カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

ブログ移行のお知らせ

2010年07月07日 11時10分26秒 | その他
「シーライツ・カンボジアだより」をご覧の皆様

いつも当サイトをご覧いただきありがとうございます。

この度、当ブログをシーライツ・ホームページへ移行しました。
ご連絡が遅くなり申し訳ございませんでした。

今後も皆様に楽しんでいただけるような、シーライツのカンボジアでの活動や、カンボジアの子どもについての情報発信を
続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

シーライツ・ホームページのブログはこちらからご覧いただけます。
http://www.c-rights.org/2/


特定非営利活動法人 国際子ども権利センター (シーライツ)

「奴隷労働は世界各地の家庭に実在する」と現代的形態の奴隷制に関する国連専門家は語る

2010年02月08日 11時59分15秒 | その他
こんにちは、長島です。
前回、カンボジア国内で家事使用人として、虐待を受けながら働かされていた少女の記事を掲載しました。今回は世界的な視点から、このテーマについて国連の専門家がコメントした記事をご紹介したいと思います。

写真© UNICEF
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詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

「奴隷労働は世界各地の家庭に実在する」と現代的形態の奴隷制に関する国連専門家は語る
2009年12月1日、ジュネーブ

「家事使用人は、重労働、低賃金、および虐待(身体的、精神的、性的)にさいなまれ、事実上奴隷としての扱いを受けています。このような形態の奴隷労働は世界中の家庭に存在しています。」現代的形態の奴隷制に関する国連特別報告官ガルアナ・シャイニアン氏は、奴隷制度廃止国際デーに際して上記のとおり発言した。

「家庭内における隷属状態とは、弱い立場に置かれている個人が身体的および(ないし)精神的強制力によって、賃金なしで働かされ、自由を剥奪され、人間の尊厳に反する状況に置かれることをさします。家事使用人は、保障のない労働形態で、労使関係がきわめて個人的であるため、こうした強制労働の対象になりやすいのです。」とシャイニアン氏は述べた。

世界各地の家事使用人がおかれている、虐待的かつ保障のない労働環境に関して、国連、NGOなどから多くの報告が寄せられている。「家事使用人は、暴力やレイプを受け、監禁状態に追いこまれ、食事をあたえられなかったり、他者との接触を禁じられたりします。これほど非人道的な労働環境にあっても、情報不足や助けを求める機会がないことに加え、経済面の重圧や借金のために職を失うことを恐れ、身動きがとれない場合が多いのです。」と同氏。

児童労働を禁止する条項への抵触を避けるため、家事労働につく少年少女は訓練生と称されるケースが多い。こうした子どもは幼く、家族や友人とも離れていることで、完全に雇用主任せにならざるをえず、とりわけ危険性が高い。

国境を越えて家事使用人として働いている人々は、働いている国での法的身分が不安定であるため、特に弱い立場に置かれている。「家事労働を隠れみのに、主に女性や少女が仕事の実態を知らないまま海外の労働市場に誘い出されています。多くの人にとって、貧困を逃れるには、家族から離れ、時として国境を越えて職を求めるしか術がないのです。滞在資格を個人雇用者任せにする政策、法外なあっせん料、言語の壁、パスポートの没収。こうした問題が家事使用人として働く越境者をさらに人権侵害を受けやすい状況にさらしています。」

特別報告官は、越境労働者の人権および児童労働防止に関する国際文書への署名、批准を各国に求めた。

「家庭内での隷属状態は個人宅で生じていますが、各国政府にはあらゆる人権侵害から個人を守る義務があります。先に述べた、女性と少女を主な標的とした奴隷労働もその対象です。」

2008年5月、国連人権理事会は、ガルアナ・シャイニアン氏を「現代的形態の奴隷制、その原因と結果」の初の特別報告官に任命した。

(2010年1月13日 訳・植田あき恵)

人身売買に関する法の履行、難航

2009年11月10日 11時18分26秒 | その他
こんにちは、長島です。先日掲載した米国務省発表の人身売買レポート記事で、人身売買取締法の執行の問題点について触れましたが、今回も引き続きどのような点が問題視されているか紹介します。

カンボジア政府は1996年に制定された、誘拐・人身売買・搾取規定法に引き続き、昨年新たに全52条からなる人身売買取締法(Law on Suppression Of Human Trafficking and Sexual Exploitation)を制定しました。内容としては、人身売買、買春・売春、わいせつ行為の定義とその処罰に加え、適用される領域も明記しています。第3条では、カンボジア国外で起きた犯罪においても、被害者または加害者がカンボジア人だった場合、同法が適用されると記してあります。人身売買取締法の執行における、国家間の協力と情報共有の重要性について述べた記事をボランティアの方が翻訳して下さったので、ご紹介します。

写真はカンボジアとベトナムの国境 ©シーライツ

子どもの人身売買をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html


カンボジアデイリー紙 2009年7月4-10日ウィークリー・レビュー
カジュサ・コーリン記者

人身売買に関する法の履行、難航

 カンボジアの人身売買防止新法には、国内で起きる人身売買に対処するとともに、国外においても自国民を救済する条項が盛り込まれているのだが、政府とNGOの協力関係が弱く、地域諸国内の連携も不十分であるため、実際の運用は遅々として進んでいないと、担当官や専門家から報告された。

 カンボジアは、人身売買(とりわけ女性と子どもを対象とする)の防止・抑制・処罰を目的とした2007年の国連パレルモ議定書を批准している。法務省イット・ラディ次官によれば、現在は啓発活動や警察・判事・検察官の研修に力を入れているという。
プノンペンでのフォーラムで、「しかし、現場の警官やソーシャルワーカーの研修も依然として必要」と、同氏は通訳を介して発言した。さらに、国家機関と地方機関の協力、ならびに政府と人身売買に取り組むNGO間の対話の改善も不可欠であると付け加えた。

 ラディ氏の見解は、2日間にわたる人身売買対策に関する国家間諮問協議において発表された。人身売買・密輸・労働および商業的な性的搾取に取り組む政府高官ワーキンググループがホストを務めた同会議には、女性省イン・カンタパヴィ大臣や社会福祉省イッチ・サムヘン大臣などを含む政府高官が出席した。タイ、ベトナム、韓国、マレーシアの代表も出席、各国の人身売買取締や諸国間の協力体制の強化について協議した。

 内務省の人身売買取締・青少年保護局のテン・ボラン警察准将は、国内外で人身売買の被害にあうカンボジア人の正確な数字はないが、カンボジアは人身売買の受入れ国であり、送り出し国であり、中継国であるため、適切な法的枠組を持つことが重要であると語った。

 さらに、2008年以降、新しい人身売買防止法は人身売買の概念を明確にし、パレルモ議定書に準拠しているとも説明。この法律により、カンボジア国民が国外で罪を犯し、その犯罪者または被害者がクメール人である場合に、カンボジア政府による起訴が可能になったが、同法の執行にあたっては依然問題が残ると付け加えた。
 同氏は、市民社会と行政側の限られた協力関係や国内の情報管理の未整備などの課題があることを、通訳を介して話した。

 人身売買取締アジア地域プロジェクト司法アドバイザーのアルバート・モスコウィッツ氏は、カンボジアは人身売買に対し適切な取り組みをかなり行っているものの、近隣諸国における磐石な法規制や、犯罪者引渡しや情報共有などを規定する地域条約も必要であると語った。
同氏は、「いったん一様の法律が機能すれば、各国は対話を始められる。必要なのは条約の整備で、警察官や捜査官がその条約履行について知っておかなければならない」と、会議後のインタビューに答えた。
 また、昨今の景気低迷が人身売買問題を助長するおそれがあるため、地域内の協力改善も併せて重要であるとも付け加えた。

 カンボジア、タイ、韓国はパレルモ議定書に署名したが、条約を批准したのはカンボジアのみで、ベトナムやマレーシアは未だ署名していない。これに加え、カンボジアは人身売買取締に関する覚書をタイ(2003年)およびベトナム(2005年)と交換しているが、覚書は法的拘束力を持たないため、各国の対応は足並みを揃えられていないと、子どもへの性的虐待問題に取り組むAPLE(Action Pour Les Enfants子どものための活動)のサムレアン・セイラ所長は話した。

「協力という言葉はあちこちに記されているが、実際はそれほど大きな協力はなされていない。本覚書への対応は極めて限られている」と同氏は言い、例として、情報共有の仕組みがないために、児童虐待や他の犯罪容疑でタイで捜査されている男がカンボジアに移動して同様の犯罪を繰り返したケースが複数あったことを挙げた。
「カンボジアだけでは問題解決はできない。各国間のタイムリーな情報共有が必要である。誰もが問題を認識しているのだから、共に問題解決に取り組むべきだ」とセイラ氏は語った。(翻訳・小味かおる他 2009年9月16日)

スタディーツアー報告⑫カンボジア女性省ジェンダー専門家・中川香須美さんのお話

2008年11月14日 11時34分09秒 | その他
今日はスタディーツアー報告その12、中川香須美さんのお話についての報告です。中川香須美さんは、1997年よりカンボジアに滞在しており、現在はJICAからカンボジア女性省にジェンダー専門家として派遣されています。中川さんには、長年に渡ってシーライツの活動を支えて頂いております。スタディーツアーも終盤に近づいた日の夜、お忙しい中にも関わらず、中川さんの貴重なお時間を頂き、ジェンダーについてのお話を伺いました。その報告をツアー参加者の大塚さんが以下にして下さいます。

ジェンダー(中川香須美さんのお話を聞いて)
大塚朝咲

ビアホールなどで働く女性で、「ビアガール」と呼ばれる人たちがいます。彼女たちはそれぞれのビール業者の服をまとい、接客をします。その際に客からの性的被害があるそうです。しかし店のオーナーも、ビール会社もきちんと対応していないのが現状です。
そもそも「ビアガール」はセックスワーカーだったという考えがあるようです。平気で性を売るイメージがあるそうですが、実際には既婚者やボーイフレンドがいる人たちばかりだそうです。縫製工場より給料も高く、チップやノルマをこなすとさらに高額のお金が手に入るそうですが、やはりイメージが良くないために村に帰ると中傷されることもあります。結局「ビアガール」は守られていないということです。

カンボジアでは妻は夫に尽くせ、という昔の日本のような概念があります。夫は妻を殴ってもいいし、どのように扱おうと勝手であるということです。最近はだいぶ知識も広まりそのような考えも少なくなってきているようですが、子どもに対してはまだあるようです。
また、多くの男性は買春を悪いと思っていません。女性は夫やボーイフレンドがそういう場所へ行くのを嫌だと思っているのに言い出さずにいるのです。

レイプされた女性とは結婚したくない。男性の9割がこう答えています。どんなに好きでも彼女にレイプされた過去があれば結婚しないというのです。女性は「純潔」であるべきだという考えがあるので、レイプされた女性は結婚できなくなる確率が非常に高くなるのです。
また男性が被害にあうこともあります。男性がレイプされた場合、自分は男性であるのにレイプされたという屈辱や恥ずかしさで心に深い傷を負います。同性愛を受け入れられない人が多いので軽蔑されるためです。
最近は少年、先生や僧侶までが少女をレイプするという事態が起こっているそうです。性教育の徹底度の低さがこのような事態を招いています。

その他箇条書
●買春宿の経営者は逮捕できるが、実際買春宿の多くは営業している。
●弁護士・裁判官・政治家の女性率は10%以下とまだまだ少ない。
●男女の収入の違いは3割ほど。
●97年人身売買防止法制定。15歳未満の子供との性行為禁止。08年改訂。実際にはまだ十分に普及していない。

感想
女性の被害についてこんなにも深く考えたことはありませんでした。子どものことを見る機会が多かった今回のツアーで、女性の被害について知れたことがとても新鮮でした。同時に、こんなにも悲惨な目にあっている人がいるということを目の当たりにしてショックもとても大きかったです。貧困家庭ではないのに、ものほしさに援助交際を始めたり性売買に手を染める少女がいることも衝撃的でした。
最近では日本も女性が活躍するようになってきましたが、カンボジアではまだまだ女性の活躍が乏しいようです。ですが大学への進学率も増え、男性の女性への理解度も広まりつつあるのは嬉しいことだと思いました。
お話をして頂いた中川さんの自らカンボジアの若者にインタビューをし、研究されているという行動力に圧倒されました。仕事をする女性の良いお手本ではないかと思います。時間が少なかったのは残念でしたが、いろいろなことを教えて頂けてよかったです。

写真は、中川香須美さんにお話を伺っている時のものです。

中川香須美さん:カンボジア国ジェンダー政策立案・制度強化支援計画プロジェクト
http://project.jica.go.jp/cambodia/0211055E0/index.html

マダガスカルの子どもたちから振り返るカンボジアの子どもたち (2)

2007年11月20日 19時51分21秒 | その他
こんにちは。中川香須美です。今回は、前回に引き続き、マダガスカル旅行で見てきた子どもたちについて紹介します。

子どもがとても多い気がした」と前回に書きました。子どもが外で遊んでいる光景が見られるのはカンボジアと同じですが、カンボジアと異なる点は、10人くらいの子どもが大騒ぎして一緒に遊んでいる風景がいたるところで見られる点です。赤ん坊を背中に負っている子どもたちが、輪になって遊んでいたり、地面に絵を書いて遊んでいたり、大勢で遊んでいる光景がどこでも見られました。土地が平らなところではサッカー場がたくさんあって、サッカーだけでなくラグビーをしている男の子たちもいました。女の子もとても活発で、カンボジアの女の子と違って走り回って遊んでいる様子がとてもほほえましく見えました。それは大人の女性の態度にも表れていて、マダガスカルの女性は胸を張って自信を持って生きているように見えました。あくまで外見での判断でしかありませんが。


マダガスカルの建物は、なんとなくカンボジアと似ている家屋が多い気がしましたが、全面修復が必要と思われるような家屋がほとんどでした。レンガで造られている家屋がほとんどで、どこでレンガを作っているんだろうと見ていると、カンボジアと同じで児童労働によってレンガ運びがなされていました。カンボジアでは、レンガ工場は国道からはちょっと離れたところの広い敷地で大量に生産されるのが一般的で、なかなか工場の中は見えません。児童労働問題の深刻な現場であり、簡単には外から見られないようになっているのだろうと察します。ところがマダガスカルでは、国道からすぐ近くの畑の中に1.5メートル四方くらいのちいさな窯がぽつんと設置してあって、働いている子どもたちが国道からもはっきりと見えます。外見からは5歳くらいにしか見えないような子どもが、大人たちと一緒にレンガを運んでいました。


ストリートチルドレンの問題も、特に都市間を結ぶバスターミナルで頻繁に目にしました。女の子は見かけませんでしたが、男の子が数人で物乞いをしていたり、ごみをあさっている様子が見えました。空き缶を集めている子どもに会ったので、ビールの空き缶を渡すと、持っていた水をその中に入れてビールの残りかすを必死で飲んでいたのにはショックを受けました。カンボジアのようにシンナーをしている子どもは見かけませんでしたが、アルコールはストリートチルドレンの間で問題なのかもしれません。


ほんの短期間の旅行でしたが、生き生きと生活している子どもたちを見て、とっても元気をもらいました。マダガスカルの人たちの生活は、カンボジアの人たちの生活よりもいろいろな意味で大変そうでしたが、子どもたちはとっても自由かつ元気に生活していました。推測ですが、カンボジアのように伝統的な行動規範を小さい時から教えられる習慣がなく、自由な教育が家庭でも学校でもなされているのではないでしょうか。カンボジアの学校教育では、子どもたちの将来の可能性を伸ばすような教育よりも、子どもたちにどういう義務があるかを教える点に重点が置かれています。さらには、マダガスカルでは女性たちが自信を持って胸を張って歩いているように強く感じました。マダガスカルの女性が社会的に抑圧されている、あるいは発言などの自由がない、という印象はまったく受けませんでした。カンボジアでは「若い世代は竹の幹になる」ということわざがあって、年配の世代の行動を若い世代も繰り返していく、という意味があります。これからのカンボジアでは、このことわざに縛られず、子どもたちが自由に可能性を伸ばせるような教育や、社会全体の意識改革が必要だと思います。


マダガスカルの物質面で不足していたり、インフラの整備が遅れたりしている点は、きっとこれから発展していくと思います。将来、またぜひ訪問したい国です。




写真はバスターミナルで物乞いをしていた子どもたち。

ブログ発信者交代のお知らせ

2006年12月08日 11時03分20秒 | その他
みなさま、お久しぶりです。国際子ども権利センター共同代表兼カンボジア事務所スタッフの甲斐田万智子です。

これまで、カンボジア事務所駐在員として1年間の契約で活躍してくださった平野将人さんが退職されるにともなって、これからは、甲斐田とカンボジア滞在歴8年の中川香須美さん(国際子ども権利センター会員)の二人でブログを発信していくことになりました。

 中川さんは、現在、カンボジア弁護士の会(Cambodia Defenders Project)というローカルNGOでスタッフとして働かれる一方で、パニャサストラ大学でジェンダー学・女性学を教えておられます。子どもの権利をテーマにされることもあるそうで、その講義内容や学生さんの様子もこのブログでご紹介していただく予定です。中川さんには、2005年に、国際子ども権利センターがコーディネートしたスタディツアーで、HCCのシェルターで通訳をお願いしたことが何度かありましたが、今年は、3月に実施した国際子ども権利センター主催のスタディツアーの通訳をお願いし、子どもたちがエンパワーされる様子を活き活きと伝えていただきました。また、今年から子ども権利基金(CRF)を通じてカンダール州でおこなっている「学校と地域での子どもの人身売買・性的搾取防止プロジェクト」やHCCを通じてで始めた、「子どもの人身売買、児童労働防止プロジェクト」のモニタリング活動でも通訳をしていただいたおかげで、研修ワークショップの内容や子どもたちの学びの様子をこれまで以上に詳しく知ることができるようになりました。
(詳しくは、会報56号に掲載しております。)

中川さんには、子どもの権利にかかわる出来事や日頃感じていることのほかに、そうした国際子ども権利センターのプロジェクトについても書いていただけたらと思っています。

これまで平野さんのブログを愛読してくださった皆さま、どうもありがとうございました。これまで同様にこれからも「カンボジアだより」をどうぞよろしくお願い致します。

会員になっていただくと会報をお届けできます↓
http://jicrc.org/pc/member/index.html





いただいた質問にお答えします(2)<教育と人身売買の危険の関係>

2006年10月08日 19時36分40秒 | その他

みなさんこんにちは、平野です。前回に続いてこれまでにコメントというかたちでいただいていた質問に答えさせていただきたいと思います。今回は教育機会の増大と人身売買や労働搾取のリスクの低減の関係についてです。

【質問2:なぜ教育を受けないことが人身売買や労働搾取につながるか】

8月31日の記事「子どもや女性の人身売買の実態<望まれる取り組み3>」について9月2日にいただいたコメントです。

初歩的な質問になるのですが、教育を受けないというのが、なぜ人身売買や労働搾取の被害にあう原因になるのでしょうか??

<お答え>
子どもにとって教育を受けない、ということは学校に行っていない、ということであり、それは子どもが労働させられたり出稼ぎに出されたりする可能性を飛躍的に高めます。逆に定期的に学校に行っているということは、家の手伝いがあったり学校のないときに働くといったことがあったとしても、その子どもの安全が最低限保たれていることを意味します。ですから就学年齢の子どもにとっては、「教育を受けている(学校に行っている)」ということ自体が「人身売買されてない、最悪の形態の児童労働に従事していない」ということとイコールに近いわけです。

【おとなになったとしても】

また、就学年齢を過ぎた人たち、おとなと言われる年齢の人たちであっても、教育のあるなしによって人身売買や労働搾取にあう危険性は大きく異なってきます。読み書きや計算ができるのとできないのとでは選べる職業の選択肢が大きく違いますので、できない人々は斡旋業者に全面的に頼らざるをえないような状態に追い込まれがちです。そして不当な労働条件を押し付ける契約書であっても、読み書き計算ができなければ言われるがままにサインしてしまいがちです。また、例えば外国で搾取されてどうにか逃げよう、などということになった場合でも、地図が読めるか、大使館というものの存在を知っているか、「プリーズヘルプミー」という英語を知っているか…などといった事柄がその人の運命を左右しかねません。

教育は自分自身に対する自信や権利意識というものも大きく関係してきます。日本人がカンボジア語の契約書を出されたら、翻訳してくれ、といった要求をして、サインを拒むでしょう。しかし母語の読み書きができない貧しい人々の場合、字が読めないから契約書にサインしない、のではなく、読めないから言われるがままになってしまうことが多いのです。またNGOが人権や労働者の権利についての意識啓発のパンフレットなどを配布しても読めなければ内容がわかりませんし、自分に自信がなければ立ち上がることも困難です。

もちろん世の中には環境に恵まれず、教育を受けたことがなくとも優秀で勇敢な人々もいます。しかし多くの人は家族を中心とした周囲の人たちにケアされ、周囲の人たちから言葉をはじめとしたさまざまなことを学んで成長していきます。これは言い換えれば子どもの権利が守られている状態ということですが、学校教育もその中で大きな重要性を占めています。こうして考えてみると、私たちが当たり前と思っていることの多くが、実は幼児期に受けたケアあるいは学校教育によって初めて得たものであることが感じられます。

※写真は学校で学ぶ子どもたちです。

一人でも多くの子どもが教育を受けられるよう協力してください↓
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質問にお答えします1<児童労働と子どもの権利侵害>

2006年10月05日 08時53分22秒 | その他

みなさんこんにちは、平野です。おかげさまで再開後のカンボジアだよりは以前以上に多くの方々に訪問していただいています。カンボジアの子どもたちの問題に多くの方々が関心を抱いてくださっていることをうれしく思うとともに、訪問してくださるみなさまに御礼申し上げたいと思います。今回と次回はこれまでコメントというかたちでいただいている質問に答えさせていただきたいと思います。いただいてから時間が空いてしまっており申し訳ございません。

【質問1:児童労働によってどのような権利が侵害されるか】

まず8月10日の記事「子どもや女性の人身売買の実態<なぜ出稼ぎに出てしまうのか>」に対して8月31日にいただいているコメントです。

はじめまして、こんにちは。私は今、児童労働によってどんな権利が侵害されているか調べているのですが、どのサイトを見ても教育を受ける権利としか書いていません。
なので、もしよければその他にどのような権利が侵害されているか教えていただけたらと思います。よろしくおねがいします。

<お答え>

このコメントをいただいたその日の記事「子どもや女性の人身売買の実態<望まれる取り組み3>」にあるように、国連子どもの権利条約に定められた子どもの権利には大きく分けて「生存する権利・保護される権利・発達する権利・参加する権利」の4つの分野があります。条約自体は全54条からなるものですが、4つの権利ごとに分けて記述されているわけではありません。ただ全体としてそれらの4つの権利を守るための条項が定められているわけです。教育に関する条項は第28条と第29条に見られますが、これらは通常「発達する権利」に分類されています。

【さまざまな権利を侵害する児童労働】

では次に児童労働が子どものどのような権利を侵害するか、という部分についてですが、実にさまざまな権利を侵害する場合が多いと言えます。例えば子どもが家から遠く離れた外国の危険な建設現場に不法に入国させられ低賃金で働かされていたとします。この子どもに対する権利侵害を見ていくと、第11条(国外不法移総送・不返還の防止)や、第18条の(親の第一次的養育責任と国の援助)、第32条(経済的搾取・有害労働からの保護)そして先ほどの教育関連の条項、とさっと見渡しただけでも数々の権利侵害が発生していることがわかります。そしてこの子どもが雇い主に暴力を受けていたり、強い薬品を使わされてそれに対して文句も言えずに病気になっていたり、病気になっても休みが与えられていなかったりすれば、関係する子どもの権利の条文はさらに増えます。児童労働の現場では往々にしてそのような事態が発生しており、4つの分野の権利全てが侵害されることも多いのです。

今回の記事では国際教育法研究会による日本語訳を参考にさせていただきました。前文を含めた条約全体は「子どもの権利条約ネットワーク」のホームページなどでご覧になれます。http://www6.ocn.ne.jp/~ncrc/doc_1crcj.htm

※写真はタイ国境へとリアカーを引く男の子です。

児童労働のない未来へ↓ 
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縫製工場労働者の生活(2)

2006年09月20日 06時07分08秒 | その他

みなさんこんにちは、平野です。前回はプノンペンの縫製工場で働く女性に聞いた労働条件等についての話をご紹介しました。今回は、児童労働やブローカー、それに村人の彼女らへの視線などについてご紹介したいと思います。聞かせてくれたのは前回と同じく36歳のサニンさんと27歳のクンティアさん(ともに仮名)、それに遊びに来ていたクンティアさんのお母さんです。

【児童労働】

サニン(以下サ)「幼く見える子に年齢を聞いてみたこともありますが、18歳と言いますね。選挙権のカードを持って工場に行くので、子どもはいないはずですが、自己申告ですし、汚職もあるので、実際のところはわかりません

カンボジアでは、18歳未満は縫製工場で勤務できません。しかし、実際は出生登録をしている人が少なく(最近はPlanなどのNGOと政府の活動の成果で増えています)、自己申告の年齢で書類を作れます。また18歳未満であることがわかっても、お金で解決できる場合もあるようです。別の工場勤務経験者の女性は、同僚の20%程度は18歳未満に見えた、と言っていました。

【人身売買やブローカーについて】

クンティア(以下ク)「買春宿に売られてしまう人がいることは聞いたことがあります」
クンティア母(以下母)「義理の妹がブローカーに騙されました。40ドル取られてプノンペンに連れて行かれたのに、仕事もなく帰ってきたのです。ブローカーは知っている人ですが…争いになるだけで、行っても無駄です。家に帰るお金があっただけよかったです」
ク「情報が少ないので、村の人はブローカーの恐ろしさをあまり知りません
母「この子の場合はサニンが先に来ていたので安心して出せました」

これまで8月5日から31日までの記事でお話してきた「村の職業斡旋業者」や「安全な出稼ぎ」に関係する言葉がいくつも含まれていると思います。

【村でどう見られているか】

ク「村にはお盆と正月に帰りますが、子どもの憧れを感じますね。肌が白くなるし、都会のしゃれた服を着ているので。もし村の少女が自分も来たいと私に言ってきたらですか?自分の親戚だったらOKです。面倒を見てあげられるので。でも他の子には勧めません。問題があったときに責任を取れませんので」
サ「私は出稼ぎは私で最後にして欲しいですね。将来の保証も病気のときの保証もありません。勉強して、村で仕事を見つけて欲しいです」

母「娘の仕送りで、豚小屋や家の修理などできて助かっています。4~5ヶ月で70ドルから80ドルもらっています。カンボジアでは伝統的には娘は家にいるものなので、昔は縫製工場に出稼ぎに行くと“悪い娘になった”と言われましたが、今では“じゃああの家はお金がある”と思われるようになりました」

今回と前回で、村で縫製工場が憧れの職業であり、そしてそれに関連して人身売買の被害にあってしまう人がいることが背景を含めて改めてご理解いただけたかと思います。では、騙されることなく縫製工場に職を見つけさえすれば、前回お伝えしたように厳しい住環境だったりあるいは仕事が厳しかったりしても、人身売買の危険からは逃れられるのでしょうか。次回はそのあたりのことについてお話したいと思います。

※写真は前回と同じくみなさんの部屋です(別角度)。

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縫製工場労働者の生活(1)

2006年09月17日 05時28分18秒 | その他

みなさんこんにちは、平野です。ブログ開始時より、縫製工場での仕事を約束されて出稼ぎに出て人身売買の被害にあってしまう人が多いことについて度々触れてきました。縫製産業はカンボジアの輸出高の大半を占め、30万人近い女性を雇用しています。特殊な技能を要求されないこともあり、家族を助けたい貧しい農村部の女性の憧れの職業で、小学生が将来の夢として挙げるくらいです。今回と次回は、実際にプノンペンの縫製工場で働く女性に聞いたお話をご紹介したいと思います。

【3人で共同生活】

話を聞かせてくれたのは36歳のサニンさんと27歳のクンティアさん(ともに仮名)で、リダさんという女性と合計3人で同じ部屋に住んでいます。工場からほど近い長屋のようなところで、日本流に言うと6畳一間くらい、あるいはもっと狭いでしょうか。以下2人の話です。

サニン(以下サ)「私たちはみな親戚でみなスバイリエン州の出身です。私の家は農家なのですが、兄と姉は高校の先生をしています。私も先生になりたかったのですが、高校の卒業試験に通りませんでした。通った人はお金を払ったのでしょう。その後はとりあえずお菓子を売って生活していました」

ク「私は5人兄弟の長女で学校は4年生まで通いました。こちらに来る前は家で農業をしていました」

サ「私は縫製工場で働いて4年になります。クンティアは2年で、働きたいというので紹介しました。もともとはリダがプノンペンに遊びに来て縫製工場で働くようになったことがきっかけです」

ク「家賃は3人で22ドルで、水道とトイレは長屋で共同です。22ドルには水道代電気代が含まれています。工場の斡旋でここに住んでいます」

【縫製工場での労働】

サ「まず自分で技術を身につけます。工場近辺の一般家庭がミシン縫いを教えているので、そこで1時間2000リエル(約60円)のレッスンを4時間受けてから工場のテストを受けました。私の工場には1000人くらいいますね。男性は10人くらいで管理職です」
ク「私の工場は…大きすぎてわかりません(笑)」

サ「勤務は1日8時間で週6日です。基本の賃金が45ドルですが、残業して10時間くらい働くこともあるので60~70ドルの月収ですね」
ク「私の工場は出来高制なのですが、1日2~5ドルなので、結局月給制と同じくらいです。でも出来高のほうが人気みたいです」

サ「組合はありますが、私は特に活動していません。もし働いた時間とお給料が合わないときは自分で事務所に行きます。この仕事に満足ではないですが、他の仕事もないですし。農業よりは楽ですが、管理されているのがイヤです。夫もこちらで警備員をしていますが、スバイリエンに帰りたいですね」

2人「プノンペン生活での楽しみは特にありませんね。休みは家で寝ています」

今回は基本的な情報のご紹介でしたが、現金収入のない農村部の人々にとって60ドルの収入は魅力的です。しかし写真の通りの部屋で3人で生活しており、楽しい都会生活というわけではないようです。次回は村の人々や子どもの縫製工場勤務に対する見方や児童労働、ブローカーなどについて聞いたお話をご紹介したいと思います。

※写真は許可をいただいて撮影したお二人の部屋です。

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