いしころにっき

石原石子の日記です

君の名は

2010-10-17 20:13:42 | 知らないひと
山の手事情社には年に一度
納会という催しがあります。

毎年年末あたりに
基本的には
最若手劇団員と
旧人という
ベテランの劇団員が組んで
遊びの企画をするのです。


今年は

私と明香と恵さんと浦さん

この四人です。


浦さんの発案で
今年は二泊三日で
どこかへ行こうとなりました。


そこでまずは
とことん安いところをさがします。


そのなかで
私がさがしだした
キャンプ場が候補にあがりました。


そこはとても声の高いおばあさんが
電話にでるところでした。


ネットにそのキャンプ場の情報が
ある程度のっているので
確認もふくめておばあさんに質問をすると


そう書いてあるならそれでいいとおもいます


と答えます。
ネットに書いてないことにかんしては


よくわからないですねぇ~


らしいです。
なにもかもがはっきりしません。
そうして一度電話を切りました。

数日後

本格的にそのキャンプ場が
決定しそうな色合いが強くなり
電話をしました。

そのなかで
寝具に関する質問をしたところ


担当者が出張にいっているので
わからない


ということでした。
いたしかたないので
いつ帰ってくるか聞きました。
おばあさんは答えます。


ちょっとよくわからないねぇ


私にはおばあさんが
電話番をしていることが
よくわかりませんでした。


それはそれとして
とりあえず担当の方の名前を
聞いておくことにしました。

おばあさんは


イワタですぅ


甲高く答えました。



一週間後


私はあらためて電話をしました。


できればおばあさん以外の人がでないかと願いつつ
電話口にでたのは



おばあさんでした。



おばあさんはあいかわらず
超音波かとおもうほどの高い声です。


これはもうどうしようもないとおもいましたが
それでも担当の方がいらっしゃればと

私は聞きます。



イワタさんはいらっしゃいますか?




はい、イワタですぅ




おばあさんは答えます。




おまえもイワタかー!




私は心のなかで叫びました。


家族経営とはおもっていましたが、しかし。

私は私の叫びの余韻を残しつつ
寝具担当のイワタさんがいらっしゃるか
聞いたところ



不在。



夕刻の六時ごろには帰るかもしれないとのことでした。
その時間では私は稽古なので
それならばと
一抹の不安はありながらも
寝具に関する質問を伝えておいてもらうことにしました。

けれども
不安は一抹どころではなかった私は
次の日にさっそく電話をしました。


するとでたのは


おじさんでした。
しかも話がしっかりしています。
私はやっと話の通じる人に出会い

砂漠のオアシス
真冬の暖炉

そう感じました。

いままで得られなかった回答を
きちんと答えてくれます。
しかしながらこのおじさんも
寝具担当の方ではありませんでした。


いたしかたなし。


でもいいの
おじさんあんたがいてくれて
ほんとよかったよ
私は幸せだよ


おじさんは丁寧にも
担当の方に聞いておいてくれる
というのです。

ふつうのことがありがたい世の中です。


そこで私は
おじさんのお名前をちょうだいしておこうと


あ、お名前をうかがってもよろしいですか


と聞きました。
おじさんは答えます。




イワタです




私は下の名前を聞くことはできずに
電話を切りました。


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