カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

女性たちに「立ち上がって闘おう」と伝えている ~ソマリーさんインタビュー記事 その2

2009年09月25日 13時10分03秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

前回に引き続き、シーライツが支援するアフェシップの創設者であるソマリー・マムさんに関する記事を会員の小味さんに翻訳していただきましたのでお届けします。今回はソマリーさんが、人身売買の被害に遭った女性たちをどのようにエンパワーしようとしているか、そして、彼女がドナーから支援を得るにあたってどのような苦労をしているかが描かれています。

8月にシーライツ主催のスタディツアーでアフェシップの施設の保育室(シーライツ支援)を訪問し、保育室を利用しながら職業訓練を受けている若いお母さんたちと交流をもちました。短い交流でしたが、訪問した私たちが、体験を乗り越えて力強く生きていこうとしている彼女たちを応援したいという気持ちが伝わったのか、別れるとき、女性たちは笑顔と涙で見送ってくれて、私たちもとても励まされました。

写真はそのときの様子です。

AFESIPのトムディセンターで保育サービスを利用する女性たち。右は保育士のニエットさん。ニエットさんはアフェシップの職員と結婚し、もうすぐお子さんが生まれます。©C-Rights

困難の中から立ち上がってきたヒーロー~ソマリー・マムとのインタビュー

An unlikely hero: Interview with Somaly Mam
2009年6月5日
INSEAD(訳注:フランスとシンガポールにキャンパスを持つビジネススクール・大学院)
出典:UNIAP Cambodia News Digest May 29,2009


ソマリー・マムは、努力家で、精力的で、影響力のある、疲れを知らないリーダーだ。これが、タイム誌の「世界に最も影響を与えた100人」さらにCNNヒーローに選ばれた理由でもある。
ソマリー・マムは、ヒーローっぽくない。彼女自身が人身売買の被害者で、12歳の時にカンボジアの買春宿に売られた。約10年後、あるフランス人の援助関係者の助けで逃げ出し、1993年にパリへ渡った。2年後、カンボジアに帰国して、「Agir Pour les Femmes en Situation Precaire (AFESIP)-困難な状況に置かれた女性のための活動」を創立した。39歳の今、彼女とその団体は、カンボジアや他のアジア諸国で、何千人もの子どもや女性たちを救出し、教育を保障し、職業訓練を提供している。世界中で、人身売買に対するキャンペーンも実施している。先日、ソマリー・マムはシンガポールのINSEADのアジア・キャンパスにおける講演会に先立って、'INSEAD Knowledge'(訳注:動画やニュースレターを配信しているサイト)のインタビューに応じた。


「私たちは(人身売買の被害者に)どうやったら立ち上がって闘えるのかを説明します。彼女たちに、立ち上がって世界中に希望があることを示そう、と話しています。」数々の困難を経験したにも関わらず、ソマリー・マムは希望に溢れている。彼女が最も苛立つことは、汚職への対処である。人身売買業者と組織だった犯罪グループは、裁判所や警察に影響を及ぼし、彼女の仕事を振り出しに戻してしまう。「彼らはお金があり、何でもお金で解決できてしまう」と言う。

マムの団体は、草の根レベルで活動し、人身売買被害者である女性や子どもたちを助けている。彼女は、地球規模の問題解決には、ローカルNGOと大きな国際機関の双方の協働が必要だと信じてはいるが、その調整には、行動する時間よりもはるかに話し合いの時間が多いと感じている。マムの時間の過ごし方は、大きなNGO職員の過ごし方とは違う。彼女にとっては一日一日が貴重だが、大きなNGOにとっては、1日も1年もそんなに長い時間ととらえられていない。「買春宿にいれば、1日はとても長いのです。」とマムは言う。

AFESIPはお金も必要だけれど、同時に、世界全体を啓発するボランティアや援助も必要としている。「どの女性もどの子どもも虐待されたくない」と彼女は言う。「もし風俗街で彼女たちとすれ違っても、見下さないでほしい。」それ以上に、人身売買との闘いで必要なのは、男性への教育だろう。「本当にこの問題を終わりにしたかったら、需要をなくさなければなりません。」

AFESIPによって救出された女性や子どもたちは、安心できる居場所、教育、職業訓練を得てやっと、永久に買春宿と縁を切ることができる。「彼女たちに法律家になってほしい。自らの大変な経験をふまえて、決して買収されることはないでしょう。」とマムは言う。
彼女は、Lexis-Nexisが、財団に貢献してくれたことを評価する。資金支援だけでなく、助成金申請書作成の専門技術、技術支援、専門家たちの時間も提供してくれた。ある中堅管理職は、仕事時間の半分を彼女のサポートに費やしてくれたそうだ。

マムと彼女の団体は、世界的なセレブ、アンジェリーナ・ジョリーやスーザン・サランドンなどからの世間の注目を引くサポートも受けている。こうした人の影響力と人脈は、多くの人の関心を集めるために役立つと、マムは言う。「私が欲しいのはお金だけではなく、みなさんに来てもらって、私の世界を見て欲しいのです。この世界はとても底が深くて、私は5千人の少女を救出したけれども、まだまだたくさんいるんです。」そして、より小さな子どもが人身売買業者に狙われるようになってきていると、マムは付け加える。

ドナーや援助関係者への対応は、死の恐怖より頭の痛いことだと、マムは言う。「分をわきまえて話さなければならないけど、私はそういう教育を受けることができませんでした。」「彼らに私を理解してもらうことは大変骨が折れますが、これは私の課題です。」
「私のゴール? 子どもたちを助けて幸せにすること」カンボジアの現場で、マムは少女たちを少しずつ、でも着実に助けている。

(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)

就任のご挨拶

2009年09月18日 23時01分31秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、カンボジア事務所長の筒井です。今日はいいお知らせがあります。ついに、念願の新しい駐在員がカンボジア事務所に着任しました!さっそく、彼女に自己紹介を始めてもらいたいと思います。これまでは、ブログの更新が滞っていましたが、今後は2人で協力して、定期的更新を目指します!

初めまして。8月末よりカンボジア事務所に赴任いたしました、長島千野(ながしま・ちや)と申します。今後、筒井と一緒に「カンボジアだより」を担当させていただきます。それでは簡単に自己紹介させていただきます。

米国の大学を卒業後、日本に帰国して半導体の企業で約5年働いておりました。そのかたわら、貧困・人権問題などに関心があり、自分に出来る些細なことでも、と思いNGOでファンドレイジング等のボランティアを行っておりました。シーライツで仕事をする決意をした理由は、もっと多くの時間を「大切」と思えることに費やしたい、企業で働いている自分は、自分らしさに欠けるという思いが積み重なったからです。児童労働反対世界デ-のイベントでシーライツと出会い、子どもの人身売買、性的搾取、児童労働などの被害を出さないようにする「予防」の活動の方に力を入れていること、また日本人が直接支援するのでなく、カンボジアの文化を良く理解している現地パートナーNGOと協働でプロジェクトを行っていることに共感し、現地で活動したいという気持ちから、カンボジア事務所で働こうと思いました。 カンボジアでの性的搾取の加害者に多くの日本人がいることも、シーライツのカンボジアの活動に関わりたいと強い思いを抱いた理由の一つです。

プロジェクト地やパートナーNGOを実際に訪問し、頑張っている子どもたちやパートナーNGOのスタッフの姿を見たとき、本当に嬉しく思いました!子どもの人身売買、性的搾取、児童労働を予防するネットワークメンバーの子どもたちは、自分自身とコミュニティーの人びとを守ろうと一所懸命活動していて、その姿がとても誇らしげでした。そんな子どもたちと周りの大人たちの力になれるように、頑張っていきたいです。

さて、カンボジアに来て早1ヶ月が経ちました。私は、米国とヨーロッパ諸国しか行ったことがなかったので、来る前は何かと不安だったのですが、不思議なことに着いた瞬間からあまり違和感がありませんでした。街は想像していたより栄えていて、交通手段(バイクタクシーとバイクに2輪座席がついたトゥクトゥクしかないので)以外はあまり不便さを感じません。そして会う人ほぼ全員(特にカンボジア人)に、「カンボジア人だと思った!」と言われ、いつもクメール語で話し掛けられ、なんだかここが自分の祖国のような気さえしてきた今日この頃です。

皆さまには、今後より多くの現地の情報配信を行っていけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。



買春の被害にあった少女たちを救出 ~ソマリーさん記事その1

2009年09月15日 18時52分41秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
ボイス・オブ・アメリカ(カンボジア語ラジオ放送)のウェブサイトに掲載されたソマリー・マムさん(シーライツが支援するアフェシップの創設者)に関する記事を会員の小味さんが訳してくださったのでご紹介します。

先日、アフェシップのHIV/エイズ教育の担当スタッフに同行して、セックスワーカーたちの女性に会ったのですが、ピアエデュケーター(同じ仕事、状況をもつ仲間に教育をする人のこと。ほとんどがボランティア)の女性が誇りをもって活動をしている姿に胸を打たれました。

昨年、制定された新しい人身売買禁止法がセックスワーカーの女性たちに及ぼしている影響、人身売買の被害にあった少女たちの置かれている状況、アフェシップの活動、少女たちに対するソマリーさんの思いをみなさんに知っていただければと思います。

写真はHIV/エイズ教育を行うソマリーさんの様子です。
©AFESIP

子ども買春をなくすための活動を支援してください。詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

セックスワーカーの救出、そして保護
Rescued Sex Workers Find Refuge
By Ker Yann, VOA Khmer
2009年5月21日

カー・ヤン VOAクメール(*Voice Of Americaカンボジア語放送)
出典:http://www.voanews.com/Khmer/archive/2009-05/2009-05-21-voa1.cfm

プノンペンのセックスワーカーはプノンペンの路上でも客をとっている。大規模な不法性産業を規制する近年のカンボジア警察当局の努力にも関わらず、このビジネスは盛んになる一方だ。閉鎖される買春宿がある一方、新たに違法な宿が営業を始めている。 カンボジアの法律では、売春は違法と明確に定義されていないが、性産業に難色を示す当局により、定期的に路上摘発が実施されている(訳注:公共の場での客引きは違法行為であるため)。カンボジアでは毎年、何百人もの少女たちが人身売買業者に誘拐され、買春宿に売られている。彼女たちの多くは長年の精神的・肉体的苦痛に耐え、1日に20人以上もの客を取らされる。

 同時に、セックスワーカーの増加は、ビアガーデンやカラオケクラブやバーにまで及んでいる。「バーガール」と呼ばれる女性たちの中には、貧困から脱却するためにセックスワークを選ぶ人たちもいるが、買春宿を拠点としたセックスワーカーの大多数は人身売買の被害者だ。

 自身も人身売買の被害者であったソマリー・マムが設立した団体(AFESIPアフェシップ)は、人身売買の被害者の救出と社会復帰を支援している。マムは、カンボジアの大規模な人身売買に関わる組織だった犯罪ネットワークや公務員の汚職を非難する。「犯罪組織のネットワークにより、人身売買のシステムが構築されました。ブローカーは村から村へ少女を探しに行きます。結婚ということで連れ出したり、プノンペンで高収入のいい仕事があると約束したりして、少女達をそそのかします。被害者の多くは、あまり教育を受けていないので、罠に陥り、都市に来ると、買春宿に閉じ込められるんです。」とマムは話す。

 ソマリー・マムの団体は、1996年の設立以来、カンボジア全土の買春宿から、4千人を越える性的奴隷にさせられた少女や女性たちを救出してきた。現在は3つのセンターで、250人を超える少女たちを保護している。半数以上は18歳以下で、多くの少女たちが長年にわたる買春宿での拷問や虐待に耐えた。

 ヴァン・シナーは、13歳の時にどのようにベトナムから誘い出され、カンボジアの売春宿に閉じ込められたかを泣きながら話す。「何度も叩かれ、多くの客を取らなければなりませんでした。拒否したら、電気ショックで拷問されるか、辛い唐辛子を食べさせられました。地下室に閉じ込められ、1日に15人から20人の客を取らないと、叩きのめされ、さらに拷問されました。」

 ソマリー・マムは、「買春宿は、生き地獄」と自らも耐えた長年の虐待を振り返る。

「苛酷な経験や劣悪な状況下で生きなくてはならなくても、あなたが悪いという意味ではないんです。私たちは、自らのおぞましい経験と向き合って、それらを何か前向きなことへと転化しなければならないけれども、自らの身に起こったことを決して忘れることはできません。いつも記憶がよみがえってきます。私たちは多くの犠牲者を救出しなければなりませんが、私たちも彼女らの愛に救われるのです。」

 セックスワークに巻き込まれた女性は、はかりしれない精神的・肉体的な障害を抱える。AIDSやその他の性感染症などと同様に、多くの被害者が心理的にも傷ついている。マ・ライ女医は、ほとんどの少女には長期セラピーが必要と話す。

「センターに来るほとんどの少女が深刻な精神障害を抱えています。すぐ怒ったり、頻繁に叫んだり、とにかく死にたがったりします。こうしたとき、彼女たちの体や命は大切な価値あるものだと話して勇気づける定期的なカウンセリングを行なっています。そうしたカウンセリングは非常に多くの時間を要します。」

ソマリー・マムのセンターは、少女たちが新しい友だちをつくり、失った子ども時代を取り戻せるよう愛らしい環境を整えている。精神面と肉体的な傷の両方から癒すように、ソマリー・マムの団体では、さらなる教育と職業訓練を行なっている。
少女たちがセンターを離れた後に就職できるよう、正規クラスに併行して職業訓練も提供されている。しかし、主たる目標は、少女たちが自らの人生に意味を見出すこと、明るい未来を描くことを教えることである。人身売買は、世界で第3位の収益性の高い犯罪ビジネス(profitable)で、今日では大西洋三角貿易(奴隷貿易)時代の最盛時よりも多くの奴隷が存在する。ここにいる少女たちは幸運を掴んだ一握りにすぎず、活動の輪を広げて性産業を撲滅に追い込まなければ、カンボジアや世界中で何千もの少女たちが待ちうける運命から逃れられない。
(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

2009年09月11日 13時53分40秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

こんにちは。甲斐田です。長らく更新が滞っていてすみませんでした。
近々ごあいさつさせていただきますが、カンボジア事務所に新しくスタッフが入りましたので、これからは、頻繁に更新できるようになると思います。

カンボジアで子どもたちを性的搾取から守る努力は、政府、NGOによって続けられていますが、残念ながら、子どもの性的搾取の事件は後を絶ちません。カンボジアでは、近年、性的搾取をするために養子縁組という手段が使われることがあるのですが、最近も、スウェーデン人男性がその手口を使おうとして逮捕された事件がありました。その事件についての記事がプノンペンポスト2009年5月11日に掲載され、シーライツ会員の小味かおるさんに訳していただきましたので、ご紹介します。

なお、これから、子どもの性的搾取にかかわる記事を随時掲載していく予定です。

近々、この逮捕されていた男性が住んでいたとされる同じ場所のシアヌークビル(カンボジアのビーチリゾート)で数人の子どもの裸の写真を撮って逮捕された日本人についての記事も掲載します。

写真は多くの外国人が訪れるビーチ、シアヌークビル
出所:http://www.sihanoukville-cambodia.com/aboutbottomstuff/pics.html
写真は本文とは関係がありません。


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

プノンペンポスト2009年5月11日
チュラン・チャムロウン記者
Swede charged with underage sex crimes
The Phnom Penh Post: May 11, 2009


62歳男性は1981年スウェーデンで幼児性的虐待の罪で調査されていた――人身売買局員談。

プノンペン市裁判所はスウェーデン国籍の62歳男性を子どもに対する性犯罪の罪で訴追した。ヨハン・アブラヒム・エスコリは、有罪となれば10年の禁固刑となる。
プノンペン市の人身売買対策青少年保護局ケオ・ティア局長は、エスコリ容疑者は猥褻行為と少年3人との性交渉の2つの罪に問われていると語った(訳注:15歳未満の子どもとの性行為はカンボジアの人身売買禁止法で犯罪と規定されている)。

容疑者は水曜日、自分の養子と主張する9歳のカンボジア少年と部屋を共にしていたプノンペン市アンコール・インターナショナル・ホテルにて逮捕された、と局長は話し、「容疑者は、猥褻行為と未成年との性交渉の2つの罪で拘留中と聞いています」。

エスコリは1981年にスウェーデンで子どもへの性犯罪で告訴されたが証拠不十分で禁固刑にならなかった、また、2006年末にはカンボジアで3人の少年に対する犯罪が疑われていたと、局長は付け加えた。

フランスの子ども保護NGOのAction Pour Les Enfants(APLE=子どものための行動)のカンボジア事務所長サムレアン・セイラ氏は、逮捕前にエスコリは5人の少年と暮らしていたと語った。

APLEは、彼が定期的に複数の少年を連れてレストランへ来るという通報を受けて、2007年から彼のシハヌークビルの自宅を見張っていた。

「エスコリ容疑者は2007年に地元警察に尋問されたが逮捕には至らなかった」とセイラ氏は話し、昨年、彼が少年の養子縁組を申請したが当局の認可が得られず却下された、とも続けた。

「この男は一番好きな9歳の少年を養子にするために母親への依頼書に記入しました。これは他の外国人がとってきた手口で、母親は警察や地元NGOからの疑いを避けるために500ドルと引き換えに承諾しました」とセイラ氏は話している。