カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

ムー・ソクアさんを囲む会直前企画<ソクアさんインタビュー第一回/夜の街に立つ大臣>

2005年11月04日 12時57分49秒 | その他
みなさんこんにちは、平野です。
4日連続の投稿です。これまでに引き続き、11月7日の元女性省大臣ムー・ソクアさん囲む会直前企画として、今回から3日連続で、彼女の激動に満ちた半生のインタビューをお届けしますのでお見逃しなく。

出所:アジア女性資料センター2005年3月カンボジアスタディーツアー資料
翻訳:裏川久美子、岩崎久美子

原文:http://www.globalfundforwomen.org/work/trafficking/garden-of-evil.html

邪悪の園
発行所 O・オプラマガジン社  著者  Carol Mithers、2004

※小見出しは各パラグラフの最初の一文。太字は筆者。

【カンボジアでは、少女たちの体は安価である。】

多くは16歳に満たない少女たちが、たびたび一晩に何十人もの客をとり、その売春行為に対しわずかな代償を得ている。なぜいまだにこんな状態が続いているのだろうか? その責任は貧困や汚職、女性を使い捨ての資源とみなす社会にある。Carol Mithersは、際立った人権活動家ムー・ソクアさんに、この悲劇をくいとめるための闘いについて話を聞いた。

深夜―カンボジア、プノンペン発 
蒸し暑い夜、セックスを求める男たちは、この優美な首都プノンペンの公園のはずれに群がる女たちのグループを漁る。その出会いは概して野卑で荒々しい。カンボジア首相官邸からほぼ見わたせる辺り、大木の下で男は女の胸を乱暴につかみ、セックスのため芝生に押し倒す。男は数分でことを済ませる。それから女は再びグループへと戻る。夜が更けるにつれてこのような光景は何度も何度も繰り広げられる。この陽気な買春者たちは、おそらく少女たちのほとんどが売買されて、強制的に、あるいはだまされて売春婦にさせられたことを知っている。男たちはそんなことはどうでもいいように見える。貧しい子供時代の苦労話など聞きたくもないし、生きるだけで精一杯なあまり、見知らぬ者から娘に都会で「仕事」があるといいかげんな約束をされて二つ返事をしてしまった親の話など、聞く耳を持たないのである。

 【しかし、そのような話こそが、少女たちの中に立つひとりの女性を悩ませる。】

他の女性たちよりだいぶ年上だが、スリムな体に厚化粧しぴっちりしたセクシーな服をまとったこの女性は闇の中で紛れている。客があらわれると、少女たちは守るようにその女性の前に立ちはだかる。女性は証人になるためにそこにいるのである。ムー・ソクア(50歳)はカンボジアの「女性・退役軍人省」の大臣を務めるかたわら、この公園での仕事を始めた。昨年夏、ムー・ソクアは、大臣の職を辞して野党入りした。売春をする少女たちと共に歩むことで厳しい現実を学び続けている。「公園の夜は怖くてたまりません。しかし、私は、暴力や虐待、あの少女たちの現実を感じとりたかったのです」と、ムー・ソクアは抑制のきいた熱情を込めて静かに語った。ソクアの物腰は無駄がなく落ち着いていた。「報告書を読むだけではこの現実を知ることはできないのです」

 街の通りで、ソクアは、警官が逮捕した女性にわいろを強要したり強かんしたりするという話を聞かされる。富裕層の若者たちが売春婦を輪姦することで結束を固めるというあばら屋の噂も耳にする。また貧しい女性や子供が性産業へとからめとられていく経路についても話を聞く。街の通りこそが、ソクアが売春生活の残酷で詳細な現実を吸収する場所である。公園でのセックスは、1米ドル相当の金額と交換される。しかも午後10時以降はさらに安くなり、ポン引きに半分は搾取される。ソクアが数えた少女は何百人もいる。多くはHIVに感染しており、ソクアの末娘と同じ13歳の少女たちもいる。「私はいつも涙をこらえています。全力を出し切ってこの現状をくい止められないわけがありません」とソクアは語る。

 【20年以上前、ソクアは米国の大学院を修了した。】                 

そのまま残って、社会福祉方面で比較的条件のよいキャリアを積むこともできただろう。だがその代わりカンボジアに帰国して、少女や女性たちのために情熱的に闘う闘士となったのである。戦争でこなごなに打ち砕かれた社会を公正で平等な社会に変えていこうというソクアの意欲が原動力になって、これまで彼女は現代の最悪の人権問題のひとつ、人身売買の問題にとりくんできたのである。

 セックスのための人身売買は何百万人もの犠牲者をだす世界的な人権蹂躙である。ネパールの女性はインドへ売られ、サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)のアフリカ人はベルギーへ、ナイジェリア人はイタリア、ドイツ、フランスへ、フィリピン人は北米を始め世界中のどこへでも、そして旧ソ連圏諸国の女性はヨーロッパ中へ売られていく。2000年米国は、人身売買および暴力被害者保護法(VTVPA)を可決した。それは、100カ国以上の国々を対象に年一回ごとの評価を求めている。2003年には、子ども買春目的で海外を旅行する米国民の起訴が容易になった。にもかかわらず、主に東アジアや太平洋沿岸諸国出身のおおよそ一万人の少女や若い女性たちが、米国のストリップクラブ、マッサージパーラーや売春宿で働いているのである。

明日の第2回に続く(計3回)

写真の出所:http://www.womynsagenda.org/images/Programs/SexWorkerProgram/

最新の画像もっと見る