カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

身近に起きた外国人による子どもの性的搾取

2006年12月13日 13時45分02秒 | カンボジアの子ども
はじめまして。中川香須美です。

2006年5月および7月に連続して、私の勤務するプノンペンにある大学の外国人教員2名がカンボジアの子どもを性的虐待した容疑で逮捕されました。どちらのケースも、少女買春が繰り返された極めて,悪質な犯罪でした。子どもの性的搾取の事件は時々新聞紙上をにぎわすことはありますが、身近な同僚が連続して摘発されたことによって、改めて問題の深刻さを考えさせられました。この問題について、報告させていただきたいと思います。

本年5月に摘発されたアメリカ人教員は、かつてアメリカ海軍勤務時代に日本の呉に一年勤務したことがありました。その時の経験からとても日本びいきであった彼は、大学では唯一の日本人教員である私と親しい間柄でした。最後に私が彼と会った時、彼が結婚した(結婚式のみで未入籍)未成年のカンボジア人女性と、結局破局したという会話をしたことが忘れられません。

この元同僚の当時の結婚相手は、彼がプノンペンのバーで働いていた少女を1万円程度で買受けし、一緒に生活していた17歳くらいの少女でした。彼は海軍時代に受けた後遺症から軽い障害を負っていたらしく、一緒に生活して面倒を見てくれる人が必要であると私に語っていました。身長150センチ・40キロ未満としか判断できないようなその少女は、「将来学校の先生になりたい」と私に数回会った際に語るとともに、外国人と一緒に暮らすことで最低限の住居および食生活が確保されるとカンボジア語で話していました。彼女の英語能力はあまり高くなく、彼との会話も十分ではありませんでした。私は、彼女が彼と暮らすようになったきっかけや、生活状況を聞いていくうちに、「漠然とした不安感」が生まれ、出来るだけその少女と会って生活に関しての情報を得るようにしていました。彼女は極貧の家庭出身であり、親戚がマレーシアで労働搾取にあっていて何らかの救済手段がないかと尋ねられ、私からアドバイスをしたこともありました。プライバシーにかかわるためと私の記憶が不正確であるため、彼女から具体的に彼との関係につき何を聞いたかを説明することは控えますが、子どもを性的虐待して彼が逮捕された時には「ついに捕まった」と思ったのが本音でした。

最後にこのアメリカ人の元同僚に会った際の話によると、結局は彼女が一方的に結婚生活を放棄したとのことでした。経済格差のある男女が夫婦として一緒に生活する大変さを、彼は私に淡々と語りました。なお、私から見て彼の教員としてのプロフェッショナリズムは高く、学校経営にも大変熱心でした。教授会でもいかに大学の運営を向上させる必要があるか、理論的かつ簡潔に熱弁していました。また、担当する講義では1クラス150人程度が対象であったものの、一人一人の学生に多くの時間を費やして対応し、新人教員の鏡であるほど優秀かつ熱心な職員でした。

アメリカ人の元同僚に続いて8月に逮捕された教員は、英語教師のドイツ人でした。彼は私の勤務する大学ですでに3年ほど教鞭をとっており、50人以上いる英語教員の中ではトップスリーに入る人気教員でした。非常に真面目で生徒からの信頼も厚く、子どもの性的搾取の容疑で逮捕された際に大学側では「誰も信じられなかった」とのことです。私は被告人を個人的に知りませんが、多くの学生にもショックを与えるほどの人気の高い教員であったようです。当地の新聞記事によれば、「彼の家から女の子の叫び声が毎夜聞こえて・・・」とあるものの、大学職員は誰も信じることの出来ないほど折り目正しいまじめな教員でした。

私は人権擁護団体の職員であり、業務上多くの性的搾取者の被告人の資料や証拠品(写真)に目を通すことがあっても、やはり身近な人間が逮捕されることはショックでした。カンボジアの現行法によって、子どもの性的搾取の加害者は最高20年の実刑判決の処罰を受ける可能性があります。大学では、容疑者2人ともに優秀かつ人気の高かった教員であったこともあり、同僚として非常に残念です。他方、彼らは、悪質極まりない犯罪を犯した加害者でもあります。今後、大学の教員が子どもを性的虐待しないよう、取り組まなければならないと大学側では対応策を練っているところです。

写真は、逮捕された教員がかつて所属していた大学の授業風景です。本文とは一切関係ありません。


子どもの性的搾取をなくすために
http://www.jicrc.org/pc/member/index.html








ブログ発信者交代のお知らせ

2006年12月08日 11時03分20秒 | その他
みなさま、お久しぶりです。国際子ども権利センター共同代表兼カンボジア事務所スタッフの甲斐田万智子です。

これまで、カンボジア事務所駐在員として1年間の契約で活躍してくださった平野将人さんが退職されるにともなって、これからは、甲斐田とカンボジア滞在歴8年の中川香須美さん(国際子ども権利センター会員)の二人でブログを発信していくことになりました。

 中川さんは、現在、カンボジア弁護士の会(Cambodia Defenders Project)というローカルNGOでスタッフとして働かれる一方で、パニャサストラ大学でジェンダー学・女性学を教えておられます。子どもの権利をテーマにされることもあるそうで、その講義内容や学生さんの様子もこのブログでご紹介していただく予定です。中川さんには、2005年に、国際子ども権利センターがコーディネートしたスタディツアーで、HCCのシェルターで通訳をお願いしたことが何度かありましたが、今年は、3月に実施した国際子ども権利センター主催のスタディツアーの通訳をお願いし、子どもたちがエンパワーされる様子を活き活きと伝えていただきました。また、今年から子ども権利基金(CRF)を通じてカンダール州でおこなっている「学校と地域での子どもの人身売買・性的搾取防止プロジェクト」やHCCを通じてで始めた、「子どもの人身売買、児童労働防止プロジェクト」のモニタリング活動でも通訳をしていただいたおかげで、研修ワークショップの内容や子どもたちの学びの様子をこれまで以上に詳しく知ることができるようになりました。
(詳しくは、会報56号に掲載しております。)

中川さんには、子どもの権利にかかわる出来事や日頃感じていることのほかに、そうした国際子ども権利センターのプロジェクトについても書いていただけたらと思っています。

これまで平野さんのブログを愛読してくださった皆さま、どうもありがとうございました。これまで同様にこれからも「カンボジアだより」をどうぞよろしくお願い致します。

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