カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

スタディーツアー報告② 「牛銀行」の家庭を訪問して

2008年09月26日 15時26分07秒 | Weblog
 こんにちは。宇野です。今日はスタディーツアー報告その2です。スタディーツアー初日にSBPN学校訪問後、午後、スタディーツアー参加者は2グループに分かれ、「牛銀行」家庭と奨学金受給家庭訪問をしました。今日は、その「牛銀行」家庭についてです。
 報告に入る前に、「牛銀行」家庭について、少し説明させて頂きます。
 「牛銀行」とは、シーライツ協働パートナー現地NGO、HCC(Healthcare Centre for Children) が、収入向上プログラムの一つとして実施しているもので、「牛銀行」が選定された最貧困層家庭に牛を貸し出し、貸し出された牛は畑を耕します。牛が畑を耕している間、それまで畑仕事をしていた子どもは登校できるというわけです。シーライツは牛の購入費・牛飼育指導研修費の支援をしています。

以下は、参加者の新垣七海さんからの報告です。

「牛銀行」の家庭を訪問して
新垣七海

 牛銀行の家庭を訪問して、牛銀行から支援を受けている女性二人と、その村の村長(牛銀行から牛も借りていてグループリーダーを務める男性)から話を聞くことができました。牛を借りている一人の女性が育てている牛はすでに子牛を一頭産んでいて、さらに今もう一匹その母牛の中にいるそうです。牛は農作業にとても役立っていて、牛の糞は田んぼの肥料にしていると言っていました。彼女には子どもが5人いて、学校に通える年の子どもたちは学校に通ってはいるものの、田植えの季節は学校を休んでいるそうです。牛銀行から牛を借りたメンバーは自助グループをつくり、貯蓄組合を行っています。インタビューをしたもう一人の女性は、お金が必要なときに借りられるので銀行はとても役に立っていると言っていました。田植えをするときに、手伝ってくれる人たちへ食事をだすので、その食費としてお金が必要なので借りるそうです。借りては返すということを繰り返していて、返せないということはないようです。金貸しからお金をかりたら利子が50%だけれど、貯蓄組合からだと3%なので、とても助かっているそうです。「牛がきて逆に大変なことはないですか?」との質問に「労働力になるし、大変なことはありません。」と答えていました。最後に、彼女の家を訪問しました。とても小さくて質素な家でしたが、彼女はうれしそうに笑顔で「私の家、きれいでしょ?」と言っていて私たちを家に向かい入れてくれました。

感想
 インタビューした女性たちは「強いお母さん」といった感じで、たくましく子どもたちを育てている様子が伺えました。牛銀行の手助けもあって、生活を続けていくことができた、それが彼女たちの今の笑顔を作っているのだろうと思いました。
3人をインタビューさせてもらった家はとても綺麗なお家だったので、びっくりしました。聞いてみたら、牛を借りていた女性の家で、畑の土地を半分売って、新しい家を建てたと聞いてさらにびっくりしました。でも、「土地を半分売ってしまって彼女の今後の収入がどうなるのかしら?」と、甲斐田さん(シーライツ代表理事)が心配そうに言っていました。インタビューの質問では、牧田さん(シーライツ東京事務所事務局長)が人身売買や子どもの権利についてもたくさん質問したので、村の人が人身売買や子どもの権利についてどう考えているか話が聞けました。女の子と他の子どもたちも、子どもの権利についてちゃんと知っていたので、びっくりしました。一番びっくりしたことは、子どもの権利や人身売買について、彼女たちがTVやラジオなどのメディアから知ったということです。これは日本では考えられないことだと思います。 カンボジアにいる間に子どもの人権や人身売買防止についてTVで見てみたかったのですが、見られなかったのが残念です。この家庭訪問では、C-Rightsが支援しているプロジェクトが村人に喜ばれていて、貧困家庭にとってとても役に立っていることが分かりました。今お腹にいる子牛もちゃんと生まれてくれるといいなと思います!

写真は、前回のスタディーツアー(2008年3月)の際、「牛銀行」家庭を訪問した時のものです。

少女達が学校に通い続けることが出来るようにする為、ぜひ会員になってください!
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スタディーツアー報告① 国境お出迎えとSBPN学校訪問

2008年09月22日 13時27分55秒 | Weblog
スタディーツアー2008年夏

こんにちは。宇野です。2008年8月26日より9月2日までスタディーツアーが実施されました。参加者12名+現地参加者2名+スタッフ3名+通訳1名+現地ガイド+運転手の20名でスタディーツアーが始まりました。

国境お出迎え

8月26日カンボジア―ベトナム国境にて参加者さんをお迎えしました。初めてのスタディーツアーと、参加者さんとの出会いと、ベトナムに初上陸(約30分)ということで、私にとっては、緊張・興奮の瞬間でした。カンボジア―ベトナム国境には特に線が引いてあるわけでもなく、ひとつ、石の塔がたっていて、どちらが表でどちらが裏なのかは分かりませんが、片面にはカンボジア、片面にはベトナムと書かれているものでした。予想していた以上に、車やバイクの量、人の量が多かったです。参加者さんをお出迎えした時、飛行機でホーチミン入りして、ホーチミンからバスで国境までという長旅だったとは思えない位に、みなさんがエネルギーに溢れていて驚きました。国境からホテルまでのバス内での自己紹介を聞いていて、参加者さんのスタディーツアーへの意気込みを感じ、和やかな雰囲気の中スタディーツアーが始まりました。
 
スタディーツアー初日8月27日、まず初めに訪問したのはスバイリエンのSBPN(学校を拠点とした人身売買防止ネットワーク)が実施されている小学校です。

以下はツアー参加者の藤江理紗さんからの報告です。

スバイリエンのSBPNの活動を学んで
藤江 理紗(大学生)

 カンボジアに入国した翌日、私たちはスバイリエンにある学校を訪ねました。その地域で行われているSBPN(School based Prevention Network)の活動を知るためでした。SBPNとは学校ベースの人身売買防止ネットワークのことで、子どもたちが自分の身を自分で守れるように「子どもの権利」について学ぶプロジェクトです。子どもの権利は、生きる権利・成長する権利・保護される権利・参加する権利と大きく4つに分けることができ、これらを自分の持つことのできる権利であると認識することによって、カンボジアでは「しつけなんだから仕方ない」とされてきた親から子供への暴力などの家庭内暴力、や、同地域で深刻な問題になっている人身売買に立ち向かう力をつけることを目指します。

 教室に入ると、SBPNメンバーの小中学生がやや緊張した面持ちで私たちを迎えてくれました。まず、はじめに自己紹介。一人ずつその場に立って「チョムリアップスオ(こんにちは)」と手を合わせてあいさつした後、名前と年齢と学年を紹介してくれました。ここで驚いたのが、学年に見合わない年齢でした。同じ小学6年生でも13歳だったり14歳だったり、15歳になる子もいたのです!日本のように義務教育ではあっても、このように年齢がまちまちになってしまうのには理由があるそうです。家の手伝いや出稼ぎに行かなければならないために、学校へ入学するのが遅くなってしまったり、学校へ行けたとしても途中でやめざるを得なくなったりするからだそうです。

 みんなの自己紹介が終わったあと、私たちもカタコトのクメール語で自己紹介をしました。それから、子どもたちの緊張をほぐすために日本の歌をプレゼント!「幸せなら手をたたこう」を振りつきで歌うと、みんな恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべながらも、楽しそうに一緒に手をたたいたりしてくれました。さらに外へ出て伝言ゲームをして交流を深めました。

 教室へ戻って、4つのグループに分かれてもらい、SBPNに関するいくつかの質問に答えてもらいました。

Q1.子どもの権利を学んでよかったことは?
・ 自分自身の権利を知ることができた
・ 性的搾取について知ることができた
・ 他人にだまされない自信がついた
・ 性的搾取などから自分の身を守ることができる自信がついた。身を守る手段を学ぶことができた

Q2.SBPNのメンバーになってどんな活動をした?
・ 学校内外で広報活動→子どもの権利や児童虐待について
・ 友達やすべての子どもに広報活動→「自分自身を守ろう!」「学校に来るのをやめないで!」「狡猾な手口にだまされない!」

Q3.SBPNの活動をしてよかったことは?
・ 知識を得て、それを友達や家族、村の人と共有できた
・ 集まって話し合うことができた
・ 広報活動を成功させることができた
・ 子どもに興味をもってもらえた

Q4.SBPNの活動をして大変だったことは?
・ 活動する時間・場所が足りない
・ 活動するための予算が足りない→ミーティング時のペンやノートなどの筆記用具代、活動するときの教材など
・ 参加する子どものメンバーが足りない
・ 興味を持たない子どももいた

Q5.SBPNのメンバーとして、これからどんなことをしていきたい?
・ 子どもや女性の人身売買、性的搾取、家庭内暴力をなくしたい
・ それらについての広報活動をしたい
・ 村を発展させる活動をしたい
・ 村を平和にする活動をしたい

*子どもたちからの質問*

Q.日本の子どもたちはどんな活動をしているの?
→生徒会という組織があって、生徒たちが先生や保護者と同じ位置にたって、意見を言える仕組みになっている。

Q. 日本には女性・子どもの人身売買はあるの?
→≪女性≫沖縄には売春宿があり、県外へ出稼ぎに行く人もいる。
≪子ども≫インターネットでポルノが出回っている。また「タレントにしてあげる」と言って騙し、子どもポルノにされてしまうことも。

Q.日本の女性や子どもに対する支援体制は?
   →女性や子どもの虐待に対して24時間対応の電話相談などがある。また、親から虐待を受けた子どもの保護施設がある。

Q.どうして日本はそんなに発展しているの?
   →義務教育を9年間しっかり受けられる人がほぼ100%だから。

 グループの代表がひとり前に出て、それぞれのグループの発表をしました。自信を持って堂々と発表する姿を見て、「エンパワーメントってこういうことだ!」と気付きました。今までエンパワーメントなんて本当に実現するのか?と思っていましたが、彼らがそれを目の前で見せてくれたように思います。少しずつ、でも確実に自分たちの手で自分たちの問題に立ち向かっている姿を、日本の子どもたちにもぜひ、知ってもらいたいです。日本から遠く離れた場所だけど、同じ子どもの仲間が苦しんでいること、そしてその問題を自分自身で解決しようとしていることを。

 このSBPNのプロジェクト活動を通して、彼らから知識を得ることの大切さや周りの人に伝えていくことの重要性を教えてもらいました。日本に帰ってきた今、私にできることは・・・自分の目で見て、聞いて、感じてきたことを伝えること!私が家族や友達など身近な人に伝えて、それが水の波紋のように広がり、いつか日本中、世界中の人たちが弱い立場の人々のことを考えられるようになることを祈っています。

写真は、SBPNの学校訪問時、子どもたちが「子どもの権利を学んで良かった事は?」という質問について話し合いをしている時のものです。

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初めまして

2008年09月12日 19時53分06秒 | Weblog
すっかりご無沙汰してしまいました。甲斐田です。今日はこのブログの新しい書き手を紹介します。カンボジア事務所の新しいスタッフです。
どうぞよろしくお願いします。

初めまして。2008年8月よりカンボジア事務所にて勤務しております宇野桜と申します。甲斐田代表理事、カンボジア事務所スタッフの大先輩の近藤さん初め、皆様にご指導頂きながら、少しでも早く、役に立てるように、勉強の毎日です。スタッフの皆様、会員の皆様、その他国際子ども権利センターと私を支えてくださっている皆様、これからどうぞ宜しくお願い致します。

英国大学院国際児童福祉学科で学び、卒業論文で「日本性産業における児童の人身売買」についてまとめました。過去に、タイ・インド・フィリピン・メキシコ・他ヨーロッパ諸国を旅行し、フィリピン・メキシコ・イギリスではボランティア活動をさせて頂いておりました。ボランティア活動繋がりで、日本の広島と東京の児童養護施設においても活動させて頂いていた経験もあります。

現場または現場に近い所で、人身売買・児童労働・性的搾取の被害児童・被害に遭う可能性の高い児童への支援をしたいと思っていた私にとって、シーライツの「貧困削減を通じて人身売買・児童労働・性的搾取防止を目指し、現在被害に遭っている子どもの保護活動を実施する現地NGOへの支援」はとても興味深いものでした。お仕事を頂いて、カンボジアに渡航する際に飛行機の中で「闇の子どもたち」を読んでいて(読んでいない方、是非読んでみてください!映画も公開中です!)実際にはタイの話ですが、漠然としたネガティブ状態でプノンペンの空港に降り立ちました。その日から一カ月経った今、支援を受けている子どもたちの笑顔、将来の夢・勉強への熱意を語る姿を通して、希望はある!と確信しました。現地の人を巻き込みながら、一緒にその希望を大きなものにして行けたらいいなぁと思っています。

初めて渡航したカンボジア、プノンペン、とにかく暑いです。湿気が高いです。こちらへ来てから、汗を沢山かいている事と、湿気が手伝って、肌がきれいになったように感じます。カンボジアで好きな事。雨です。ここでのバケツをひっくり返したような雨の降り方が好きです。行き先の場所を知らないのに「知ってる」というバイクタクシーの態度にはまだ慣れていません。

先日8月26日より9月2日までスタディーツアーが実施されました。初めてのスタディーツアーに、興奮・緊張・失敗・勉強の毎日でしたが無事に終わってホッとしている今日この頃です。子どもの権利について、将来の夢について、勉強への意欲について、子ども達が堂々と語ってくれる姿が今でも印象に残っています。私が子どもの頃に、(中学生だった1994年に日本は子どもの権利条約を批准しました)同じ質問をされて、答えられたかと言われたら、どの質問にも答えられなかったと思います。また、日本の今の子ども達や学生だったら、どのように語るでしょうか。

これから、スタディーツアー中に訪問した現地NGOやプロジェクト地について、参加者の方々の、報告・感想・意見・その他を載せていきたいと思います。また、より多くの方に読んで頂きたいということで、人身売買・児童労働・性的搾取といったトピックに留まらず、オフトピックでカンボジアの生活についても、情報発信していけたら、と思っています。

写真:HCCグッデイセンターにて

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