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ケネディ暗殺事件をめぐる出版物の妨害事情

2017年06月21日 | JFK ケネディをめぐる本・新聞記事

                   ▲レオ・ソヴァージュ 西川一郎 訳 『ケネディ暗殺事件』 上 1967年 合同出版 

 

 

ケネディ暗殺事件をめぐる出版物の妨害事情 レオ・ソヴァージュ 『ケネディ暗殺事件』とトーマス・ブキャナン 『誰がケネディを殺したか』のあとがき から

 

ケネディ暗殺事件をめぐる出版物の妨害事情 レオ・ソヴァージュ 『ケネディ暗殺事件』とトーマス・ブキャナン 『誰がケネディを殺したか』のあとがき から

 

このブログでは、何度か、ケネディ暗殺事件をめぐる本について記事を書いている。日本人の著作と、翻訳のある、ケネディ大統領暗殺事件に関する本がある程度揃いつつあるので、再度というか再三というか、読み直しを進めようようと思っているところだ。

1963年11月22日のケネディ大統領暗殺事件の後、『ウォーレン報告書が』1964年秋に政府から発行されたのだが、それより前いちはやく、出版にこぎつけた著書や、調査に取り組む民間人がいた。

日本で翻訳のある、ケネディ暗殺事件をめぐる本は、かなりあるが、事件後数年以内に出版されたもので、注目したい本が数冊ある。ひとつは、アメリカの弁護士のマーク・レーンの本 

下の2冊は、いずれも、最初の出版はフランスで、また、フランス人、またはアメリカ出身でフランス在住の人物が出版したものである。

 

 

 

 ▲ トーマス・ブキャナン 内山 敏 訳 『誰がケネディを殺したか』 1964年6月 文藝春秋新社

 

 

  

 ▲レオ・ソヴァージュ 西川一郎 訳 『ケネディ暗殺事件』 上・下 1967年10月 1968年6月 合同出版 

 

上のトーマス・ブキャナンとレオ・ソヴァージュの2冊とも、アメリカでの出版が最初拒まれ、フランスで出版されたり、ヨーロッパ各国語に翻訳されて評判になってから、アメリカで、小出版社が引き受けたようだ。

 

政府の公式報告に合わない解釈は、出版・流通大手からは、すげない返事だった。

 

まずは、トーマス・ブキャナンの本の訳者あとがきを見てみる。

ケネディ暗殺についての調査本の出版について 訳者はこう書いている

はじめはアメリカで出版するつもりで、原稿をある出版社に送ったところ、

「実に見事な立証で、誰も反駁できないと思うが・・・・・・・出版しないことに決定した。誰かがきっと危険をおかすことになるだろう。」

という返事で断られた。

(トーマス・ブキャナン 内山 敏 訳 『誰がケネディを殺したか』 (217頁))

 

レオ・ソヴァージュ 西川一郎 訳 『ケネディ暗殺事件』には、出版契約解消についてこう書いている。

 

「アメリカ版あとがき 

本来この本は最初にアメリカで刊行する予定であった。フランス語版のためにパリのエディシオン・ド・ミニュイ社と交渉をはじめる以前、1964年3月11日に、アメリカの出版契約が、ニューヨークのある大出版社との間に調印されていた。ところがその後1964年9月27日にウォーレン報告が発表されるにおよんで、わがニューヨークの出版社の熱意が著しく冷めてしまった。

「わがニューヨークの出版社が本当に受け入れがたかったのは、私の結論だった。委員会は疑いの余地なくオズワルドの有罪を立証していないのだから、オズワルドは無罪と考えるべきだという結論であった。」

その出版社は1964年11月4日付の手紙で、私にこう言ってきた。

「問題は、ウォーレン報告がオズワルド問題に予想に反した照明をあてたということです。それで私は、オズワルドの有罪を疑問視しようとする書物はすべて現実に合わず、責任ある批評家からまじめに取り上げられないといまや確信している次第です。だからといって、ウォーレン報告に欠陥がないというわけでは決してありません。報告の証拠の取り扱い、歴然としている多くの曖昧差に対する無頓着、その傾向性は明らかです。しかし、これらすべての混乱の故に、オズワルドの無罪が証明できるとは思えません・・・・・・・。」

「私がここで語ろうとしないのは愛国的な理由からではなく、また沈黙の共謀をそそのかすためでもないことを信じていただきたい」

「何度も申し上げましたように、あなたは現在の調査にもとづいて、一応オズワルドの有罪をはっきりと立証されたものと断定した上で、下はダラス市警察から上は最高裁判所にいたるまで、オズワルド事件が明るみに出したアメリカの刑事訴訟の重大な欠陥を真剣に問題にするような、非常な興味のある有益な書物を準備できるものと私は確信しております。オズワルドほど不当な扱いを受けたものはいません。もし彼が生きていたら、憲法にもとづいて、上級の裁判所に無罪釈放の望みをかけたことでしょう。ウォーレン報告がこのことをはっきりさせていないのは、この報告のまずい点だと思います。もしこの問題のこの面に焦点を合わせるように資料を整理しなおすことに御同意いただければ、われわれは、それ自身大変面白く、またわが国にも大変有益な本をタイムリーに作れると思います。」

レオ・ソヴァージュ 西川一郎 訳 『ケネディ暗殺事件』 (283~284頁))

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当然なことながら、著者レオ・ソヴァージュは、著書内容の変更に同意しなかった。

アメリカの出版社における、編集者の権力は、著者を上回ることが多いとされるが、著者が、明白な証拠がないままのオズワルドの有罪化はないとしているものを、我が社で出版するには、本論オズワルド有罪と書き直した上で、それ以外の問題点を取り上げるよう、そして、重要なことだが、「わが国にも大変有益な」本にするように、迫っているのだから驚く。

これがケネディ大統領暗殺後の、1964年、日本人のかなりの人々がまだ憧れていた「自由と民主主義の国アメリカ」愛国主義の出版事情なのだ。

わが国(アメリカ)にとって「大変有益な本」に作りかえろとは、日本の近現代史に例をとれば戦前の大政翼賛会とその翼賛下の出版事情と変わらないことに気がつく。アメリカは、民間利益が先にくるが、目的とするところは同じ。

その影響は、21世紀の現代アメリカにも及んでいる。

反ロシアキャンペーンの出版物は、大いに飛びつき、メディアでも取り上げられるのだが、ミアシャイマーのような、イスラエル・ロビーについてのアメリカ政治の影響力を考察・危惧した研究書は、大手の書店には配本されないと多くの識者がインターネットメディアで指摘している。

新聞・放送メディアと出版・書店の中の特定集団のロビー活動が大いに危惧される事態になっている。

 

つづく



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