツのことについて聞かれることがあります。私が説明をすると、お客さんも“それはいいね”と言ってくれます。この服を着て仕事をすることをうれしく思っています

自身も1歳の娘がいるというドライバーさんは、はにかんだ笑顔を見せながら、丁寧に答えてくれました。

【良い顧客、良いビジネス】

「good clients good business(良い顧客 良いビジネス)」これが、チャイルド・セーフ・モトドップのドライバーたちが着るシャツの背中に書かれたキャッチフレーズです。フレンズでは、子ども買春者を泊めるホテルを糾弾したり、子ども買春者を乗せるモトドップを非難したりすることよりも、そうでないホテルやレストラン、モトドップを利用することを多くの人に呼びかけるほうに力を入れています

このプロジェクトにしても、トレーニングを受けるドライバーを募集し始めた当初は、「乗車拒否などしたら、売り上げに影響してしまう」というもっともな懸念を持つドライバーがたくさんいたということです。これに対してフレンズは、子ども買春者を乗せたときに自身も罪に問われる可能性や、罪には問われなくとも警察の尋問などに時間を取られる可能性があることとともに、多くの良心的な観光客がチャイルド・セーフ・モトドップを利用するようになったら、かえって売上げは上がる、ということをドライバーに説いたということです。また、情報提供の際の電話代や、危険な状態にあった子どもをフレンズに連れてきたときのガソリン代等は、フレンズが補てんしています。

チャイルド・セーフ・モトドップがより多くの支持を集めるよう、フレンズではドライバーの写真といつも客待ちしている場所、また趣味なども添えた紹介を英語のホームページ上でしています。モトドップ以外にも、よりよい、より安全で健全なカンボジアの旅を楽しむための情報が多く掲載されています。是非ご覧下さい。

http://www.childrights-cambodia.org/phnom-penh-cambodia-taxi.htm

同じ人間として、あなたも行動を起こしてみませんか?↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html




子どもの性的搾取防止<フレンズの画期的な取り組み1>

2005年12月02日 11時27分23秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
昨日に引き続き、国際子ども権利センターのパートナーNGO、フレンズの活動をご紹介します。今回ご紹介する取組みは、画期的な活動といえると思います。フレンズには、今年3月国際子ども権利センターから2台のバイクと1台のデジタルカメラが支援されています。

【誰もが利用する市民の足】

カンボジアや他の東南アジア諸国をご旅行の経験がある方は、町中がバイクタクシーで溢れているのをご存知だと思います。日本にはない光景ですが、繁華街や人の集まるところに、多くのバイクが客待ちをしています。カンボジア語ではこれを「モトドップ」と呼びます。「モト」は「モーターバイク」から来ているようです。

このモトドップは、多くの人に愛用されています。自家用車や自分のバイクを持たない人たちはどこに行くのもモトドップ。つまり、外国人観光客の多くも、このモトドップで移動するわけです。つまり、子どもの性的搾取を目的にカンボジアを訪れた外国人も、エイズを恐れて子どもを買おうとするカンボジア人も多くはこのモトドップを利用して、買春宿に行ったり、カラオケバーや路上から少女や少年をゲストハウスに連れ帰ったりするわけです。私自身、モトドップに乗って買春を持ちかけられた経験は何度かあります。

【モトドップ・ドライバーへのトレーニング】

フレンズは、このモトドップドライバーに目をつけました。日本でもタクシーの運転手さんの意見を景気指数を計る際に採用しているという話がありますが、確かに彼らは街の実態や生の情報を豊富に持っている存在だと言えるでしょう。フレンズは、モトドップドライバーにトレーニングを受けてもらい、子どもの味方になってもらうことで、子どもを性的搾取から守ろうと考えたわけです。

フレンズは、まずプノンペンでモトドップの数が多い場所(ゾーン)を8ヶ所選び出し、そこにスタッフを派遣し、トレーニングを受けることを希望するドライバーを集めました。ここでも国際子ども権利センター支援によるバイクの機動力が活かされています。第一期の参加者として、総勢200名のドライバーが参加したということです。

【チャイルド・セーフ・モトドップの誕生】

トレーニングでは、

☆子ども買春者を運んだら、ドライバー自身も罪に問われかねないこと
☆子どもの健全な発育を阻むような環境では、国がダメになってしまうこと
☆そのような環境では、自分の子どもにだって危険が及ぶかもしれないこと

などを、ピクチャーカードを中心に説明します。そして子ども買春者とその被害者と思われる子どもの組み合わせの客は乗車拒否すること、そういった不審な客や危険な目に遭っていると思われる子どもを見かけたら、フレンズに連絡すること、などのレクチャーを受け、試験に通ったドライバーは、「チャイルド・セーフ・モトドップ」と認定されます。今回は約100名が「チャイルド・セーフ」のロゴ入りシャツと帽子、そして認定証を手にすることができました。今後は彼らに出稼ぎなどについてのトレーニングも受けてもらい、より心強いパートナーになってもらう方針です。

※写真は「子ども買春者の乗車は拒否して、フレンズに連絡してください。彼らは警察に逮捕され、あなたは感謝状を受け取ります、という内容のピクチャーカードを手にしたフレンズのスタッフです。彼が着ている服と同じものが、試験をパスしたドライバーに与えられます。

次回はこの「チャイルド・セーフ・モトドップ」について、ドライバーの方にも登場してもらい、より詳しくご紹介します。

フレンズ
http://www.streetfriends.org/index.html

日本にいても、子どもたちを守るパートナーにはなれます ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html




子どもの性的搾取防止<フレンズの路上での取り組み>

2005年12月01日 11時06分48秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
国際子ども権利センターのパートナー団体(支援先)の活動紹介ですが、HCC、アフェシップに続いて、今回はフレンズという団体をご紹介します。フレンズには、今年3月国際子ども権利センターから2台のバイクと1台のデジタルカメラが支援されています。

【フレンズの紹介】

フレンズは、もともとはフランス人によって設立されましたが、現在はカンボジアのローカルNGOとして活動しています。このカンボジアで始まった活動は大きなうねりとなり、現在フレンズインターナショナルは、フランスやアメリカ、ドイツなどにも事務所を置き、タイ・ラオス・ミャンマー・ホンジュラスでも活動しています。

その発祥の地カンボジアのフレンズは、ストリートチルドレンの支援を行うカンボジアのNGOとしてはかなりの大手で、レストランやカフェのの経営や、最近はレシピ本の出版でも話題を呼びました。活動分野は、職業訓練や薬物乱用防止などの多岐にわたり、国際子ども権利センターが支援したのは、その中の6名からなる「子ども権利チーム」です

【遊びながら学ぶ子どもたち】

サップ河沿いの芝生の上、市民の憩いの場に、数人の子どもたちと2人のフレンズのスタッフが輪になり、絵を書いています。この2人が、「子ども権利チーム」の中で路上の子どもたちを性的搾取から守る活動の担当者になります。フレンズで働いてもう7年になるというスタッフのセニーさんの説明に耳を傾けてみましょう。

「子どもたちは塗り絵が好きです。私たちは毎回違う絵を持ってきて、子どもたちと塗り絵をします。そしてそれぞれの絵は意味を持っているので、それを話して聞かせます。今日のお話は、自分は鳥だと偽って、ヒナを食べてしまう猫の話です」児童性愛者は、やさしいおじさん、やさしんおにいさんを装って子どもに近づくものです。セニーさんはこのお話を通じて、子どもたちに警鐘を鳴らしています

「子どもを性的搾取から、特に外国人観光客による性的詐取から守るため、ピクチャーカードを使って説明します。もしも金銭と引き換えにおとなと性的交渉を持ったら、性病やHIVになるかもしれない、妊娠するかもしれない、家族に冷たくされるかもしれない、友だちから仲間外れにされるかもしれない、などの説明を、字は使わず写真だけで表します。ちなみに、これらを作製するのに、国際子ども権利センターに支援されたデジタルカメラが役立ちました

【有効に使われる支援】

「これらの写真は私が子どもたちを撮ったものです。おかげでどのエリアにどのような子どもがいるか把握できます。つまり、いなくなった子どもいれば、どうしていなくなったのか調べ、探すこともできるのです。子どもたちは、昔は写真を撮られるのが嫌いでした。なぜなら、それは“あのエリアはこんな子どもがいて危険だから”という意味で写真を撮られることが多かったからです。今は私がカメラを向けると笑顔で納まってくれますし、どの子がいなくなったのか、写真を指差して教えてくれます
「もちろん、怪しげな様子で子どもたちと接しているおとながいれば、それを写真に収めて、場合によっては警察に通報することもできます」

デジタルカメラはなかなか有効に使用されていることがわかりました。もうひとつのバイクのほうはどうでしょう。

「路上の子どもたちと活動していく上では、彼らに出向いてもらうことはもちろん、いつも決まった時間に決まった場所で、というわけにはいきません。我々はいくつかの“ゾーン”を設定していて、そこを巡回するするかたちをとっています。バイクの機動力がないとできないことです。本当に助かっています」セーンさんが座る傍らには、国際子ども権利センターの名前が記されたバイクが停めてありました。

※写真は当センター支援によるデジタルカメラと、それによって撮られた写真で作られたピクチャーカードを手に説明してくれるセニーさん。

フレンズ
http://www.streetfriends.org/index.html

フレンズインターナショナル
http://www.friends-international.org/index.html

子どもを助けるためには、こういった物質的な支援も必要なのです ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html