カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

11月19日「世界子ども虐待防止の日」イベントレポート

2005年11月30日 10時39分05秒 | 子どもの権利の普及
みなさんこんにちは、平野です。

前回は、あまり耳慣れない11月19日の「世界子ども虐待防止の日」がどんな日であるか、ということについてお話させていただきました。そこでも触れましたが、この日世界のいたるところで、子どもの虐待防止を訴えるイベントが行われています。その中のひとつとして、国際子ども権利センターのパートナー団体(支援先)である現地NGO、HCCのシェルターで行われたワークショップをご紹介します。

【自分のような経験は…】

ワークショップは11月19日土曜日の朝8時より、シェルターの少女たちを始め、地域の名士や警察官も列席した中行われました。まずは全員起立の上での国歌「ノーコリアーチ」の斉唱で幕が落とされ、その後HCC代表のテリーさんの挨拶と続き、その後シェルターの少女の代表の挨拶となりました。

以前ご紹介の通り、シェルターにはそこで寝起きする少女たちと通いの少女たちがおり、またいずれの形態をとるにせよ、シェルターで職業訓練等を学ぶのは最長6ヶ月とされています。しかし実際には、様々な事情から年単位でシェルターで生活している少女も少なからずおり、その中のひとりの少女が挨拶をしました。「自分のように虐待を受けてNGOに保護される子どもはもう現れて欲しくない」と力強く言ったあと、「子どもたちの未来にバンザイ!」と声を張り上げた彼女の姿には、もうすっかり顔見知りの少女ですが、改めて胸に迫るものを感じました。

【過去を乗り越えて】

その後は少女たちによる劇です。私はこの劇の簡易版は見たことがあったのですが、今回は衣装も用意し、男性役の少女は顔に墨でヒゲを書くなどしており、また長さも普段よりも長いものでした。内容は、お酒を飲んで暴力を振るう父親をきっかけに家庭が崩壊し、それに伴ってプノンペンに出稼ぎにいくことになった少女が、「レストランのウエイトレスの仕事がある」と騙されて買春宿に売られ、そして苦難の末NGOと警察に救出され、HCCのシェルターの保護される、というものです。

演じている子供たちの中には、実際に劇の内容と酷似した経験を持った少女もいます。見ている子たちは、近隣の貧困家庭から通いの子どもなど、必ずしも性的搾取の被害に遭った子ばかりというわけではありませんし、単純にそういった(墨でヒゲを書くなどの)扮装を面白がって笑っている子もいました。また演じている少女たちもイキイキと演じていました。しかしそこに至るまでに、乗り越えなけれなならない心理的な壁があったであろうことは、彼女たちの迫真の演技が教えてくれました。

【我先に手をあげる少女たち】

劇が終了すると、HCCのスタッフによる子どもの権利や子どもの権利条約についての説明。要所要所で「子どもの定義は?」「子どもの権利にはいくつある?」などの質問を少女たちに投げかけながらのレクチャーでしたが、最後は「一生懸命勉強しなさい」という訓示で終了。「有名な大学に入れるように」でも「有名企業に就職できるように」でもなく「親になったときに子どもを守れるように」「家族を助けられるように」勉強しなさい、という言葉がカンボジアの状況を表しており、印象的でした。

スタッフのお話が終わるとクイズ形式で子どもの権利を学びました。手をあげて指された少女が木の枝にくくりつけられた紙(日本でいうおみくじのよう)に書かれた問題を読み上げ、答えの分った少女たちが手をあげます。問題は「どんな仕事は(子どもがすべきでない)重労働か」「家庭内暴力にはどんな形態があるか」といったもの。正解者に賞品(文房具類)があるせいもあって白熱したクイズ大会のあとは、日本でいうスイカ割りやパン食い競争の類のゲームで盛り上がり、それから皆で昼食を取って終了。

写真(撮影は当センター島野敏行関東委員)にある通り、我先にと手をあげる子どもたちを見ていると、日本の子どもたちよりもよっぽど子どもの権利について知っている、と感じられてなりませんでした。


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