カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

日本人男性、少女と性的行為に及んだ罪で告訴される

2009年12月11日 17時30分40秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、長島です。10月2日に、カンボジアで子どもポルノの罪で有罪となった日本人男性の記事を紹介しました。今回は、9月に子ども買春の罪で告訴された日本人男性のニュースを、ボランティアの方が翻訳して下さったので紹介します。
カンボジアでは毎月1~2件は、子ども買春や子どもへの性的搾取の罪で逮捕された外国人のニュースを耳にします。この国の法執行能力の弱さや貧困につけこみ、日本人も含む多くのセックスツーリストが子どもを搾取しに来ているのです。ユニセフの調査によると、カンボジアで売春している、またはさせられている人の3分の1は子どもと言われています。また、相手が大人の女性であっても、売買春は犯罪行為であり、倫理的観点からも人身売買の被害に遭い搾取されて働かされている女性や、他に収入の糧がないために仕方なく売春している女性につけこんでいる、許されない行為です。

 この男が有罪判決となり、しかるべき処罰を受けることを願うばかりです。しかし、非常に残念なことにカンボジアでは、裁判で有罪となっても賄賂を裁判官に払い、刑期が軽くなるというケースは少なくありません。先日も、子どもへの性的搾取の罪で捕まったフランス人男性が、1,000ドル払い仮釈放を受けている期間に、また違う子どもを性的搾取したというニュースがありました。お金さえ払えば罪から逃れられる、と考えているからこその行為ではないでしょうか。
この日本人男性の事件の続報が出ましたら、追ってご紹介したいと思います。

写真は子どもセックスツアーをなくす活動をASEAN諸国で実施しているオーストラリアのNGO、Child Wiseが作成したポスター。©Child Wise

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

カンボジア・デイリー紙 2009年9月11日
ヌウ・ヴァナリン記者

日本人男性、少女と性的行為に及んだ罪で告訴される



 40歳の日本人が、買春に関わっていた13歳の少女をプノンペン社会福祉センターから連れ出そうとしたことがわかり、未成年買春の罪で告訴されたと当局が伝えた。
プノンペン地方裁判所クリー・ソック・イー副検事によると、加藤淳容疑者は9月5日、市リハビリテーション・センターにて、少女と面会後に逮捕された。少女は8月に買春宿で発見され、当センターに移送されていた。

 「我々は加藤容疑者を子ども買春容疑で告訴し、送検した」とソック・イー副検事は9月10日に、電話インタビューに答えた。
副検事は、加藤容疑者が9月7日に行われた尋問の中で、少女がドンペン区63通りの買春宿で働いていた8月7日に性的搾取をしたことを認めたと付け加えた。
有罪となれば、加藤は2~5年の実刑になるという。(注1)

 「捜査は始まったばかり。無罪となれば釈放されることになるだろう」とソック・イー副検事は話している。
内務省人身売買対策局ビッス・キムホング局長は9月10日、加藤容疑者は7月に観光目的で入国して以来、プノンペンの買春宿での未成年買春の容疑がかけられていたと説明する。
「加藤容疑者は10回以上の子ども買春をした」と局長は電話で話した。
加藤容疑者及び少女に対する警察の尋問において、双方とも性的行為の見返りとして現金を授受したことを認めていると、局長は付け加えている。
局長によれば、警察は過去に13歳の少女が保護された買春宿を捜査した際、複数の少女が働かされていたことを確認している。
「この買春宿への過去の抜き打ち捜査で見つかった約20人のうち、少女は1人か2人であった」と局長は言う。「これは違法行為であり、店と客の双方が有罪である。」

(翻訳・NY翻訳グループ 2009年10月19日)

(注1)カンボジアの人身売買取締法によると、子ども買春で有罪となった場合、被害者が15歳以上だと懲役2年から5年、15歳以下だと7年から15年の処罰となります。このケースは被害者の少女が13歳のため、懲役7年から15年となるはずです。

子どもへの性的虐待で前科二犯のベルギー人、国外追放

2009年11月18日 16時28分49秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、長島です。先日2回にわたって、ベルギー人が少年を性的搾取した罪で服役し、出所後にその被害者の少年の母親と結婚し、一緒に生活をしていた記事をご紹介しました。9月末に、カンボジア・デイリー紙に、男性が国外追放されたことが報じられ、ボランティアの方が記事を翻訳してくださったので、その続報としてお伝えします。
NGOの抗議に対し、政府の関係者からは国外追放は不可能との見解が出ていたにも関わらず、最終的に追放が実現したことは、非常に嬉しい結果です。しかし、この追放で被害を受けた少年の心の傷が消えるわけではなく、まずは被害を出さないようにする「防止活動」の重要さを痛感します。

関連記事は下記リンクをご参照ください。

■子どもに性的虐待をした元受刑者、被害者少年の母親と結婚か(10月6日掲載)
http://www.c-rights.org/2009/10/post-67.html
■NGO、子どもに性的虐待したベルギー人の国外追放を請願(10月30日掲載)
http://www.c-rights.org/2009/10/ngo.html

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

写真は子どもの性的搾取に取り組むNGO・APLEの報告書「"Street Pedophilia" in Cambodia」より ©APLE

子どもへの性的虐待で前科二犯のベルギー人、国外追放

カンボジア・デイリー紙 2009年9月23日
プラック・チャン・トゥル記者
出所:‘Twice-Convicted Belgian Pedophile Deported’ Cambodia Daily 23 September, 2009
 
当局によると、昨日、警察は子どもへの性的虐待で2回有罪判決を受けているベルギー人のフィリップ・デザールを国外退去させ、子ども保護のNGOグループによる数ヶ月に及ぶ国外追放活動は功を奏したかたちとなって幕を閉じた。

 国家警察のスポークスマンであるカース・チャンタラリッス氏によると、デザール(49歳)は2006年に犯した13歳カンボジア人少年への性的虐待の罪で3年の刑に服した後、今年4月に釈放され、先週国外追放となったのだが、正確な日付はわからないとのことである。
子ども保護NGOグループは、デザールが釈放直後、被害を受けた少年の住むバンテアイ・メアンチェイ州に移住し、その少年の母親と婚姻関係までも結んだことに対し、憤りを表明していた。デザールは90年代に母国ベルギーで子どもに対するレイプ及び虐待の罪で3年服役している。 

 「我々には十分な法的根拠があった。デザールは元受刑者で、入国管理法によれば、服役経験のある者のカンボジア在留は認められていない」とチャンタラリッス 氏は話している。
「警察はデザールをベルギーに送還するというのではなく、ただ国外追放すべきであると判断した。その後どこへ行くかを決める権利は本人にある」と話す。

 デザールの弁護士トゥン・ヴィボル氏は、警察の強制追放は「市民権侵害」であるとし、子ども保護NGOグループの懸念を憶測にしかすぎないとしている。
「デザール氏が夫人と一緒であったところに警察官が来て、国家機関から強制退去の命令が下されているとして地元警察署に出頭するよう命じたのです」と弁護士は説明し、警察がデザールをプノンペン国際空港へ移送し、外国行きの便に乗せたと話す。
「デザール氏はタイに到着後、私に電話で何も所持していないと言い、警察がカンボジアの法を遵守していないと話した」とヴィボル氏は述べている。
ヴィボル氏は、デザールは家族がカンボジアにいるので戻ることを希望していると付け加えた。

 8月4日に国外追放嘆願請求を起こした7団体の1つである” Action Pour Les Enfants(APLE=子どものための活動)は、警察の行動を歓迎している。「カンボジアはなすべきことをした」とAPLEカンボジア事務所サムレアン・セイラ所長はコメントしている。

(翻訳・NY翻訳グループ 2009年10月23日)

フレンズ・ザ・レストランのご紹介

2009年10月23日 19時54分32秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、長島です。先週は、シーライツのパートナー団体である、フレンズ・チャイルドセーフセンターのマオさんのインタビューを掲載しました。今回はそのフレンズが直営するレストラン、「フレンズ・ザ・レストラン」をご紹介したいと思います。プノンペンに行く機会があったら、ぜひ寄っていただきたい、ストリートチルドレンの自立を支援出来るお勧めレストランです!

 フレンズは1994年の設立以来、カンボジアのストリートチルドレンの保護・教育・職業訓練などの活動を通し、社会復帰を支援しているローカルNGOです。250名のフレンズのスタッフは、毎月8,000人に及ぶ子どもと若者に、路上または施設で支援を提供しています。フレンズの統計によると、プノンペンには10,000~20,000人の路上生活または路上で働いているストリートチルドレンがいて、その数は増えていると言われています。シーライツはフレンズの、虐待や性的搾取、人身売買から子どもを守るプログラム、チャイルドセーフネットワークを支援しています。

 2001年にオープンしたフレンズ・ザ・レストランは、かつてストリートチルドレンだった若者たちが調理や接客の職業訓練を受けながら働く、いわばオンザジョブトレーニングのためのレストランで、レストランの売上はフレンズの運営費に充てられます。ここでは”Student”というプリントが入ったTシャツを着た元ストリートチルドレンの若者が、“Teacher” Tシャツを着たサービス業のプロのスタッフからトレーニングを受けながら働いています。

 トレーニングのために設置されているレストランという言葉にまどわされてはいけません。私が初めてフレンズ・ザ・レストランに行った時、店内のカラフルでおしゃれな雰囲気、料理の美味しさもさることながら、一番にサービスのレベルの高さに感動しました!入口では店員が笑顔でお出迎えしてくれ、訓練中といえども接客マナーもサービスもプロ同然です。お水が少なくなると、すぐ注ぎ足しに来てくれ、料理がキッチンから出来上がると数人が早足で取りに行き、その迅速さに驚かされます。ウェイトスタッフの人数も多いので、常に誰かがテーブルに目を配っていてくれるのです。入口付近にあるキッチンの一部がガラス張りになっているので、生徒たちが一生懸命調理している様子も見えるようになっています。彼/彼女たちの働いている姿を見ていると、いつも真剣さや、頑張って働いている感じがひしひしと伝わってきます。このレストランに行き、逆境を乗り越えて頑張っている若者の姿を見ると、嬉しさと希望感で胸がいっぱいになります。

 さて、フレンズ・ザ・レストランのメニューですが、アジアと欧米料理を混ぜたフュージョン料理となっており、Gustav Auerさんというヨーロッパとカナダでシェフをしていた方が調理の先生を務めているそうです。

お店のお勧めメニューには以下のようなものがあります。値段はUS$3.5~$4 (350円から400円程度)

★Crispy Prawn Wontons(エビのクリスピーワンタン)
★Grilled Fish with Salsa Verde (白身魚のグリル)
★Khmer Seafood Soup with Lime(クメール・シーフードスープ)
★Khmer Chicken Curry(クメール・チキンカレー)
★Coconut lime cake with passion fruit syrup(ココナッツライムケーキ)

個人的には、エビのクリスピーワンタンと白身魚のグリルはが、本当に美味しくてお勧めです!また、フレンズが経営するロムデンというレストランもあり、こちらはクメール料理専門店でが、少しフレンズより落ち着いた雰囲気となっています。もちろん、料理とサービスはフレンズ同様に素晴らしいです。

 調理・接客マナー以外にも自尊心や衛生について学んだ生徒たちは、訓練が終わるとフレンズと一緒に就職先を探し、巣立っていくそうです。プノンペンのレストランやカフェなどで卒業生たちが自立し、自信を持って、いきいきと働いている姿が目に浮かびます。

 より多くの生徒が卒業して活躍してくれることを願いますが、ここで皆さんに知って欲しいのが、施設で教育や職業訓練を受けながら生活しても、再び路上に戻ってしまう子どもも少なくないという現実です。かつてフレンズの施設で生活していて、路上に戻ってしまったストリートチルドレンに、フレンズがインタビューをして分かった理由として、①施設の規則が嫌、②路上に友達が居る、③施設で喧嘩をした、などが挙げられます。しかし一番の理由は路上で生活をしたり、働いていた方がお金になるということです。つまり、路上で物売りをしている子どもから何か買ったり、物乞いしている子どもにお金をあげたりする人たちがいる限り、路上を選んでしまう子どももいるということです。本当にストリートチルドレンを助けたいと思ったら、ストリートチルドレンについて活動をしているNGOを支援して下さい。フレンズレストランのような所で食事をするのも、その支援のひとつなのです。

 フレンズ・ザ・レストランの横には、職業訓練を受けている元ストリートチルドレンや、その親が作っている小物などを売っているFriends'n'Stuffというお店もあります。「The Best of Friends The Restaurant」というフレンズレストランのメニューレシピが載った料理本がそこで買えるのですが、先日この本を購入してクメール料理を作るぞ!と意気込んでいた私は、実は料理が苦手なので、「おいしそう・・・」と目を細めて眺めるだけのものになってしまっています。

フレンズ・ザ・レストランのサイト:http://www.mithsamlanh.org/ventures.php?id=12&catid=3
ロムデンのサイト:http://www.mithsamlanh.org/ventures.php?id=13&catid=3

虐待や性的搾取、人身売買から子どもを守る活動をぜひご支援ください!
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/kaiin.html

ポルノ被害からカンボジアの子どもを守るために ~岡田外相にメッセージ

2009年10月20日 20時05分33秒 | カンボジアの子ども
こんにちは。甲斐田です。
10月2日にカンボジアの少年たちの裸の写真を撮影した日本人男性の有罪判決の記事を紹介しました。

これまでもカンボジアの子どものポルノ写真を撮影した日本人が何人か逮捕されていますが、ブログを読むと、同様のことをして取り締まられることなく日本に帰国した人は数多くいることが想像されます。

昨年、ブラジルで開かれた「第3回子どもの性的搾取に反対する世界会議」では、日本で子どもポルノに関して2つの点において規制がされていないことが全体会議でも名指しで批判されました(注1)。
1つは、日本で、「子ども買春・子どもポルノ禁止法」により、子どもポルノを製造・販売することは禁止されていても、持っていること(単純所持)が禁止されていないということです。この「所持」が禁止されていないのは、主要8カ国(G8)の中では日本とロシアだけです(注2)。

子どもポルノの被害は世界的に深刻な問題になっていますが、日本でも今年上半期の子どもポルノ事件の被害に遭った子どもの数は、218人に上り、過去最高となりました。

ブラジル会議で日本が批判された2点目は、日本で子どもを性的に虐待する画像(マンガ、アニメ、ゲームなどの表現物)が規制されていないことです(アメリカ、ドイツ、フランスではすでに規制)。会議最終日に、「リオ協定」という宣言と行動計画が採択されたのですが、こうしたバーチャル画像に関しても、製造、提供、所持、閲覧などを犯罪と見なすことがその行動計画に盛り込まれました。

また、2009年9月16日に開催された、第12回国連人権理事会では、ブラジル会議のフォローアップの一環として、「児童の売買、児童買春、児童ポルノに関する特別報告者のレポート」が発表されました。

 このレポートのなかでは、子どもポルノの定義にバーチャルな画像や18歳以上が演じる擬似ポルノも含まれること、こうした画像を含む子どもポルノの所持・アクセス・閲覧についても処罰化すること、すべてのインターネットのプロバイダーへのブロッキング(注3)の義務化などが提言されています。加えて、インターネットには国境がなく、世界中のすべての子どもを保護するためには、国際的な協力関係の構築が必要であるとレポートでは指摘されています。そのほか具体的な提言として、各国政府に対し、「子どもを搾取するバーチャルな(仮想の)画像や描写を含む子どもポルノの製造、提供、意図的な入手および所持、また、たとえ子どもとの身体的な接触がなくとも、そのような画像の意図的な使用、アクセス、閲覧の処罰化」を含む法律の整備を求めています。

10月3日、カンボジアを公式訪問された岡田外相と、カンボジアで活動するNGOの間で懇親会が開かれました。シーライツは、ほかのNGOとともに岡田外相へメッセージと資料を提出しました。一言メッセージでは、子どもポルノに関する規制強化を新政府に期待していることを伝え、より詳しい資料では、カンボジア政府が人身売買業者など子どもの人権を侵害する加害者を法にのっとって処罰できるように、法の執行力強化において日本政府がさらに支援することを要請しました。鳩山首相の新政権のもと、一日も早く法改正がなされ、カンボジアやほかの国で子どもがポルノの被害に遭うことがなくなることを願っています。

写真は、ブラジル会議でインターネット上の子どもポルノ被害について報告する人々です。©シーライツ

(注1)詳しくは、シーライツ発行の「子ども買春・子どもポルノ・子どもの人身売買をなくすために ~ブラジル会議報告書」をご覧ください。
http://www.c-rights.org/shiryou/book/index.html

(注2)これに対して、日本ユニセフ協会が中心となり、「子どもポルノ問題に関する緊急要望書」の署名活動など「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンを実施しています。シーライツも呼びかけ人・賛同団体としてかかわっています。
http://www.unicef.or.jp/special/0705/index.html

(注3)ブロッキングとは、ネット利用者やNGOから問題サイトの通報を受けて警察がブラックリストを作り、それをもとにプロバイダー各社が接続を遮断する制度。
 日本の警察もこの導入を検討している。警察庁の「No!児童ポルノ」ページhttp://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/ 

ストリートチルドレンのためのチャイルドセーフ・センター ―ストリートチルドレンを助けることとは?―

2009年10月16日 18時23分32秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、筒井です。今回はストリートチルドレンについて、少し深く考えてみたいと思います。早速ですが、みなさんの中には、きっと以下のような経験をお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

「海外旅行中に、特に途上国の都市の路上で、物売りや物乞いをしている子どもたち―いわゆるストリートチルドレン―に会ったけれど、どう接していいか分からなかった。」

私も学生のときに同様の経験をし、非常に大きなショックを受けました。過酷な環境で食べ物にも困っているのだから、売り物を積極的に買ったり、お金を恵むことはいいことだ。いや、お金をあげるのは倫理的によくないので、かわりに食べ物を渡すのがいいだろう。ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、いろんな意見や考え方があると思います。

そこで、今回ご紹介したいのが、ストリートチルドレンの保護や社会復帰を目指して、彼らと共にユニークな活動を展開しているフレンズというNGOのチャイルドセーフ事業です。チャイルドセーフ・センターでマネージャーを務めるマオさんにお話を伺ってきました。(写真はマオさん。チャイルドセーフ・センターにて。)

*チャイルドセーフに関する情報は、以下のサイトをご覧下さい。
http://www.childsafe-international.org/CAMBODIA/CSCambodia.asp


あなたならどうしますか?


「私たちは、子どもが危うい状況に置かれている場面をしばしば目にすることがありますが、問題はその危険性を認識できないこと、あるいは対処の方法を知らないことです。」チャイルドセーフ・センターのマオさんは、真剣な眼差しでこう話してくれました。

カンボジアでは、観光産業の拡大に伴い、法の未整備や汚職につけこむかたちでセックスツーリストが流入しました。その中には多くの子ども買春者も含まれており、性的搾取の被害にあうリスクが高いのがストリートチルドレンです。また、路上生活を続けることは、健全な成長を妨げるような仕事に追いやられたり、教育の機会を奪われることにつながります。

一般の旅行者でも気がつかないうちに路上での児童労働に加担してしまうことがあります。たとえば、物売りや物乞いの子どもに直面したら、お金はもちろんのこと、クッキーやキャンディなどの食べ物も渡してはいけないとマオさんは言います。子どもが路上で稼げたり食べていけることになり、子どもの路上生活を助長することになるからです。

「そういうときは、笑顔で話しかけ、チャイルドセーフ事業のことを教えてあげてください。もし知らない子どもがいたら、すぐにセンターまで電話してください。」
センターでは、カウンセリングや家族との再統合、刑事訴追、医療支援、補習授業、職業訓練など、緊急に必要なサポートや適切なサービスの紹介を行っています。また、観光客を対象に情報提供を行い、ストリートチルドレンを助ける方法を伝えています。

ストリートチルドレンを性的搾取や児童労働などの様々な危険から守るために、フレンズは旅行者向けに7つのアドバイスとホットラインの番号を載せたリーフレットを配布しています。また、旅行者と接する機会の多いホテル、レストラン、インターネットカフェ、タクシードライバー、旅行代理店などを対象に研修を提供し、ネットワークを構築することによってストリートチルドレンを取り巻く様々な危険を取り除く活動に努めています。トレーナーは各業者の職場に直接赴き、実地研修を行います。研修を終えた業者たちは、認定メンバーとしてフレンズのウェブサイトなどで紹介されるようになり、利用者の獲得につながります。C-Rightsは、旅行者向けリーフレットの日本語版作成と研修費を支援しています。

「子どもにとって危険なことに注意を払い、どうすれば子どもを守れるのか、しっかりと判断することが重要です。」2007年にオープンしたセンターは、心のこもったスタッフに支えられ、今日も活動に勤しんでいます。

ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、みなさんの答えは見つかりましたか?

1日30円からの国際協力・マンスリーサポーターお友達紹介キャンペーン実施中!
http://www.c-rights.org/join/monthly.html

就任のご挨拶

2009年09月18日 23時01分31秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、カンボジア事務所長の筒井です。今日はいいお知らせがあります。ついに、念願の新しい駐在員がカンボジア事務所に着任しました!さっそく、彼女に自己紹介を始めてもらいたいと思います。これまでは、ブログの更新が滞っていましたが、今後は2人で協力して、定期的更新を目指します!

初めまして。8月末よりカンボジア事務所に赴任いたしました、長島千野(ながしま・ちや)と申します。今後、筒井と一緒に「カンボジアだより」を担当させていただきます。それでは簡単に自己紹介させていただきます。

米国の大学を卒業後、日本に帰国して半導体の企業で約5年働いておりました。そのかたわら、貧困・人権問題などに関心があり、自分に出来る些細なことでも、と思いNGOでファンドレイジング等のボランティアを行っておりました。シーライツで仕事をする決意をした理由は、もっと多くの時間を「大切」と思えることに費やしたい、企業で働いている自分は、自分らしさに欠けるという思いが積み重なったからです。児童労働反対世界デ-のイベントでシーライツと出会い、子どもの人身売買、性的搾取、児童労働などの被害を出さないようにする「予防」の活動の方に力を入れていること、また日本人が直接支援するのでなく、カンボジアの文化を良く理解している現地パートナーNGOと協働でプロジェクトを行っていることに共感し、現地で活動したいという気持ちから、カンボジア事務所で働こうと思いました。 カンボジアでの性的搾取の加害者に多くの日本人がいることも、シーライツのカンボジアの活動に関わりたいと強い思いを抱いた理由の一つです。

プロジェクト地やパートナーNGOを実際に訪問し、頑張っている子どもたちやパートナーNGOのスタッフの姿を見たとき、本当に嬉しく思いました!子どもの人身売買、性的搾取、児童労働を予防するネットワークメンバーの子どもたちは、自分自身とコミュニティーの人びとを守ろうと一所懸命活動していて、その姿がとても誇らしげでした。そんな子どもたちと周りの大人たちの力になれるように、頑張っていきたいです。

さて、カンボジアに来て早1ヶ月が経ちました。私は、米国とヨーロッパ諸国しか行ったことがなかったので、来る前は何かと不安だったのですが、不思議なことに着いた瞬間からあまり違和感がありませんでした。街は想像していたより栄えていて、交通手段(バイクタクシーとバイクに2輪座席がついたトゥクトゥクしかないので)以外はあまり不便さを感じません。そして会う人ほぼ全員(特にカンボジア人)に、「カンボジア人だと思った!」と言われ、いつもクメール語で話し掛けられ、なんだかここが自分の祖国のような気さえしてきた今日この頃です。

皆さまには、今後より多くの現地の情報配信を行っていけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。



NGOへの期待と憧れ

2008年06月27日 15時11分49秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、中川香須美です。これまで2年間にわたってブログでカンボジアの子どもたちについて紹介させていただきましたが、今回はわたしが書くブログの最終回になります。最後のしめくくりとして、カンボジアの子どもたちがNGOに寄せる期待と憧れを紹介します。

5月に、ある仕事の一環で、私はへき地の女子高校生を集めて話を聞く機会を得ました。地方都市から車で2時間ほどでこぼこ道を行ったところにある村の高校です。本題は女性に対する暴力についての情報収集でした。でも若い女子高校生と話していて一番印象に残ったのは、彼女たちのNGOに対する強い憧れの気持ちです。その地区ではこれまでNGOがほとんどまったく活動していません。女子高生も、NGOの職員に会ったのは、私と一緒に同行した数名の若いカンボジア人たちが初めてだったそうです(実際はNGOとして行ったのではないのですが)。彼女たちは、NGOの職員が自分たちと話に来るということで、嬉しくって楽しみにして待っていたと言うのです。

彼女たちは、こちらがインタビューして意見を聞くのを知っていたので、最初は一生懸命質問に答えてくれました。でも、こちらからの質問が終わって、「もし質問があればどうぞ」と彼女たちに投げかけると、水を得た魚のように次々と質問が出てきました。その理由は、NGOには知り合いがいないけれど、将来はNGOの職員になって社会のために役立ちたいという強い希望を持っているからでした。高校まで進学はしたけれど大学に行かなくてもNGOで働けるのか、プノンペンにいけばNGOで働く機会はあるのか、どういう能力がNGO職員として必要なのか、次々と質問されました。NGOという名前が、テレビやラジオなどを通じて広く知られていて、かっこいいという印象を彼女たちに与えているようです。また同時に、社会に貢献できるような仕事をするには、ぜひNGOで仕事をしたいと考えているのです。

カンボジアは内戦が終結した後、政府がさまざまな政策を作って国家の発展を進めているものの、予算や人材不足から行政サービスが住民に十分に行き届いていないのが実情です。そのような状況の中、NGOが政府の役割を側面支援する形で、さまざまな分野で活動しています。子どもの権利普及活動についても、国際子ども権利センターをはじめとして多くのNGOが教育省に現場で協力しながら二人三脚で実施しています。高校生にとっては、行政官や自治体職員といっても身近に接することもなく、むしろメディアなどで報道されるNGOなどの活躍に注目がいっているようです。

政府職員であってもNGO職員であっても、カンボジアの将来をよりよくしていきたいと思う若い世代が育っているのは、とても心強いです。カンボジアは人口の半数以上が子どもです。将来を担っていく子どもたちに、できるだけ学ぶ機会を提供し、将来の夢が持てるような環境をつくっていくのは、わたしたち大人全ての責任だと思います。暴力から自由な社会、悲しみから自由な社会、個人が自由に生きられる社会、国境を越えてそういった社会を作っていくのは、わたしたち、大人の責任です。国際子ども権利センターの活動を通じて、またブログを通じて、日本人の間でもそういった意識が高まることを期待しています。

最後になりますが、これまでわたしが書くブログを読んでくださった皆様、コメントをくださった皆様、本当にありがとうございました。長年住んでいるカンボジアから日本向けに情報を発信していきたいと思っていた時に、国際子ども権利センターの甲斐田万智子さんからお誘いいただき、これまで細々と情報発信ができる機会をいただけて本当にありがたく思っています。

なお、わたしは6月28日から2年間、国際協力機構(JICA)のジェンダー主流化プロジェクトの専門家として、カンボジアの女性省に派遣されることになりました。今後はどういった形になるか分かりませんが、引き続きカンボジアからさまざまな情報発信をしていきたいと思っています。

写真は、子どもの人身売買防止ネットワークで活動する女子中学高校生


○カンボジアの家族の温かさに触れて○ スタディツアー報告 その1

2008年05月14日 20時13分43秒 | カンボジアの子ども
みなさん、こんにちは。甲斐田です。今年の3月に国際子ども権利センターはスタディツアーを実施したのですが、その参加者が見たり体験したことを文章にまとめてくださったので、今回からそれらをこのブログでアップさせていただきます。
(字の色による強調はこちらでつけさせていただきました。写真は筆者の宮澤さんと村の子どもです。)

○カンボジアの家族の温かさに触れて○

                                         宮澤祥子さん(大学生) 

 今回私は英語に全く自信がなかったため、日本語を勉強しているヴィッチニーのお宅にホームステイさせていただきました。ヴィッチニーのお宅には4人のメンバーでお邪魔しました。

ヴィッチニーは20歳の女性で、クメール語・英語・中国語・日本語が話せる勉強家で、自分の考えをしっかり持っているとっても可愛い人でした。

 ヴィッチニーとヴィッチニーの妹ヴェッツも一緒にツォール・スレン博物館を見学し、その後ヴィッチニーの運転する車で家に向かいました。ヴィッチニーの家はプノンペンから車で30分位のところにありました。車内ではホームステイというドキドキ感もありましたが、ヴィッチニーはとても気さくで、私たちの質問に日本語・英語・ジェスチャーを交えて色々と答えてくれました。たまに日本語が通じない時もあり、英語が話せればもっとヴィッチニーと話が出来たのにと残念に思い、本気で英語を学びたいと思うようになりました。

 家に帰る途中、私たちのリクエストにより観光地でもあるセントラルマーケットに寄ってもらいました。セントラルマーケットは大きい市場にも関わらず溢れんばかりの人でした。私はお土産にクロマーが欲しかったのでヴィッチニーに伝えると、お勧めのお店を教えてくれ、大判のシルクのクロマー2枚を格安の5ドルで買うことができました。良い買い物が出来て大満足でした!!セントラルマーケットを出て、家路の途中にいくつかのお寺がありました。私たちが興奮して車内から見ていると、記念にという事で車を止めてくれ、説明してくれたり記念写真を撮ったりと、ヴィッチニーの温かい心遣いが嬉しかったです。

 ヴィッチニーの家に着くと、ヴィッチニーのお婆ちゃんとパパとママが笑顔で私たちのことを迎えてくれました。私たちが玄関先にある椅子に座っているとヴィッチニーは庭に生えているマンゴーをもぎ、私たちにご馳走してくれました。緑色のマンゴーは酸っぱいけれど、日本では味わったことのない新鮮な味でとっても美味しかったです!!こっちではそのマンゴーに塩と砂糖と唐辛子を合わせた調味料につけて食べるそうで、果物というよりは野菜という感覚でした。途中からヴィッチニーの友達のマリナさんのお宅がホームステイ先のメンバーも加わり、大人数で夕飯をいただきました。鶏を焼いたもの、卵焼き、餃子、サラダにデザートには熟した甘いマンゴーと美味しいものを沢山ご馳走になり、大満足でした。夕飯を食べ終わると、今度はマリナさん宅にお邪魔させてもらいました。マリナさんの運転するバイクで向かったのですが、バイクの3人乗りなんて日本では経験出来ない事だったので大興奮でした!!マリナさんの家族も温かく私たちを迎えてくれました。マリナさんの家では、庭でとれるココナッツジュースや、ココナッツとゴマの餡をもち米で包んだお菓子やまたまた美味しいマンゴーなど沢山ご馳走になり、カンボジアの人たちの暖かい心遣いに感動しました。

 ヴィッチニーの家に戻ると、ヴェッツと折り紙をして遊びました。ヴェッツは日本語はもちろんの事英語も片言だったので、二人で会話につまりつつもジェスチャーでコミュニケーションをとりました。ヴェッツは私が持ってきた和紙や折り紙の本に興味津々で、鶴や箱など折るたびに真似をしてどんどん折り方を覚えていきました。上手に折る度に褒めると、照れ屋のヴェッツは恥ずかしがりながらもとっても可愛い笑顔で応えてくれました。妹が出来た感覚で私もとっても嬉しかったです。その後、ヴィッチニーやママや弟も加わり、みんなで折り紙で遊びました。

 次々出来上がっていく折り紙にみんなとっても喜んでくれて嬉しかったです!!夜はヴィッチニーと日ごろの生活や将来など、年が近いからこそ分かり合える悩みなど少し深い話も出来良かったです。朝はマリナさんの家にお邪魔して朝ごはんをいただきました。お粥に梅干に塩魚いりの卵焼きにお漬物など、日本人の私たちのために用意してくれたメニューが並んでいて、久しぶりの日本の味が嬉しかったです。朝ごはんを食べ終わるとトゥクトゥクに乗って待ち合わせ場所のホテルまで向かい、寂しいながらもお別れをしました。

 今回のホームステイで私が感じた事は2つあります。まず一つ目はカンボジアの人たちの温かさです。初めてのカンボジアで始めてのホームステイということで緊張していた私たちの心を溶かしてくれたのは、ヴィッチニーやヴィッチニーの家族の温かく優しい笑顔でした。言葉は通じない私たちに常に笑顔で接してくれ、一生懸命ジェスチャーで話しかけてくれる。そして、ここまでしてくれるの?と驚く位のおもてなしなど、家族の優しさで溢れている家庭にお邪魔出来て本当に良かったと思います。ヴィッチニーのママに「ママ大好きー!!」と抱きついた時、ヴィッチニーのママもとびっきりの笑顔で抱きしめてくれたことは決して忘れません。

 2つ目はカンボジアの格差です。今まで貧困地域やグッディーセンターなどを見てきたこともあり、逆にこういった一般家庭に違和感がありました。ヴィッチニーの家は3人きょうだいでみんな学校に通い、家も立派な一軒家で、そこには温かな家庭が存在します。今まで見てきた村の家庭では、両親が出稼ぎや亡くなったという理由でいなかったり、子どもたちは学校にも満足に行けずに家に縛られているというケースが普通でした。同じカンボジアでここまで差がはっきりとしている現実に少し戸惑いを感じました。日本でも格差はあります。しかし、カンボジアの貧富格差は大規模で鮮明なものなのです。私も日本に帰ったら両親も健在で学校にも通え、生活には困らない裕福な家が待っています。自分のおかれている環境、また、カンボジアの中流階級以上の家を考えると貧困地域で出会った人たちの生活、そして何より子どもたちの生活、子どもたちの生きる権利を真剣に考えていかなければならないと感じました。カンボジアが着実に発展している事は都市部にいると感じることが出来ます。しかし、その裏には日本では想像出来ない程の貧困も存在するのです。このツアーでカンボジアの表と裏を見ることが出来て良い経験が出来たと思います。

○感想○ 

 このツアーから帰って来てまず思ったことは、このツアーに参加して本当に良かった!!ということです。カンボジアの人々・風景・食べ物など毎日見る物体験する事が新鮮で、あっという間の1週間でした。
 
 スタディツアーということで、子どもの権利やカンボジアの子どもの現状などの知識だけでなく、被害が起こりうる現場から社会復帰までの流れにそって実際に現場を見る事ができ、とても貴重な経験もさせていただきました。貧困地域の村に行き、普段観光客の目には映らないカンボジアの子どもの現状の深刻さを目の当たりにした時、「何とかしたい、自分には何か出来ないのか?!」と今すぐ手を差し伸べられない自分をとても悔しく感じました。
 
 家族のために働くのが当たり前、お金が無いから働かなくては生きて行けない。日本では考えられないくらいの幼い子どもたちが“お手伝い”ではなく“仕事”として働かされているのです。それでも子どもたちは溢れんばかりの笑顔で私たちを迎えてくれました。あの子どもたちの輝いている笑顔は忘れられません!!

 そんな子どもたちの笑顔を曇らせない為にも、児童労働・人身売買・性的搾取防止の活動を起こしていかなければならないと強く感じました。カンボジアの女性や子どもの権利・命・性のもろさを考えると、C-Rightsやパートナー団体の各国のNGOの存在の大きさははかり知れないものだと感じました。

 このツアーに参加して学んだ多くの事、吸収した多くの事を生かして自分なりに行動にうつしていきたいと思っています。カンボジアから子どもの搾取、児童労働が無くなる為にも自分には何が出来るのかを考えて行きたいです。

 最後に、甲斐田さん、近藤さん、(通訳の)井伊さん、(ガイドの)ポォキーさん、そして一緒にツアーに参加したメンバーなど全ての人に恵まれた事を心から感謝しています!!1週間共に生活し、楽しさも寂しさも共感し合い、常に笑いあっていられたのも本当に素敵な方々に出会えたからだと思っています。皆さんと一緒にカンボジアで過ごせた事を心から嬉しく思います。ありがとうございました☆



性犯罪と最近の若者・子ども

2008年02月19日 03時14分20秒 | カンボジアの子ども

こんにちは、中川香須美です。今回も前回に引き続き、カンボジアのこどもと性犯罪について、「女性と子どものための法律支援の会(Legal Support for Children and Women (LSCW)))代表のビチュターに聞きました。



子どもの犯罪は増えているのか

近年、若い世代や子どもたちは、暴力的になってきていると思います。その理由のひとつは、さまざまな情報が世界各国から入ってきていて、テレビや雑誌などで暴力的な行為を子どもたちが日常的に目にするからです。特に、テレビでは外国からのドラマが放映されていて、とても暴力的なシーンが多いです。ポルノもそのひとつで、子どもでも簡単にポルノを見ることができるのは深刻な問題です。

家庭にもよりますが、多くの家庭の子どもたちは、大人からの指導なども受けないまま、暴力的な映像を見ています。親が放任しているわけではないものの、子どもたちは危険な映像にさらされているのです。けんかのシーンや、悪いことをしている若者たちの振る舞いを見て、それを真似したいと思うのです。服装、振る舞い、言葉使い、子どもたちがテレビで見たことをすぐ真似したいと思うのは普通です。テレビの暴力シーンなどに関する規制などがまったくないのも問題です。


中川香須美コメント

子どもの犯罪が増加しているのかどうかについての統計はありません。ただ、子どもが暴力的になってきた、あるいは社会全体が暴力的になってきた、というのは実感としてあります。原因は色々あると思います。急激なスピードで提供される新しい情報を適切に処理できない人々が増えているのにもかかわらず、社会的なセーフティーネットがまったくなく、犯罪を助長している社会的背景が重要な問題だと思います。1990年代から自由主義経済になり、人々の生活スタイルはとても早いスピードで変わりました。また、いわゆる中間層・富裕層が育ち始め、社会の中で「権力(お金)を持つ人たち」と「弱い立場に追いやられる人たち」との二分化が進んでいます。権力を持てば、何でもしていいと思う人たちがいるのは残念な事実です。お金を持てば、権力者を動かせるのもまた事実です。



ポルノと性犯罪との関連

性犯罪を撲滅することは不可能だけれど、減らすことは出来ると思います。大人の性犯罪を減らすのはとても難しいですが、子どもの性犯罪を減らすためには、まずとにかくポルノをコントロールすることが優先事項です。その理由は、子どもがレイプする場合、ほとんどの場合ポルノを見ているからです。ポルノを見た子どもたちは、その内容などちゃんと分からないまま、同じことを試してみようと自分たちよりも幼い少女を狙うのです。レイプが犯罪かどうかも分からず、自分が処罰されるかもしれないなど考えないまま、自分がビデオで見た内容をそのまま実践しようとするのです。他方、大人の男性の場合は、女性に対する差別や嫉妬心、権力を示したい、色々な理由があります。性犯罪の事件を取り扱っている上での印象ですが、大人の性犯罪の場合、ポルノと直接関連する事件は少ないと思います。ないわけではないものの、やはり女性に対する差別感情が第一にあると思います。

結論的には、レイプを撲滅するのはとても難しいです。どうすればいいか、簡単な解決法があればいいと思いますが、きっと無理でしょう。時間もかかるし、地道な努力が必要だと思います。でも子どもたちが犯罪を犯さないように、とにかくポルノの取締りをきっちりしていく必要があると思います。


中川香須美コメント

ちょっと性犯罪の問題とずれますが、若者たちが、ポルノなどの性的なフィルムに対してオープンになってきている点についてわたしの経験を紹介したいと思います。わたしはジェンダー学の授業で「リリア・フォーエバー」というスェーデンで作成された人身売買の映画を上映するのですが、これに関して面白い逸話があります。映画の内容は、かつてのソ連で育った16歳のリリアが、母親に捨てられ、トラフィッカーにだまされてスェーデンに売られてしまい、何度もレイプされ、最後には自殺するという話で、実話に基づいて作成された映画です。この映画の特徴は、主人公が暴力的にレイプされるシーンが何度か出てきて、それらが全て被害者の視点から撮影されている点にあります。

最初に映画を上映したのは2年前でした。その時、この暴力的なシーンが始まったとたん、ほとんどの女子学生が教室から出て行ってしまったのです。わたしは残った男子学生たちと最後まで映画を見るという、あたかも男子校の教員になったかのような経験をしました。その授業の後日、女子学生たちになぜ出て行ったのかを聞くと、「性的なシーンは、見るだけでも悪いことだと思った」ので、急いで退席したそうです。それを聞いて、確かに衝撃的すぎるシーンだったかもしれないと反省した私は、その後暴力的なシーンは全て早送りして見せないようにしていました(年に3-4回異なる学生を対象にして上映するのです)。でもやはり、暴力的なシーンを被害者の立場から見ることで、こういった犯罪は撲滅しなければならないとちゃんと分かってほしくて、つい先月(2008年1月)上映した際には、2年ぶりに映画を全部上映してみました。上映前に、「男性は目を開けてしっかり最後まで見るように。ただ、性犯罪を含む暴力的なシーンがあるので、女性は見たくなければうつむいていなさい。でも人身売買のことをより理解するために、最後まで教室には残っていてほしい」と話しました。すると、驚いたことに、女子学生も最後までしっかり見て、誰一人途中で下を向いたり退席する学生はいませんでした。たった2年間で、これほど女子学生たちの許容力が変わるのだとびっくりしました。もちろん、いろいろな要因があっての結果だとは思いますが、さまざまな情報に慣れてきていることも一因だと思います。

写真は、リリアフォーエバーのDVDカバー
© http://www.filmweb.no/index.jspより


カンボジアの子どもたちにより権利を理解してもらう活動を一緒に支援するために、国際子ども権利センターの会員になってください。

http://www.jicrc.org/pc/member/index.html

カンボジアでの子どもを狙った性犯罪

2008年02月06日 21時46分34秒 | カンボジアの子ども
こんにちは。今回と次回は、イギリスのロンドンからブログをお届けします。わたしの無二の親友リー・ヴィチュターがイギリス政府の招待でロンドンに長期滞在中なので、わたしも大学の休みを利用して2週間だけ合流することにしました。ヴィチュターは「子どもと女性を支援する法律の会(Legal Support for Children and Women (LSCW)」の創設者であり、現在の代表でもあります。ちょうど私は仕事を持参していて、その内容がカンボジアにおける子どもを狙った性犯罪(主としてレイプ)の統計に基づく分析で、過去2年間に発生した460件の性犯罪事件を分析しているところです。そこで、カンボジアで性犯罪の被害者に弁護を提供している団体の代表のヴィチュターに、この問題について話を聞きました。以下は、彼女の許可を受け、発言内容を日本語に翻訳しています。

性犯罪:農村地域と都市部の違い

カンボジアでは子どもが性犯罪の被害にあいやすい状況に置かれています。その理由は、多くの子どもが安全でない環境で生活せざるをえないからです。性犯罪は都市でも農村部でも発生していますが、農村部のほうが深刻な問題です。大人の目がなかなか届きにくい環境で子どもが生活しているからです。農村地域では、多くの両親が朝早くから夕方遅くまで家から遠くに出かけて農作業に従事していることが多く、子どもたちは保護者なしで長い時間自宅に取り残されます。学校は半日しかなく、遊び場となる公園などもないため、ほとんどの子どもは自宅周辺で多くの時間を過ごします。家事を手伝って自宅にいる子どもも多くいます。子どもたちは、保護してくれる大人が不在なまま、危険にさらされています。

他方、都市部に住む保護者たちは、「都市は安全でない」という前提で生活しており、常に子どもの安全に目を光らせています。都市部では人口密度が極めて高いため、子どもが一人で家に取り残されていてもそれほど危険ではありません。近所の人の目が光っているのです。また、多くの保護者は子どもに学業に専念してほしいと期待しているため、保護者が時間を費やして子どもと勉強しています。公立学校に加えて私立学校や補習校など、いくつも学校に通っている子どもも多く、子どもたちも忙しいのです。レイプが少ないと言うわけではありませんが、農村地域と比べると都市部では、性犯罪被害にあう子どもの置かれている状況はかなり違っています。

子どもは大人と違って、自分たちを危険から守る術を知りません。また、加害者から見ても、「きっと黙らせることが出来るだろう」という子どもに対する差別の感情があるのだと思います。そういった理由から、子どもを狙った性犯罪が絶えないと言えるでしょう。

中川香須美コメント

ヴィチュターの発言内容で、農村地域と都市部では子どもが生活する状況が異なり、都市部では近所の人の目が光っているという点については、確かにその通りだけれども、それが性犯罪から子どもを守ることにつながっているかどうかは疑問だと思います。実際、統計上では性犯罪の約8割の被害者が加害者と知り合いや親戚関係にあります。レイプ神話だとして否定されている通り、見知らぬ人がいきなり襲ってくるというようなレイプはカンボジアでもほとんどありません。性犯罪一般に言えることですが、男性が女性に対して差別感情を持ち(あるいは大人が子どもに対して差別の感情を持ち)、権力を乱用して性犯罪の対象として自分よりも弱い立場に置かれている女性や子どもを狙う、という点が重要ではないでしょうか。



なぜ性犯罪が?

性犯罪が発生する理由は、数多くあって、それぞれの事件で異なる理由があるといってもいいくらいです。カンボジアにユニークな特徴としては、以下が挙げられるかもしれません。まず、カンボジアの田舎では、男女を問わず子どもたちが上半身裸で歩くのが普通です。すぐに汚してしまうからという理由や、貧しくて多くの服を買えないといった理由から、両親たちも娘が上半身裸で歩いても気にしないのが一般的です。ところが、最近は栄養状態が以前よりはよくなってきていて、8歳くらいで生理が始まる少女もいます。少女の身体的な成長が早くなっているのに、上半身裸で歩く少女もまだ多く見られます。この子どもたちが犯罪者をあおっていると言いたくありませんが、スタッフなどから聞く話によると、性犯罪とのつながりは否定できないようです。男の子からさらに幼い少女を狙った性犯罪事件も増加傾向にあります。幼い男の子が性犯罪を犯す場合は、その多くがポルノに関係があるようです。ポルノを見た男の子が、同じことを試したいと思ってより幼い少女を狙うのです。

また、農村地域では多くの家庭が大家族で生活しています。大人数の家族がひとつの屋根の下で寝ます。若い新婚夫婦でも、大勢の中で一緒に夜を過ごします。わたしは直接見たことがありませんが、若いスタッフから話に聞くところでは、幼い男の子たちでも新婚夫婦の夜の動きをしっかり観察していて、興味津々になるそうです。「いつかは同じことを試してみよう」と考える男の子が、より幼い女の子をレイプする事件も多発しています。


中川香須美コメント
農村地域の真ん中で生活した経験はもう何年も前なので、最近の様子はどうか正確には分かりません。ただ言えるのは、裸で歩いている少女や大家族で生活する生活スタイルは、何年も前から見られる一般的なカンボジアの農村部の様子だという点です。
むしろ、国際化の波を受けてポルノが農村でも氾濫していて、子どもですら大人と一緒に行動することによって簡単にポルノを見せられる環境に置かれやすくなっていることが大きな問題だと思います。すでに5年くらい前に行われた調査で、11歳から13歳の男子の約半数がポルノ(映像)を見たことがあると回答しています。
現在では、この割合はもっと高くなっていると思います。ポルノと性犯罪の関連については、まだ本格的な調査がないので実際どうなのか分かりませんが、子どもが性犯罪を犯す率が高くなってきている状況からみると、間違いなく大きな関連があると思います。



加害者は?

カンボジアでの性犯罪の加害者のほとんどは、被害者と同じ地区に住み、周辺の人から「普通」とみなされている男性の場合が圧倒的多数を占めます。加害者にこれといった特徴はありません。金持ちや権力を持っている人が加害者になる場合もありますが、ほとんどは「普通の男性」、例えば何の特徴もない「夫」であったり「父親」という社会的役割を担った人たちです。ただ、これまでカンボジアでは加害者を対象とした調査が実施されていないので、加害者の傾向の全体像はつかめていません。もしかしたら、加害者になりやすい男性の傾向があるのかもしれません。


中川香須美コメント
女性に対する暴力について学生と話す時、必ず加害者のイメージの話をします。学生が挙げるのは、1.貧しい家庭の男性、2.アルコールの影響下にある男性、2.妻以外に恋人がいる男性、といったものです。教員としての私の役割は、この固定観念を学生から取り除くことにあります。大学まで来ている学生たちは、自分では気づかずに貧しい人たちに対して差別の気持ちを持っている場合が少なくありません。偏見を取り除いてもらうため、政府で要職についている男性であっても、アルコールの影響を受けていなくても、誰でも女性に対して暴力をふるう可能性があるという話をします。クラスで家庭内暴力の話をした時、「あなたたちが現時点で愛して結婚する人は、10年後には今とは同じ性格の人間じゃない。もしかすると、暴力を振るう人間に変わっているかもしれないということを理解してほしい」と言うと、「そんなこと考えてたら結婚できない!」って学生から文句を言われたことがあります。でも、誰もが加害者になったり被害者になったりする可能性があるということを分かっているのと、分かっていないのとでは、実際に被害にあったときに受け止める心の強さが違うと思います。 


(つづく)

写真は、地方のある家族の写真(プレイベン州コムチャイミア郡)。本文とは一切関係ありません。©甲斐田万智子

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