カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

物乞いをしないと雷にうたれる村?

2006年11月30日 06時30分49秒 | カンボジアの子ども

みなさんこんにちは、平野です。9月17日、20日の記事では縫製工場で働く2人の女性たちかたら聞いた話をもとに彼女たちの暮らしや縫製工場で働くに至った経緯や人身売買に関する知識などについてご紹介しました。この2人の女性は親戚でともにスバイリエン州という州の出身ですが、そのうちの1人、クンティアさん(仮名)のほうが自分の故郷について興味深い話をしてくれました。このお話は2006年度の国際子ども権利センターの支援プロジェクトとも関連しています。インタビュー形式でお聞きした話ですが、内容は変えずに平野が再構成しています。

【ベトナムに出稼ぎに出る子どもたち】

スバイリエン州は三方をベトナム国境に囲まれた州で、「オウムのくちばし」などとも形容されるかたちをしています。面積が小さい割りに人口が多く、全国平均を大きく上回る人口密度でありながら、米の単位あたり収量は全国平均をやや下回っており、カンボジアの全24州/特別市の中でもかなり貧しい州カンボジアの全24州/特別市の中でもかなり貧しい州です。またベトナム戦争時に北ベトナムと南ベトナムを結ぶ「ホーチミンルート」が走っていたことから、国境沿いは激しい米軍の空爆を受けており、いまだに不発弾も多く出るため、日本の地雷/不発弾除去NGOであるJMAS(日本地雷処理を支援する会)も活動されています。以下クンティアさんのお話です。

「私の故郷はスバイリエン州のコンポンローという郡です。コンポンローからは沢山の子どもたちがベトナムに行っています。仕事をする子もいるでしょうが、物乞いに行く子が多いのです。ベトナムで捕まると出身を偽る子も多いのですが、コンポンロー郡の中でもAというコミューン集合村出身の人がとても多いのです」

【雷にうたれると言い伝え】

「別にAコミューンばかりが貧しいわけではないのですが…習慣でしょうね。“物乞いをしないとカミナリに打たれる”という言い伝えがあるそうだから(笑)ポルポトから解放された79年以降そういう話になったみたい。まあそれはそれでそういう仕事なんだな、とは思うけど…。物乞いとはいえど、瓦の家に住んでいるしねぇ。経済状態は正確にはわからないけど、なにしろ瓦の家なんだから」

「周囲の人は、見下している人もいるけど、まあ(そういう人もいるということに)慣れているしね。私?私はそんな言い伝え信じないわよ!(笑)言い伝えのことは、物乞いに行く人をきらっている人たちが見下してそういうことを言っているのかもね」

【それも商売の一種 】

「他のコミューンの人も、もし行ってみて儲かれば、また行くでしょ。商売の一種だから。子どもも行っています。家族で行っていますから。ベトナムでの稼ぎの方が多ければ、ベトナムに行くでしょう。行かない人はベトナムに媚びたくないから行かないのじゃないかしら」

近所の出身ではありますが、クンティアさん(仮名)のお話は彼女の知識に基づいた私見に過ぎません。しかしスバイリエン州からベトナムへの出稼ぎが近年問題になっていることは間違いありませんし、その後の私の経験から、ベトナムへの物乞いに対する物乞いをしない人の一般的な認識のひとつと言えると思われます。

※写真はスバイリエン州の農村の風景です。

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カンボジアの小学校(2)

2006年11月27日 17時43分26秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、平野です。前回に続き、ある農村部の小学校の校長先生に聞いたお話をもとに、カンボジアで子どもたちがどんな学校生活を送っているのかみてみたいと思います。今回は学校側の取り組みに重点を置きつつ、学校ベースの人身売買防止ネットワーク(SBPN School Based Prevention Network)の活動についても聞いています。SBPNについてはこちらをご覧ください。

Q:学校の年間スケジュールを教えてください。
A:9/15に子どもたちが名前の登録に来ます。10/1から新学期で1年の終わりは7/31です。そして8・9月は休み、長期休暇です。その他に新年のお休みで4/6~20に短期休暇があります(平野註:カンボジアのお正月は仏暦につき4月か5月です)。

Q:休みのときは子どもたちはなにをするのですか?宿題などは?
A:子どもたちは親の手伝いをします。宿題はありませんが、補習は学校でも村でも行っています。

Q:入学式や卒業式はありますか?他にも行事があったら教えてください。
A:始業式には、自治体の来賓や保護者も来ます。終業式もあります。他にはこれといってないです。先生たちもそういうものを催したいと思ってはいるのですが。

Q:いつから校長先生をされているのですか?
A:1997年からです。責任が重くて忙しいですが、教育の仕事が大好きです

Q:教育が子どもに与える効果については?
A:教育は重要ですネットワークを準備するのはとてもいいことですね。すべてにおいて立派な人間になるよう知識を与えること、そして国の為になる人間になるよう知識を与えることが大切です。

Q:校長先生になる前はどうされていたのですか?
A:1981年に普通の先生になりました。当時と比べると知識レベルが上がりました。そして生徒の数が増えましたし、中学に進学する子どもも増えました。

Q:状況は良くなっているのですね。どうしてでしょう?
A:教育プランができてきたからだと思います。先生の会議も多いし、年間のプランを立てて、進捗を見たりと、教育者側の貢献が大きいと思います。

Q:学校の施設について教えてください。
A:図書室はありますが、あとは教室が13あるだけです。校長室、教員室もあります。問題があるのですが、木でできた教室が2教室あって、あと2年しかもたないと言われているのです。トイレがないのも問題ですね。

Q:学校ベースの人身売買防止ネットワーク(SBPN)についてはどのように見られていますか?
A:ネットワークを準備するのはとてもいいことですね。私も参加したいと思っています(笑)

Q:どんなときに活動しているのでしょう?
A:ひとつは朝礼、もうひとつは体育の時間です。

Q:体育の時間ですか?
A:はい。運動をした後、先生が人権の時間を設けていて、そこでやっているのです。授業時間を活動に割り当てるのは難しいですが、体育のときはずっと走り回っているわけではないので、しばらく運動して疲れたときを利用しているのです。 

Q:なるほど、よいアイディアですね。今日はありがとうございました。

積極的にSBPNに活動の場を提供してくれていることには、私たちもとても感激しました。また、校長先生のおっしゃる通り、カンボジアの教育も15年、25年前と比べたら色々な面で改善されていると思います。パリ和平協定から15年、いまだ解消されない問題点と同時にこの間に改善された点にも焦点を当てることも、今後のカンボジアを考える上での大きなヒントになると思います。

※写真は校長先生のおっしゃる木造の校舎です。

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カンボジアの小学校(1)

2006年11月12日 04時44分38秒 | カンボジアの子ども

みなさんこんにちは、平野です。前回の記事では女子教育の大切さについて書かせていただき、その最後の部分で、就学率とともに学校で行われる教育の中味も大切であることに触れました。今回と次回ではある農村部の小学校の校長先生に聞いたお話をもとに、カンボジアで子どもたちがどんな学校生活を送っているのかみてみたいと思います。学校はプレイベン州コムチャイミア郡にある小学校です。

Q:休みいつですか?
A:木曜は授業は休みで、労働の日なので皆仕事をします。子どもたちも学校の掃除ので生徒は学校に来ます。完全な休みは日曜ですね。

Q:スケジュールは?
A:朝は7時~11時、昼は1時~5時10分(午後)生徒の数が多いので二部制をとっています。

Q:どうやって決めるのですか?
A:25クラスあります。13と12に分けて、午前・午後でローテーションさせます。午前にも午後にも1~6年生まで入るようにします。先生は男性が17人、女性が7人で幼稚園もあります。どの学年にも3歳ほどの幅があり、例えば1年生には6歳の子から8歳の子がいますね。学校としての最年長は15歳です。全部で1072名、女子が514名、さすがに全員のことは覚えられませんね。

Q:1クラスは何人くらいですか?
A:40人以上、48人くらいです。

Q:皆卒業しますか?
A:ほとんどが卒業します。やめるのは貧しくて出稼ぎに行く家の子ですね。

Q:卒業後は?
A:中学に進学します。近くにありますので。

Q:教科を教えてください。
A:大きく4つの学科に分けられます。クメール語、算数、ライフスキル、社会科の4つです。ライフスキルというのは要するに生きていくための勉強です。木の植え方や農業について勉強します。社会科では道徳、文化、芸術、地理、歴史について勉強します。芸術の時間には楽器や踊り、それに絵も学びます。楽器はミニチュアなので実際には弾けませんが、こういう音楽文化がある、ということを教えています。道徳の時間には挨拶、年配の人への敬意、生活のあり方、交通法など勉強します。4つの中ではクメール語と算数に力を入れています。1人の先生が1つの学級を担当するかたちです。28、9歳から57、8歳までの先生がいます。

Q:チュバップスレイ/プロッ(註)は教えていますか?
A:6年生で教えています。

Q:先生のトレーニングについて教えてください。
A:先生が集まる機会はあまりなく、会議くらいです。機会があるとすれば州都で行われるワークショップですね。わりと頻繁にあります。州の教育局主催で、そのワークショップの性質によって校長だけ出たり、みなで行ったり、ある科目の先生が行ったります。

校長先生インタビュー前編は以上です。カンボジアの小学校の様子が少しでも伝わったでしょうか?(註)ですが、これが前回の記事の最後のほうで触れた、カンボジアの学校で広く教えられている男女がそれぞれ“守るべき規律”で“チュバップ”は法律や決まり、スレイは女性、プロッは男性を意味します。女性の権利向上に取り組む人たちの間ではしばしば問題として指摘されますが、一般の人たち、特に農村の人たちには当たり前のものとして受け止められており、学校で教えられていることはその背景にあると思われます。

※写真は校長先生が見せてくれた楽器です。ミニチュアではないように見えるものも入っていますね。

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