みなさんこんにちは、平野です。
6日連続の投稿です。昨日引き続き、11月7日の元女性省大臣ムー・ソクアさん囲む会直前企画として、彼女の激動に満ちた半生のインタビューをお届けします。3回連載の最終回です。今回のシリーズは、これまであまり人身売買やカンボジアに縁がなかった若い人達にも広く宣伝したのですが、昨日いただいたコメントを含め、さまざまな方から熱い反響をいただいております。今回も、ソクアさんの強さと優しさに圧倒されます。
出所:アジア女性資料センター2005年3月カンボジアスタディーツアー資料
翻訳:裏川久美子、岩崎久美子
原文:
http://www.globalfundforwomen.org/work/trafficking/garden-of-evil.html
邪悪の園
発行所 O・オプラマガジン社 著者 Carol Mithers、2004
※小見出しは各パラグラフの最初の一文。太字は筆者。
【ソクアは、また地方の村に住む人々に直接この問題を持っていく。】
「田んぼ、穴だらけの道路、ほこりにまみれて移動して回ります」とソクアは語る。「ひとつの村はそれぞれ100家族ぐらいでしょう。村人たちは私たちが映画を上映するところまで歩いてきます。私は、いつも聴衆の中からひとりの老婦人を選びます。『おばあさん、あなたのイアリングはとてもきれいですね! そして古いですね! どこで手に入れたのですか?』にっこり笑っておばあさんは答えるでしょう。『これは、40年前結婚した時のものです』」
『値打ちはどのぐらいですか?』
『うーん、わかりません。売ろうと思ったことがないので。』
『どうしてですか? おばあさん、どうして戦争中でもどんなときでも手放さなかったのですか?』
『なぜって、これはとてもかけがえのないものだからですよ、おじょうさん』
「そこなんです。老婦人のことがわかりました。そこでわたしは尋ねます。『他にかけがえのないものはなんですか?』と。『あなたの子どもたちはかけがえのないものです。あなたの娘さんたちをよそに行くままにすれば、家族の財産を失うことになるでしょう。娘さんたちはあなたがたの宝物です。愛してあげてください。教育を受けさせてください。守ってあげてください』。私が行く先々で、女性たちがやって来て言います。『今、あなたのおっしゃる意味がわかりました。娘を探さなくては!』そんな時、私たちは、情報を流すよう努めます。おそらくその少女たちの10パーセントは私たちが見つけ出しています」
【ソクアはまた官公庁内の汚職に対しはっきり異を唱えている。】
「商業省、労働省、法務省、警察の中の汚職に対してです。数千もの児童が事実上都会の真ん中で売春宿にいて、外国のマスコミがそれを記事に取り上げているとき、一国の首相が知らないということがあるでしょうか」。真実をありのままに言うと、人身売買業者は犯罪組織の一味である可能性があるから、多くの土地では地方警察や村長らが関係していて、権力者たちはそこから利益を得ている、とソクアは語る。[女性の人身売買反対連合(CATW) の共同代表Janice Raymond氏によれば、性的人身売買は世界全体で年間約100億ドルにのぼる。カンボジアの場合は確たる数字がないが、国際労働機関(ILO)の推定によると、マレーシアやタイのような国々では、性産業は国内総生産(GDP)の2~14%を占めている。]
ソクアは、カンボジアの売春宿の顧客であることが判明している外国人小児性愛者のリストを作った。その目的は、彼らの入国を阻むこと、すでに入国している場合は国外追放させることである。ソクアによると、国外退去の措置を取ったあるアメリカ人は、何百人ものカンボジア人の子どもを使ってポルノのウエブサイトを運営していたという。
五月、ソクアはタイとの交渉に仲介の労をとり、人身売買されたカンボジア人を不法移
民として収監するよりむしろ故郷へ戻すことができるようにした。ソクアはベトナムとも同様の協定をかわしている。たとえ成果は小さく見えとも、家族にとっては小さくない。「つい最近、7人の少女たちを家へ戻すことができました。数人は16歳未満でした。私も空港へ行きました。そして母親たちと、その涙と痛みを目の当たりにしました。母親たちは自分の子をしっかり捕まえて放しません。私も母親ですからとてもつらいです。自責の念と純真さの喪失、何ものをもってしても元には戻せません。しかも、これで一件落着というわけではないのです。この少女たちは、どのような感情的や心理的サポートが得られるでしょうか? 何もありません。ゼロです。少女たちは強くなって人生を歩まなければなりません。ですから『女性はかけがえのない宝物』であるというところに立ち返るのです。たとえそういう悲劇が少女たちに起こった後でさえ、今まで通り少女たちはかけがえのないものなのですから」
ソクアの作戦の仕上げは、女性たちに経済力を持たせて売買業者に対抗する力をつけようというものだ。「ほかに生きる道がなければ、人身売買はなくなりません」とソクアは言う。「現在およそ500万人の男性・女性・子どもたちが1日50セント足らずの稼ぎしかありません。そこで、若い女性と少女の85%が、仕事を求めて自分から村を出ていきます。おそらくそのうち15%は仕事を見つけるでしょう。では残りの人はどこに行くと思います?飢えに直面した女性たちは自分の子どもを性産業に売るのです」。ソクアはこうした人たちを断罪しようとはしない。「まず『娘を行かせたとき、親たちに選択の自由はあったのか』と自分に問いかける必要があります。選択の余地はなかったと思うのです。私たちは、小さいけれども優れたプログラムを村のレベルで立ち上げました。まず女性たちがカートを1台買うために100ドル借ります。次に地元で作った製品を旅行者に売ります。スローガンは『女性にチャンスを』です」。ソクアはためらいを見せる。「たまらなくなるのは、彼女たちが仕事を始めるのを助ける資金が十分作れないときです」
【密売者や警察、自分の国の政府さえも批判しようとするソクアの意志は大きなリスクを伴う。】
まず、電話が盗聴される。渡米したときですら、絶えず振り返って警戒することになるという。自分の活動のために殺される可能性は「考えたくないもの」だ。絶えず人の悲惨さのただ中にいれば、精神的にも打撃を受ける。「そんなときは断ち切らなければ」とソクア。「荷が重すぎると感じるときはシャワーを浴びるのよ。うんと熱いお湯をどんどん流して、ものすごい冷水にして、また熱々のお湯にして、泣いて泣いて、泣くんです。人前で涙を見せるわけにはいきませんから。男性に泣き顔を見られたら言われますよ。『見てごらん、大臣だって女は泣くんだよ。女は本当に弱いねぇ』って。でも活動を続けなければ寝られません。子どもたちに会わせる顔がないと思うんです」(了)
※連載はこれで終了となります。明日のソクアさんを囲む会の模様は、近日国際子ども権利センターのホームページでお伝えする予定ですので、是非そちらもご覧下さい。 http//jicrc.org
写真出所:http://faculty.law.ubc.ca/cfls/files_cfls/pics/picture%20page.htm
6日連続の投稿です。昨日引き続き、11月7日の元女性省大臣ムー・ソクアさん囲む会直前企画として、彼女の激動に満ちた半生のインタビューをお届けします。3回連載の最終回です。今回のシリーズは、これまであまり人身売買やカンボジアに縁がなかった若い人達にも広く宣伝したのですが、昨日いただいたコメントを含め、さまざまな方から熱い反響をいただいております。今回も、ソクアさんの強さと優しさに圧倒されます。
出所:アジア女性資料センター2005年3月カンボジアスタディーツアー資料
翻訳:裏川久美子、岩崎久美子
原文:
http://www.globalfundforwomen.org/work/trafficking/garden-of-evil.html
邪悪の園
発行所 O・オプラマガジン社 著者 Carol Mithers、2004
※小見出しは各パラグラフの最初の一文。太字は筆者。
【ソクアは、また地方の村に住む人々に直接この問題を持っていく。】
「田んぼ、穴だらけの道路、ほこりにまみれて移動して回ります」とソクアは語る。「ひとつの村はそれぞれ100家族ぐらいでしょう。村人たちは私たちが映画を上映するところまで歩いてきます。私は、いつも聴衆の中からひとりの老婦人を選びます。『おばあさん、あなたのイアリングはとてもきれいですね! そして古いですね! どこで手に入れたのですか?』にっこり笑っておばあさんは答えるでしょう。『これは、40年前結婚した時のものです』」
『値打ちはどのぐらいですか?』
『うーん、わかりません。売ろうと思ったことがないので。』
『どうしてですか? おばあさん、どうして戦争中でもどんなときでも手放さなかったのですか?』
『なぜって、これはとてもかけがえのないものだからですよ、おじょうさん』
「そこなんです。老婦人のことがわかりました。そこでわたしは尋ねます。『他にかけがえのないものはなんですか?』と。『あなたの子どもたちはかけがえのないものです。あなたの娘さんたちをよそに行くままにすれば、家族の財産を失うことになるでしょう。娘さんたちはあなたがたの宝物です。愛してあげてください。教育を受けさせてください。守ってあげてください』。私が行く先々で、女性たちがやって来て言います。『今、あなたのおっしゃる意味がわかりました。娘を探さなくては!』そんな時、私たちは、情報を流すよう努めます。おそらくその少女たちの10パーセントは私たちが見つけ出しています」
【ソクアはまた官公庁内の汚職に対しはっきり異を唱えている。】
「商業省、労働省、法務省、警察の中の汚職に対してです。数千もの児童が事実上都会の真ん中で売春宿にいて、外国のマスコミがそれを記事に取り上げているとき、一国の首相が知らないということがあるでしょうか」。真実をありのままに言うと、人身売買業者は犯罪組織の一味である可能性があるから、多くの土地では地方警察や村長らが関係していて、権力者たちはそこから利益を得ている、とソクアは語る。[女性の人身売買反対連合(CATW) の共同代表Janice Raymond氏によれば、性的人身売買は世界全体で年間約100億ドルにのぼる。カンボジアの場合は確たる数字がないが、国際労働機関(ILO)の推定によると、マレーシアやタイのような国々では、性産業は国内総生産(GDP)の2~14%を占めている。]
ソクアは、カンボジアの売春宿の顧客であることが判明している外国人小児性愛者のリストを作った。その目的は、彼らの入国を阻むこと、すでに入国している場合は国外追放させることである。ソクアによると、国外退去の措置を取ったあるアメリカ人は、何百人ものカンボジア人の子どもを使ってポルノのウエブサイトを運営していたという。
五月、ソクアはタイとの交渉に仲介の労をとり、人身売買されたカンボジア人を不法移
民として収監するよりむしろ故郷へ戻すことができるようにした。ソクアはベトナムとも同様の協定をかわしている。たとえ成果は小さく見えとも、家族にとっては小さくない。「つい最近、7人の少女たちを家へ戻すことができました。数人は16歳未満でした。私も空港へ行きました。そして母親たちと、その涙と痛みを目の当たりにしました。母親たちは自分の子をしっかり捕まえて放しません。私も母親ですからとてもつらいです。自責の念と純真さの喪失、何ものをもってしても元には戻せません。しかも、これで一件落着というわけではないのです。この少女たちは、どのような感情的や心理的サポートが得られるでしょうか? 何もありません。ゼロです。少女たちは強くなって人生を歩まなければなりません。ですから『女性はかけがえのない宝物』であるというところに立ち返るのです。たとえそういう悲劇が少女たちに起こった後でさえ、今まで通り少女たちはかけがえのないものなのですから」
ソクアの作戦の仕上げは、女性たちに経済力を持たせて売買業者に対抗する力をつけようというものだ。「ほかに生きる道がなければ、人身売買はなくなりません」とソクアは言う。「現在およそ500万人の男性・女性・子どもたちが1日50セント足らずの稼ぎしかありません。そこで、若い女性と少女の85%が、仕事を求めて自分から村を出ていきます。おそらくそのうち15%は仕事を見つけるでしょう。では残りの人はどこに行くと思います?飢えに直面した女性たちは自分の子どもを性産業に売るのです」。ソクアはこうした人たちを断罪しようとはしない。「まず『娘を行かせたとき、親たちに選択の自由はあったのか』と自分に問いかける必要があります。選択の余地はなかったと思うのです。私たちは、小さいけれども優れたプログラムを村のレベルで立ち上げました。まず女性たちがカートを1台買うために100ドル借ります。次に地元で作った製品を旅行者に売ります。スローガンは『女性にチャンスを』です」。ソクアはためらいを見せる。「たまらなくなるのは、彼女たちが仕事を始めるのを助ける資金が十分作れないときです」
【密売者や警察、自分の国の政府さえも批判しようとするソクアの意志は大きなリスクを伴う。】
まず、電話が盗聴される。渡米したときですら、絶えず振り返って警戒することになるという。自分の活動のために殺される可能性は「考えたくないもの」だ。絶えず人の悲惨さのただ中にいれば、精神的にも打撃を受ける。「そんなときは断ち切らなければ」とソクア。「荷が重すぎると感じるときはシャワーを浴びるのよ。うんと熱いお湯をどんどん流して、ものすごい冷水にして、また熱々のお湯にして、泣いて泣いて、泣くんです。人前で涙を見せるわけにはいきませんから。男性に泣き顔を見られたら言われますよ。『見てごらん、大臣だって女は泣くんだよ。女は本当に弱いねぇ』って。でも活動を続けなければ寝られません。子どもたちに会わせる顔がないと思うんです」(了)
※連載はこれで終了となります。明日のソクアさんを囲む会の模様は、近日国際子ども権利センターのホームページでお伝えする予定ですので、是非そちらもご覧下さい。 http//jicrc.org
写真出所:http://faculty.law.ubc.ca/cfls/files_cfls/pics/picture%20page.htm