カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

児童買春に取り組む大学生からの質問

2005年12月28日 15時45分40秒 | その他
みなさんこんにちは、カンボジアとの温度差に風邪気味の平野です。
今回から3回に分けて、児童労働・児童買春に取り組む大学生のグループ「サンピッコロ・プロジェクト」のみなさんからの質問と、それに対する平野の回答をご紹介させていただきます。サンピッコロ・プロジェクトは、立命館アジア太平洋大学のサークルで、愛地球博にも出展しています。
HP   http://www.apu.ac.jp/circle/sunpro/ 
ブログ http://spp2005.exblog.jp/

【質問1 買春宿に戻ってしまう要因と社会の受け入れ態勢】

①保護施設やその他の様々な施設などに入る(保護される)ことができても、色々な要因でまた売春宿に戻るケースが多いということを知ったのですが、それは主にどのような要因があるのですか?社会の受け入れ態勢は?

(平野)
要因について

☆ドラッグ中毒(買春宿でドラックを使わされることがよくあります)
☆セックスへの依存
☆職業訓練の難しさ(縫製や洋裁などの技術でも、学校に行ったことがない子どもには計算などの壁があります)
☆居場所が無いこと
結婚まで処女を守る事を重要視するカンボジアでは、処女を失ったことで「自分はもう結婚できない。人生がダメになった」と考える傾向があります。そこに上記のような様々な社会復帰への傷害が重なると、「自分はどうせもう普通の社会には戻れない」などと思い、買春宿に帰ってしまうケースがあります。また長く買春宿にいると、他の子たちとの友情も生まれるでしょうし、ママさん(買春宿のオカミさんですね)を、母親のように慕うケースもあります。他に頼る人がいないと、自分を搾取する人、場所すら、安らぎの場所になりうるのです。

社会の受け入れ態勢

自分の村に戻ることが理想ですが、なかなか難しいのが実情です。差別されることが多いですし、積極的な差別がなかったとしても、結婚などが困難になりがちです。NGO側も、職業訓練センターのほかに自分達で店を経営してそこで働かせたり、あるいはプノンペンの寮のある縫製工場に就職口を斡旋したりといった努力をしていますが、理想は出身の村に帰ることであることは言うまでもありません。ただ、こちらでは例えばレイプの被害者なども「壊れてしまった娘」として同情されるのですね。「可哀想じゃないか。彼女の(まともな)人生が終わってしまったじゃないか」という調子です。これを変えていくのは大変なことです。そしてこれは果たしてカンボジアだけのことなのか。そんなことはないですよね?

それと、その施設などに入って実際に社会復帰できている子供たちはどのくらいいるのですか?統計的な資料があればうれしいです。

(平野)
個々のNGOがそれぞれに活動しており、それぞれの団体は統計を持っているのでしょうが、全体としての統計は私は分かりません。職業訓練センターを出てからもしばらくフォローを続けないと「社会復帰できた」と言い切れませんよね?そしてそれはいったい何年フォローすればいいのか。そのあたりも考え合わせると、統計を取ること自体なかなか大変な作業だと思います。

【質問2 施設でのケア】 

②一度売買春にあしを踏み入れたら社会復帰は難しいという話を聞いたのですが、その施設などでは社会復帰させるためにどのようなケアがなされているのですか?詳しく知りたいです。

(平野)
一般には、職業訓練や識字教室がメインです。職業訓練では、美容や理容、そして洋裁に手工芸品などがメインです。カンボジアは総輸出額の半分以上を縫製産業に頼っており、28万人程度の縫製工場勤務の女性がいます。ですので、どこの職業訓練センターにいってもミシンが見られると思います。

以前の「カンボジアだより」で、HCCとういう団体の施設について詳しく述べています。
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/6dcf83a3bd44484fdb3675499e6342ad
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/4fe1f7089c2efd9263bd247409ebf1e0


また、心理的ケアとしてカウンセリングも広く行われていますが、カンボジアには
カウンセラーとして働くのに十分な知識や経験を持った人材が非常に不足しています。ただ、そんな中でも、絵を書く、造花を作るなど、被害者が癒されるための工夫をしているNGOもあります。権利センターの支援するアフェシップもそんな団体の一つです。 http://jicrc.org/pc/cambodia/activities/index.html

以上第1回でした。まだ“さわり”ですね。これからディープに、そしてアツく、なっていきます。続けてご愛読ください。

※写真はHCCのシェルターの職業訓練所でメイクを学ぶ少女たちです。

歳末です。歳末といえば、助け合い!海を越えて助け合いしてみませんか?
http://jicrc.org/pc/member/index.html

外国人専門家が見たカンボジアのDV法2

2005年12月22日 15時25分31秒 | カンボジアの人権状況
みなさんこんにちは、平野です。
前回に引き続き、待望の施行となったドメスティック・バイオレンス法について、某先進国の法律の専門家の意見を交えながら、みなさんにご紹介したいと思います。直接のインタビューによるもので、特に子どもの権利の観点から分析しています。

【緊急保護命令】
緊急保護命令には緊急避難期間が2ヶ月のものと6ヶ月のものがあり、2ヶ月のものは、被害者からの申し立てがあればすぐに出されます。しかし6ヶ月のものは、裁判所の命令を受けて、ということになるので、容易には出ないようです。また、6ヶ月という期間が、双方落ち着いてまた家に戻る/迎えるにあたって充分な長さなのかどうか、という疑問も当然持ち上がっています。
子どもについて言うと、そのような状況(緊急に保護される)に至り、家から避難した場合、誰の支援を受けるか、また親の訪問を受け入れるかどうかなどの判断は、子どもの意志が尊重されるということです。

また、子どもに関して特徴的なのは、子どもの苦境を知っている人は、子どもに成り代わって裁判所に申し立てができる、ということです。いかに暴力を振るわれても、子どもが自分の親を裁判所に訴えることは考えにくいことですし、また年齢や状況によっては、法律を知らない可能性も大いにあります。そのような状況では、周囲の人が子どもの代わりに緊急保護を申し出たりすることができるわけです。ただしこれは、他所の家でのDVについて知っている周囲の人の「義務」ではありません。

【大きな権限を持つ地域の有力者】

専門家によると、この法の大きな特徴は、地域の有力者に大きな権限を持たせていることだそうです。この場合地域の有力者とは、村長やコミューン長といった顔役に、警察、女性局の役人などを含みます。彼ら村の有力者たちには、ドメスティック・バイオレンスに速やかに介入する義務があり、加害者、もしくは被害者を家から出すなどの権限を持っています。そして調停にも介入しますし、裁判所に提出する記録を作ったりといった作業にも従事します。これに伴い、ドイツの政府国際協力機関(日本のJICAや韓国のKOICAのようなものとお考えください)であるGTZが、全国規模のトレーニングを行うということですが、現在のところ有力者たちは協力的である、とのことでした。

【懸念されること】
専門家は、以下のようなことを懸念材料として挙げてくれました。

・“適切な方法による「しつけ(discipline)」が、崇高な性質をもって、国連人権規約や国連子ども権利条約の原則に則ったなかで行われる場合は、それは暴力の行使とみなされるべきではない”という但し書きが、実際の法執行上どのような意味を持ってくるか
・6ヶ月という緊急避難期間が充分か
・地域の有力者による「調停」が昔ながらの「調停」になってしまわないか
・地域の有力者が大きな権限を持つことで、腐敗につながらないか
・腐敗した警察や司法のもとで法がきちんと執行されるのか

また、専門家は「カンボジアには“経済が上向いたら、DVも減るのではないか”という期待がある。しかし先進国でもDVの問題は深刻だ」と述べ、自国で最近乗馬用のムチを使った子どもへの「しつけ」が裁判所で容認された例を教えてくれました。また、カンボジアでは女性をエンパワーしよう、女性の権利を推進しようという動きが盛んで、それはもちろん大事なことだが、それと同時に男性に対しても、男性に対してこそ、男性の責任や義務について自覚してもらわねばならない、ということも付け加えてくれました。これは平野もよく感じることで、実際村での聞き取り調査で、「自分を殴るダンナに“女性の権利”なんて言ったって、余計に殴られる」とある中年女性から聞いたときは、返す言葉に詰まりました。

不十分な点もある法律ですし、法律上欠陥がなくとも、カンボジアの農村の状況を鑑みたとき、現実に適用されうるのか?と思う点もあります。しかし、この専門家の方も言っていましたが、完璧を追求していつまでも施行されないよりも、とにかく今の法が無い状態を抜け出すことが重要であり、またNGOにとっては、違法性を盾に介入できる点が非常に大きい、とも評価していました。まずはこの法の周知、ならびに「なぜDVは違法なのか」という概念の普及が大切になってきます。国際子ども権利センターの支援先NGOのHCCなども、DVの際の避難などについて教えていますが、これからは「違法である」ということも教えていくことになるでしょう。

※写真(絵)は、DVへの周囲の介入を訴えるポスターです。

12月23日、甲斐田・平野の話を直接聞きに来ていただけませんか?↓

http://jicrc.org/pc/event/e20051223/index.html


外国人専門家が見たカンボジアのDV法

2005年12月15日 13時22分28秒 | Weblog
みなさんこんにちは、平野です。
先日(9月20日付け)の記事で下院通過をご紹介しました、ドメスティック・バイオレンス法ですが、このたびシハモニ国王の調印をえて、施行されることとなりました。これに伴い、某先進国の法律の専門家から見た同法について、みなさんにご紹介したいと思います。直接のインタビューによるもので、特に子どもの権利の観点から分析しています。

9月20日の「下院通過」記事はこちら
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/f1b6dbd1f3551a00c14bc0d4a45e9772

この法律の正式名は「THE LAW ON THE PREVENTION OF DOMESTIC VIOLENCE AND THE PROTECTION OF VICTIMS 「DVの防止と被害者の保護についての法律(和訳平野)」となります。

【広い対象範囲】

日本でのDVの概念は、総理府の解釈を見ても、配偶者間、特に男性から女性への暴力を想定していることがわかります。
http://www.gender.go.jp/e-vaw/dvexp/dv02.htm
(正確には、ドメスティック・バイオレンスという言葉自体を避けています)

これに対して、カンボジアでは、親が子どもに振るう暴力など、家庭内の暴力は全てDVとされます。血縁が無くても、一緒に暮らしており、その家庭の大人に養育されている子どもも、やはり対象になります。また、肉体的な暴力だけでなく、言葉の暴力などの精神的苦痛をもたらす暴力や性的暴力も処罰対象となっており、この専門家によると、この点では他国の法律と比べても広く網羅されているとのことでした。

【重大で曖昧な留保事項】

9月20日付けの記事でもお伝えしてますが、この法律に表立って反対する議員はいなかったものの、「カンボジアの家族のあり方」や「カンボジアの慣習」に必要以上の変革をもたらしてしまうのではないか、という懸念を伝える議員がいました。これはカンボジアに限らず、人権やジェンダーの類のトピックにはつきものの議論ではないかと思います。この専門家も、この法律にもその点での妥協、というか留保事項があることを指摘してます。この部分を全文掲載します。

【カンボジアのよき慣習と伝統】

配偶者や子どもあるいは養育対象の人々を品位ある、国家のよき慣習と伝統にそった生き方に導くために、アドバイスを与えること、気づきを与えること、あるいは他の適切な方法による「しつけ(discipline)」は、そのしつけや教育が崇高な性質(他人の幸福に対する共感や哀れみ、喜び、そして誠実さ)をもって、そしてカンボジア王国が批准している国連人権規約や国連子ども権利条約の原則に則ったなかで行われる場合は、暴力の、あるいはドメスティック・バイオレンスの行使とみなされるべきではない

うーーーむ、と唸っている方も多いのではないでしょうか?親が悪いことをした子どもにゲンコツをしても体罰なのか?他の子どもを殴った子どもは、殴られた子の痛みを知るためにも殴るべきではないか?カンボジアに限らず、日本にも色々な意見があり、議論の尽きないところではあります。

私があえて「カンボジアの法律」という意味において問題だと思うのは、このような大きな解釈の余地が、法執行力の弱さや、司法の腐敗と結びついたとき、せっかくの同法を骨抜きにしてしまわないか、という懸念です。また、専門家も指摘していましたが、こういった慣習や伝統を持ち出した曖昧さは、「法の支配」と相性がよくありません。日本がアメリカのような訴訟だらけの社会になっていないことには、負の面もあることは私たちも知っての通りです。

今回は法の大枠についてでしたが、次回(後編)では、執行の部分も含め、より具体的に専門家の意見を聞いていきます。

※写真(絵)は、DVの撲滅を訴えるポスターです。

12月23日、甲斐田・平野の話を直接聞きに来ていただけませんか?↓

http://jicrc.org/pc/event/e20051223/index.html


増え続ける子どものレイプ<その3希望の見える続報>

2005年12月08日 12時28分51秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、平野です。
以前(11月8日と9日)にご紹介した12歳のレイプ被害者の少女を覚えていらっしゃるでしょうか。今回、12月7日付の英字新聞「カンボジアデイリー」(前の記事もこの新聞からです)に続報が載りました。

8日
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/c54f978126a6b2e4089ffcbbf5962b6f
9日
http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/ae66a545b265b9e9419529b25800de94

原題:NGO Offers Aid to 12-Year-Old Rape Victim By Whitney Kvasger and Thet Sambath

翻訳:平野 監訳:甲斐田

見出しと太字は訳者

(12歳のレイプ被害者にNGOが支援の申し出)

【8歳のときにレイプされ、4年間にわたって苦しんでいる少女】

2000年に起きた残虐なレイプの後遺症で、心身ともに健康状態が悪化していたバンテアイ・ミエンチェイ州マライ郡の12歳の少女に、先月末明るい未来の可能性が与えられた。たった8歳のときにレイプされ、そのレイプ犯に殺されかけたプーン・シークは、現在NGOワールドビジョンのケアを受けている。来年、彼女はワールドビジョンが運営する「ニアービア・トメイ、トラウマ・回復センター」に住むことになるだろう。センターでは他に69人の少女にサービスを提供している。

プーン・シークは、カウンセリングと医療サービスを受け、学校にも通わせてもらえるだろう。来週、彼女は暴行の際に負った目の傷を、カンボジアを訪れているアメリカの専門医に診てもらう予定だ。暴行の夜、19歳のシエン・モンはプーン・シークをコーソウル村の彼女の家の裏のバナナの茂みでレイプし、暴力をふるっただけでなく、彼女の目をくりぬこうと試みた。彼女は暴行を生き抜いたが、片方の眼はほとんど見えず、また両目ともほとんど絶えず感染症に苦しんでいる

【回復しつつある眼、閉ざされたままの心】

11月21日にワールドビジョンのケアを受けるようになって以来、プーン・シークはすでに回復が見られる、とワールドビジョンの社会サービス調整官、クラウス・サンボ氏は語る。彼によると、医者は彼女の眼の感染症を治し、前よりも視界が良好になり、痛みも減ったという。カウンセラーは彼女の受けた暴行について知っているが、彼女のそこことについて話すよう促してはいない。今のところ彼女はまだ内気なままだ、とサンボ氏は語る。

【見えてきた希望の光】

プーン・シークの母親、31歳のプーン・シーは先月、娘は暴行以来引っ込み思案で忘れっぽくなり、激しい頭痛と眼の感染に苦しんでいる、と話した。彼女はワールドビジョンの支援に感謝している。「以前は、このような希望を抱いたことがありませんでした、なぜなら私は貧しく、病院に連れて行くお金や治療のためのお金がなかったからです。プーン・シーはマライ郡から電話で語った。

「私はいつも彼女は障害を負うことになるだろうと思っていました・・・でも今は彼女の人生は明るいものになるだろうと期待しています」と彼女は話した。

(記事本文以上)

以前の記事を読んで胸を痛めたかたも多いと思います。まだ一歩を踏み出しただけですが、彼女の一日も早い回復が願われます。また、お母さんのコメントが前回の記事に比べて随分前向きに変わっていることにも気がつかれた方は多いと思います。ただ、彼女に支援の手が差し伸べられたことは大変よろこばしいですが、カンボジアには他にも同じような境遇の子どもたちが少なからずいることもまた忘れてはいけない事実です。

※写真は「レイプや人身売買は犯罪です」と訴えるECPAT CAMBODIAの作製のポスターです。


あなたも、支援の申し出をお願いします↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html

子どもの性的搾取防止<フレンズの画期的な取り組み2>

2005年12月05日 12時59分36秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
おかげさまで先週は過去最高のアクセス者数を記録しました。
1ヶ月前と比べて倍以上の多くのみなさんにご覧になっていただいています。
今後ともご愛読宜しくお願い申し上げます。

さて、今回もフレンズの路上での取り組み、子どもを性的搾取から守る「チャイルド・セーフ・モトドップ(バイクタクシー)」のご紹介です。前回予告どおり、フレンズが観光省とともに実施したトレーニングを受けて試験に合格し、見事「チャイルド・セーフ・モトドップ」になり、マークの入ったシャツを帽子を身につけて仕事をしているドライバーの方にご登場いただきます。トレーニングの内容等については、2日の金曜日付けのブログをご覧下さい。

【同じ人間として】

「トゥクトゥク(バイクの後ろに4人分の座席がついた乗り物。やはり観光客がよく利用する)を運転している友人と一緒にトレーニングに参加しました。自分自身は子ども買春者を乗せたりした目撃したことはありませんでしたが、子どもを守るために参加しようと思いました」

「人間として、同じ人間である子どもを助けたいと思いました。そのためにはトレーニングに参加しようと思いました」

【チャイルド・セーフ・モトドップのシャツを着て】

子ども買春者についての情報は私にとって初めて聞く新しいことでした。フレンズという団体については、レストランやカフェを知っていたので、以前から知っていました。」

「試験は難しかったです。仕事をしていると、お客さんにシャツのことについて聞かれることがあります。私が説明をすると、お客さんも“それはいいね”と言ってくれます。この服を着て仕事をすることをうれしく思っています

自身も1歳の娘がいるというドライバーさんは、はにかんだ笑顔を見せながら、丁寧に答えてくれました。

【良い顧客、良いビジネス】

「good clients good business(良い顧客 良いビジネス)」これが、チャイルド・セーフ・モトドップのドライバーたちが着るシャツの背中に書かれたキャッチフレーズです。フレンズでは、子ども買春者を泊めるホテルを糾弾したり、子ども買春者を乗せるモトドップを非難したりすることよりも、そうでないホテルやレストラン、モトドップを利用することを多くの人に呼びかけるほうに力を入れています

このプロジェクトにしても、トレーニングを受けるドライバーを募集し始めた当初は、「乗車拒否などしたら、売り上げに影響してしまう」というもっともな懸念を持つドライバーがたくさんいたということです。これに対してフレンズは、子ども買春者を乗せたときに自身も罪に問われる可能性や、罪には問われなくとも警察の尋問などに時間を取られる可能性があることとともに、多くの良心的な観光客がチャイルド・セーフ・モトドップを利用するようになったら、かえって売上げは上がる、ということをドライバーに説いたということです。また、情報提供の際の電話代や、危険な状態にあった子どもをフレンズに連れてきたときのガソリン代等は、フレンズが補てんしています。

チャイルド・セーフ・モトドップがより多くの支持を集めるよう、フレンズではドライバーの写真といつも客待ちしている場所、また趣味なども添えた紹介を英語のホームページ上でしています。モトドップ以外にも、よりよい、より安全で健全なカンボジアの旅を楽しむための情報が多く掲載されています。是非ご覧下さい。

http://www.childrights-cambodia.org/phnom-penh-cambodia-taxi.htm

同じ人間として、あなたも行動を起こしてみませんか?↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html




子どもの性的搾取防止<フレンズの画期的な取り組み1>

2005年12月02日 11時27分23秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
昨日に引き続き、国際子ども権利センターのパートナーNGO、フレンズの活動をご紹介します。今回ご紹介する取組みは、画期的な活動といえると思います。フレンズには、今年3月国際子ども権利センターから2台のバイクと1台のデジタルカメラが支援されています。

【誰もが利用する市民の足】

カンボジアや他の東南アジア諸国をご旅行の経験がある方は、町中がバイクタクシーで溢れているのをご存知だと思います。日本にはない光景ですが、繁華街や人の集まるところに、多くのバイクが客待ちをしています。カンボジア語ではこれを「モトドップ」と呼びます。「モト」は「モーターバイク」から来ているようです。

このモトドップは、多くの人に愛用されています。自家用車や自分のバイクを持たない人たちはどこに行くのもモトドップ。つまり、外国人観光客の多くも、このモトドップで移動するわけです。つまり、子どもの性的搾取を目的にカンボジアを訪れた外国人も、エイズを恐れて子どもを買おうとするカンボジア人も多くはこのモトドップを利用して、買春宿に行ったり、カラオケバーや路上から少女や少年をゲストハウスに連れ帰ったりするわけです。私自身、モトドップに乗って買春を持ちかけられた経験は何度かあります。

【モトドップ・ドライバーへのトレーニング】

フレンズは、このモトドップドライバーに目をつけました。日本でもタクシーの運転手さんの意見を景気指数を計る際に採用しているという話がありますが、確かに彼らは街の実態や生の情報を豊富に持っている存在だと言えるでしょう。フレンズは、モトドップドライバーにトレーニングを受けてもらい、子どもの味方になってもらうことで、子どもを性的搾取から守ろうと考えたわけです。

フレンズは、まずプノンペンでモトドップの数が多い場所(ゾーン)を8ヶ所選び出し、そこにスタッフを派遣し、トレーニングを受けることを希望するドライバーを集めました。ここでも国際子ども権利センター支援によるバイクの機動力が活かされています。第一期の参加者として、総勢200名のドライバーが参加したということです。

【チャイルド・セーフ・モトドップの誕生】

トレーニングでは、

☆子ども買春者を運んだら、ドライバー自身も罪に問われかねないこと
☆子どもの健全な発育を阻むような環境では、国がダメになってしまうこと
☆そのような環境では、自分の子どもにだって危険が及ぶかもしれないこと

などを、ピクチャーカードを中心に説明します。そして子ども買春者とその被害者と思われる子どもの組み合わせの客は乗車拒否すること、そういった不審な客や危険な目に遭っていると思われる子どもを見かけたら、フレンズに連絡すること、などのレクチャーを受け、試験に通ったドライバーは、「チャイルド・セーフ・モトドップ」と認定されます。今回は約100名が「チャイルド・セーフ」のロゴ入りシャツと帽子、そして認定証を手にすることができました。今後は彼らに出稼ぎなどについてのトレーニングも受けてもらい、より心強いパートナーになってもらう方針です。

※写真は「子ども買春者の乗車は拒否して、フレンズに連絡してください。彼らは警察に逮捕され、あなたは感謝状を受け取ります、という内容のピクチャーカードを手にしたフレンズのスタッフです。彼が着ている服と同じものが、試験をパスしたドライバーに与えられます。

次回はこの「チャイルド・セーフ・モトドップ」について、ドライバーの方にも登場してもらい、より詳しくご紹介します。

フレンズ
http://www.streetfriends.org/index.html

日本にいても、子どもたちを守るパートナーにはなれます ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html




子どもの性的搾取防止<フレンズの路上での取り組み>

2005年12月01日 11時06分48秒 | 性的搾取防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。
国際子ども権利センターのパートナー団体(支援先)の活動紹介ですが、HCC、アフェシップに続いて、今回はフレンズという団体をご紹介します。フレンズには、今年3月国際子ども権利センターから2台のバイクと1台のデジタルカメラが支援されています。

【フレンズの紹介】

フレンズは、もともとはフランス人によって設立されましたが、現在はカンボジアのローカルNGOとして活動しています。このカンボジアで始まった活動は大きなうねりとなり、現在フレンズインターナショナルは、フランスやアメリカ、ドイツなどにも事務所を置き、タイ・ラオス・ミャンマー・ホンジュラスでも活動しています。

その発祥の地カンボジアのフレンズは、ストリートチルドレンの支援を行うカンボジアのNGOとしてはかなりの大手で、レストランやカフェのの経営や、最近はレシピ本の出版でも話題を呼びました。活動分野は、職業訓練や薬物乱用防止などの多岐にわたり、国際子ども権利センターが支援したのは、その中の6名からなる「子ども権利チーム」です

【遊びながら学ぶ子どもたち】

サップ河沿いの芝生の上、市民の憩いの場に、数人の子どもたちと2人のフレンズのスタッフが輪になり、絵を書いています。この2人が、「子ども権利チーム」の中で路上の子どもたちを性的搾取から守る活動の担当者になります。フレンズで働いてもう7年になるというスタッフのセニーさんの説明に耳を傾けてみましょう。

「子どもたちは塗り絵が好きです。私たちは毎回違う絵を持ってきて、子どもたちと塗り絵をします。そしてそれぞれの絵は意味を持っているので、それを話して聞かせます。今日のお話は、自分は鳥だと偽って、ヒナを食べてしまう猫の話です」児童性愛者は、やさしいおじさん、やさしんおにいさんを装って子どもに近づくものです。セニーさんはこのお話を通じて、子どもたちに警鐘を鳴らしています

「子どもを性的搾取から、特に外国人観光客による性的詐取から守るため、ピクチャーカードを使って説明します。もしも金銭と引き換えにおとなと性的交渉を持ったら、性病やHIVになるかもしれない、妊娠するかもしれない、家族に冷たくされるかもしれない、友だちから仲間外れにされるかもしれない、などの説明を、字は使わず写真だけで表します。ちなみに、これらを作製するのに、国際子ども権利センターに支援されたデジタルカメラが役立ちました

【有効に使われる支援】

「これらの写真は私が子どもたちを撮ったものです。おかげでどのエリアにどのような子どもがいるか把握できます。つまり、いなくなった子どもいれば、どうしていなくなったのか調べ、探すこともできるのです。子どもたちは、昔は写真を撮られるのが嫌いでした。なぜなら、それは“あのエリアはこんな子どもがいて危険だから”という意味で写真を撮られることが多かったからです。今は私がカメラを向けると笑顔で納まってくれますし、どの子がいなくなったのか、写真を指差して教えてくれます
「もちろん、怪しげな様子で子どもたちと接しているおとながいれば、それを写真に収めて、場合によっては警察に通報することもできます」

デジタルカメラはなかなか有効に使用されていることがわかりました。もうひとつのバイクのほうはどうでしょう。

「路上の子どもたちと活動していく上では、彼らに出向いてもらうことはもちろん、いつも決まった時間に決まった場所で、というわけにはいきません。我々はいくつかの“ゾーン”を設定していて、そこを巡回するするかたちをとっています。バイクの機動力がないとできないことです。本当に助かっています」セーンさんが座る傍らには、国際子ども権利センターの名前が記されたバイクが停めてありました。

※写真は当センター支援によるデジタルカメラと、それによって撮られた写真で作られたピクチャーカードを手に説明してくれるセニーさん。

フレンズ
http://www.streetfriends.org/index.html

フレンズインターナショナル
http://www.friends-international.org/index.html

子どもを助けるためには、こういった物質的な支援も必要なのです ↓

http://jicrc.org/pc/member/index.html