ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

青森ミステリー見聞録 その9

2021-08-10 21:22:50 | 旅行(道外)2020~
10月19日 (最終日!)


午前8時ごろ、気持ちよく起床。
深夜1時半、あれほどビクビクして布団に入ったというのに、いつの間にかぐっすり寝てしまったようだ。
故に残念ながら怪奇現象には遭遇できなかった。

とびないさんに挨拶しようと階段を降りると、台所で朝食の支度をしていた。
「昨日の商品が見つかったよ~!」と嬉しそうだ。
どうやら昨晩寝る直前にボヤいていた、友人から探すよう頼まれていたモデルガンを無事に落札できたらしい。
その後、朝ドラ「エール」の感想や戦争論、ミリタリートークなど、相変わらず朝から元気だ。
話に夢中になるあまり、作っていた豚バラの野菜炒めを焦がしてしまっていた。

「ジャガイモ2個むいて!」と、私も台所に案内される。
そう、とびない旅館ではアトラクションの一つとして「とびないさんと朝食を作ろう!」が問答無用で組み込まれている。
一緒に「いもすり餅」を作るのだ。


この「いもすり餅」というのが、ココに来たら食べずに帰ることは許されない、とびない旅館の名物。
下北の郷土料理のようだが、これがかなり絶品なんだとか。
とりあえず指示されるまま、ジャガイモをおろし金ですり、サラシで包んでデンプン汁をしぼり出す。


しぼった汁をつなぎにして小さく団子状に丸め、アジの煮干し、鶏肉と一緒に煮込む。
一方のとびないさんは野菜炒めにデスソースを入れている。
「チコちゃん(NHK)で辛いもの食べると満足感が得られるって言ってたよ~」とのこと。

ちなみに、こう見えて(と言っては失礼だが)、とびない旅館の台所は衛生管理が徹底されている。
私が作業中に少しでも顔を触ると「はいちゃんと手を洗ってね~」とすかさず言われる。
コロナ禍でも安心だ。


とびないさんが戦争の話に熱が入るあまり、鮭を焦がしてしまうなどしているうちに、昨日来ると言っていたむつ消防署の消火設備点検が来てしまった。
ほとんど朝食は出来ているため「ご飯食べてていいよ~」と言われ、ひとり台所に取り残される。
……ちなみに、駐車場の年代物の黄色い車(フェスティバ)はとびないさんの過去の愛車。ずっと置かれてある。

先に一人で食べるのも申し訳なく思い、しばらくテレビを見たり荷物整理をしたりして時間をつぶす。
さすが広大なとびない旅館、点検にかなり時間が掛かっている模様(とびないさんの世間話のせいかもしれないが)。
ゾロゾロと署員が入ってきたのに、全く声が聞こえず館内のどこにいるのか分からない。


結局点検は45分ほど掛かり、午前10時半、ようやくとびないさんと朝食だ。
白米or昨日の炊き込みご飯の選択制で焼き鮭、豚バラの野菜炒め、そしていもすり餅と大変豪華だ。


そしてこれもとびない旅館名物、聞いたこともない栄養ドリンク「スカールDX2000」がもれなくついてくる。
生卵に地元企業の納豆、味付け海苔と、ご飯に対してずいぶん多いなと思ったら「生卵をメレンゲ状にかき混ぜて納豆と合わせると粘り気が消える、ぜひ試して」とのことだった。
混ぜ方が足りずイマイチになってしまったが、ホタテ入り炊き込みご飯に納豆卵、そして生卵を追加でくれてこれまた贅沢。

楽しみにしていたいもすり餅だが、噂にたがわず美味しいこと。
すったジャガイモを丸めただけなのに弾力があってプニプニ、モチモチである。そして煮干しと鶏肉のダシが出た汁によく合う。
これもおかわり自由である。なんと素晴らしいことか。


食事をしながら、残念ながら座敷わらしに会えず怪奇現象を体験できなかったことを報告する。
だが、とびないさんは「風呂に入らず、快適なベッドでもないのに爆睡できたのは不思議な力が働いているからだよ」という。
ふむ……なるほど。


午前11時半、こちらもとびない旅館のアトラクションの一つ、道路を挟んだ向かい側の「下北妖怪ハウス」を見学させてもらう。
とびないさんが空き家を活用して作り上げたミュージアムである。




シャッターを開けてもらって内部へ入ると、まずはとびないさんの手による飛行機、戦闘機、戦艦、車などの完成品プラモがずらりと展示されており、圧巻である。


昨日会って早々盛り上がった旧・山田模型の車プラモや、私の入門キットだったアリイの1/32旧車シリーズもすべて揃っている。
すべて美しく着色されて仕上げられており感動である。
ジオラマ風に仕上げられた「終戦直後の大湊航空隊」はとびないさんの自信作で、展覧会で賞をもらったこともあるとか。
人物はパテなどを使ってイチから作り上げられている。


で、入った時から気になっていた鬼太郎やねずみ男、猫娘など妖怪の人形。
かわいらしいイラストが描かれたベンチもある。
これらは、2003年にここむつ市で開催された「第8回世界妖怪会議」の時に製作されたもの。


まちおこしの一環として、パネラーに水木しげるをはじめ荒俣宏、京極夏彦などを招待して行われたこのイベント。
「下北妖怪夏祭り」も同時開催され、とびないさんが中心となって準備が進められ、これらの妖怪を商工会議所青年部らとつくりあげたそうだ。



館内に無造作に置かれた当時の資料には、とびないさんの作品と水木しげる氏が並ぶ写真が!
イベント後も下北を妖怪で盛り上げようという話もあったようだが、準備中のもめごと等々であまりうまくいかず、フェードアウトしたとか……。


次回、最終回。
まだまだ続くとびないワールド!
遊びすぎてフェリーに間に合わない!!

続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青森ミステリー見聞録 その8

2021-08-08 01:28:09 | 旅行(道外)2020~
2日目 午後4時。

恐山から下界へと戻ってきた私は、むつ市内のショッピングモールの駐車場で、今夜の宿へは何時ごろ行くべきか悩んでいた。
なにしろ、これから向かおうとしているのは日本中探しても類を見ない超絶旅館として、一部の愛好家には名の知れた場所なのだ。
今回の旅でトップレベルに楽しみにしているが、同時に不安も最大級だ。


事前に把握している情報は下記の通りである。


・「とびないさん」という、プラモとモデルガンが趣味のおじさんが一人で切り盛りしている。
・館内は「とびないさん」のコレクションや創作物で溢れている。
・「とびないさん」は超個性的かつ話好きで、チェックインからチェックアウトまで
 終始付きっきりでおもてなししてくれる。
・そのサービスの特性上、1日1組しか泊まれない。
・どうも館内に座敷わらしがいるらしく、「何だコレミステリー」で原田龍二が訪れ
 鏡の隅で動く白いカタマリの撮影に成功。


なにやら情報が渋滞しているが、覚悟を決めて午後4時半過ぎに到着するよう出発。
といっても、旅館は意外にもむつ市のほぼ中心部、下北交通のバスターミナルや観光物産館のすぐ近くにあった。


・とびない旅館(青森県むつ市田名部町8-6)

事前情報では、駐車場に車を停めるや否や、音を聞きつけたとびないさんが飛び出してくるという話だったが、
車から降りてもしんと静まりかえっている。
年季の入った外観を何枚か撮っていると、正面のガラス戸がガラガラと開き、開口一番「大変な事に気付きました~」と笑顔のおじさん登場。手にはなぜか猟銃のモデルガンを持っている。

とびないさん(59)だ。
お姿はネットなどで何度も見ているので、有名人に会えたかのような感覚である。

何から突っ込めば良いか分からないが、ともかく大変な理由を聞くと、どうやら夕食の炊き込みご飯に入れるホタテを買い忘れていたらしい。
「あとで一緒に行こうね。これも旅のうちでしょ。まぁ入って」と館内に入れてもらう。


マスクをせずに来客対応ができる最新システム(段ボールを重ね、顔部分に透明シートを貼ったもの)
などの説明を受けながら、とびないさんの事務所(兼制作場所、兼接客スペース)へと案内されると
さっそく荷物を置かせてもらうのもそこそこに仕事の話、政治の話などが次々と飛び出す。
廊下に旧・ヤマダ模型の車のプラモがあったので、私も再販版を作ったことがある旨を伝えると
「話の分かる人でよかった!来るべくしてきたね」と大層喜んでくれた。
気に入ってもらえたようで良かった。


5時半ごろ、ホタテの買い出しのため一緒に車へ乗せてもらい、むつ市内へ繰り出す。
北海道から来た私のために、大間産のホタテをぜひ夕食に使用したいという。
「生は焼くと出汁が出て最高だからね」と話す。

行きつけのスーパーや鮮魚店を巡り、3店舗目でようやく発見。喜ぶとびないさんを見て、こちらもほっとする。
買い物中も模型の話が尽きないが、レジに並んでいるときに突然表情を変え
「ところで、夜に何か『出る』のは大丈夫だよね?」と念押しされドキッとする。
そういえば「座敷わらし」の存在をすっかり忘れていた。

なぜ座敷わらしだと断定できるのか聞くと、妖怪研究の専門家が調査に訪れ、
その事象の特徴から座敷わらしと断言されたという。
興味深いので後でゆっくりお聞きするとしよう。

帰り道、とびないさんの行きつけという模型店に案内してもらい、店主としばし世間話をして旅館に戻る。
既に時間午後6時半を過ぎている。


「いろいろやってくるのでこれで遊んでて」と戦車のラジコンを手渡され、とびないさんは2階へ消えていった。
なんでも、モデルガンの修理に没頭するあまり、ベッドメイクなど部屋の準備ができていないという……。
チープな戦車のラジコンは、とびないさんの手によって後退時に旋回するように改造されている。


事務所の隣にある、本来であれば食堂……のはずだが、机の上は作業中のモデルガンやプラモに占領されている。
壁には戦隊ヒーローのソフビや、アメコミのおもちゃなどが貼り付けられている。




なかなか立派な受付。薄暗い中でひとり写真を撮っていると、時計の7時の鐘がボーン、ボーンと鳴り出した。
これは結構雰囲気があるな……と急に怖くなる。
廊下には年代物のプラモが山積みに。見る限り、車、銃に限らず飛行機、船、建築など守備範囲はかなり広いようだ。

2階から降りてきたとびないさんが「これからご飯支度だから、それまでコレクション見てる?」と言うので、奥の部屋に案内してもらった。



かなり広い館内を一番奥まで進むと、元は宴会場だったとおぼしき大広間が。
電気が付けられると、ぜいたくに部屋全体にコレクションが散乱……もとい展示されており、圧倒されてしまった。



青いネコは、とびないさんと仲の良い青森のブロガー「ねこぜ」さんのキャラクター。ロボットの前には、なぜかGLAYのサイン入りポスター(2016年)まである。
奥には軍服各種と、戦車を走らせる自作のジオラマなど。



ガラスケースの中には、昭和アニメのキャラクター人形やメカの関連おもちゃがたくさん。特撮もお好きなようだ。
その他、スプレーで着色途中のプラモや制作道具などが机に置かれ、どうやらこの部屋では子どもたちへの制作教室なども開催しているらしい。


そして大広間の最も奥には、宿泊客のお供え物が並ぶ座敷わらしの祭壇があった。
なぜかとびないさんのファン?による肖像画まである。
しまった、私も六花亭のお菓子でも買ってくればよかった。


ご飯支度がひと段落したのか、とびないさんがやってきて展示物をいろいろ解説してくれる。
有線から無線に改造したラジコン戦車、アニメの通りにあらゆるギミックが仕組まれたメカ、苦労した戦闘機やロケットの模型などなど……。
詳しくは割愛するが、嬉々として語るとびないさんは少年のようだ。


午後9時15分、待ちに待った炊き込みご飯の完成だ。
「ほらほら、出来たてのところ撮ってよ」と炊飯器を開けるポーズまで取ってくれる。サービス精神旺盛だ。
そのまま事務所(兼制作場所、兼接客スペース)でとびないさんと一緒に夕食だ。

おっしゃっていた通り、大間産のホタテがごろごろ入ったご飯は香りが最高。
「好きなだけおかわりしていいよ!女性のお客さんだってたくさん食べてくんだから」という言葉に甘え、
3杯ほど頂いてしまった。なんとも贅沢。


食後はそのままお酒を飲みながら、とびないさんの息つく間もないマシンガントーク。
政治論、時事問題、地元の市議会議員のココではとても書けないゴシップネタ、土地トラブル……などなど。
ここも詳しくは割愛……というか、覚えてられない。突然話がぶっとぶので付いていくのも大変だ。
「プラモの素組みはただの習作、消費」「落としたプラモの部品を手をかざして、念力で探し当てたことがある」
などのありがたい(?)話も頂いた。

話の合間に、とびないさんの秘密のコレクション部屋や、2階の一室に作られたプラモ制作教室なども見せてもらう。
「あぁ~、暗いのやだ」と言って、部屋を去るギリギリまで電気を消さないのが意味深で、少し怖かった。


いよいよ、気になっていた座敷わらしについて聞いてみる。
とびないさんによると、先代から引き継いだ築数十年のこの旅館は、見える人からすれば幼稚園のような場所だという。
かなり広大な建物内にとどまらず、屋外の敷地外にも子どもたちが走り回っている状態らしい。

「何か変だな?」と思い始めたのは2009年ごろで、原発の整備員が泊まっていた部屋が
内側から鍵が掛けられ、扉が開かなくなる。
その後、女性の宿泊者がイヤリングや髪の毛を触られる、といったエピソードが増えていった。
体験談から1号室には男の子、2号室には女の子がいるといい、宿泊客の性別によって泊まってもらう部屋を分けているそうだ。
なお、とびないさんはその姿を見たことはなく「足音を2回聞いただけ」。


NHKのドラマ「赤毛の●ン」や「未来少年コ●ン」を見せられながら、なおもトークは続き、時間は深夜1時
時折うつらうつらするとびないさんを見て「もう、寝ましょう」と提案する。

「ちなみに、きょう泊まってもらう1号室にも出たんだけど」ととびないさんは最後に切り出す。
心霊現象や妖怪否定派の人が冷やかしで泊まりに来て、その日は「いる」「いない」論争で半ば喧嘩状態になってお開きになったらしい。
翌日、とびないさんが朝ご飯の支度をしていると、2階からバタバタと慌ただしく降りてくる音がして
とびないさん、出た出た!いいことあるかな!」と興奮気味に報告したそうだ。
どんな現象に遭ったのかはあえて聞かなかったそうだ。

かなり信憑性の高い話だが、部屋に行く直前にそれを言うか!



とびないさんにおやすみを言い、ギシギシと鳴る階段を上って2階の部屋へ向かう。
ここまで、とびないさんの明るくにぎやかな人柄でかき消されていたが、
いざ一人になって急にしんとなると、その対比も相まって不気味な雰囲気が漂う。
南北に細長い館内は中央の廊下と共同の洗面所以外、消灯されている。


こんなに部屋数のある旅館なのに、いま館内に居るのは自分ととびないさんだけ。
とびないさんの「物理的に怖い状況だよね」という言葉が頭を巡る。


さて、長い廊下の突き当たり右側「1号室」に到着した。テレビ横の姿見が怖い。
チェックインから約9時間を経て、ようやく泊まる部屋を見たことになる。普通の旅館ではあり得ないだろう。
豆電球が灯された部屋に近づくにつれて、甲高い「ピーーー」という音が大きくなってきて早速身構えたが、
部屋に設置された防災無線ラジオから発せられている音だった。もう。


洗面所の細長い鏡の前でぽつんと立って歯磨きしている時は生きた心地がしなかったが、何も起こらなかった。
廊下から部屋へ歩いて行く動画を撮ってみたりもしたが、これも違和感は無し。
セルフタイマーで自撮りしてみたが、何か変わったものは写っているだろうか??

もう少し検証したかったが、怖さがピークなのでさっさと布団に潜り込む。
いつもは完全に消灯するのだが、さすがに今日は豆電球以上に暗くできなかった。
まあ、「何か」がボンヤリと見えたらそれで怖いけれども。

続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青森ミステリー見聞録 その7

2021-08-04 12:12:00 | 旅行(道外)2020~


宇曽利湖を中心に釜臥山、屏風山、剣の山など八峰が囲む霊場一帯は火山ガスの噴気活動が盛んで、硫黄臭の漂う荒涼とした風景が広がる。
あちこちから湯気が上がり、硫黄で黄色く色が付いた地面には草木が生えず、鳥などの生き物もほとんどいない。
火山岩を縫うようにして、1周3キロほどの参道が延びている。




至る所で回るカラフルなかざぐるまは、水子供養のため参拝者が立てたものだという。
無色の風景の中で鮮やかさが強調されているのが物悲しい。
また、これも参拝者によるものだろうか、大小さまざまな石が積み上げられて山のようになっている。



そんな参道に、「千手観音」「慈覚大師堂」「水子供養ご本尊」などがあり、参拝者は起伏に富んだルートを順番に回ってゆく。
岩のくぼみに置かれた賽銭は、火山ガスで変色してしまっている。


「八葉地蔵菩薩」と、水子供養の地蔵群。
なお、恐山と言えば「イタコ」だが、常駐している訳ではなく、恐山大祭と秋詣りのみにいらっしゃるそうだ。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止とのこと。


血の池地獄」。池の底にある苔の変色によって、本当に真っ赤に見えることもあるそうだ。
この日は緑色だったため、予想していたほどおどろおどろしい雰囲気ではなかった。



参道は、早くして亡くなった子供が親を想う「賽の河原」を経て、宇曽利湖畔の「極楽浜」に辿り着く。




これまでの荒涼とした道中とは一変し、青々とした水面に白い砂浜の美しい風景が広がる。
参拝者もほっと一息、湖畔で記念撮影する人も多い。「極楽」とはよく言ったものだ。


湖を前に、東日本大震災の供養塔が建つ。
また、砂浜にもかざぐるまが何本か立っており不思議な光景。傍らに妊娠検査薬が置かれているものがあり、思わず「あぁ」と声が出てしまう。
カラカラと回るかざぐるまは輪廻の象徴であるという。


極楽浜から総門へ戻る道中は、仏教の世界に8つあるとされる地獄になぞらえた場所を通る。
「重罪地獄」「賭博地獄」、そして最も過酷とされる「無間地獄」。硫黄の臭いに耐えながら、火山ガスに気を付けて進まねばならない。


地獄めぐりを終えて総門へ戻り、車で「三途川」を渡り終えるとほっと一安心。
ツアー客などもおり、これまで恐山のイメージとして抱いていた恐ろしさ、不気味さはそれほど無かった気がする。
私が霊感が全くないためかもしれないが。


さて、本日の行程を終え、これから今夜泊まる宿へと向かうのだが……。
この宿こそ後半戦のクライマックス、というか、この旅で最も覚悟が必要な場所かもしれない。
まず、予約の電話で言われたのが下記の文言である。

大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??

そしてこの宿、なんでも座敷わらしがいるというのだ。


いよいよ旅は佳境へ!
続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青森ミステリー見聞録 その6

2021-08-03 11:48:30 | 旅行(道外)2020~

木造(きづくり)の散策を終え、駅近くのコンビニで朝食とする。
かねてより食べてみたかった青森のご当地パン「イギリストースト」(製造元:工藤パン)を迷わず選ぶ。
ジャリっとした砂糖入りのマーガリンがサンドされている比較的よくあるパン(大好き)だが、
他よりやや甘めか。もちろん美味しい。

県内では数多くのバリエーションがあり、中でもチーズとトマトソースが挟まれた
「イギリスフレンチトーストピザ風」は「多国籍すぎる」とネタにされていた。
今回の旅行では見つけられず、ちょっと残念。


無料の高規格道路などを通り、午前9時ごろ、青森市中心部へと入る。
青森駅近くに保存されている青函連絡船「八甲田丸」を外観だけ見学し、姉妹船・摩周丸がある対岸の函館に思いをはせる。
津軽海峡の「あっち側」に車で来られたとは、なんとも感無量である。


そして、中心市街地にはぜひ立ち寄りたかった場所があった。


・アスパム(青森県青森市安方1丁目1-40)

青森港に面して建つこの建物、ずいぶんと特徴的な形をしているが、なんでも「AOMORI」の「A」をイメージしているとのこと(横から見ると薄い!)。
地上15階建て、高さ76メートルの正三角形。円形に飛び出した部分は360度展望台。


館内は「青森の観光と物産の情報発信基地」ということで、お土産屋や飲食店、観光情報コーナー、地域の交流スペースなどが入っている。
せっかくなので、ここで実家へのお土産を購入。
なお入口前には、「ねぶた」が載ったご当地ポストがあったのでパシャリ。


△こちらは青森港旅客ターミナルにあったねぶた


午前10時半。

この旅後半のメインである本州の北の果て、下北半島へ向けて出発する。
まず目指すのはむつ市、イタコで有名なかの霊場恐山だ。
ここ青森市から100キロほどか。まずは国道4号線をひた走る。


当初、中学の修学旅行で泊まった浅虫温泉で日帰り入浴したいなと思っていたのだが、時間の関係でパス。道の駅から温泉街を眺めるにとどめた。
宿泊時はなぜか「この旅館には『出る』らしい」と生徒間で騒ぎになり、同じ部屋の5人で布団をくっつけて怯えた。
薄暗い古びた旅館で、怖さでロクに眠れなかったのも今となっては懐かしい。
あの旅館は今もあるのか。


……陸奥湾をぐるりと回り、国道279号「むつはまなすライン」を北上。
車道が狭くなり、沿道の住宅群ののどかな雰囲気も相まって、果ての雰囲気が出てきた。


目指す恐山と、奇岩がつくりだす景勝地「仏ヶ浦」の看板が現れ、異界へ向かっている気分を高めてくれる。

午後0時半ごろ、むつ市中心部に到着。そのまま恐山霊場に続く一本道へと入る。

かなりの高低差がある細い山道がしばらく続き、何度坂を下って上ったか分からなくなった頃、突如視界が開けて湖が現れ、平坦な道に。
思わず速度を上げて進むと「三途の川」と書かれた橋をそのまま渡ってしまった。
急いでUターンして戻る。これはあまり気分がよろしくない。


恐山へ向かう者がまず通らなければいけないのが、現世と霊界を隔てるこちらの「三途川」。
正確には、霊場が面する宇曽利湖(うそりこ)から唯一流れ出ている正津川。
湖が強酸性のためか、川面を覗くと水色とも緑ともいえない不思議な色をしている。
赤色の太鼓橋はかつては渡れたようだが、現在は老朽化により閉鎖されている。



人が亡くなって三途の川までやってくると、「奪衣婆」(左)が身ぐるみをはがし、「懸衣翁」(右)がその衣類を木の枝にかけ、その垂れ具合で罪の重さを計るという。
その後、閻魔様の前へ出されて極楽か地獄か、行き先を決められるそうだ。


改めて気を引き締めて三途の川を渡り、入山受付所へ。いよいよ霊場へと足を踏み入れる。





・霊場恐山(青森県むつ市田名部字宇曽利山3-2)
約1200年前に、慈覚大師円仁によって開かれた霊場。「比叡山」「高野山」と共に日本三大霊場に数えられる。
火山ガスが噴出する一体の岩肌は地獄に、宇曽利湖畔の白砂の浜は極楽とされ、「人が死ねばお山に行く」という信仰と祈りの場として伝えられてきた。
今も故人をしのぶ信者が、日本各地から絶えず訪れる。


総門をくぐった瞬間から空気が変わり、参道の傍らには巨大な卒塔婆が何本も立つ。想像していた通りの由緒正しき霊場の雰囲気だ。
本尊安置地蔵殿を参拝し、順路に従って地獄めぐりへ向かう。


ここから旅は少しずつ、冥界へ足を踏み入れて行く事になる。



続く。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする