みなさんこんにちは、平野です。
前回の「村の子どもの夢」には大きな反響をいただきました。村で先生などしながら農業を手伝うにせよ、町でお医者さんなどの仕事に就くにせよ、安定した仕事に就けることが最も大切なことでしょう。それに対して、最も不安定で危険な状態に陥りやすいのが出稼ぎです。今回は出稼ぎ経験のある若者の話を聞いてみましょう。
【借金をしてタイへ】
今回話を聞いた若者たちの場合、出稼ぎ先は一様にタイでした。職種は建設業と漁業がありましたが、みな斡旋者に300,000リエル(約75ドル=約8,500円)~400,000リエル(約100ドル=約11,500円を支払って出稼ぎに出ており、つまりはマイナスの状態からのスタートということが言えます。お金の工面については色々だと思われますが、やはり金融業者から借りたという人もいました。
そしてその成果ですが、総じて給料自体は悪くない、ということでした。しかし、タイは物価が高い上、不法滞在を見逃してもらうために警官に一ヶ月につき50,000リエル(=約12,5ドル=約1300円)を払わねばならず、また今回話を聞いた若者達はみなタイから逃げ帰ってきているので、あきらめなければならない未払い分があったり、国境警察に支払う賄賂など経費がかさんだりと、期待通りの稼ぎはなかったようです。
【危険な仕事と厳しい親方】
タイでの苦労に話が及ぶと、みな仕事が厳しく長時間に及ぶことを口にしていました。夫婦で建設業に従事していたという男女は、10ヶ月働く間に1人同僚が死んだが、なんの補償も無かった、と言い、漁に出ていた男性は嵐の時も休みなく働かされて辛かったとこぼしました。どちらのケースも親方が厳しく、前者はタクシーで、後者はボートで、結局逃げるようなかたちで帰ってきています。
斡旋者に400,000リエル払ってタイへ行ったある男性も、過酷な労働と厳しいボスに耐えかねて帰る事を決意し、森やジャングルで野宿を繰り返したということです。不良たちやヘビ、トラに怯えながら夜を過ごしたにも関らず、結局国境警察に捕まり15日間バンコクの刑務所に入れられた彼は、お金があれば正式な出稼ぎ許可が出て、合法の労働者になれるのだが、と言っていましたが、そのお金がないからこそ、怪しげな非合法の移民斡旋業者を頼って出稼ぎに出ていることは言うまでもないでしょう。
【児童労働の存在】
漁業に従事していた男性が、同じ船で働いているカンボジア人の子どもを見たと教えてくれました。14歳くらいの子どももおり、両親は一緒ではなく、単独で出稼ぎに来ているようだった、ということでした。16歳以下には出稼許可は下りないため、児童労働の被害者である彼らは、非合法労働者でしかありえない存在なのです。殴られたり海に蹴落とされたりした子どもも見た、と語ってくれたその男性は、ボートの中で身寄りのない人たちへの差別がある、とも言っていました。親方のみならず、労働者間でも子どもが弱い立場に置かれているということでしょう。
ただし、HCCを通じた国際子ども権利センターの支援地であり、今回のインタビューの舞台でもあるコムチャイミア郡からは、彼らが知る限りタイへの子どもの出稼ぎはあまり無いそうです。タイまでは子どもには距離があり過ぎることに加え、NGO(この場合HCCと考えていいと思います)の意識啓発で、人身売買の危険などを知っているからだと思う、といううれしい答えも返ってきました。
最後に、「友人が出稼ぎに行くと言ったら?」という質問には、「自分の経験を話して、行かせないようにする」という意見と、色々情報を伝えて危険に備えさせてから行かせる」という意見とに分かれました。ただ、「お米の収穫が充分にあったら?」という質問には、みな一様にそれならタイに行く必要はない、との答えでした。分ってはいたことですが、例外もあるのかもしれませんが、出稼ぎに行く村人は、生活水準のレベル・アップではなく、食料をはじめとした最低限の生活必需品を得るために出稼ぎに出ているということが実感されました。
※写真は出稼ぎについて語ってくれた若者たちです。子どもたちに嵐の日の漁などさせてはいけません。あなたの力も貸してください↓
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