カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

ムーソクアさんを囲む会直前企画<民主主義への願いを込めたTシャツ>

2005年11月03日 19時19分04秒 | カンボジアの人権状況
みなさんこんにちは、平野です。
一昨日、昨日に続きまして、元女性省大臣ムー・ソクアさんを囲む会直前企画として、ソクアさんの娘さんであるティダさんがデザインした、民主主義への願いのこもったTシャツについてご本人のメッセージをお届けします。※小見出しと太字は訳者

【ティダさんの紹介】

私の名前はティダ・レイパーです。父はアメリカ人、母はカンボジア人です。16年をプノンペンで過ごした後、最近ロンドンに移りました。カンボジアではプノンペン・インターナショナルスクールに通っており、私が芸術を学んだのもそこでした。これからも芸術に取り組んでいきたいと思っていますが、ロンドン大学東洋アフリカ学学院で学ぶことを選びました。いつかカンボジアの発展に貢献したいと願っています。

【作品について】

カンボジアにおいては、民主主義は複雑で論議の的となる題材であり、私の作品の対象も、当初とは変わってきました。私ははじめ、カンボジアの民主主義のために戦い、不当にも死んでいった人たちを描いた芸術作品を目指しました。それから、私の活動を、今現在戦っている人たちに対する敬意を示すものにしたいとも思うようになりました。そして、民主主義のため戦ってきた人たちへの私の敬意を示すため、私が重大だと感じた出来事のイメージを取り入れました。それは、1997年の民主主義を求めるデモ行進に対する手榴弾攻撃(註1)、2004年の労働組合の委員長チア・ヴィチア氏のいまだ解明されない殺人事件(註2)、2003年の女性歌手トゥーッチ・スレイネ氏の襲撃事件(註3)、娘たちをレイプされて殺された母親たちです。

【希望をこめて】

私は作品の中でカンボジアの政治に存在する暴力や不正義を提示したいと思う一方で、希望のメッセージも表現したいと思っています。私は小型武器を解体した部品で作られた鳩のオブジェの絵と、野党サム・レンシー党の党首の演説「我々の夢は実現する」の引用を作品に取り入れました。私がこれらを取り入れたのは、カンボジアには暴力や闘争があるけれども、現政権内に存在する不正義や不処罰(註4)、腐敗に私たちが屈することはないという希望もまたある、というメッセージを描きたかったからです。

【訳者注】
(註1)1997年3月30日、サム・レンシー(以下SR)(現在SR党党首)が当時率いていた野党クメール国民党の党員約170人が、プノンペン市内で行ったデモ行進に4発の手榴弾が投げ込まれ、13才を含む15人が死亡した事件。SR党首は事件の陰に与党人民党のフン・セン第二首相(現首相)がいると発言したため、名誉毀損で訴えられている。

(註2)2004年1月の労働者の、特に縫製工場で働く女性たちの待遇改善のために熱心に闘ったことで知られ、SR氏の友人でもある労働組合委員長の殺害事件。新聞ばを買うところを、公衆の面前で殺害された。多くの支持者が追悼行進に参加し、世界各国からも怒りの声が挙がった。犯人と目される2人は逮捕されたが、冤罪説、身代わり説が根強い

詳しくはコチラ→http://jicrc.org/pc/material/chea/review.html

(註3)2003年10月25日、プノンペンで、SR党支持の人気女性歌手とその母親が襲われ、母親が死亡、歌手は顔面に銃弾2発を受けるひん死の重傷を負った事件。この事件の3日前にも、SR党支持者のラジオ番組ホストが殺害されている。当時、連立政権樹立問題をめぐり政情が緊迫しており、政争絡みと見られている。現在はアメリカで療養中。

(註4)不処罰…権力者や有力者、その親族等が犯罪に関っている場合、事件がうやむやにされてしまうことを指す。カンボジアに根強くある文化。