午前11時。
「スコトン岬」の観光後、運転を私にバトンタッチし、島の西側にある人気の景勝地「澄海岬」へ向かった。
道道の分かれ道から内陸に逸れ、丘の一本道を20分ほど進むと、すぐに岬のある集落に到着した。
港の駐車スペースに車を停め、展望台へ向かう階段を登ってゆく。
海鳥の声だけが響く静かな港内を見渡すことができ、とても気持ちがよかった。
そして小高い丘の上まで階段を登りきり、楽しみにしていた展望ポイントへ。
入り江状になっている「澄海岬」の海は島内イチの透明度を誇るといい、展望台からでも海底が見えるほど。
道北地方でもこれほど美しい海が見られるとは知らなかった。友人と二人でしばし見惚れる。
新しそうだなと思っていた岬の地名は、香深港へフェリーが就航した1989年に町民が命名したのだとか。
正午ごろ、フェリーターミナルまで戻ってレンタカーを返却し、近くの食堂で昼食。
店主のおばあさんがおススメしてくれたホッケの開き定食を頂いた。身が厚くておいしい。
食材を届けに来ていた地元のおじいさんに話し掛けられ、心配している明日以降の運航状況を聞いてみたところ、我々が帰る明後日までは大丈夫だが翌日から欠航になるだろうとの事。
この地での長年の仕事経験で分かるようだ。有力で頼もしい情報を頂き、ひとまずほっとする。
昼食後、今度は先ほどとは逆方向、島の南部にある「北のカナリアパーク」へ向かう。
レンタサイクルを考えたのだが残念ながら出払っており、バスも来ない時間だったので徒歩で目指すことに決めた。
海に面した一本道を二人でとぼとぼ歩く。
澄んだ空と海、磯の匂い、のどかな漁村とその向こうにそびえる利尻富士……。なんと贅沢な光景だろうか。
集落の中を30分ほど歩き、急坂を息を切らしながら登ったところで、ようやく「北のカナリアパーク」へ到着した。
私が礼文島で最も楽しみにしていた光景が広がっていた。
雄大な利尻富士をバックに、年季の入った平屋建ての木造校舎がポツンと建つ。
なんとも写真映えのする風景だが、それもそのはず。
校舎は2012年制作の映画『北のカナリアたち』(阪本順二監督)のために建てられた撮影用のセットで、クランクアップ後も残され、翌年2013年から観光地として活用されているのだ。
入館無料の校舎内は、映画の資料が展示された記念館になっており、主演の吉永小百合と生徒たちのパネルがお出迎え。教室や学習机、いすなどの備品もそのまま残されている。
原作は湊かなえ。
吉永小百合演じる主人公「川島はる」は離島の小学校教師で、合唱を通じて子ども達と心を通わせていたが、悲しい事件で島を追われてしまう。
20年後、かつての生徒の一人が事件を起こしたことを聞き、再び島への再訪を決意するというヒューマンサスペンス。
「大自然に建つ平屋建ての木造校舎」というイメージに合うロケ地が無く、利尻富士が見えるこの地を選んで理想の情景をつくり上げた。
撮影は札幌、稚内、礼文島、利尻島で行われ、冬季は厳しい寒さや悪天候にも悩まされたという。
パークには美しい風景を見ながらくつろげる「カナリアカフェ」が併設しており、二人でソフトクリームを食べながらひと息ついた。
午後3時半。
路線バスを利用しフェリーターミナルへと戻り、利尻島へ渡るべく「鴛泊(おしどまり)」港行きの乗船券を購入する。
少し名残惜しいが礼文島とはここでお別れだ。
礼文島から利尻島までは直線距離で約20キロ、フェリーで40分ほど。利尻富士をバックに、乗船する「ボレアース宗谷」が入港する。
午後5時10分、フェリーは利尻島の「鴛泊」港へ。
船が方向転換して接岸するので、間近の利尻富士と豊かな自然をぐるりと窓から望むことができ、気分が高まった。
いよいよ(個人的に)一番楽しみにしていた利尻島に上陸だ。
この日はフェリーターミナルのロビーで、2日間お世話になる旅館のオーナーと待ち合わせをしていた。
電話でお話しした時から人の良さが出ていたオーナーは思ったよりも若いおじさんだった。あいさつもそこそこに、車で宿まで送っていただく。
利尻島は標高1721メートルの利尻富士を囲むように、道道がぐるりと一周している。
港から最も離れた島の南部「仙法志(せんほうし)」で宿を営むおじさんは漁師が本業で、宿ではご自身で採った海の幸を提供している。
「仙法志」の集落の中にある小さな宿に到着し、さっそく夕食。お料理はオーナーの奥様の手作りのようだ。
この日はニシンがメインの海鮮メニューで、この旅で食べたいと思っていた前浜産の新鮮なウニがたっぷり付いているのがありがたかった。あまりの甘さに友人と二人で変な声が出た。
一般家庭の食卓のような食堂スペースで、徐々に薄暗くなってゆく利尻富士を見上げながらの夕食は大変贅沢であった。
宿のすぐ裏は海なので、部屋の窓からは海が一望。静かな夕暮れのひと時を堪能できた。
日没後は道中で買い込んだ酒を片手に部屋での宴を楽しみ、午後10時、星を見るために散歩に出てみた。
利尻島の夜空がこれまた凄かった。
車や人通りが全くなく、波ひとつ無い海沿いの道は驚くほど静かだった。
漆黒の波打ち際から空を眺めると、満天の星空の中にうっすらと天の川らしきものが見え、時おり流れ星が確認できる。
たまらず二人で道路に寝っ転がり、時を忘れて星空観察を楽しんだ。
流れ星は7~8回は見ることができたのではないだろうか。
この時の夜空は、間違いなく今まで生きてきた中で一番の見応えだった。
一生忘れないであろう最高の思い出がまた増えた。
続く。
「スコトン岬」の観光後、運転を私にバトンタッチし、島の西側にある人気の景勝地「澄海岬」へ向かった。
道道の分かれ道から内陸に逸れ、丘の一本道を20分ほど進むと、すぐに岬のある集落に到着した。
港の駐車スペースに車を停め、展望台へ向かう階段を登ってゆく。
海鳥の声だけが響く静かな港内を見渡すことができ、とても気持ちがよかった。
そして小高い丘の上まで階段を登りきり、楽しみにしていた展望ポイントへ。
入り江状になっている「澄海岬」の海は島内イチの透明度を誇るといい、展望台からでも海底が見えるほど。
道北地方でもこれほど美しい海が見られるとは知らなかった。友人と二人でしばし見惚れる。
新しそうだなと思っていた岬の地名は、香深港へフェリーが就航した1989年に町民が命名したのだとか。
正午ごろ、フェリーターミナルまで戻ってレンタカーを返却し、近くの食堂で昼食。
店主のおばあさんがおススメしてくれたホッケの開き定食を頂いた。身が厚くておいしい。
食材を届けに来ていた地元のおじいさんに話し掛けられ、心配している明日以降の運航状況を聞いてみたところ、我々が帰る明後日までは大丈夫だが翌日から欠航になるだろうとの事。
この地での長年の仕事経験で分かるようだ。有力で頼もしい情報を頂き、ひとまずほっとする。
昼食後、今度は先ほどとは逆方向、島の南部にある「北のカナリアパーク」へ向かう。
レンタサイクルを考えたのだが残念ながら出払っており、バスも来ない時間だったので徒歩で目指すことに決めた。
海に面した一本道を二人でとぼとぼ歩く。
澄んだ空と海、磯の匂い、のどかな漁村とその向こうにそびえる利尻富士……。なんと贅沢な光景だろうか。
集落の中を30分ほど歩き、急坂を息を切らしながら登ったところで、ようやく「北のカナリアパーク」へ到着した。
私が礼文島で最も楽しみにしていた光景が広がっていた。
雄大な利尻富士をバックに、年季の入った平屋建ての木造校舎がポツンと建つ。
なんとも写真映えのする風景だが、それもそのはず。
校舎は2012年制作の映画『北のカナリアたち』(阪本順二監督)のために建てられた撮影用のセットで、クランクアップ後も残され、翌年2013年から観光地として活用されているのだ。
入館無料の校舎内は、映画の資料が展示された記念館になっており、主演の吉永小百合と生徒たちのパネルがお出迎え。教室や学習机、いすなどの備品もそのまま残されている。
原作は湊かなえ。
吉永小百合演じる主人公「川島はる」は離島の小学校教師で、合唱を通じて子ども達と心を通わせていたが、悲しい事件で島を追われてしまう。
20年後、かつての生徒の一人が事件を起こしたことを聞き、再び島への再訪を決意するというヒューマンサスペンス。
「大自然に建つ平屋建ての木造校舎」というイメージに合うロケ地が無く、利尻富士が見えるこの地を選んで理想の情景をつくり上げた。
撮影は札幌、稚内、礼文島、利尻島で行われ、冬季は厳しい寒さや悪天候にも悩まされたという。
パークには美しい風景を見ながらくつろげる「カナリアカフェ」が併設しており、二人でソフトクリームを食べながらひと息ついた。
午後3時半。
路線バスを利用しフェリーターミナルへと戻り、利尻島へ渡るべく「鴛泊(おしどまり)」港行きの乗船券を購入する。
少し名残惜しいが礼文島とはここでお別れだ。
礼文島から利尻島までは直線距離で約20キロ、フェリーで40分ほど。利尻富士をバックに、乗船する「ボレアース宗谷」が入港する。
午後5時10分、フェリーは利尻島の「鴛泊」港へ。
船が方向転換して接岸するので、間近の利尻富士と豊かな自然をぐるりと窓から望むことができ、気分が高まった。
いよいよ(個人的に)一番楽しみにしていた利尻島に上陸だ。
この日はフェリーターミナルのロビーで、2日間お世話になる旅館のオーナーと待ち合わせをしていた。
電話でお話しした時から人の良さが出ていたオーナーは思ったよりも若いおじさんだった。あいさつもそこそこに、車で宿まで送っていただく。
利尻島は標高1721メートルの利尻富士を囲むように、道道がぐるりと一周している。
港から最も離れた島の南部「仙法志(せんほうし)」で宿を営むおじさんは漁師が本業で、宿ではご自身で採った海の幸を提供している。
「仙法志」の集落の中にある小さな宿に到着し、さっそく夕食。お料理はオーナーの奥様の手作りのようだ。
この日はニシンがメインの海鮮メニューで、この旅で食べたいと思っていた前浜産の新鮮なウニがたっぷり付いているのがありがたかった。あまりの甘さに友人と二人で変な声が出た。
一般家庭の食卓のような食堂スペースで、徐々に薄暗くなってゆく利尻富士を見上げながらの夕食は大変贅沢であった。
宿のすぐ裏は海なので、部屋の窓からは海が一望。静かな夕暮れのひと時を堪能できた。
日没後は道中で買い込んだ酒を片手に部屋での宴を楽しみ、午後10時、星を見るために散歩に出てみた。
利尻島の夜空がこれまた凄かった。
車や人通りが全くなく、波ひとつ無い海沿いの道は驚くほど静かだった。
漆黒の波打ち際から空を眺めると、満天の星空の中にうっすらと天の川らしきものが見え、時おり流れ星が確認できる。
たまらず二人で道路に寝っ転がり、時を忘れて星空観察を楽しんだ。
流れ星は7~8回は見ることができたのではないだろうか。
この時の夜空は、間違いなく今まで生きてきた中で一番の見応えだった。
一生忘れないであろう最高の思い出がまた増えた。
続く。
友人との旅は夕食の時の宴が特に楽しいですよね。
夕陽に染まる利尻富士を見ながらの食事、贅沢だな~(^^
ホルマリン君の文章と写真に見とれました。
いま時期の雪が残る姿を見にまた道北へ行きたいです。
利尻、礼文も踏破済みとはさすがです(^^)
今回の旅は友人と一緒だったことでより素晴らしい旅になったと思います。誘ってくれた友人に感謝です(^^)