糸崎公朗ブログ1・路上ネイチャー協会

写真家・糸崎公朗のブログです。『子供の科学』と『デジカメWatch』で連載をしています。

『反ー反写真』個展会場

2012年04月04日 | 告知

昨日から始まっております、TAPギャラリーでの個展『反ー反写真』の会場です。


どういう写真なのかといえば、こちらの『日本カメラ』4月号のグラビアページを見ていただくと分かるとおり、いわゆるモノクロ路上スナップ写真です。
普通に考えれば、昆虫などのネイチャー写真とは分野が違っていて「なぜ糸崎がこんな写真を?」と思う人は多いのではないかと思います。
しかし「路上」と言うことでぼくの中では繋がっているのであり、ぼくのこれまでの表現の「変奏曲」の一つだと言えるのです。

写真家にしろ、アーティストにしろ「この道一筋」という人は少なくないですが、ぼくの場合は同じことをやり続けていると飽きるというか、行き詰まるというか、新しいことを始めた頃の「鮮度」が明らかに落ちるのが分かって、苦痛になってくるのです。
だから何か別の新しいことを始めたくなるのですが、脈絡なく、節奏もなく、全く違ったことを始めるのは効率的に良くありません。
この場合の「効率が悪い」とは、今まで自分が築き上げた資産(技術や知識や感性)が無駄になるということです。

ですからぼくはいつも、自分の作品を「変奏曲」のように発展させることを心掛けているのです。
変奏曲というのは、元のメロディーがあって、そのバリエーションとして新しい曲を増やしていく手法です。
この変奏曲的な手法であれば、これまでの自分の資産を活かしながら、なおかつ新しい表現を獲得することが出来るのです。

そもそもぼくは、学生時代に自分にアートの才能がないことに絶望しながら、気晴らしに良く散歩をしていて、その延長上で赤瀬川原平さんの影響から「路上観察」の魅力に目覚め、そうして路上を歩き回るうち空き地で「昆虫」を発見し、その魅力に取り憑かれていったのでした。

それでこの『反ー反写真』は何なのか?といえば、それは「物質としてのモノクロ写真」に対する観察と発見のまなざしです。
別の言い方をすれば、高品位の「モノクロ写真」は物質としてとても魅力がある、という価値の発見と、その価値を目標にしたクオリティーコントロールの研究です。

ですから今回展示した写真は、デジカメで撮影した画像そのままではなく、かなり微妙に画像加工して、色彩をコントロールしながら仕上げています。
モノクロ写真は文字通りに捉えると「白」と「黒」だけの世界ですが、実際にはひとくちに「黒」と言ってもさまざまに色の偏りがあります。
またコントラストやグラデーションの微妙な違いによって、とても同じ「画像」からプリントした写真とは思えない仕上がりになるのです。
実際、今回使ったインクジェットプリンター「エプソンPX-5800」はモノクロ写真モードでプリントしても、「ライトシアン」や「ビットライトマゼンタ」など微妙な色彩のカラーインクを使用しています。

本来のフィルムで撮るモノクロ写真は、印画紙の選択や焼き込みの技術でプリントを作り上げますが、今回のぼくの場合はそのアナログ技術を、フォトショップやプリンターの機能で再現しつつ、さらにデジタルならではのモノクロ写真を追求したのです。
『日本カメラ』に掲載した写真は、まだ撮ってそのままの画像に近く凡庸と言えますが、展示作品は「凡庸の中の非凡」を念じながら一生懸命頑張りましたw

因みにこれはぼく一人の頑張りではなくて、アーティストの彦坂尚嘉さんのアドバイスのお陰でもあります。
アーティストが師匠や、先生や、先輩や、同僚のアドバイスを受けるということは、その人の「資産」を利用するということです。
先に書いた自分が持っている「資産」は、それだけを後生大事にしようとすると、やがて腐って使い物にならなくなります。
ですから自分の「資産」を新鮮に保ち活性化するために、他人の「資産」を利用することは重要で、そのような「資産」の交換はアーティストにとっては重要なのです。



ということで、今回展示中のプリントは、額装込みで20.000円の価格で販売してます。
相場より安いですが、いちおうぼくは「モノクロ写真家」としては新人なので、お買い得な新人価格となっているのですw

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