カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

AFESIP保育サービス進捗報告その2

2005年11月10日 17時00分01秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
みなさんこんにちは、平野です。ソクアさんを囲む会直前企画などあり、当初連載のつもりのはずが間が空いてしまったAFESIPの保育サービスの進捗報告ですが、今回はその第2回をお届けします。記憶の曖昧な方もいると思うので、前回のブログを貼り付けます(10月21日)。この保育サービスの概要をご説明しています。 http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/bc665f10a3f7551fca6c2d2aa5c467b3

おかげさまで1ヶ月前と比べて閲覧者数が倍増しています。今後ともご愛読、ならびに周囲の方々へのご紹介のほど宜しくお願いします。

【18ヶ月と10ヶ月の姉妹??】

10月20日訪問時に保育サービスを受けていたのは、2人の子どもでした。同じお母さんの子どもです。お母さんは17才。2人ともレイプされて産まれた子どもだということです。そして彼女の説明によると、上の子は18ヶ月で、下の子は10ヶ月近い、とのこと。言われるままにメモを取っていた私ですが、よく考えると間が8ヶ月しかありません。もう少し聞いてみると、最初の子どもを産んでから、すぐにまたレイプされるた、その間は4ヶ月くらいだった、ということ。ますますもって計算が合いません。

しかしそうは言っても、彼女の答えは曖昧なもの。実際に子どもの年齢をあまり把握していないものと思われます。私もちょっと驚きました。しかし、カンボジアに来たばかりだったら、3倍は驚いていたでしょう。出生登録もしていなければ、母子手帳もない状況、そしてレイプされたショックは当然大きいでしょうし、そもそも彼女は学校に行っておらず、計算があまりできないのです。私はそれ以上お母さんを追及しようとは思いませんでした。しかしこのように母親が、自分の子どもの年齢も正確にわからない現状が、適切なケアを子どもに与えられない、ということにつながり、カンボジアにおける発育障害の多さに大きく関係していることは言えるでしょう。

【お母さんの生い立ち】
この17歳のお母さんは孤児です。電気関係の仕事をしていた父親は彼女がまだ赤ちゃんの頃に感電死し、別の男性と再婚した母親も先日亡くなったそうです。彼女は学校にはほとんど行ったことがなく、小さいうちから農作業を手伝い、14歳のときに親に決められて結婚。しかし夫はタイに出稼ぎに行ったきり戻らず、そして前述のレイプ被害に遭い、祖母が村長などに報告し、アフェシップのシェルターに連れてこられることになったということです。

今彼女はシェルターで洋裁を学んでいます。ケアテイカーが子どもを見ているため、時々は心配になることもあるけれども、集中して学べると言っていました。しかし洋裁を学ぶ上では、寸法を測ったり、なにかと数字が絡んでくるため、学校に行っていない自分には難しい、とも漏らしていました。

【教育の大切さ】

自分の村に帰って食料品や洗剤などを売る小さなお店をやりたい、と希望を語ってくれた彼女ですが、それは洋裁以上に計算能力を必要とする職種ではないでしょうか。これは私の全くの推測ですが、おそらく彼女はそこまで思いが至っていないのではないかと思います。商店(お店)と聞いて、すぐに原価率・粗利益・在庫管理…といった言葉が浮かび、「難しいな」と感じるのは、それだけの知識があるからです。あえて強い言い方をすれば、「自分には教育がないから、難しいのではないか」と気がつくこともないくらいに教育がない、というふうに私には思えました。

【子どもたちのために】

保育サービスを受けるようになって子どもの皮膚の状態が良くなったのがうれしい、という彼女は、「2人の子どものために一生懸命学ばなくては」と語ってくれました。識字教室についても、まだ始めていないが、やってみたいと意欲を見せてくれました。時計の針は戻らなくとも、まだ17歳と若いお母さんです。この保育サービスを受けられるようになり、とにかくスタートラインに立ちました。ここからは彼女の頑張りにかかるところが大です。「子どもたちのために」という彼女の言葉に期待したいと思います。

※写真はお母さんと上の子どもです。なんともいえず愛嬌のある顔をした赤ちゃんですね。

このお母さんと赤ちゃんのために、カンボジアの子どもたちのために、なにかできることがないか、と思ったみなさん。できることはあります。

http://jicrc.org/pc/member/index.html