▲鬼塚英昭 『日本の本当の黒幕』 上巻 2013年 成甲書房
鬼塚英昭 『日本の本当の黒幕』 上・下
鬼塚英昭の本は21世紀に入ると、ライフワークのような大著が多く、『日本の本当の黒幕』をはじめ、『20世紀のファウスト』、『原爆の秘密』、『天皇のロザリオ』など、上下2巻で600頁ー1000頁を越える大著が目白押しである。『日本の本当の黒幕』、『20世紀のファウスト』は、2016年の秋から、今年の春にかけて、通読は終わったものの、巻末の大量の参考文献の多さにも驚いた。それも、近代史の専門研究者が引用しない特異な文献が引用されている。
いわゆる、学者・研究者が読まない、あるいは陰謀説を好まない人には全く無縁な文献がてんこ盛りなのである。
「権力の内部に位置する人々の述作・資料選択からは、日本史の闇、世界史の闇は見えてくるはずもない」 というスタンスで書かれている。
安定している歴史の一次資料の選択の段階で、すでに近代史の解釈の範囲は限られてしまっていやしないか?
そのような意味では、近代史の研究者の著述は、人を迷路に追い込むこともしないが、また凡庸で安全・無毒な歴史観でもあるだろう。
鬼塚英昭が本を書き上げ引用する著述家の「手記」、鬼塚の掲げる参考文献の中には、真偽のはっきりしないものとされる著作も含まれるが、彼の手にかかれば、歴史の真実に迫る、重要な工作の痕跡として採用されているものがある。
これが、学者・研究者が忌避し、陰謀論者・素人著述家と罵られ、一顧もされない理由であるかも知れない。
彼の著作には、歴史の闇を解読しようという異様な情熱により、分析の痕跡をそこかしこに放っている。
昔、現代思潮社の本の謳い文句に「花には香り、本には毒を」ということばがあった。
鬼塚英昭が、著作に使う本や資料は、稀覯本の類に属する絶版本、私家本、自費出版本の文献も多いので、それらの本の蒐集も時間もかかるだろうし、今では入手不可能なものも多数ある。
私の本の収集予算では、いつ、鬼塚英昭が引用する目的の本・参照文献にたどりつくか心細いのだが、鬼塚英昭の毒気に触れた今、その情念の元を知りたいという誘惑が優ってきた。
難攻不落の要塞のような寝室で寝起きしていた人物、明治維新組で、最後まで政権中枢として生き残り、日本近代王権の誕生と推移の秘密を知り尽くしていた人物、宮内大臣も勤めた、田中光顕とは何者なのか?
▲左2冊 『20世紀のファウスト』 2010年 成甲書房、 右2冊 『日本の本当の黒幕』2013年 成甲書房
▲ 『日本の本当の黒幕』上巻
▲ 日本の本当の黒幕』 上巻目次1
▲日本の本当の黒幕』上巻 目次 2
▲ 日本の本当の黒幕』下巻
▲日本の本当の黒幕』下巻 目次 1
▲日本の本当の黒幕』下巻 目次 2
つづく